Journal of Neuroendovascular Therapy
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6 巻, 3 号
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原著
  • 片山 正輝, 美原 貫, 島本 佳憲, 菅 貞郎
    2012 年 6 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】アルギン酸カルシウム含有の止血パッドを使用した脳血管内治療時の穿刺部止血効果について検討した.【対象と方法】アルギン酸カルシウムを含有した止血パッド(トライセルTM(アライアンス・メディカル・グループ株式会社,東京))をシース抜去部の止血に使用した12例に関して,穿刺部の止血時間をシース径,抗血小板薬・抗凝固薬使用の有無,シース抜去直前のactivated clotting time(ACT)の項目別に比較検討した.【結果】年齢は63~83歳(平均68.8歳).男性4例,女性8例.シースサイズは,9Fr が3例,8Fr が1例,7Fr が4例,6Fr が3例,5Fr が1例,穿刺部位は全例で大腿動脈であった.対象疾患は,脳動脈瘤が7例,頚動脈狭窄症が2例,急性期脳梗塞が2例,脳腫瘍が1例であった.止血時間は4分50秒から43分であった.抗血小板薬・抗凝固薬投与は,投与なしが6例,1剤内服が1例,2剤内服が2例,3剤内服が2例,tPA使用例が1例であった.シース抜去直前のACTは,107~286秒であった.トライセルTMを用いた穿刺部の止血時間は,シース径は8Fr まで,術前からの抗血小板薬,抗凝固薬は2剤使用まで,シース抜去直前のACTは250秒以内であれば10分以内であった.痛みを伴う皮下血腫の形成はなかった.【結論】アルギン酸カルシウム含有の止血パッドを使用した脳血管内治療後の穿刺部止血効果は良好であった.
  • 松原 功明, 宮地 茂, 泉 孝嗣, 原口 健一, 若林 俊彦, 中川 美保子, 松本 十美, 小齊平 夏江, 安田 澄代, 深津 まり子
    2012 年 6 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】脳神経血管内治療の利点として局所麻酔下に施行可能なことがある.一方,局所麻酔下での治療では,治療中に意識が保たれることから,患者への精神的な負担はより大きくなる.今回,病棟出棟から治療中の様子,帰室後までの実際の流れを動画とナレーションで説明するシミュレーションDVDを作成し,その有用性について検討した.【方法】2010年8月~10月の間,術前にシミュレーションDVDを視聴して脳神経血管内治療に臨んだ20例に対して不安に関するアンケート調査を行った.また,DVDを視聴せずに治療が終了した10例にもDVDを視聴してもらい,アンケート調査を行った.【結果】術前のDVD視聴によりすべての患者で脳血管内治療に対する理解が深まり,70%は視聴前後で不安が軽減していた.また,治療の具体的な手順が分かっていたことが不安解消に役に立っていた.提供を望む情報は,血管造影室の雰囲気や治療中の様子と局所麻酔とシース挿入,止血,安静等の痛みや不快を伴う処置に対する項目が主であった.【結論】シミュレーションDVDによる情報提供は,局所麻酔下に脳神経血管内治療を受ける患者の不安軽減に有用であった.
  • 近藤 竜史, 松本 康史, 鈴木 一郎, 菊池 登志雄, 清水 宏明, 藤原 悟, 高橋 明, 冨永 悌二
    2012 年 6 巻 3 号 p. 164-174
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】虚血発症の頭蓋内内頚動脈解離は稀な病態であり,確立された治療方針がない.我々は,ステント留置により良好な予後が得られた3症例を報告する.【方法】虚血発症頭蓋内内頚動脈解離に対してステント留置術を行った連続3症例を後方視的に検討した.【結果】ステント留置術施行の理由は,急速に進行する重症脳虚血症状が2例,抗血栓療法施行中の脳梗塞再発が1例であった.使用ステントは,全例冠動脈用バルーン拡張型ステントであった.解離に伴う血管撮影上の異常所見は,全例でステント留置により解消された.平均38.7ヵ月間の経過観察期間中,脳卒中の再発はなく,ステント内再狭窄も認められなかった.最終経過観察時の臨床転帰は,mRS 1が2例,mRS 2が1例であった.【結論】今回の検討において,ステント留置術が,虚血発症頭蓋内内頚動脈解離に対する有効な治療法となる可能性が示唆された.
症例報告
  • Masanori SUZUKI, Shushi KOMINAMI, Shiro KOBAYASHI, Akira TERAMOTO
    2012 年 6 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Objective: Intracranial meningioma surgery in the elderly sometimes causes neurological complications that significantly degrade quality of life. We report a case of intracranial meningioma that was effectively and safely treated by endovascular embolization using liquid materials without subsequent surgical removal.
    Case presentation: Our case of intracranial meningioma was in an 86-year-old woman treated by endovascular embolization using ethanol and n-butyl cyanoacrylate. Six days after embolization, preoperative neurological deficits were improved, no cognitive deterioration was detected, and tumor shrinkage was evident on brain magnetic resonance imaging. Tumor size remains unchanged two years after embolization.
    Conclusion: Endovascular embolization using liquid materials may be safe for symptomatic meningioma in elderly patients to prevent various complications associated with surgical removal.
