保健医療科学
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最新号
日本の公衆衛生における最新のトピック2021
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集
  • 横山 徹爾
    原稿種別: Preface
    2021 年 70 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
  • 厚生労働科学研究費補助金を中心に
    武村 真治
    原稿種別: 総説
    2021 年 70 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,日本の健康関連研究開発を支える「厚生労働科学研究費補助金」の発展の経緯,現状と課題を概観し,今後の方向性を考察する.

    厚生労働科学研究費補助金は,国民の保健医療,福祉,生活衛生,労働安全衛生等に関し,行政施策の科学的な推進を確保し,技術水準の向上を図ることを目的として,1951年から実施されている.2014年の健康・医療戦略の制定,2015年の日本医療研究開発機構(AMED)の設立によって,これまでの厚生労働科学研究費補助金の研究は「政策研究」と「実用化研究」に分割された.厚生労働省が所管する政策研究では,各種政策立案,基準策定等のための基礎資料や科学的根拠を得るための研究,各種政策の推進,評価に関する研究,医療分野以外の各種政策に関係する技術開発に関する研究を実施し,AMEDが所管する実用化研究では,病因・病態の解明,革新的な診断・治療法の開発を実施している.

    厚生労働科学研究費補助金は,医療ICT・AI,国際保健,母子保健,がん,循環器疾患・糖尿病,難病,認知症,感染症,労働安全衛生,食品安全,レギュラトリーサイエンス,健康危機管理など,27の研究事業で構成され,2019年度は約89億円の予算で644の研究課題が実施された.各研究事業は関連する政策を担当する厚生労働省の課室によって所管され,各課室が政策立案・実施において把握した課題を解決するための研究を設定し,その成果を政策に反映させる,というMission-oriented Researchを推進している.また大臣官房厚生科学課は厚生労働科学研究費補助金の総合的企画・調整を実施し,研究課題の事前・中間・事後評価の評価基準の設定,公募要項の様式(目標,求められる成果,採択条件)の統一化など,制度の改善に取り組んでいる.

    国立保健医療科学院は「厚生労働科学研究成果データベース」の運営主体として,厚生労働科学研究費補助金の研究成果をウェブ上で公開している.また健康安全・危機管理対策総合研究事業,難治性疾患政策研究事業の研究費配分機関として,研究課題の評価や進捗管理を実施している.

    厚生労働科学研究費補助金はこれまで多くの研究成果を産出してきたが,今後はそれらの成果(アウトプット)によって国民の健康や福祉の水準(アウトカム)がどの程度改善したか,を評価する必要がある.

  • 児玉 知子
    原稿種別: 総説
    2021 年 70 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス

    日本は1961年に国民皆保険を達成した.我が国の医療人材は量的には十分なものになりつつあるが,現在はその偏在への対応や人材の質の向上が求められている.近年,災害などの健康危機やCOVID-19感染症をはじめとする新興感染症への対応における保健医療人材の役割が改めて注目されている.各国は,公衆衛生と医療提供システムの緊密なネットワークを構築するとともに,医療緊急時には通常の医療を維持しつつ,限られた人的資源を活用したデュアルトラック型の医療システムの構築を検討する必要がある.

  • 新HTA制度とC2Hの役割
    福田 敬, 白岩 健
    原稿種別: 総説
    2021 年 70 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス

    医療技術の進歩は医療費増加の一つの要因となっている.効率的な医療提供を推進するための一つの方策は,医療技術の費用対効果の評価を行い,その結果に基づき意思決定する方法である.一般に医療技術評価(HTA)と呼ばれる.日本ではHTA導入の議論が2010年頃にスタートし,約10年の議論を経て2019年に制度化された.

    新HTA制度では,まず製造販売業者がデータを提出する必要がある.提出されたデータについて国立保健医療科学院保健医療経済評価研究センターおよび学術グループがレビューを行う.この結果に基づき中央社会保険医療協議会(中医協)の費用対効果評価専門組織が分析の科学的妥当性を検討し,増分費用効果比(ICER)の段を確定する.

