自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
Print ISSN : 0286-6021
37 巻, 4 号
自然災害科学
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
特集記事オープンフォーラム
速報
  • 山本 晴彦, 坂本 京子, 岩谷 潔, 川元 絵里佳, 那須 万理, 渡邉 祐香
    2019 年 37 巻 4 号 p. 365-382
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー
    2018年台風24号(Trami)は,9月30日から10月1日にかけて,紀伊半島,中部地方,関東地方北部,東北地方南部を通過した。太平洋沿岸では強風が吹き,東京で39.3m/s,千葉で41.1m/s,銚子で42.0m/sの最大瞬間風速を観測し,台風1824号の通過直後からは降水は観測されなかった。これにより,太平洋沿岸では塩害が発生し,海岸から50kmも離れたつくば市でも,街路樹のイチョウの葉が枯れる塩害が確認された。
  • 佐藤 翔輔, 今村 文彦
    2019 年 37 巻 4 号 p. 383-396
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,2018年西日本豪雨災害を対象に,発災当時に発信されていた「# 救助」ツイートに対する内容分析を,先行研究として実施した2017年7月九州北部豪雨の事例と比較しながら行った。その結果はつぎのようにまとめられる。1)「#救助」ツイートで,場所や人数等の具体的な状況を記述している「救助要請」のニーズを発信していたツイートは,分析対象の2,171件のうち,16.5 %とごくわずかであり,「救助要請」を実際に求めているツイートが埋没し,ハッシュタグ「#救助」による検索が困難であった状況が定量的に確認された。2)「#救助」は付与されているものの,「救助要請」ではない, 「#救助」の存在や注意点を紹介するニュース記事とそのリンクや,一般ユーザーからの善意の投稿は依然として多く存在していた。「#救助」ツイート のうち,真に「救助要請」を行っていた発信の比率は,西日本豪雨災害では九州北部豪雨災害に比べて倍程度となり,やや検索・抽出しやすい状況になったものの,被災地外の不急の発信は依然として多いことが明らかになった。
報告
  • 森下 朔, 水口 竜一, 金井 純子, 馬場 俊孝
    2019 年 37 巻 4 号 p. 397-406
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー
    健常者よりも運動能力が劣る要介護者が迅速に避難できるように準備することは,要介護者の命を救うだけでなく,介護スタッフの命を守ることにも繋がる。しかし,現状では要介護者の避難行動速度すら十分に調査されておらず,要介護者の避難を検討する上での情報が不足している。そこで,本研究では要介護者の避難訓練の様子を撮影し,歩行速度をはじめとする避難行動速度を詳細に調査した。その結果,すべての行動が健常者よりも遅いが,階段の上りと車からの降車が特に時間を要することがわかった。さらに,得られた行動速度を入力にして,エージェントモデルで避難訓練をシミュレートしたところ,シミュレーションの方が1割程度早く避難が完了する結果となった。しかしながら,この避難完了時間の違いは,介護スタッフの行動の中の「シミュレーションに考慮されていない行動」に掛かる時間を考慮することでほぼ解消した。
  • 野々村 敦子, 谷 淳弘, 桝本 みな
    2019 年 37 巻 4 号 p. 407-418
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー
    南海トラフ巨大地震が発生すると,津波の影響を受ける沿岸部のすべての人は,すみやかに避難しなければならない。強い余震が頻発する可能性を考えると,避難を強いられる期間は数日に及ぶことも視野に入れておく必要がある。津波浸水域外に避難することが最善の避難方法であるが,高台がない,避難経路が閉塞されている,体が不自由である場合などは,津波浸水域外への避難が困難な場合も考えられる。沿岸部において津波からの避難の可能性を広げるためには,避難場所の選択肢をいくつか設けておく必要がある。本研究では,まず,津波避難に向けた準備の現状を調査する。次に津波からの避難の可能性を広げるため,津波避難ビルを増やすための住民主体のワークショップを提案する。
論文
  • 久松 明史, 菅原 大助, 後藤 和久, 今村 文彦
    2019 年 37 巻 4 号 p. 419-432
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー
    本研究では,津波堆積物の層厚分布に基づいて津波波源モデルを推定する手法を構築した。津波波源モデルとして,すべり欠損速度分布と過去の地震履歴に基づいて円錐型断層モデルを用い,津波堆積物の調査測線に沿った堆積量と断層すべり量の関係を定式化し,堆積量の実測 値を再現する断層すべり量を推定した。新しい手法の適用性を評価するために,東北地方の3地域で2011年東北沖地震(Mw9.0)によって形成された津波堆積物から津波波源モデルを推定した。その結果,断層すべり量と測線堆積量は比例関係にあることがわかった。定式化した関係式から推定された地震規模はMw9.0であった。従って,津波堆積物の層厚情報のみから巨大津波の波源モデルを一定程度に推定できることが示された。
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