看護理工学会誌
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最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
原著
  • 髙橋 遼, 窪田 聡, 古舘 卓也, 遠藤 豊
    原稿種別: 原著
    2023 年 11 巻 p. 1-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/29
    ジャーナル フリー
     本研究は,頸部の姿勢の違いが口腔期と咽頭期の嚥下動態に及ぼす影響を,臨床応用が可能な非侵襲的方法を用いて明らかにすることを目的とした.健常若年者22名を対象に,頸部中間位,屈曲位,左右の側屈位の4通りの姿勢について嚥下動態を計測した.8mL の常温水を嚥下し,舌骨上筋群と口輪筋の筋活動を表面筋電図で記録した.口腔期に要した時間や咽頭期の指標となる潜時,舌骨上筋群の活動電位,嚥下困難感を抽出した.結果より,屈曲位は咽頭期に嚥下関連筋の活動を小さく抑えられる一方で,口腔期には,水を咽頭へ送り込むことに時間を要することが示唆された.また,口腔期の指標として,筋電図を用い,口輪筋の活動開始から舌骨上筋群の活動開始までの時間を分析することの有用性が示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →摂食嚥下場面において,姿勢が修正されないまま,食事をしている場面に遭遇することがあり,頸部姿勢の崩れが嚥下動態に与える影響をテーマとした.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 医療機関以外の環境下でも,非侵襲的な方法を用いて,口腔期・咽頭期の定量的な評価・計測が行えること.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →舌骨上筋群以外の嚥下関連筋の計測方法を検討する技術が必要である.また,水以外の異なる物性での嚥下や連続した嚥下における評価の妥当性の検討が必要である.
  • 増尾 明, 伊藤 有生, 金岩 司, 内藤 光祐, 佐久間 拓人, 加藤 昇平
    原稿種別: 原著
    2023 年 11 巻 p. 10-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/29
    ジャーナル フリー
     世界的に認知症患者数は増加しており,認知機能評価の効率化が求められている.本研究は,時計描画テストに機械学習を適用し,認知機能重症度のスクリーニング性能を調査した.77名の高齢者を対象に,認知症群(COG),軽度認知障害群(MCI),健常群(HC)に割り付けた.時計描画テストに対して,14種の項目を異常の有無で数量化し,特徴を抽出した.サポートベクターマシンを用いてペアワイズ法で判別モデルを構築した.また,ランダムフォレストの特徴重要度を指標に,判別に寄与する描画特徴を調査した.判別性能は,COG 対MCIが70%,COG対HC が76%,MCI対HC が56%であった.また,COG 対MCI,COG 対HC の判別には,針の誤配置,長短針の逆転,数字の空間配置の欠如を含む5種または3種の描画特徴が寄与していた.これらの描画特徴は効率的な認知症の一次スクリーニングに貢献する可能性が示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →認知症の臨床評価に使用される時計描画テストに機械学習を適用することで,認知症スクリーニングのプロセスを定量化することをテーマとしている.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 認知症重症度の判別に有用な描画特徴の知見を提供し,医療従事者による認知症スクリーニングの効率化への貢献が期待できる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →多くの描画特徴をもつデータを使用して判別モデルを構築し,特に軽度認知障害群と健常群の判別性能の高精度化を目指す必要がある.
