看護理工学会誌
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5 巻, 2 号
看護理工学会誌
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巻頭言
原著
  • 巻野 雄介, 國武 美希
    2018 年 5 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
     わが国に超音波ガイドを用いた末梢静脈穿刺法を導入するため, プローブ固定装置を開発し, 成功率と主観的難易度を検証した. 看護学生48名を対象者とし, 16名ずつA群:通常の末梢静脈穿刺, B群:超音波ガイド下末梢静脈穿刺, C群:プローブ固定装置を用いた超音波ガイド下末梢静脈穿刺の3群に分けた. 対象者すべて通常の末梢静脈穿刺の実技練習を行い, B群は超音波ガイドの方法について, C群はそれに加えてプローブ固定装置の使用方法の説明を受けたあとに, 見えない静脈をもつ前腕モデルに対して各群の方法で穿刺を行った. その結果, 3回までに成功した者の割合は, A群56%, B群は75%, C群100%で, A群とC群に有意差があった. また穿刺の主観的難易度は, A群にくらべてB群とC群は有意に低く評価されていた. プローブ固定装置を用いた超音波ガイドにより目視困難な血管に対する末梢静脈穿刺が容易かつ確実となる可能性が示唆された.
  • 前田 宏行, 正源寺 美穂, 渡辺 哲陽
    2018 年 5 巻 2 号 p. 110-117
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
     本研究では, 腰部で計測された加速度の変化量について調べることで, 多重課題が歩容バランスに与える影響を評価した. 若年健常者の腰部にIMUセンサを装着し, 通常歩行と複数の課題を与えた多重課題条件下歩行の下での腰部加速度を計測した. カルマンフィルタを用いて基準座標系に対するセンサ座標系への姿勢を計算することで歩行時の基準座標系における腰部の加速度を算出した. さらに, 通常歩行時を基準とした場合の多重課題条件下での各軸の加速度振幅の増減率を算出した. その結果, 聴覚課題, 聴覚課題と計算課題の組み合わせが歩行バランスに及ぼす影響が大きいことが示唆された. また, 歩行バランスを維持するために発生する加速度のおもな方向は進行方向に対し左右方向であることが示唆された. さらに, 1つのIMUセンサのみを使用するという簡易なシステムで歩容バランスを評価できる可能性が示唆された.
  • 苗村 潔
    2018 年 5 巻 2 号 p. 118-126
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
     硬膜外麻酔のために穿刺する針の先端が鈍なため, 針貫通までに皮膚が伸展変形して, 痛みを伴う. 本研究は痛みの小さい針開発に向けて, 針による皮膚貫通前に皮膚内に生じ, 可視化が困難な痛覚刺激に関係するひずみの針挿入方向微分を有限要素解析により示して, 痛みの強さに関係する因子を定量的に比較する一方法を提示することを目的とした. 硬膜外穿刺シミュレータの模擬皮膚に対する穿刺実験と, シミュレーションモデルによる有限要素解析を行った. 0.8mm/sの速度で穿刺実験を行い, 穿刺反力を計測し, 模擬皮膚の変形画像を撮影した. 有限要素解析にはFemtet®を用い, 0.5mmの大きさで要素分割して, 針先端再現モデルに実験と同じ変位を入力し, 反力, 伸展変形量, ひずみを計算した. その結果, 針を模擬表皮へ0.5s間, 0.4mm分挿入した初期の反力は実験値との誤差が3.6%, 模擬皮膚とシミュレーションモデルの伸展変形量の誤差は0.08mmで有限要素解析が実験を再現できていると考えられた. また, 皮膚表面と内側に0.5mmの位置での圧縮ひずみの針挿入方向微分の絶対値の最大値が, 硬膜外穿刺針を0.8mm分, 挿入したときに0.49/mm, 1.2mm分挿入した時に0.54/mmと求められた. 同じ条件下で, 針のかわりにゴム硬度計の測定子について求めた圧縮ひずみの針挿入方向微分の絶対値の最大値とくらべて1.5倍ないし1.1倍大きかった. よって, 痛みの違いを被験者の感覚だけによらずに比較できることが示唆された.
実践報告
  • 内藤 紀代子, 二宮 早苗, 岡山 久代, 遠藤 善裕, 古川 洋子, 森川 茂廣
    2018 年 5 巻 2 号 p. 127-135
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
     本研究では, 骨盤底筋体操の指導に際し, 磁気共鳴画像を用いて視覚的に骨盤内臓器の動きをイメージできるように作成した指導用動画の利用を試みた. 20~40歳の女性8名に対し, 指導用動画の視認性と有用性についてインタビューを行い, 質的に分析した. また同対象者に対し, 指導用動画を用いた骨盤底筋体操の指導前後と, 指導用動画を用いて3ヵ月間骨盤底筋体操を実施したあとの骨盤底筋群の筋力を評価した. 結果, 画像を理解するためには説明が必要であること, 骨盤内臓器を動かすというイメージはできるが正しく体操ができているかの確認が必要であることが示唆された. また, 指導用動画を用いた骨盤底筋体操の指導後には骨盤底筋群の最大収縮力と収縮持続時間が有意に上昇し, 3ヵ月間の実施後には骨盤底筋群のコントロール力を示す総合スコアが上昇した. 磁気共鳴画像を用いた指導用動画は骨盤底筋体操の指導に有用である可能性が示唆された.
  • 土屋 紗由美, 松本 勝, 須釜 淳子
    2018 年 5 巻 2 号 p. 136-141
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー
     近年, 在宅介護の負担軽減や患者の睡眠を妨げずに褥瘡好発部位の有効な除圧ができることから, スモールチェンジ(以下, SC)という体位変換方法が注目されている. これまで, SCを寝たきり高齢者に実施した場合の体圧変化は明らかにされていない. 本研究の目的は, 寝たきり高齢者においてSCシステム搭載型エアマットレス(以下, SCマット)を用いてSCを実施した際の体圧と接触面積の変化から, 寝たきり高齢者におけるSCマット使用の安全性および適用可能性を検討することである. 使用したSCマットは, 右上半身と左下半身, 左上半身と右下半身の2種の組合せでSCされる設計であった. SC実施前後に体圧分布, 各対象者における最高体圧部位の局所体圧値を測定した結果, 対象者4名中2名において最高体圧部位の体圧値が減少し, SCにより接触面積増加がみられたことから有効なSCが実施されていたことが示唆された. SCにより接触面積の増加がみられなかった対象者の特徴から, 円背・上下肢に拘縮のある者はSC用セルの動作が身体に適切に伝わらず, 除圧効果が得られない可能性が考えられた.
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