保健医療科学
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最新号
気候変動による日常生活や健康への影響を考える
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集
  • 秋葉 道宏
    原稿種別: 巻頭言
    2020 年 69 巻 5 号 p. 401-402
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス
  • 橋爪 真弘
    原稿種別: 総説
    2020 年 69 巻 5 号 p. 403-411
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    地球温暖化は着実に進行しており,効果的な温室効果ガス排出抑制策を行わない場合,産業革命前と比べて今世紀末における気温上昇が4.3℃前後になると予測されている.地球温暖化は,平均気温の上昇だけではなく,熱波や大雨などの極端現象の増加や台風の強度にも影響すると考えられ,様々な健康影響が想定されている.環境省・気候変動影響評価報告書「健康分野」で取り上げられた「冬季温暖化」「暑熱」「感染症」「その他」の各項目について要点をまとめ,適応策について解説した.

    我が国では,気候変動に伴う健康リスクとして,熱ストレスによる死亡および熱中症発症リスクが特に大きく,適応策を講じる緊急性が高いと考えられる.今世紀半ばおよび今世紀末の暑熱による超過死亡数は,適切な適応策を行わなかった場合,温室効果ガス排出シナリオによらず,すべての県において 2 倍以上となると推定されている.またデング熱をはじめとする節足動物媒介性感染症の国内流行リスクが特に高まり,適応策を講じる緊急性が高いと考えられるほか,水系・食品媒介性感染症の発生に対しても影響があると考えられている.

    2018年(平成30年)気候変動適応法が制定され,今後気候変動による被害を回避,軽減するための適応策を社会全体で進めていくことが求められている.将来の健康影響シナリオを想定し,現状の保健医療体制で医療ニーズが充足され,健康水準を保持できるのか,不足しているリソースがないか,必要な施策は何かを地域レベルで積極的に特定していくことが必要である.また緩和策と健康増進を同時に進めるコベネフィットを追求していくことも推奨される.適応策の推進にあたっては,常にヒトの健康は優先的に考慮されるべきである.

  • 熱関連疾病・死亡
    本田 靖
    原稿種別: 総説
    2020 年 69 巻 5 号 p. 412-417
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    気候変動の直接的健康リスクとしては,わが国のような先進国の場合,熱関連死亡がもっとも重要である.熱関連死亡とは,日別の死亡リスクが最低となる気温(=至適気温)を基準として,それより高気温になった場合の増分として定義され,死因分類としては循環器疾患や呼吸器疾患が多く,熱中症の占める割合は 1 %に満たない.最近では,ある日の高気温の影響が翌日以降に及ぼすラグ効果も考慮に入れた累積効果を評価するようになっている.気温以外の気象要因として,湿度なども考えられるが,その影響は気温に比べて小さい.同程度の高気温であっても,リスクは夏期の前半に比べて後半で小さくなることも確かめられている.連続した高気温である熱波の影響は,おおむねそれぞれの高気温の超過死亡の合計であり,連続することによる追加の影響は小さい.脆弱集団としては,小児および高齢者が挙げられる.ただし,死亡数で評価した場合には高齢者への影響がはるかに大きい.

    適応策としては,適切なエアコンの使用と飲水につきるが,高齢化の進むわが国では,認知症,要介護の問題もあり,地域の実情に合わせた対応が必要である.更に,2019年末からパンデミックに発展したCOVID-19の影響により,適応策に新たな難題が加わった.

  • 小野塚 大介
    原稿種別: 総説
    2020 年 69 巻 5 号 p. 418-424
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    気候変動は,世界中の人々の健康にとって重大な脅威であり,公衆衛生上重要な課題の 1 つとして位置づけられている.気候変動による気温の変化や大気汚染の悪化により異常気象が発生し,新興・再興感染症の発生に係る地理的分布,季節性,流行規模への影響が国際的に懸念されている.

    気候変動は,多くの感染症の分布や発生に影響を与えている.気候変動の影響は地域によって異なり,西太平洋・アジア地域はその影響を受けやすいことが指摘されている.一方,気候変動による感染症の発生リスクは一律ではなく,様々な要因によって異なる可能性がある.

    気候変動による感染症への脆弱性については,地域の社会環境・経済要因や個人の社会経済・行動要因といった効果修飾因子が重要な役割を果たしている.気候変動適応策・緩和策の策定,感染症の監視体制の強化,公共施設でのエアコンの設置,医療保健サービスの充実,排水対策,防潮堤の建設,森林再生といった公衆衛生対策や公共施設等の設備整備の推進によって,気候変動による脆弱性が減少するとの報告がある.公衆衛生対策の効果については,疾病や地域によって異なる可能性があることに留意する必要がある.

