日本神経回路学会誌
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最新号
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巻頭言
解説
  • 馬場 美香, 西尾 亜希子, 小松 英彦
    2026 年33 巻1 号 p. 3-13
    発行日: 2026/03/05
    公開日: 2026/04/05
    ジャーナル フリー

    我々が生活するうえで欠かせない物体の「質感」を認知する機能は,近年その脳内神経基盤が 明らかになりつつある.我々はマカクザルにおいて,物体の光沢情報処理に関わる皮質領域の 神経活動と光沢知覚との間の因果関係を検証するための実験を行った.その結果,サル下側頭皮質中央部の光沢選択性神経細胞の活動を人為的に操作すると,サルの光沢判断行動に 影響があらわれることを見出した.本解説ではこの実験を中心に,物体の光沢に関わる 情報がどのように知覚され,脳内でどのような神経ネットワークによって処理されるかについての 考察を行う.

  • 嶋岡 大輔
    2026 年33 巻1 号 p. 14-24
    発行日: 2026/03/05
    公開日: 2026/04/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,神経系を個々の構成要素へと分解して理解するのではなく,要素間の相互作用を含む 「総体としての神経機能特性」のメカニズムを明らかにしようとするシステム神経科学について,主要なアプローチの利点と限界を,筆者の視点から概説する.まず,計測と解釈を中心とした 伝統的アプローチがもたらした成果と残された課題を整理する.次に,この課題を克服するために 過去15年あまり進展してきた大量計測・定量評価の手法を取り上げ,その一方でこれらの手法では 神経活動と機能との因果関係を原理的に同定しにくいという問題が残ることを指摘する.最後に,この因果性の問題に対処しうる新たな方向性として,神経活動を「再構成」することで 神経システムの動作原理を理解しようとするアプローチを議論する.この,いわば構成論的神経科学には大きく二つの戦略がある.すなわち,(1)既存の神経系を 人工物で置き換える試みと,(2)既存の神経系を操作することでその機能原理を明らかにする 試みである.本稿では,これら二つのアプローチの現状と可能性を検討する.

  • 長谷川 拓
    2026 年33 巻1 号 p. 25-32
    発行日: 2026/03/05
    公開日: 2026/04/05
    ジャーナル フリー

    大脳基底核の損傷によって運動障害が生じることから,同領域が運動制御に重要な役割を果たすことは古くから知られてきた.1990年代には,直接路と間接路の活動バランスによって運動促進・抑制が決まるとする「発火頻度モデル」が提唱され,長らく支持されてきた.しかし近年,神経活動計測や分子遺伝学的操作の発展によって,発火頻度モデルでは説明できない現象が数多く報告されている.

    こうした背景から,大脳基底核は単に発火頻度の増減によって運動を制御するのではなく,神経発火の時間構造や変動などの発火パターンを通じて運動制御に関与しているという見方が注目されている.一方で,大脳基底核が強化学習に関与することは広く受け入れられており,とりわけ小鳥のさえずりの学習・維持は,強化学習モデルで極めてよく説明できる.

    本稿ではまず,小鳥のさえずりを例に挙げて,大脳基底核がどのように運動の変動を生成し,強化学習における探索を支えているかを概説する.次に,小鳥のさえずりの視点から発火頻度モデルを批判的に検証し,最後に筆者らの研究を紹介する.哺乳類における大脳皮質基底核視床回路において,大脳基底核が変動を導入することで運動制御を維持する役割を提案したい.

  • 二宮 太平
    2026 年33 巻1 号 p. 33-41
    発行日: 2026/03/05
    公開日: 2026/04/05
    ジャーナル フリー

    複雑かつ精緻な神経回路を基盤とする脳機能の解析にとって,特定の神経細胞や神経回路の選択的操作を可能にする遺伝子導入技術は強力なツールである.現在,神経活動操作の主要な手法として,化学遺伝学的手法と光遺伝学的手法が広く用いられており,それぞれ異なる特性と利点を持つ.これらの技術は今後もシステム神経科学研究にとって重要な位置を占めることは間違いないが,高次認知機能研究などに重要な非ヒト霊長類への適用は遅れている.本稿では,マカクザルでの実験に興味はあるが経験はない,というシステム神経科学分野の研究者に向けて,ウイルスベクターを用いた神経路操作実験について紹介する.まず,筆者がこれまで使用してきた化学遺伝学的手法を中心に神経路操作技術について概観する.その後,筆者の研究テーマである社会的認知機能を対象とした,統御下における課題遂行時の実験と,自由行動環境下での実験の具体例を紹介する.

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