目的:2020年 4 月にCOVID-19に関する緊急事態宣言で,外出の自粛が要請された.感染拡大後の体重増加が懸念されているが,日本における研究報告は乏しい.本研究はCOVID-19感染拡大後の外出自粛と体重増加の関連を検討した.
方法:横断的解析と縦断的解析を実施した.横断研究:2020年 8 月に全国の一般住民を対象に実施されたインターネット調査のデータを用いた.有効回答25,482名のうち20~64歳の18,116名を解析対象とした.外出自粛の情報は,「不要不急の外出・出張を控えたか」の自記式質問票で把握した.アウトカム変数である体重増加は,2020年 1 月以前と比べた最近 1 ヶ月での主観的な体重変化の質問に基づいて「増えた」「以前と変わらない・減った」に分類した.縦断研究:横断のデータに加えて,2019年 2 月調査,2020年 2 月調査,2021年 2 月調査のデータを突合した.4,399名が 4 時点全ての調査に参加しており,このうち外れ値を除いた4,337名を解析対象とした.アウトカム変数は,1)2020年 2 月→2021年 2 月で「>0kg」の体重変化,2)2020年 2 月→2021年 2 月で「>0kg」の体重変化かつ主観的な体重変化で「増えた」を「体重増加あり」の 2 種類を用いた.解析にはロジスティック回帰分析を用い,性,年齢,職業,入院の有無,朝食欠食,間食を調整した(なお「縦断研究」ではベースライン前 1 年間の体重変化も調整した).加えて,間食の間接効果をSobel testで検討した.
結果:横断研究:18,116名のうち5,168名(28.5%)で体重が増えたと回答した.外出を「まったく控えなかった」を基準とした体重増加の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は「ほとんど控えなかった」で1.46 (1.16-1.83),「時々控えた」で1.87 (1.54-2.27),「いつも控えた」で2.07 (1.71-2.51)と有意に高かった(傾向性のp値<0.001).間食は,外出自粛と体重増加の関連において有意な間接効果を認めた(p<0.001).縦断研究1:外出自粛と「>0kg」の体重変化に有意な関連はみられなかった(傾向性のp値=0.401).縦断研究2:横断と同様に,外出自粛と「>0kg」の体重変化かつ「体重増加あり」で有意な関連(傾向性のp値=0.003)がみられた.また,間食の有意な間接効果(p<0.001)を認めた.
結論:COVID-19感染拡大後の外出自粛が体重増加に影響した可能性,そして,それには間食が寄与した可能性が示された.
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