1991年7月1~10日に揚子江流域を中心とする東アジアに豪雨をもたらした梅雨前線の大規模およびメソ-α-規模の様相と、その維持に寄与する周辺循環系の作用を解析した。
この期間、大平洋亜熱帯高気圧の西方伸張に伴って、梅雨前線は著しく強化された。前線帯下層における水蒸気流束の収束は、大平洋高気圧の北西縁で極大となり、特に南北収束が大きい。これに対し、南シナ海の高気圧圏内では大きな東西収束と南北発散が見られる。前線帯の大きな潜熱放出による熱源は、同時的に前線帯の鉛直循環の維持に寄与する。
梅雨前線帯下層の相当温位のシンクは相当温位傾度を弱めるが、大規模場の合流収束場の移流過程は相当温位傾度を強め、両者がほぼ均衡して強い相当温位傾度を維持する。また、対流活動は前線帯の鉛直不安定を解消するが、3次元的デファレンシャルアドベクションは鉛直不安定を増加させ、両者がほぼ均衡し豪雨域で湿潤中立に近い成層を維持する。
梅雨前線帯下層の強い収束とその南側の強い発散は、大平洋高気圧西北縁の大きな曲率を持つ流れの加速度に対応する強い非地衡風によってもたらされ、多降水域と寡降水域の著しいコントラストを生じる。
この期間、~50N、~110Eに切離低気圧があり、その後面では中高緯度から擾乱が南下し梅雨前線に接近して、梅雨前線帯の対流活動を活発化した。
~30Nゾーンの90-100Eでは積雲対流の日変化が大きいが、~105E以東では東進するメソ-α-規模雲システムが顕著である。それらは下層の低気圧性循環を伴い豪雨域で強化され、梅雨前線の中立に近い湿潤安定成層の傾圧ゾーンを東進しつつ小低気圧に発達する。
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