看護理工学会誌
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原著
  • 山内 麻里子, 鈴木 学爾, 高橋 一人, 関亦 正幸, 櫻井 健雄, 箱崎 みらん, 遠藤 実悠, 関亦 明子
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 1-13
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー
     口腔乾燥症はがん放射線治療の合併症であり,嚥下,発話,咀嚼の困難を引き起こし,患者の生活の質や治療継続に影響する.口腔乾燥症への対応は緩和的であり,根本的な解決法が必要である.本研究の目的は,放射線誘発性唾液腺損傷のマウスモデルを確立し,新規予防介入評価のための指標候補を得ることである.6mm の鉛板で唾液腺領域を1cm 開けてマウスの全身を覆い,0から30G y の単回放射線照射を行って,唾液流量,唾液腺の組織構造,およびp53 の発現を評価した.その結果,15 Gy 照射後3日から8週の間が,唾液流量低下の観察に適していることが分かった.さらに,15または30Gy の照射後8週目に,耳下腺に巨核細胞が観察された.本研究においては,6mm の鉛板を使用することで,マウスの致死を回避した照射方法を確立して,15Gy の照射強度が唾液腺障害を誘発するために必要十分であることが分かった.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →治療時から退院後も問題となるがん治療の有害事象の1つである口腔乾燥症の軽減を目指した研究です.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 退院後も長く残るがん治療後の口腔乾燥症をはじめ,味覚障害や口腔粘膜症,口腔関連の感染症を減少させ,QOLの向上に貢献します.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →放射線障害を軽減する薬剤の探索や,それをケアに用いる方法や素材に関する技術が必要になります.
  • 山下 哲平, 佐々木 新介
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 14-20
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー
     目的:用手的な振動を用いることの効果を高齢者の自律神経系や主観に焦点を当てて検証した.方法:高齢者施設の65歳以上の入居者15名を対象とした.ランダム化クロスオーバー試験にて介入順序の異なるA群およびB群に無作為に割り付け,用手的な振動を介入条件,触れるのみ(振動は加えない)を対照条件とし,それぞれの条件下の効果を比較した.腹臥位となり上半身・下半身計8ヵ所に合計5分間実施した.自律神経の指標として心拍変動解析によるnatural logarithm(In)high-frequency(HF), ln(low-frequency(LF)/HF)を実施前・実施中・実施後に測定し,主観的指標としてvisual analog scale(VAS)で眠気・疲労・痛みを実施前後で評価した.結果:用手的な振動を実施中にlnHF が有意に増加した(p=.021).またVAS 眠気スコアでは,実施後の介入条件と対照条件との比較において有意差を認めた(p=.041).結論:用手的な振動により副交感神経系の活性化や眠気に影響する可能性が示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →自律神経を指標として機器を用いた振動の効果は報告されているが,用手的振動の効果は明らかにされていないため検証を行った.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 安全かつ簡便に実施できるケアとして,ベッドサイドや在宅での活用が期待される.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →安全かつ効果的な振動刺激を再現する技術や,継続したケアとして応用できる仕組みの開発が望まれる.
  • 山下 哲平, 佐々木 新介
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 21-30
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー
     目的:本研究は,人が人に触れるという行為と機器による低周波振動刺激の併用が,自律神経指標および主観的快適感に及ぼす影響を比較検討することを目的とした.方法:健常成人を対象に,触れない(無刺激),触れるのみ,触れる+振動ありの3条件について,ランダム化クロスオーバー試験を実施した.生理的指標として心拍変動,皮膚電位,呼吸を,主観的指標として快適・覚醒度をvisual analog scale(VAS)で測定した.線形混合効果モデルとボンフェローニ検定を用いて分析し,有意水準を5%未満とした.結果:触れるのみの条件で副交感神経活動を示すstandard deviation 1(SD1)が有意に上昇し,振動併用条件では交感神経の指標standard deviation 2(SD2)/SD1 が低下するとともに,VAS 快適度スコアが有意に低下(スコアが低いほど快適)し,触れるのみの条件と比較しても有意な改善がみられた.結論:触れるケアと低周波振動刺激の併用は副交感神経活動を優位にし,心理的リラクセーションを促進する可能性が示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →触れるというケアと機器による振動刺激の併用による効果を科学的に検証する必要があると考え,本研究を実施した.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 本研究により,薬物を使用しないリラクセーション手段として,臨床に応用可能な新たな看護アプローチの可能性を示した.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →対象に最適化された周波数・強度の自動調整,プロトコル標準化と小型・簡便化により,改良機器の臨床実装を進める.
  • 髙畠 孝児
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 31-43
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
     慢性腎疾患に関連する血管石灰化には,血管平滑筋細胞(VSMCs)が骨芽細胞様へと表現型を変化させることが関与していると考えられている.本研究では,天然由来のポリメトキシフラボノイドであるノビレチンが,高リン酸条件下におけるVSMCs に及ぼす影響を検討した.骨形成マーカーであるRunx2 およびOsteocalcin の発現を,リアルタイムpolymerase chain reaction およびWestern blot により解析した.ノビレチン処理群では,両マーカーのタンパク質発現に減少傾向が認められた.これらの結果から,ノビレチンはVSMCs の骨芽細胞様分化に関連する分子レベルの変化に影響を及ぼす可能性が示唆された.石灰化そのものの抑制を直接示す結果は得られなかったが,関連する分子応答に変化を与える可能性が示された.今後は,詳細な作用機序の解明や,機能性食品としての応用可能性の検討が求められる.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
    →透析患者に高頻度で見られる動脈硬化,特に血管石灰化の抑制方法が未確立であること.