  • 長谷川 陽子, 吉田 美香子, 峰松 健夫, 須釜 淳子, 真田 弘美
    原稿種別: 原著
    2023 年 11 巻 p. 37-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
     目的:高齢者において,側頭部陥没の外観的評価から骨格筋量の損失の程度を評価できるか,その信頼性・妥当性を検証した.方法:対象者は65歳以上の高齢者73名であった.信頼性評価は,評価者2名が独立して側頭部陥没を外観から評価し,カッパ係数から評価者間信頼性を検証した.妥当性評価は,弁別妥当性として側頭部陥没の程度(なし,軽度,重度)による四肢の骨格筋量の差異を,既知集団妥当性として側頭部陥没の程度による側頭筋厚の差異を比較することで検証した.結果:評価者2名の側頭部陥没の外観的評価の一致は,カッパ係数0.594であった.側頭部陥没のない者とくらべ,軽度および重度の者で上腕筋囲長および下腿周囲長が有意に低かった.側頭部陥没が軽度またはない者とくらべ,重度の者で側頭筋厚が有意に薄かった.結論:側頭部陥没の外観評価について,中等度の評価者間信頼性,弁別妥当性と既知集団妥当性が確認された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →側頭部の外観評価に基づく栄養評価法のエビデンスを構築したいと考えた.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 側頭部の外観評価により,ベッドサイドで簡便かつリアルタイムに栄養評価が可能となる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →在宅現場で非侵襲的かつ簡便にリアルタイムで実施可能な栄養評価法が必要である.
  • 伊藤 嘉章, 高橋 道明, 葛西 好美, 川口 孝泰, 楊箸 隆哉
    原稿種別: 原著
    2023 年 11 巻 p. 66-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル フリー
     目的:本研究は,指尖容積脈波の動態変化を機械学習モデルに学習させ,人間の心理的ストレス状態を判別できるか検証することを目的とした.方法:健常者20名を対象に,5分間の安静時と10分間のColor Word Conflict Test 中の指尖容積脈波をサンプリング周波数1024 Hz で測定し,Elastic Net モデルに学習させ,安静時と心理的ストレス時の分類性能を評価した.結果:安静時と心理的ストレス時において,脈拍間隔変動係数,高周波成分,d/a,脈拍,脈拍間隔,エントロピー,収縮期血圧,拡張期血圧に有意な変化が見られた(p<0.05).Elastic Net モデルの分類性能は,適合率:0.93,再現率:0.70,F1 値:0.80,正解率:0.77,Area Under the Curve:0.78であった.結論:指尖容積脈波の機械学習により,生体の心理的ストレス状態を非侵襲的かつ客観的に評価できる可能性が示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →酸素飽和度の測定技術として活用されている指尖容積脈波のさらなる活用法の検討をテーマとした.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 簡易かつ非侵襲的な方法で心理的ストレスの有無を評価でき,将来的には個人の健康管理ツールとなることが期待される.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →さまざまな心理的ストレスによる指尖容積脈波の影響を明らかにする必要がある.
  • 橋本 宣慶, 岩谷 久美子
    原稿種別: 原著
    2024 年 11 巻 p. 76-89
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
     本論文では,分娩前後の助産師の処置において,起こりうる危険を予知する能力を評価・学習するシステムを構築した.本システムではバーチャルリアリティ用のヘッドセットを用いて,3次元コンピュータグラフィクスにより再現した分娩室において,危険の生じやすい場所に対して行動を選択するという模擬作業ができる.室内の妊婦・褥婦や使用機材は,模型や実物の3次元スキャンデータを用いることで高い再現度を実現させた.また,使用者の視線を常に計測し,危険個所に視線が留まったときに質問板を出現させ,処置を選択できるようにした.本システムを助産師14名と助産師学生18名に使用してもらい,再現された分娩室と危険個所に対する行動選択を評価した.その結果,分娩室の再現度について肯定的な意見は8割以上であり,現場を再現できているといえる.また,注視した場所に対して行動選択できたという意見は9割以上であり,良好な結果を得ることができた.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →さまざまな場面において,危険に気づく能力が経験に依存している問題をテーマにしている.
    この能力を定量的に評価し効率的に教育する必要性を感じたことがきっかけである.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 本研究は助産を対象としているが,看護・介護にも応用可能であり,それらの安全性向上に貢献可能である.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →行動の自由度を高め,行動に対する状況変化を伴ったインタラクティブ性を高めるようにシステムを発展させる必要がある.