    今後,人々の生活習慣や価値観が世代間でますます多様化し,高齢化とともに健康格差の拡大も懸念されている.気候変動による感染症の疾病負荷を軽減させるためには,気候変動適応策・緩和策の策定や公衆衛生対策の実施が最も有効である.今後も,より質の高い科学的根拠を積み重ねていくことを通じて,それぞれの地域や住民の特徴を踏まえた気候変動対策や公衆衛生対策の推進に貢献していくことが重要であることを示唆している.

  • 小坂 浩司, 秋葉 道宏
    原稿種別: 総説
    2020 年 69 巻 5 号 p. 425-433
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    水道システムは,気候変動によって水質,水量,水道施設に対して様々な影響を受ける可能性がある.水質への影響として,藻類の増殖による異臭味等の生物障害,消毒副生成物前駆物質濃度の上昇による消毒副生成物濃度の上昇,洪水による濁度の上昇,塩水遡上による原水への塩分の混入等が挙げられた.近年は,大雨や台風にともなう洪水によって,水道施設が大きな被害を受け,大規模な断水につながっている.水道システムは,インフラ・ライフラインであるため,断水によって,国民生活や事業活動も甚大な被害を受ける.減断水被害は,渇水によっても毎年のように発生している.これらの影響に対して,様々な適応策が検討されている.全般的な対策として,水道システムの危害の特定とそのリスク評価,脆弱性評価(洪水リスクマップ,渇水リスクマップ等)がある.水質の場合,適応策の具体的内容は水質項目によって異なるが,水源での管理や浄水場での対応が挙げられた.水害や渇水については,応急給水体制等のソフト面の対応と,施設の設置や更新等のハード面の対応が挙げられた.これら適応策は,実際に取り組みが行われているが,今後は,気候変動影響を考慮した水道事業に関する計画や水安全計画の作成も重要であると考えられた.また,気候変動影響の評価を行う上で,対象項目の観測の継続や強化,将来予測データの活用が望まれる.

  • 金 勳, 山田 裕巳, 阪東 美智子, 開原 典子
    原稿種別: 総説
    2020 年 69 巻 5 号 p. 434-443
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    建築は外部の擾乱や外敵から居住者の命と健康を守る砦であると共に,居住者の快適性を担保して健康で衛生的な環境と安楽な生活を保障しなければならない.昨今の地球温暖化と温暖化ガス濃度の上昇による気候変動,例えば極端な気温変化,豪雨豪雪,台風など自然からの脅威は建築に資源・エネルギーの節減と健康・衛生・快適性の向上といった相反する要素を両立させる困難さを求めている.

    本稿では,地球環境保全と省エネルギーを始め,スマートシティや建築物の高性能化,新しい空調技術,CO2濃度上昇と換気,省エネルギーに伴う建物運用の効率化と室内環境の悪化など,気候変動が建築物,室内環境,居住者に与える影響について概説した.

    建築分野における地球環境保全と省エネ対策は単に高効率と節減だけを目指すものではなく,居住者の快適性かつ衛生・健康的な環境を確保することが根幹となる.そのために建築・設備技術の開発と高効率化,運用方法の改善,利用者リテラシーの醸成など様々な試みが行われている.

  • 原 政之, 栗原 諒至, 井出 浩一, 嶋田 知英
    原稿種別: 総説
    2020 年 69 巻 5 号 p. 444-452
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    気象庁が1890年代から続けている地上気温観測が示す通り,日本の気温は上昇を続けている.気温の上昇は都市化だけでなく,地球温暖化の影響を大きく受けている.このような状況の中,日本国内では気候変動適応への取組が進んでいる.

    2015年に国の気候変動適応計画が策定され,2018年に国の気候変動適応法が施行されたことにより,地方自治体における適応計画の策定は着実に進んでいる.国の事業により地方自治体の適応計画策定支援が行われたこと、環境省による気候変動適応情報プラットフォームが立ち上がったこと、気候変動適応情報へのアクセスが容易になったことなども、適応計画を策定する地方自治体が増加している一因と考えられる。

    本論文では,日本の地方自治体における気候変動適応計画の現状を調査した結果について述べる.また,地方自治体における気候変動適応計画の一例として,埼玉県の暑熱環境分野に気候変動適応の進捗状況を述べる.

論文
  • 白熱電球と青色光の比較
    内海 卓哉, 石澤 正夫, 高畑 未樹, 八巻 通安, 佐藤 寿晃
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 5 号 p. 453-459
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本研究は,就寝前のブルーライトを主波長とする青色光照射が,睡眠障害を有さない若年男性の主観的睡眠感,注意力,作業効率に及ぼす影響を調査することである.

