有機農業研究
Online ISSN : 2434-6217
Print ISSN : 1884-5665
7 巻, 2 号
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【巻頭言】
【特集】有機の郷をつくる:中山間地域こそ有機農業
【特集】農・食・からだがつながる:島根の女性たちに聞く
【論文】
  • 原田 直樹, 伊藤 早紀, 二瓶 直登, 野中 昌法
    2015 年7 巻2 号 p. 35-41
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2022/10/26
    ジャーナル フリー

    2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故によって多量の放射性物質が環境中に放出され,農地と農作物の放射性物質による汚染が大きな問題となっている.本報では福島県南相馬市の地元農家の協力のもと,2014年に有機圃場(無施肥栽培)3カ所及び慣行圃場1カ所からダイズの地上部を収穫期に採取し,放射性セシウム(Cs)濃度を部位別に調べて,土壌放射性Cs濃度や土壌化学性との関連について考察した.調査した4圃場の土壌放射性Cs濃度(134Cs+137Cs)は510~1,100Bq/kg-乾土(ds)であった.ダイズ子実の放射性Cs濃度はいずれも食品中の放射性Csの新規制値(100Bq/kg)を下回ったが,無施肥栽培の子実放射性Cs濃度は12~60Bq/kg-乾物(dw)と大きな圃場間差が認められた.慣行栽培では2.8Bq/kg-dwと低かった.全圃場の子実における移行係数(子実137Cs濃度[Bq/kg-dw]/土壌137Cs濃度[Bq/kg-ds])は0.007~0.054と過去の報告の範囲内にあり,土壌交換性カリ含量と有意な双曲線形相関を示した.今回調査対象とした無施肥栽培圃場の土壌交換性カリ含量は福島県の設定した目標値と比較して低く,放射性Cs濃度をより低く抑えたダイズ生産にはカリ資材の投入などの放射性Cs吸収抑制対策が必要と考えられた.

【技術論文】
  • 加藤 孝太郎, 田渕 浩康, 木嶋 利男
    2015 年7 巻2 号 p. 42-50
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2022/10/26
    ジャーナル フリー

    現代における風土適応型の有機栽培技術の構築には自然観察力を養うことが重要であるとの視点から,わが国の先人による自然観察の記録である自然暦の中から農作業に関するものを抽出,調査するとともに,各地の気象台で観測された近年のデータとの比較・検討を行った.まず,昭和期に記録された農業に関する182の自然暦について調査したところ,農業に関する自然暦は全国各地に存在しており,その大半はコメを中心とする穀物に関する自然暦で,これら作物ごとでは播種や定植などの作業に関する自然暦が半数以上を占めていた.花,鳥,樹木(花以外)を指標とする自然暦は全体の67.7%を占めた.花の中では,サクラ,コブシ,フジの開花が指標となった自然暦が46.9%を占め,これらは主にコメ,サツマイモ,アサ,ナス,ダイズ,ヒエ,アワ,ワタの播種の指標であった.鳥の中では,カッコウ,ツツドリ,ホトトギスの鳴き声が指標となった自然暦が58.5%を占め,これらは主にダイズ,アワ,コメ,ヒエ,キビ,アズキ,アサの播種,チャとムギの収穫の指標であった.樹木(花以外)の中では,イチョウの黄葉およびカキの若葉の大きさが指標となった自然暦が26.3%を占め,それぞれムギの播種およびダイズとゴボウの播種の指標であった.次に,全国の10気象台が59年間観測したデータから,日最低気温の変動幅,終霜日と生物季節観測日の平年値を算出した.自然暦と重複していた生物季節であるノダフジの開花およびカッコウの初鳴について,生物季節観測日の前後30日の日最低気温を解析したところ,両生物季節の観測日より前は霜害に遭う危険性が高いことが示された.すべての気象台において,これら生物季節観測日の平年値は終霜日の平年値より後であり,さらに生物季節観測日と終霜日の年次比較により,カッコウの初鳴の方が春期の晩霜害を回避できる可能性が高いことが示された.

【書評】
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