  • 和田 秋花, 寺澤 瑛利子, 井上 佳則, 生田 幸士, 浅野 美礼, 岡山 久代
    原稿種別: 原著
    2024 年 11 巻 p. 90-99
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
     本研究では児頭娩出条件を統一するための分娩介助モデルセットを用いた分娩シミュレータの開発,センサ装着部位の検討を行い,圧力値・せん断力値の経時的測定方法の検討を目的とした.まず市販の分娩介助モデルセットに手動で操作する児頭娩出補助器をセットし,これにモータを付けて児頭の発露から娩出までの時間とタイミングを自動化した.初産婦を想定し,発露から3回の陣痛周期で娩出できるように全稼働時間を162.8 秒に設定した.つぎに力覚センサを手掌中央部に装着し手の動きを直接測定する方法と,分娩介助モデルセットの会陰部に装着し会陰部にかかる圧力・せん断力を測定する方法を設定し実験を行った.両者の圧力とせん断力の推移の特徴は同様であったが,分娩介助モデルセットの会陰部に装着した場合ではセンサがずれるという問題が生じた.分娩シミュレータを用いて手掌中央部にセンサを付けて会陰保護を行うことにより,実施時の会陰にかかる圧力値とせん断力値を経時的に測定することが可能となった.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →助産学生の時に会陰にかける力の強さや方向,タイミングなどの理解がむずかしく,教科書と口頭での説明だけでは十分な理解が得られないと感じました.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 本研究で開発した会陰保護術を測定する方法を用いれば,熟練者の技術の収集や初学者のトレーニングに活用することができ,会陰保護の手技向上が期待されます.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →今回の研究では圧力値・せん断力値の測定部位は1ヵ所のみでしたが,複数部位で測定できる技術が必要となります.また初学者が習得するべき見本となる教師データを作成する技術が必要になると考えます.
  • ~枕の背側クッション導入の効果~
    尾黒 正子, 森崎 直子
    原稿種別: 原著
    2024 年 11 巻 p. 112-121
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー
     【目的】ストレッチャー移送時の乗車者の頭部の揺れと心理的負荷に対する枕への背側クッション導入の効果を明らかにすることを目的とした.【方法】18 名の健康成人を対象に,3つのパターン(A:枕なし,B:U字型安楽枕,C:Bの背側に角形クッションをつけた枕)で指定した移送コースを走行した.移送時の乗車者の頭部の角速度と心理的負荷を測定した.【結果】頭部の角速度はX軸,Y軸ともに,A>B>Cの順に有意に小さくなっていた.また,移送中の不安・緊張は,AとBおよびCの間で有意に少なかった.【結論】ストレッチャー移送時の乗車者の枕に背側クッションを付けることで,乗車者の頭部の左右方向の揺れが軽減する可能性がある.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
    →ストレッチャー移送時に起こる有害事象や不快の軽減をテーマとした研究である.

    2.研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →ストレッチャー移送時の有害事象の原因の1つは「頭部の揺れ」ではないかと考え,揺れの程度を知りたいと思ったことである

    3.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → ストレッチャー移送時の頭部の揺れと心理的負荷の軽減に貢献できる.

    4.今後どのような技術が必要になるのか?
    →ストレッチャー移送時の頭部の揺れをより軽減するストレッチャーおよびその付属物を開発する技術が必要になる.
  • 堀内 裕子, 小川 充洋
    原稿種別: 原著
    2024 年 11 巻 p. 122-134
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー
     介護職員等による喀痰吸引の法制化により,医師や看護師だけでなく介護職にも吸引技術の習得が求められるようになった.気道吸引は患者への侵襲を伴う医療行為のため,安全性や技術習得に向けた研究が報告されている.しかし,気道内での吸引カテーテルの先端の動きと吸引技術の関連は明らかでない.われわれは,喀痰吸引の経験者と未経験者の吸引カテーテルの先端の動きなどの吸引技術の違いを明らかにできれば,吸引技術の客観的評価が可能となるものと考える.そのため,既存の吸引シミュレーターを改造し,気道部を2方向から動画撮影可能な実験系を構築した.本報告では,撮影した動画の分析から,気管口から気管分岐部までのカテーテル挿入時間の平均値は,未経験者の最小値は9.53 秒,経験者の最大値は6.55 秒であり,未経験者は経験者より時間を要した.ここから,未経験者に指導する場合には,カテーテル挿入時間とカテーテルのひっかかりに注意が必要であることが示唆された.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →吸引の効果的で安全な手技習得のために,吸引カテーテルの先端の動きから気管吸引の手技を評価できるシミュ レータを構築したいと考えた.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → シミュレータでの気管吸引の手技の可視化により,吸引手技の習得の客観的評価が可能となる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →吸引シミュレータの客観的評価がリアルタイムで実施可能なシステムとして発展させることが必要である.