    分析対象となるのは中医協において新規に保険収載される医薬品および医療機器で,一定の条件を満たすものが選定される.分析結果は保険償還の可否ではなく,償還価格の調整に用いられる.ICERが500万円/QALYを超えるものについて価格調整の対象となるが,希少疾患や小児特有の疾患および抗がん剤については750万円/QALYを超えるものが対象となる.

    このような費用対効果評価制度を実施するために,2018年に国立保健医療科学院に保健医療経済評価研究センター(C2H)が設置された.

  • 石川 みどり, 横山 徹爾, 曽根 智史
    原稿種別: 総説
    2021 年 70 巻 1 号 p. 28-44
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    日本の栄養政策における公衆衛生院・国立公衆衛生院・国立保健医療科学院の貢献の歴史的変遷について文献から解説した.次の 5 つの時代にわたる研修及び研究を追跡した.1第二次世界大戦前(1931〜1938年),2第二次世界大戦中(1939–1946年),3戦後復興期(1947~1960年),4高度経済成長・バブル期(1960~1989年),5バブル後・リーマンショック・新型コロナ感染症拡大期(1990~2020年).

    1)第二次世界大戦前(1931〜1938年):この時期の主な健康問題は,母子の栄養失調,結核であった. 1937年,戦前の保健所法が制定され,その任務に「栄養の改善に関する指導を行うべき」が定められた.1938年,厚生省(現在の厚生労働省)が創設された.公衆衛生技術者の養成訓練を担う公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院)が設立され,臨地訓練のために,都市保健館(後の東京都中央保健所),農村地区保健館(後の埼玉県所沢保健所)がつくられた.

    2)第二次世界大戦中(1939–1946年):公衆衛生院において栄養士への研修が実施され,講義・演習・保健所での臨地訓練によるカリキュラムが開発された.修了生は地方自治体において栄養改善活動を行った.戦争が激しくなり,郊外での臨地訓練が困難になった為,研修生を帰郷させ「家庭の食物消費状態の実際の 3 日間調査」を実施し,このときの調査方法と結果は,戦後,全国的に実施される「国民栄養調査」の資料となった.

    3)戦後復興期(1947~1960年):戦後,公衆衛生院は,公衆衛生技術者の養成訓練を第一義とし,国立公衆衛生院として研修及び研究を開始した.栄養学部が設立され栄養士の再教育が行われた.栄養士法が公布された.国立公衆衛生院では,都道府県「モデル保健所職員への研修」が行われた.修了生は各都道府県において全保健所に対し受講内容を伝達し,その後も中心となり,栄養対策の推進に重要な役割を果たした.栄養改善法が制定された後は,地区組織の育成を通した食生活の改善に焦点を合わせた研修と効果を検証する為の研究が行われた.

    4)高度経済成長・バブル期(1960~1989年):日本における疾病構造等が変化し始め,日本人の食生活は,いわゆる日本型から欧米型へと移行していった. 厚生省は,生活習慣病の予防の為に「国民健康づくり運動」を策定し,健康診断,市町村の保健センター機能を強化し,保健師・栄養士のマンパワーを確保した. 国立公衆衛生院の研修では,自治体と協力し,調査データを用いた健康課題の解明と取組提言を行う多職種での合同プログラム「合同臨地訓練」を開始した.また栄養士への研修の為に新たなカリキュラム開発の研究を行った結果,「公衆栄養研修」を開講した.この研修を通し公衆衛生における栄養領域は「公衆栄養」と呼ばれるようになった.

