看護理工学会誌
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4 巻, 2 号
看護理工学会誌
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追悼
巻頭言
原著
  • 柿原 奈保子
    2017 年 4 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 2017/07/25
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    表皮は,加齢に伴い水分含有量が減少し乾燥傾向になる.また,創傷に対しても修復機能が低下してくる.一方,実験動物での皮膚の加齢変化を伴った場合の創傷からの治癒過程に関する研究は少ない.本研究では向老期における熱傷受傷初期の治癒過程に着目して局所療法に用いる洗浄剤による違いを検討した.今回,①市販アルカリ石けん,②市販弱酸性洗浄剤,③コールドプロセス製法石けん(100%オリーブオイル)洗浄ケアにおける水分含有率を比較検討した.5回洗浄処置では,水分含有率は対象群4.77%,① 6.90%,② 5.79%,③ 7.34%であり,統計学的に有意に③が高値であった(p<0.05).③では,ほかのケアと比較して,炎症性壊死組織や痂皮形成が少なく,表皮再生や創部の良好な外観を保持する傾向がみられた.以上の結果から,コールドプロセス製法石けん洗浄が保湿力の維持や皮膚の創傷治癒に有効であり,向老期の乾燥皮膚の創傷治癒にも好影響を与えることが示唆された.

  • 工藤 憧子, 巻野 雄介
    2017 年 4 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2017/07/25
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    末梢静脈カテーテル留置は,看護師が行う技術のなかで最も侵襲が大きく難易度が高い医療行為の1つであり,患者の苦痛や合併症を最小限にするために1回の穿刺でカテーテルを留置させることが望ましい.今回,標的となった静脈血管の特徴から静脈穿刺の不成功にかかわる要因を検証した.看護師が標的とした皮静脈の駆血後の深さ,断面積,可視性,可動性,触知の有無を調査し,看護師に穿刺の難易度を0(やさしい)から10(むずかしい)の11 段階で評価してもらった.調査した末梢静脈穿刺は65 件で,成功率は69.2%であった.分析の結果,末梢静脈穿刺が不成功となる要因は,静脈血管が深い,細い,可視性がないであった.穿刺の難易度は,可視性がないあるいは触知できない場合に高く評価され,不成功群は有意に難易度が高かった.目視できない,また細い静脈血管に対しては可視化させる,静脈血管を拡張させるといった介入が有効である可能性が示唆された.

  • 大津 良司, 伊関 洋, 正宗 賢
    2017 年 4 巻 2 号 p. 105-115
    発行日: 2017/07/25
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    患者のベッドからの転落事故は頻度と重篤が高い重大な課題である.各院では各種ベッドセンサを設置しているが,偽陽性や偽陰性が多く信頼性が低い.先行研究は瞬時の行動検出の精度向上研究に止まっており転落防止の根本的対策ではない.われわれは,バイタルセンサ同様に常時患者の行動変化を測定し可視化,定量化することで看護師が患者行動を理解し必要なときに介入できるようになり,患者の危険な行動を減少させ結果転落を減少させると考えた.そこで非接触・非侵襲の患者の位置,動き,動きの方向を三次元の立体で測定できるシステムを開発し,臨床で患者行動を測定した.分析の結果,ベッド上の患者の転落にいたる行動の変化を抽出し,可視化,定量化できた.また,急性期の患者の行動が入院後数週間でどのように変化するかを定量化した.患者行動の可視化および定量化により,日常のケアや入院時の看護計画評価およびその後の看護計画策定へ有用であると考える.

  • 玉井 奈緒, 峰松 健夫, 津國 早苗, 麻生 くみ, 東村 志保, 仲上 豪二朗, 真田 弘美
    2017 年 4 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 2017/07/25
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    皮膚バリア機能の代表的な評価方法に経皮水分蒸散量(TEWL)があげられる.しかし,臨床の場において安定したTEWL の値を得ることはむずかしい.本研究では,皮膚バリア機能の新たな評価方法として,スキンブロッティングによるアルブミン検出法を評価するために,動物と人におけるTEWL とスキンブロッティングによるアルブミン検出強度の相関を分析した.結果として,マウスの背部皮膚ならびに人の前腕皮膚のアルブミン検出強度はTEWL と有意に相関していた(マウス;r=0.56,p=0.02,人;r=0.73,p<0.01).以上より,スキンブロッティングによるアルブミン検出強度はTEWL の代替としての皮膚バリア機能評価として非侵襲・安定的な方法といえる.

  • 水尻 雄貴, 鈴木 裕一, 田崎 良佑, 三好 孝典, 北川 秀夫, 寺嶋 一彦
    2017 年 4 巻 2 号 p. 121-132
    発行日: 2017/07/25
    公開日: 2017/07/31
    ジャーナル フリー

    高齢化社会のなか,歩行障害をもつ高齢者が増加している.寝たきり予防や歩行機能回復のため,早期リハビリテーションが重要である.体重の一部を免荷するBWSTT(Body-Weight Supported Treadmill Training)は早期歩行訓練として有効な方法である.BWSTT の有効性に注目し,われわれは新型の免荷歩行訓練器NILTWAMOR を開発した.NILTWAMOR は,全方向移動機構と左右独立免荷が可能な体重免荷装置を有している.本稿では,効果的な歩行訓練を支援する2つのシステムについて提案する.第一に全方向歩行追従制御システムについての提案で,利用者の重心位置から利用者の意図する進行方向を推定し,利用者に対して歩行訓練器が全方向に追従する.第二に床反力一定制御システムについての提案で,利用者の姿勢から重心の偏心度合いを推定し,動的に免荷量を制御することで支持脚の床反力を一定に保持する.両システムについて健常者およびリハビリ患者を対象とした実機実験を実施し,提案システムの有効性を検証した.

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