  • 木村 恵美子, 城丸 瑞恵, 中島 そのみ
    原稿種別: 原著
    2024 年 11 巻 p. 135-146
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー
     目的:研究目的は看護師の身体的負担の低減を目指した高齢者のポータブルトイレでの排泄における下衣の脱着介助方法を明らかにすることである.方法:修正デルファイ法を活用し,ポータブルトイレ排泄時の下衣の脱着介助方法に対する専門家の意見集約を行った.専門家は臨床経験が10年以上でポータブルトイレ排泄介助の指導が可能な看護師5 名と,彼らが優れていると判断した理学療法士・作業療法士各1名であった.合意基準は9件法の中央値7以上とした.結果:看護師の身体的負担の低減を目指した介助方法として,下衣の脱衣介助は患者を便座に座らせてから行う方法で5要素・19工程,着衣介助は着座時に下衣をたくし上げたあと,患者を立位にしてから行う方法で5要素・17工程が示され,中央値8~9で合意した.結論:提示した下衣の脱着介助方法はポータブルトイレ排泄にかかわる看護師の安楽な介助方法の一助や看護技術への提案になると考える.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →看護師の身体的負担が高い排泄介助に対し,負担低減を目指した脱着介助方法を提案したいと考えた.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 高齢者など下肢筋力が低下した人に携わる看護師や在宅介助者に対し,介助方法の1つとして応用が期待できる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →本介助方法に対する看護師の身体的負担低減の検証および安全性や安楽性の検討が必要である.
速報
  • 稲垣 圭吾, 天野 優子, 谷 重喜, 中村 和正
    原稿種別: 速報
    2023 年 11 巻 p. 20-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
     尿検査用試験紙の判定は,尿検査用試験紙をカラーチャートと視覚的に比較して行うため,個人によって判定が異なる可能性がある.本研究では,結果の再現性を改善し,判定者の主観的な影響を低減させることで,尿定性判定プログラムの判定精度を向上させることを目的とした.本研究に先立ち,われわれはPython による比色分析を用いて,尿定性判定プログラムを開発し,尿検査用試験紙の客観的な判定方法を報告している.本論文では,画像特徴点抽出処理と撮影環境の調整を行うことで,判定精度の向上を図った.画像特徴点抽出処理はAccelerated KAZEを使用した.撮影環境の調整は,尿検査用試験紙とカラーチャートを同時に撮影し,色温度やコントラスト,ガンマ値など,同じ設定のカメラで色の比較が行えるように調整した.正常値である陰性の判定は,すべての項目で尿自動分析装置の結果と一致した.異常値である陽性の結果は,潜血の項目以外はすべて一致した.画像特徴点抽出処理と撮影環境の調整を行うことで,プログラムの判定精度の向上が見られた.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →個人によって色の判定が異なることがあるため,客観的な判定方法が必要と考えた.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 尿定性判定プログラムを活用することで,尿検査用試験紙を客観的に判定することができる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →実際の尿検体による尿定性判定プログラムの信頼性の検証と臨床への応用方法の検討が必要である.