    研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →地元食材を活用した動脈硬化抑制の可能性を地域創生の視点から考えたこと.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 食習慣改善を基盤とした,予防的看護支援への応用に貢献できる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →研究成果を日常の食習慣に応用し,特定保健用食品などへの展開を可能にする技術.
  • 坂本 和大, 峰松 健夫, 大貝 和裕, 前田 明, 禰屋 光男
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 44-51
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
     本研究では,スキンブロッティング法(SB 法)によるクレアチンキナーゼ(CK)測定が,運動誘発性筋損傷(EIMD)の局所評価に有用かを検討した.運動習慣のある成人男性)名を対象に,非利き腕の肘屈筋群に高強度の等速性エキセントリック運動を実施し,最大随意筋力,血清CK 活性およびSB 法によるCK 値と,主観的な痛みの指標として遅発性筋肉痛(DOMS)を介入前および運動実施の1~3日後に評価した.SB 法におけるCK 値は介入腕で有意に上昇し(p<0.001),血清CK よりも早期に反応が見られた.SB 法と血清CK との間に有意な相関はなかったが,介入腕のSB 法CK とDOMS の間には運動翌日に有意な正の相関(r=0.740,p=0.02)を認めた.これらの結果より,SB 法は血清評価と異なる生理学的応答を反映し,EIMD の局所的かつ早期評価法として有用な非侵襲的アセスメント手段である可能性が示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →従来の骨格筋損傷のバイオマーカー評価は採血を用いるが,侵襲的で日々のモニタリングには適さないこと.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 非侵襲的に骨格筋由来のクレアチンキナーゼの動態を評価することで,運動によって生じる筋損傷だけでなく,サルコペニアの予防評価などに応用できる可能性がある.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →損傷マーカーのクレアチンキナーゼだけなく,筋の修復過程を表すバイオマーカーをスキンブロッティング法で評価できるようにすること.
  • 佐藤 充, 佐藤 正樹
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 52-63
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー
     目的:モーションセンサを用いた電子カルテの非接触操作システムを開発した.本システムは手袋を装着したまま操作できるため,時間的・物質的コストの削減が可能になる.方法:本研究で開発したシステムが情報取得に要する平均時間を,従来のマウスを用いた方法での平均所要時間と比較した.測定は情報取得の指示が開始された時点から開始し,情報取得が終了するまでの時間を測定した.参加者は13名(平均年齢35.4 ± 11.1 歳,女性11 名,男性2名)であった.結果:本システムを用いた場合,従来のマウスを用いた場合よりも情報取得に要する時間が約61%短くなった(p<0.05).さらに,非接触で操作でき,操作の度に手袋を付け替える必要がないため,手袋のコスト削減が可能となった.結論:看護業務における電子カルテの非接触操作システムを開発した.従来法にくらべ平均所要時間が短く,手袋のコスト削減が期待できる.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
    → 看護師が看護ケアや手術支援で電子カルテを操作する場合,手袋を付け替える必要があるが,手袋の着脱は業務の中断やコスト,衛生面に課題があった.この解決を目指したシステム開発をテーマとした.

    2.研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    → 手袋を外さずに電子カルテを操作できれば,看護業務の効率化とコスト削減につながると考えたこと.

    3.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 開発したシステムを雛形として,商品レベルまで改善した場合,手袋の交換をしなくても電子カルテの操作が可能となる.これにより,手袋の交換にかかる物質的コストや衛生リスクを低減する可能性がある.

    4.今後どのような技術が必要になるのか?
    →(1)既存の電子カルテシステム自体は変更せず,完全に分離したシステムとして運用可能にする.さらに操作性を向上させる必要がある.そのためには人間工学的な検討も必要となる.

