自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
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最新号
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巻頭言
速報
  • 大庭 拓也, 西田 悠太, 小野村 史穂
    2026 年45 巻2 号 p. 91-105
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
     本報告は,2025年8月6日~11日に熊本県で発生した豪雨災害に関する現地調査の結果であ る。対象地域は,熊本県八代市,玉名市,上天草市,天草市である。本豪雨では,八代市西部 で累積降雨量646mmを記録したほか,広範囲で500mmを超過した。本稿では,対象地域の現 地調査に基づき,浸水痕跡から推定される浸水位や氾濫流の挙動について報告する。調査の結 果,各所で明瞭な浸水痕跡が確認され,玉名市中地区や上天草市松島町合津地区では90cm以 上の浸水深を計測した箇所も存在した。天草市では流木による祇園橋の橋脚阻害に起因する越 水被害が明らかとなった。今回調査した各地点では,概ね洪水浸水想定区域内であった。今後, 気候変動の影響によりこのような記録的な豪雨の増加が懸念される中,洪水浸水想定区域図が 被害予測や避難準備において引き続き有用性が高いと考える。
報告
  • 佐藤 史弥, 井上 拓哉, 秦 康範, 吉本 充宏, 本多 亮, 石峯 康浩, 南沢 修
    2026 年45 巻2 号 p. 107-119
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
    本稿では,登山に関する情報収集の状況や火山噴火に関する認識についてアンケート調査を 行った。特に富士山における登山者の中でも外国人登山者に着目し日本人登山者との意識の違 いを比較した。その結果,日本人登山者と外国人登山者の年齢構成や性別に大きな違いはな かった。また,日本人登山者,外国人登山者共に登山初心者が約3割存在した。また,登山に 関する情報収集の手段について外国人登山者は日本人登山者に比べWebサイトを利用する傾向 が確認できた。火山噴火に関する認識については,日本人登山者,外国人登山者共に富士山噴 火の可能性は認識しているものの,火山に関する情報は収集していない結果であった。
  • 横山 仁, 下瀬 健一, 出世 ゆかり, 平野 洪賓
    2026 年45 巻2 号 p. 121-133
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
     2024年9月19日に東京都八王子市において激しい降ひょうによる被害が発生した。本研究で は,本事例における降ひょう被害の実態と,降ひょうの範囲およびひょうの粒径との対応関係 を明らかにするため,現地調査および学校等への聞き取り調査を実施した。当時,八王子市周 辺は積乱雲が発生しやすい気圧配置であり,非常に不安定な大気状態であった。東京都・埼玉 県・山梨県の都県境付近で発生した積乱雲が南東進し,1500~1530JST頃にかけて八王子市に 降ひょうをもたらした。降ひょう域は,北西から南東方向に長さ約10km,幅約5kmの範囲で あった。地上で確認されたひょうの粒径は, 1cm未満のものから5cm以上に及んだ。粒径 1cm以上の降ひょう域で車両や農作物の被害が確認され, 3cm以上の地域では,建物の窓ガ ラスの割れ,カーポートやソーラーパネルの破損,ハウスフィルムの凹み等の被害がみられた。 車両の窓ガラスの割れも多くが粒径 3cm以上の地域で確認された。 また,本事例では降ひょ う時刻が下校時刻付近であったにもかかわらず,児童生徒の人的被害は報告されなかった.こ れは,教職員および児童生徒による適切な状況判断が生かされた結果であると考えられる。一 方で,教職員がレーダー画像や気象情報を活用していた例は確認されなかった。今後は,降 ひょう時における教育現場での児童生徒の安全確保に関する円滑な判断を支援するため,より 利用しやすい気象情報提供のあり方について検討することが重要である。
  • 静間 健人
    2026 年45 巻2 号 p. 135-145
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,東日本大震災・原子力災害に伴う広域・長期避難のもとで運用されてきた避難行 動要支援者対応について,原発避難者特例法に基づく指定市町村および福島県の実務実態を分 析し,その課題を明らかにすることを目的とする。避難行動要支援者制度は,市町村内完結を 前提に制度設計されているが,原子力災害により住民票を避難元市町村に残したまま他自治体 で生活する避難者が多数存在する状況では,想定通りに機能していない。本研究では,原発避 難者特例法に基づく13の指定市町村および福島県を対象に質問紙調査を実施し,12市町村と福 島県から得られた回答を分析した。分析の結果,避難行動要支援者名簿の作成主体は自治体ご とに異なり,避難先自治体,避難元自治体が混在していることが明らかとなった。また,指定 市町村が避難行動要支援者の生活状況を継続的に把握できている事例は限定的であり,特に県 外避難者については把握する仕組み自体が存在しないケースが多かった。さらに,自治体間の 照会は一定程度行われているものの,個別的・断片的な情報確認にとどまり,役割分担や継続 的な情報共有の枠組みは制度化されていなかった。
論文
  • 黒澤 宗一郎, 矢守 克也
    2026 年45 巻2 号 p. 147-174
    発行日: 2026/08/31
    公開日: 2026/09/15
    ジャーナル フリー
     南海トラフ地震臨時情報は多くの不確実性を内包した災害情報であり,その対応には平常 モードと非常モードの両立,すなわち「両にらみ」の姿勢が求められる。高知県幡多郡黒潮町は, 2024年8 月8 日の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表に際して,非常モードに大きく 舵を取った全国でも珍しい自治体の一つだった。本研究は,臨時情報前後に黒潮町役場が作成 した資料の分析や関係者へのヒアリングを通して,同町役場が通常業務と臨時情報対応業務の 両立を図る過程で直面した課題等について考察した。その結果,「両にらみ」の実現には事前準 備の工夫によって不確定要素を削減すること,それをもって柔軟な軌道修正を可能にする余力 を確保することの双方が重要であることがわかった。
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