  • 田原 裕希恵, 雨宮 歩, 北川 柚香, 有松 夏子, 川角 千佳, 長澤 拓海, 小池 黎明, 津村 徳道
    原稿種別: 速報
    2024 年 11 巻 p. 100-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー
     目的:COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の流行による行動制限は,独居者のメンタルヘルスに大きく影響した.本研究は独居者のメンタルヘルス改善を目指し,独居の健常成人に対しhumanoidとanimaloidのsocially assistive robots(SARs)によるストレス軽減効果を調査した.方法:被験者はhumanoidとanimaloidを9日間使用し,1~2日目と8~9日目のストレス指標を比較した.客観的なストレス指標には高周波成分(HF)と低周波成分(LF/HF)を,主観的な指標には総合的気分状態(TMD)を用い,paired t検定でp<0.1を有意傾向ありとした.結果:animaloid介入のHFは20時から0時において1~2日目より8~9日目のほうが有意に高い傾向であった(p=0.07).TMDはhumanoidとamimaloidのどちらにおいても有意差はみられなかった.考察:9日間のanimaloid使用後にHFが高まる時間帯があったことから,animaloidは客観的なストレス軽減効果があったと考えられる.SARsは日常生活に取り入れやすく,独居者のメンタルヘルス改善に役立つ可能性がある.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
    →在宅時間増加による独居学生のメンタルヘルスが問題となっており,SARsによる改善を期待したことが動機である.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → SARsとの共生は独居者のメンタルヘルス改善に貢献できる.将来的にはSARsが家族のように癒しを提供できると期待する.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →将来は癒しとともに健康異常に気づくSARsが必要.うつ状態などを検知する技術が求められる.
  • 國光 真生, 仲上 豪二朗, 角田 誠, 赤瀬 智子, 大江 真琴
    原稿種別: 速報
    2023 年 11 巻 p. 47-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
     本研究の目的はスワブを用いた非侵襲的かつ簡便な創傷滲出液の採取方法のアミノ酸解析への適用可能性の検討である.ラット2匹に全層欠損創を作製し,創作製1日目から一方のラットにはスルファジアジン銀クリームと閉鎖性ドレッシング材により処置し,もう一方は創傷被覆材のみを貼付した.創作製4日目まで毎日創部洗浄前後にスワブで創傷滲出液を採取し,高速液体クロマトグラフィーによってアミノ酸16種を測定した.解析にはアミノ酸総量において各アミノ酸が占める割合である相対アミノ酸量が用いられた.その結果,同じ状態の創部において,洗浄前後間で相対アミノ酸量に正の相関を認めた(p>0.90,p<0.01).また,洗浄後と翌日の洗浄前のサンプル間で相対アミノ酸量は変化し,これは処置に依存していた.したがって,本法は創傷滲出液中の相対アミノ酸量の変化を検出し,創部の状態を評価するために使用できる可能性がある.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →創傷感染制御のため,創部の細菌負荷を簡便かつ非侵襲的に評価できる方法を確立したいと考えた.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 将来的に,創部のアセスメント手法を確立するためのエビデンスの1つとなりうる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →本手法を用いて創傷滲出液中のアミノ酸を同定し,創傷治癒傾向との関連を明らかにする研究が必要である.
実践報告
  • 光田 益士, 杉山 昌生, 八森 淳, 須釜 淳子, 袋 秀平
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 11 巻 p. 28-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル フリー
     企業が開発した在宅での褥瘡治療支援モバイルアプリケーションの日本向けプロトタイプ(PITS-pa)の利用者受容性の評価を目的とした.PITS-pa は,創傷写真の撮影,創傷評価,治療計画・コメントのデータ入力,推奨される外用剤・ドレッシング材選択のための製品一覧表示,医療従事者間での情報共有機能を有している.在宅褥瘡患者1名にPITS-paを24週間使用したあと,評価者(在宅医療に従事する創傷治療専門医)によるPITS-pa の利用者受容の定性評価を行った.結果,創傷評価の簡便さの点でPITS-pa の利用可能性が示唆された.短所として,製品推奨機能の不便さ,入力データの多さ,複数のアプリケーションの使い分けの手間,最新の創傷評価ツールの未採用があげられた.さらに褥瘡治療専門家による助言へのアクセスも改善する必要があった.したがって,在宅医療の創傷専門医に受け入れられるためには,PITS-paの改良と適応のための戦略的な計画が必要であると考えられた.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?