    (2)操作者の疲労を調査し,より簡便に,誤入力が少ないシステム設計にする必要がある.
  • 幅 大二郎, 西出 彩香, 紺家 千津子, 北村 言, 真田 弘美, 松本 勝
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 64-74
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,振動器内蔵エアマットレスを用いた下腿部への局所低周波振動が健常成人の踵部および下腿部の血流に与える持続的増加効果を検証することを目的とした.【方法】健常成人12 名を対象に,1日間のウォッシュアウト期間を設けたランダム化クロスオーバーデザインにより,15 分間の振動介入と対照条件を比較した.血流,皮膚温,主観的評価(心地よさ,不快感,しびれ,痛み)をベースラインおよびフォローアップ時に測定した.血流はレーザー組織血液酸素モニターにより,踵部静脈叢および大伏在静脈に近接する皮膚表層で評価した.【結果】介入後,総ヘモグロビン値および酸素化ヘモグロビン値は有意に上昇し,踵部では105 分間,下腿部では75 分間持続した.皮膚温と主観的評価に有意差はなく,有害事象も認められなかった.【結論】下腿局所低周波振動は血流促進とその持続効果を示し,非侵襲的循環ケアとして有用性が示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →従来のマットレス下挿入型振動器では臨床的課題が多かったため,マットレスに内蔵する振動器を着想した.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    →難治性創傷の治癒促進だけでなく,非拘束な低周波振動ケアによる血流促進で深部静脈血栓症予防にも貢献できる可能性がある.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →マットレスによる褥瘡管理に積極的な振動ケアで「寝ることで褥瘡を早く治す」技術の開発.
  • 佐藤 郁美, 廣野 悠太, 甲斐 千遥, 吉田 皓文, 西山 博久, 児玉 直樹, 笠井 聡
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 75-83
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー
     胎児心拍数陣痛図(CTG)で記録される胎児心拍数(FHR)は胎児の健康状態を評価する際に重要だが,まれに母体の心拍数が記録されてしまうという問題がある.そこで本研究では,超音波ドプラ(DUS)信号から胎児由来の信号と胎児以外の信号を助産師と同程度の精度で分類するconvolutional neural network(CNN)モデルを構築し,その有効性の評価を目的とした.データは,単一施設の産婦人科病棟より425 症例のDUS 信号とCTG を収集した.本研究には助産師がラベル付けした526 データの胎児由来の信号と114 データの胎児以外の信号を使用した.1 D-CNN モデルを開発し,分類精度は曲線下面積(AUC)で評価した.結果,AUC は0.928 を達成した.また,1 D-CNN の分類精度は助産師と同程度の範囲内であることが示唆された.よって,本技術はCTG の装着およびCTG の判読支援ツールとしての応用が期待される.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →胎児心拍数陣痛図の判読や管理は,助産師の経験に依存しており助産師の負担が大きいためAI で支援したいと考えた.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    →開発したAI が信号源を自動分類することで,助産師の負担を軽減するとともに母児の安全管理にも貢献できる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →臨床応用へ向けて,リアルタイムで信号源を分類する技術の確立が必要である.
  • 内江 希, 中沢 愛実, 梅田 尚子, 四谷 淳子, 谷口 知希, 加藤 れな, 我妻 広明, 池田 和司
    原稿種別: 原著
    2025 年13 巻 p. 84-92
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,分娩第2期の児頭娩出時における熟練助産師と助産学生の視線を比較し,その特徴を明らかにすることである.熟練助産師5名,助産学生4名を対象に,分娩シミュレーションを用いた視線計測を実施し,児頭と産婦の顔への注視時間と注視回数を分析した.結果,熟練助産師は陣痛発作時の児頭への注視時間が,助産学生にくらべて有意に長く(p=0.0015),間歇時には産婦の顔への注視が増加する傾向がみられた.一方,助産学生は発作時と間歇時の視線配分に明確な差がなかった.また,熟練助産師は視線の移動が少なく,特定の場所への注視を持続する傾向がみられた.これらの結果から,熟練助産師は分娩進行に応じた適切な視線配分を行い,児頭の娩出を的確に判断していることが示唆された.本研究は,視線データを活用した助産師教育の可能性を示すものである.

    【キーメッセージ】

    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?

     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?

    →分娩介助技術は主観的評価が多いため,客観的評価法の確立を目指し視線計測に着目した.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?

    →本研究は分娩介助技術を客観的に評価し,学習支援を通じ助産教育の質的向上に貢献する.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?

    →熟練者の視線を教材化し,触覚や聴覚を含む多感覚統合型の教育支援技術の開発が必要となる.

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