    5)バブル後・リーマンショック・新型コロナ感染症拡大期(1990~2020年):保健所法から地域保健法への改正が行われた.2001年,厚生省は労働省と統合され厚生労働省となった.2002年,国立公衆衛生院は,国立医療・病院管理研究所,国立感染症研究所口腔科学部と統合し「国立保健医療科学院(科学院)」が発足した.「健康日本 21」が策定され,栄養改善法にかわる健康増進法が制定された.日本の人口の高齢化による低栄養等の問題が発生し健康格差が確認された.そうした健康課題及び政策に伴い,科学院では 2 つの新たな研修,1「健康日本 21における自治体の栄養施策の推進,2「自治体の健康栄養調査の技術向上に関する研修」が行われ,研修ツールの開発に関する研究が進められた.2020年,新型コロナ感染症の感染拡大予防の為,リモートによる遠隔研修が実施された.

    まとめ:公衆衛生院・国立公衆衛生院・国立保健医療科学院における公衆衛生人材の育成は,自治体における現場ニーズに根差しており,「地域住民が主体となる保健システムを構築する研修内容の開発」が肝要である.効果的な研修方法の開発と実践の為には,研修と研究との両輪体制が有効であり,両輪体制の重要性を確認する仕組みづくりを模索してきた.今後も継続されるであろう.

  • 柿沼 倫弘, 森山 葉子, 小林 健一
    原稿種別: 総説
    2021 年 70 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス

    日本において,高齢者の住まいのあり方が課題となっている.これは,人口減少と少子高齢化,高齢の単身世帯の今後の増加,75歳以上の医療介護需要の増加が見込まれていることを背景にしている.

    日本には,介護老人福祉施設,介護型の有料老人ホーム,住宅型の有料老人ホーム,近年増加しているサービス付き高齢者向け住宅といった利用者の状態に応じた住宅がある.サービス付き高齢者向け住宅は,2011年の10月に始まった制度であるが,著しく増加してきているなかで質の評価の必要性が生じている.

    本稿では,サービス付き高齢者向け住宅について,居住環境,機能,供給と立地,サービスの質の向上と確保,サービスの利用の適切さ,今後の展望といった観点から整理を行なった.

    サービス付き高齢者向け住宅の有する機能について,質の評価が求められる.ストラクチャー,プロセス,アウトカムの視点があるが,どのような入居者にどのようなサービスが必要になって,何が得られれたのかを個人が紐付けされたデータベースを構築した上でアウトカム評価をすることが必要である.

  • 種田 憲一郎
    原稿種別: 総説
    2021 年 70 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス

    2018年 6 月に働き方改革関連法が成立した.これは労働基準法など 8 つの法律を改正するもので,2020年 4 月 1 日からは全職種に適用されているが,医師など少数の職種においては現在の長時間労働を考慮して猶予されている.厚生労働省の医師の働き方に関わる検討会においては,医師の長時間労働の背景には,医療機関における業務・組織のマネジメントの課題の他に,地域の医療提供体制における機能の分化と連携が不十分であるなど様々な課題が報告されている.検討会からは 3 つのタイプの医師の時間外労働規制が提案され,2024年までに適用される.

論文
  • 山口 一郎, 高橋 秀人
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 61-75
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    目的:食品のモニタリングデータを用いて東京電力福島第一原子力発電所事故後に実施された公衆衛生政策の効果を検証する.

    方法:2011年から2019年までの間での国民健康・栄養調査による食品の摂取量と各都道府県が毎年 6 月にサンプリングした食品中の放射性物質濃度のモニタリングデータを用いて,住民が経口摂取した放射性物質の量を求め,線量に換算した.また,1介入を行わない場合の全食品モニタリングデータを用いて算出した線量と2制限を適用した場合の線量の差異により公衆衛生政策の効果を検証した.

    結果:2011年 6 月の福島県の成人男性の預託実効線量の中央値は18.3μSv(規制あり)と推定された.食品の出荷制限の効果は,2011年の福島県では,中央値人口で42.2%であった.

    結論:食品の出荷制限による線量低減は,2011年 6 月でもっとも大きく福島県の人口の中央値で42.2%であり,公衆衛生上のリスク低減効果を示した.

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