  • 高杉 祐二, 杉生 憲志, 平松 匡文, 大熊 佑, 伊丹 尚多, 菱川 朋人, 徳永 浩司, 伊達 勲
    2012 年 6 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】頚動脈ステント留置術(CAS)後のステント内血栓症に対してstent-in-stent留置術を行い良好な結果が得られた1例を報告する.【症例】72歳男性.症候性左内頚動脈狭窄症に対しopen-cell stentを使用してCASを施行した.術後急性期に症候性進行性ステント内血栓症をきたしたため,closed-cell stentで追加CASを行い良好な結果を得た.【結論】CAS後のステント内血栓症に対して,血栓を壁側に抑え込むことのできるstent-in-stent留置術は,有効な治療となり得る.
  • 清水 立矢, 上山 博康, 瀧澤 克己, 竹林 誠治, 小林 徹, 齊藤 寛浩, 久保田 俊介, 丸一 勝彦
    2012 年 6 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】複合的治療を要した難治性外傷性carotid-cavernous fistula(CCF)の1例を報告する.【症例】24歳,男性.バイク事故による急性硬膜下血腫,脳挫傷後,6年の経過で右視力障害,右外転神経麻痺が出現し外傷性CCFと診断された.前医で血管内治療により海綿静脈洞の瘤様拡張部および内頚動脈の塞栓術を受けたが,shuntの残存を認め当院を紹介受診した.Radial artery(RA)graftを用いてのhigh flow bypassおよび眼動脈近位と頚部で内頚動脈のtrappingを行ったが,逆行性direct shuntの残存を認めたため,RA graftを経由してshuntおよび内頚動脈の塞栓を行い完全閉塞を得た.【結論】RA graft経由の塞栓術は安全に施行可能であった.
  • 若林 和樹, 鹿児島 海衛, 松本 正弘, 宮城 修
    2012 年 6 巻 3 号 p. 196-201
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】耳鳴りで発症したanterior condylar confluence(ACC)近傍の硬膜動静脈瘻に対して内頚静脈-椎骨静脈叢の吻合を経由し治療を行った1例を報告する.【症例】59歳男性.経静脈的塞栓術に際して,第2頚椎レベルの左内頚静脈と椎骨静脈叢との吻合を利用し,suboccipital cavernous sinus(SCS)からlateral condylar veinおよびposterior condylar veinに到達してコイルにて塞栓を行なった.治療後よりシャントは消失し耳鳴りも消失した.【結論】ACC近傍の硬膜動静脈瘻に対する経静脈的塞栓術において,症例によっては内頚静脈と椎骨静脈叢の吻合部からSCSを経由するアプローチが有用と考えられた.
  • 竹下 朝規, 林 健太郎, 宗 剛平, 堀江 信貴, 森川 実, 陶山 一彦, 永田 泉
    2012 年 6 巻 3 号 p. 202-208
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】乗せ替えが不要なステントを用いて治療を行った鎖骨下動脈盗血症候群の2例を報告する.【症例】2例とも上肢の脱力と椎骨脳底動脈循環不全を認め,椎骨,鎖骨下動脈狭窄症に対しステント留置術を行い,良好な拡張と共に症状の改善が得られた.【結論】椎骨,鎖骨下動脈の閉塞性病変に対し,かつては主に直達術が行われていたが,合併症が多いことが問題となっていた.近年では血管内治療が広く行われるようになり,リマウントの必要の無い新たなステントを使用する事で狭窄部の通過やマウント中のバルーン損傷,操作中のステント滑落などの問題も解決した.椎骨,鎖骨下動脈狭窄症に対する血管内治療はより安全で確実な治療となり得ると考えられた.
テクニカルノート
  • 原口 浩一, 外山 賢太郎, 永井 真理子, 松浦 伸樹, 伊藤 丈雄, 坂本 靖男, 蓮沼 正博
    2012 年 6 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】経橈骨動脈アプローチによる頚動脈ステント留置術(Transradial carotid artery stenting;TR-CAS)について報告する.【方法】2010年8月~2012年1月までにTR-CASを施行した19例20病変を対象とした.術前にアクセスルートの評価後,distal protection下にTR-CASを施行後,止血は橈骨動脈用の圧迫止血デバイスを使用した.【結果】全例で問題なくステント留置が可能であり,穿刺部位の問題も認められなかった.橈骨動脈は血管攣縮が起きやすく,細い分岐へのガイドワイヤー迷入,動脈の破格に注意が必要であった.【結論】TR-CASは血管内治療医にとって難しい手技を必要とせず,患者の負担が少なく有用な方法と思われる.
  • 太田 剛史, 村尾 健一, 三宅 浩介, 竹本 光一郎
    2012 年 6 巻 3 号 p. 214-217
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/31
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】脳動脈瘤のコイル塞栓術途中に脱落したマイクロカテーテルを再留置する技法としてlash methodを提示する.【症例】71歳男性,くも膜下出血にて発症した前交通動脈瘤に対しコイル塞栓術を行った.途中でマイクロカテーテルが脱落したため,ネック近傍に留置したマイクロカテーテルをガイドワイヤーの抜去の反作用により進め,カテーテル形状と先端方向を維持したまま再留置した.その結果十分な塞栓術を行うことができた.【結論】すでにコイルが留置された脳動脈瘤に対するマイクロカテーテル再挿入法として本技法が有用であった.特に,不均一にコイルが分布した症例では適しているかもしれない.
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