自然言語処理
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6 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 田窪 行則, 郡司 隆男
    1999 年 6 巻 4 号 p. 1-2
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
  • 「主題」 (Topic) が果たす役割を中心に
    横川 博一
    1999 年 6 巻 4 号 p. 3-22
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    日本語の照応関係理解のプロセスにおいて, どのようなストラテジーが関与しているのかについて, 言語心理学的実験を通して考察した. 実験1では, 自己のペースによる読解課題およびプローブ認識課題を用いて, 日本語の主語を表す「が」と主題を表す「は」の違いが照応関係理解に影響を及ぼすかどうかについて調査した. その結果, 「は」でマークされた名詞句で読解時間がかかる傾向が見られ, それを照応表現の指示対象として優先する傾向が見られた. また, プローブ認識課題では, 主題を表す「は」の影響が見られ, 目的語名詞句よりも主語名詞句をプローブ語として呈示した場合の方が判断時間が速い傾向が見られた. このように, 主題の影響が見られたことから, 「主題割当方略」とでも言うべきストラテジーが利用されていることが分かった.実験2では, 英語の実験に基づいて提案されている「主語割当方略」や「平行機能方略」と呼ばれるストラテジーが日本語の照応理解にも利用されるのかどうかについて調査した結果, parallelな構造をもつ文では, 平行機能方略が用いられることが分かった. さらに実験3では, これら2つのストラテジーおよびその他のストラテジーと主題割当方略との相互関係について調査を行った. その結果, 日本語の照応関係理解のプロセスでは, これらのストラテジー競合する場合, 主題割当方略が優先的に利用されることが分かった. このことは, 日本語が「主題卓立言語」としての性質を持っていることを示している.
  • 荒木 雅弘, 堂下 修司
    1999 年 6 巻 4 号 p. 23-44
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿では, 音声を用いて人間と機械が対話をする際の対話過程を, 認知プロセスとしてとらえたモデルを提案する. 対話システムをインタラクティブに動作させるためには, 発話理解から応答生成までを段階的に管理する発話理解・生成機構と, 発話列をセグメント化し, 焦点および意図と関連付けて構造的にとらえる対話管理機構とが必要である. さらに, 入力に音声を用いた音声対話システムでは, 音声の誤認識によるエラーを扱う機構を組み込む必要がある. 本稿で提案するモデルは, 発話理解・生成機構における各段階での処理を具体化し, それらと対話管理機構とのやりとりを規定することによる統合的な認知プロセスモデルとなっている. それらの処理の中に, 音声の誤認識によって生じ得るエラーを具体的に記述し, その対処法を網羅的に記述している. このモデルを実装することによって, ある程度のエラーにも対処できる協調的な音声対話システムの実現が期待できる.
  • 東 弘子
    1999 年 6 巻 4 号 p. 45-65
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿は, 「まあ, 嬉しい!」のような発話者が感情を思わず口にした「感情表出文」とはどのようなものか, 感情主の制約のあり方と, 統語的特徴から分析したものである. 感情述語の人称制約は2種類のムードに関わる問題である. 一つは, 「述べ立てのムード」, もう一つは「感情表出のムード」である. 前者のムードを持つ「述べ立て文」に生じる人称制約は語用論的なものであり, 一人称感情主の場合が多いが, 条件が整えば他の人称も可能である. 一方, 感情主が一人称以外ではあり得ないような人称制約を持つタイプの文がある. これを, 感情表出のムードを持つ「感情表出文」と定義した.
    その上で, 感情表出文の統語的特徴について検討した結果, 感情表出文は, 述語が要求する感情主や感情の対象といった意味役割を統語的に分析的な方法では言語化しない, すなわち述語一語文であるという事実を明らかにした.
    一語文では, 言語文脈上に意味役割の値を参照することができないため, 発話現場に依存して決めるしか方法がなく, 感情主は発話現場の発話者, 感情の対象は発話時の現場のできごとに自動的に決まる. よって, 一語文は感情表出文のムードに適合する. 一方, 意味役割を言語化した文は, 意味役割を発話現場に依存する必要がないため, 発話現場に拘束されない. こうしたことから, 感情表出文は述語一語文でなければならないと結論づけた.
  • 金水 敏
    1999 年 6 巻 4 号 p. 67-91
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    日本語の指示詞の3系列(コソア)は, いずれも直示用法とともに非直示用法を持つ. 本稿では「直示」の本質を「談話に先立って話し手がその存在を認識している対象を, 話し手が直接指し示すこと」ととらえ, ア系列およびコ系列では直示・非直示用法にわたってこの直示の本質が認められるのに対し, ソ系列はそうではないことを示す. 本稿では, ア系列の非直示用法は「記憶指示」, すなわち話し手の出来事記憶内の要素を指し示すものであり, コ系列の非直示用法は「談話主題指示」, すなわち先行文脈の内容を中心的に代表する要素または概念を指し示すものと考える.「記憶指示」も「談話主題指示」も上記の直示の本質を備えている上に, ア系列およびコ系列の狭義直示用法において特徴的な話し手からの遠近の対立も備えているという点は, ア系列およびコ系列の非直示用法がともに直示用法の拡張であることを示唆している. さらにさまざまなソ系列の非直示用法を検討した上で, ソはコ・アとは異なって, 本質的に直示の性格が認められないことを論じる. 非直示用法のソ系列は話し手が談話に先立って存在を認めている要素を直接指すためには用いられず, 主に言語的な表現によって談話に導入された要素を指し示すためた用いられる.またソが, 「直示」によっては表現できない, 分配的解釈や, いわゆる代行用法等の用法を持つことも, ソがアやコと違って非「直示」的であるという主張と合致する.
  • Norihiro Ogata
    1999 年 6 巻 4 号 p. 93-115
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    This paper shows that there is a direct connection between dialogues and belief sharing. This connection is shown by proving a correspondence between observational equivalence between dialogues and epistemic bisimulation between Hyper-Discourse Representation Structures (Hyper-DRS) constructed from dialogues. An observational equivalence between dialogues is defined by a kind of similarity of resulting shared beliefs of the dialogues. The theory of Hyper-DRSs is defined by extending Kamp's Discourse Representation Theory (Kamp and Reyle 1993), a formal semantics of discourse or a dynamic semantics, which is exploiting the theory of hypersets (Aczel 1987;Barwise and Moss 1996) in order to solve the problem of the definition, formation and revision of circular objects like shared beliefs.
  • 矢野 博之, 伊藤 昭
    1999 年 6 巻 4 号 p. 117-137
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    我々が日常行っているおしゃべりのように明確な目標の定まっていない対話では, 話者は事前に対話戦略を立てることができない. そのような対話では話者は, その場で断片的に思い付いたことを発話し (即興性), 相互に触発されて新しい考えが浮き上がり (創造性), 全体で一つの対話を作っていく. 我々は, 即興性と創造性を備えた対話を創発的な対話と呼び, このような対話を収録し, 対話コーパスとして整備することを考えた. 対話の収録には, 解き方や正解かどうかの判定が明確になっていない課題を二人で協調して解く課題を用い, 「画像と音声を用いた対話環境」と「音声だけの対話環境」の2つの条件で実験を行った. 収録した対話には, 相手の立場を尊重し互いに良い関係を作っていくことを目的とした共話現象や, さまざまな同意表現の使われ方が観察され, これまでのような目的指向対話には見られない特徴のある対話コーパスが得られた.
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