    方法:対象は,12人の睡眠障害を有さない若年男性(年齢:20-23歳)であった.対象者は就寝前の 1 時間,1白熱電球,2青色光の 2 条件で照射を受けた.照射を行った翌朝,主観的睡眠感と注意力,作業効率について測定を行った.主観的睡眠感はOSA睡眠調査票(MA版),注意力は精神運動ヴィジランス課題,作業効率はパーデューペグボードを用いた.

    結果:白熱電球照射後とブルーライト照射後の 2 条件間で主観的睡眠感に有意な差は認められなかった.作業効率は,ブルーライト照射後で白熱光照射後と比較し有意に低下した.また,ブルーライト照射後の注意力では10分間の測定時間の内,後半 5 分部分で反応時間が有意に延長した.

    結論:本研究の結果は,就寝前のブルーライト照射が翌日の注意力と作業効率を低下させる可能性があることを示唆する.

  • 森山 葉子, 森川 美絵, 中村 裕美, 白岩 健, 田宮 菜奈子, 高橋 秀人
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 5 号 p. 460-470
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:高齢者の健康や生活を効果的に支えるには,社会的ケアの評価が必須である.昨今,イギリスで開発された社会的ケア関連QOL(Social care-related quality of life; SCRQoL)を測定できるthe Adult Social Care Outcomes Toolkit(ASCOT)が世界的に用いられ始め,先般,我々はサービス利用者向けASCOT-SCT4(ASCOT four-level self-completion questionnaire)の日本語版を作成し,信頼性および妥当性を確認した.本研究の目的は,わが国において,ASCOT-SCT4を用いて測定したSCRQoLの結果,およびその関連要因を明らかにすることである.

    方法:対象者は,A自治体が2016年12月に実施した日本語版ASCOT-SCT4を含む介護保険事業計画策定のための在宅介護実態調査(配布数2,370,有効回収数1,141(有効回収率48.1%))に回答した要介護・要支援認定者であり,そのうち65歳以上,かつ調査時点で介護保険サービスを利用していた819人を分析対象とした. SCRQoLを従属変数とした重回帰分析 (モデル 1 :共変量が性別,年代,要介護度,主観的健康感,経済的ゆとり感,同居か独居か,外出頻度,誰かと共に食事をする頻度,モデル2:モデル 1 に介護サービス利用満足感を追加)を用いて探索した.

    結果:SCRQoLの平均値は0.58であった.重回帰分析によりSCRQoLと有意な関連のみられた要因を示すと,モデル 1 では,SCRQoLが高かったのは,性別では女性,主観的健康感はよくないに比してとてもよい,まあよい,経済的ゆとり感は苦しいに比してふつう,ゆとりあり,外出頻度ではほとんど外出しないに比して週 1 回,週 2 ~ 4 回,週 5 回以上,誰かと共に食事をする頻度はほとんどないに比して毎日,週に何度か,月に何度かであり,SCRQoLが低かったのは要介護度で要支援に比して要介護 1・2 ,要介護 3 - 5 であった.モデル 2 で有意にSCRQoLが高かったのは,主観的健康感はとてもよい,まあよい,経済的ゆとり感はゆとりあり,ふつう,外出頻度はほとんど外出しないに比して週 2 ~ 4 回,誰かと共に食事をする頻度は毎日,週に何度か,月に何度か,サービス利用満足感は, どちらともいえない・不満に比して,満足,どちらかというと満足であり,要介護 1・2 ,要介護 3 - 5 ではSCRQoLが有意に低かった.

    結論:日本語版ASCOT-SCT4により測定したSCRQoLは経済状況をどう感じているか,主観的健康感,介護保険サービスに満足しているかといった,主観的評価と強く関連していた.また外出や誰かと一緒の食事の頻度が関連しており,社会とのつながりを促進する支援が必要であると考えられた.

  • 山口 一郎, 浅見 真理, 寺田 宙, 志村 勉, 杉山 英男, 欅田 尚樹
    原稿種別: 総説
    2020 年 69 巻 5 号 p. 471-486
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2021/01/23
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    原子力災害は社会に対して広範なリスク管理を求める事態をもたらす.このリスク管理において混乱も生じた.このうち飲料水の安全は生活の根幹を支えるものであり,明確な説明が求められる.そこで,飲料水中の放射性物質に関する国内外の指標について根拠となる考え方の整理を試みた.緊急時及び平常時について,国内の各種指標と国外の指標(国際機関,欧州連合,米国)について検討を行った.東日本大震災時に発生した原子力発電所事故後に日本で用いられた指標は,国際的な考え方に基づき導入された.それぞれの指標値は,その性格や前提が異なり,値だけを比較することは適切ではなく,それぞれの指標の根拠を踏まえることが重要である.

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