大脳基底核の損傷によって運動障害が生じることから,同領域が運動制御に重要な役割を果たすことは古くから知られてきた.1990年代には,直接路と間接路の活動バランスによって運動促進・抑制が決まるとする「発火頻度モデル」が提唱され,長らく支持されてきた.しかし近年,神経活動計測や分子遺伝学的操作の発展によって,発火頻度モデルでは説明できない現象が数多く報告されている.
こうした背景から,大脳基底核は単に発火頻度の増減によって運動を制御するのではなく,神経発火の時間構造や変動などの発火パターンを通じて運動制御に関与しているという見方が注目されている.一方で,大脳基底核が強化学習に関与することは広く受け入れられており,とりわけ小鳥のさえずりの学習・維持は,強化学習モデルで極めてよく説明できる.
本稿ではまず,小鳥のさえずりを例に挙げて,大脳基底核がどのように運動の変動を生成し,強化学習における探索を支えているかを概説する.次に,小鳥のさえずりの視点から発火頻度モデルを批判的に検証し,最後に筆者らの研究を紹介する.哺乳類における大脳皮質基底核視床回路において,大脳基底核が変動を導入することで運動制御を維持する役割を提案したい.
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