自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
Print ISSN : 0286-6021
37 巻, 2 号
自然災害科学
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
巻頭言
報告
  • 村上 嘉謙, 志方 建仁, 殿最 浩司, 菅原 大助, 平石 哲也
    2019 年 37 巻 2 号 p. 165-176
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
    掃流砂層と浮遊砂層の交換砂量を考慮した津波移動床モデルのうち,高橋ほか(1999)の手法においては,飽和浮遊砂濃度が計算結果に与える影響が大きく,その設定方法の高度化が課題となっている。本研究では,関西電力高浜発電所の基準津波を用いて,既往の研究事例よりも広域の計算領域を対象に,藤井ほか(1998)および高橋ほか(1999)の手法により,飽和浮遊砂濃度を時空間的に一定の定数として与えた場合の地形変化を比較し,両モデルで地形変化の傾向が大きく異なることを示した。さらに,高橋(1999)の手法について,菅原ほか(2014)の提案式に基づく飽和浮遊砂濃度の時間的な推移に関する考察を行い,当該海域については,飽和浮遊砂濃度を1%の固定値とした設定では,浮遊砂の巻き上がり量が全体的に大きめに評価されると考えられること,および汎用的に適用可能な固定値を定めることは困難であることを示した。
論文
  • 長野 智絵, 津守 博通, 稲村 友彦, 佐野 肇, 小林 健一郎, 佐山 敬洋, 寶 馨
    2019 年 37 巻 2 号 p. 177-189
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
    本論文では,日本全域を対象とする洪水リスク評価モデルの一部として,降雨時系列と空間分布を模擬的に発生させる確率降雨イベントモデルについて示す。降雨イベントの年間発生頻度とイベント総降雨量,降雨の時空間分布を統計的にモデル化し,モンテカルロシミュレーションによって降雨イベントを模擬的に発生させる。地方別の豪雨発生回数や年最大72時間降雨量の再現期間について,観測データと本モデルの結果が整合することを確認した。例えば,100年再現期間の年最大72時間降雨量は,本モデルで疑似発生させた降雨イベントと観測雨量とでよく一致した。したがって,本モデルで作成された疑似降雨イベントは,洪水リスク評価に利用する上で有用であると考えられる。
  • 長野 智絵, 津守 博通, 稲村 友彦, 佐野 肇, 小林 健一郎, 佐山 敬洋, 寶 馨
    2019 年 37 巻 2 号 p. 191-203
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
    本論文では,洪水リスクを確率論的に評価する枠組みについて示す。本モデルの特徴は,次の3点である。a)洪水リスクを年間期待損害額と損害額超過確率カーブという指標で算出できること,b)降雨流出と洪水氾濫を一体的に計算する降雨流出・洪水氾濫モデルを用いること,c)降雨の時空間分布と堤防決壊の有無による洪水災害の不確実性と,財物の脆弱性の持つ不確実性を考慮すること。本モデルの適用例として,製造業の事業所資産に対する洪水リスクを評価し,モデルの有用性を示した。本モデルで推定した製造業事業所資産の年間期待被害額は,水害統計調査から推定した製造業事業所資産の10年間平均被害額と概ね一致することを示した。本モデルは洪水リスクを定量的に評価することができるため,損害保険会社だけでなく自治体や企業の洪水リスクマネジメントにも活用できるものと考えられる。
  • 加納 靖之
    2019 年 37 巻 2 号 p. 205-217
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
    史料にみられる液状化現象の詳細な分析により,将来の液状化の発生について評価することができる。1854年伊賀上野地震は山城(現在の京都府南部)に被害を及ぼしたが,伏見(現在の京都市伏見区)で局所的に液状化が発生しており,備前岡山藩の記録に泥や砂の噴出や蔵の倒壊が記述されている。史料や地図の詳細な検討により,この液状化の発生地点を特定した。さらに古い時代の地図や同じ敷地内での考古学的な発掘調査を検討したところ,この地点は池を埋め立てた場所であり,地下に砂層をふくむことがわかった。
  • 神谷 圭祐, 菊本 統, 伊藤 和也, 日下部 治
    2019 年 37 巻 2 号 p. 219-234
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
    規準化した複数のデータの重み付き線形和により評価する総合指標では,重み係数を合理的に設定することが極めて重要になる。本研究では,専門家へのアンケート結果に階層分析法 (AHP)を適用することで重み係数を算出する手法を提案するとともに,自然災害に対するリスク指標 Gross National Safety for natural disasters(GNS)の評価体系に対して,指標を防災・減災投資の意思決定として利用する専門家へのアンケートを実施した。個々のアンケート結果の信頼性を整合度C.I. により判定した後,回答者集団ごとに自然災害や防災・減災対策の重み係数を求めた。その結果,回答者集団ごとの重み係数は自然災害の地域性を反映することが示唆された。一方,防災・減災対策の種類(代替案)ごとの重み係数は,回答者集団によらず質問の 仕方(評価基準)を反映したユニークな結果になり,適切な代替案のもとで合理的な重み係数が設定されたことが示された。
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