赤道対称な半旬平均OLRデータを用いて、赤道付近における対流活動の中心域と時期を決定し、対流活動の年変化機構について調べた。赤道アフリカや赤道アメリカの大陸上では、太陽の季節的運行に伴って春と秋に対流活動ピークをもつ半年周期が卓越する。
赤道海洋域における積雲活動は、ロスビーの変形半径内(約15°N-15°S)で卓越し、その季節変化は主として変形半径外からの遠隔作用によって支配される。赤道西太平洋(EWP)における対流活発期は11月から翌年の3月である。西部北太平洋の夏のモンスーン(WNPM)に伴うトラフが11月までに赤道に到達すると、気圧場は赤道対称となり、東西および南北方向の気圧傾度に沿って収束が起こる。1月には赤道に向かって張り出してきた北太平洋高気圧の南縁で北よりの風の収束がもっとも強くなり、EWPの最盛期を迎える。冬季のEWPは赤道上における波数1と2の東西循環のエネルギー源となる。地上における低圧部の位相は、季節とともにインド洋-西太平洋にまたがって時計回りに移動する。すなわち、75°Eでは春から夏に北進、10°Nでは夏から秋に東進、155°Eでは秋から冬に南下、さらに10°Sでは冬から春に西進する。EWPにおける対流活動は、南進位相の時に活性化する。
東南アジアの夏のモンスーン(SEAM)トラフの南側では、気圧傾度に向かって吹く南風が赤道域に発散をもたらすので、赤道インド洋(EIO)上の夏季の対流活動は比較的弱い。EIOにおける対流活動最盛期は、経度80°-100°E(EIO
1)と100°-120°E(EIO
2)とで大きく異なる。EIO
1における対流活動は、SEAMが終わってから盛んになり、10月が最盛期となる。この原因はインド洋高気圧によってもたらされた赤道上での西高東低の気圧傾度が西風を加速し、いわゆるβ-効果によって収束が起こるためである。一方、EIO
2ではシベリアからの高気圧の張り出しのために、12月が対流活動最盛期となる。この冬のモンスーンは、EIO
2上の対流活動に対して二重の効果を及ぼす。まずシベリア高気圧南縁の南シナ海上では、気圧傾度に向かう北よりの風がスマトラやボルネオの対流活動中心域に南北の収束をもたらす。次にアラビア海やベンガル湾へのシベリア高気圧の張り出しは、赤道に沿う西高東低の気圧傾度を増大し、β-効果によって収束をもたらす。地上低圧部の北進位相、すなわち春には、EIO上の対流活動は弱く、西太平洋と対照的である。
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