    ・デジタル技術の発展により褥瘡治療サポートモバイルアプリケーション(以下,アプリ)の開発が国内外で行われているが,その利用者受容性はいまだ評価されていない.
    ・臨床現場でアプリが継続して使用されるためには,利用者受容性の検証が不可欠である.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 利用者受容性の評価が検証されたアプリを臨床現場に提供できる可能性がある.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?

    ・医療シーンに合わせたデジタル技術の利用者受容性に関する評価手法および判断基準の設計.
    ・本研究で明らかになった課題を解決した改良版アプリの開発技術.
  • 小笠原 ゆかり, 藤田 比左子, 新美 綾子, 西土 泉, 岩田 仁江, 渡久地 麻衣子
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 11 巻 p. 57-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,看護基礎教育の図書を選定する際の一助となる動画教材の内容を検討することである.対象は動画が収録されている看護技術の図書とし,「注射器と注射針の接続」の動画が収録されている図書を分析対象とした.動画から18項目のデータを収集し,一覧表を作成し,視聴媒体ごとに比較検討を行った.結果として,対象となった図書13冊のうち12冊をデータ分析の対象とした.視聴媒体はDVDとWeb動画があり,2021年以降はWeb 動画のみとなっていた.看護技術を学ぶために推奨される動画教材は,実施者の視線に近いアングルから撮影された90 秒以内で構成されたWeb 動画であり,基本的な技術の内容の細分化を吟味した構成であることが示唆された.さらに,動画再生の手順の簡略さや入手しやすい図書の価格といったアクセシビリティの高さも要件の1つとして考えられた.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →看護技術習得の教授法がテーマです.動画付き図書を複数視聴し,関心をもちました.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → 看護技術習得レベル向上のため,看護基礎教育の図書選定規準の整備を期待しています.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →時間・場所に制限されない自主的な学習支援となる動画教材の開発が必要と考えます.
  • 村山 陵子, 阿部 麻里
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 11 巻 p. 106-111
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー
     超音波検査装置(エコー)は,非侵襲,非拘束,リアルタイムに皮下組織のアセスメントが可能である.それを活用し,末梢静脈カテーテル留置の際にエコーで観察しながら穿刺,および留置を可能とするカテーテル留置技術を考案した.しかし観察する際に用いるプローブやエコーゼリーによって清潔野が確保しにくく,感染の恐れを伴うことが課題であった.そこで超音波透過性のよいカテーテル固定用ドレッシングフィルムを,産学連携(看護理工学会員と賛助会員の企業との連携)により製作し,一般医療機器として上市にいたった.入院患者に対し新ドレッシングフィルムを使用し,視診できない血管をエコーで画像描出できたことでカテーテル留置が成功し実用化できたことより,開発が完了したことを報告する.今後はさらに使用実績を積み,ユーザビリティーや医療従事者,患者双方の満足感,費用対効果の検証もしながら,さらなる現場のニーズを開発者にフィードバックしていく必要がある.

    【キーメッセージ】
    1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
     研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
    →末梢静脈カテーテル留置のアセスメント技術にエコーを用いたいが,穿刺部の清潔野を保つバリア機能と固定機能を併せ持つドレッシングフィルムが国内にないこと.

    2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
    → エコー透過性のよい新ドレッシングフィルム上にゼリーを載せて使えることで,視診・触診できない血管への穿刺がエコー下で安全に成功する可能性が高まる.

    3.今後どのような技術が必要になるのか?
    →ユーザビリティーの評価,医療従事者・患者双方の満足感,費用対効果の検証を経て,さらなるニーズに対応できるドレッシングフィルムの改良.
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