有機農業研究
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【特集】公開フォーラム報告
【特集】第23回大会 全体セッション1
【特集】第23回大会 全体セッション2
【論文】
  • 関口 哲生, 田澤 純子, 三浦 重典
    2023 年 15 巻 2 号 p. 51-65
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/12/03
    ジャーナル フリー

    収量が低迷している有機ダイズ栽培の技術的な課題を把握するため,東北,関東,北陸地域の11の有機ダイズ組合で調査を行った.その内,A, B, Cの3組合の圃場で生育中のダイズに生理障害が観察された.

    A及びB組合の圃場では,葉脈間が淡緑から黄色となる障害株が,C組合の圃場では,葉身の縁が黄化し,外側または内側に湾曲する障害株が観察された.生理障害の同定と障害要因を明らかにするため,障害株と健全株の作物体と直下の土壌の化学分析を行い比較検討した.

    A組合の障害株は葉身のマンガン(Mn)濃度,土壌の交換性マンガン(Ex-Mn)濃度が顕著に低く,Mn欠乏症を示す濃度領域にあったこと,土壌pHは7を超えていたこと,葉身のMn濃度は障害が重いほど低い関係を示したこと,他の要素には生理障害との関係は認められなかったこと,外観症状の特徴からMn欠乏症と考えられた.高pHに起因するMn欠乏症であることを確認するため,硫黄及び硫黄+Mn肥料の施肥試験をした.両試験区とも無施用区の対照区と比べ,栽培期間中の土壌pHは有意に低下し,土壌のEx-Mn, 葉中のMn濃度が増加し,また障害症状は見られず収量は増加した.これらの結果は高pHに起因するMn欠乏症であることを支持するものと考えられた.両施肥試験で地上部生育,収量に有意差はなく,硫黄施用のみで障害が改善できると考えられた.もみ殻鶏糞堆肥の長期連用により土壌pHがアルカリ化しMnが不溶化したことが,Mn欠乏症の主な発生要因と考えられた.

    B組合の障害株は,葉身のMn, 土壌のEx-Mn濃度が顕著に低く,Mn欠乏症を示す濃度領域にあったこと,他の要素には生理障害との関係は認められなかったこと,外観症状の特徴から判断してMn欠乏症と考えられた.B組合では,Mnが溶脱し易い土壌の性質に加え,ぼかし肥料の施用量だけではMn供給量が十分ではなかったことが欠乏症発生の主な要因と推測された.

    C組合の生理障害は,葉身のカリウム(K)と土壌の交換性カリ(Ex-K2O)濃度が低くどちらもK欠乏症を示す濃度領域にあったこと,外観症状の特徴から,K欠乏症と考えられた.Ex-K2O濃度が欠乏領域にあり,無肥料による栽培条件でカリの投入量が十分でなかったことがK欠乏の要因と推察された.

  • 陶 武利, 小松﨑 将一
    2023 年 15 巻 2 号 p. 66-81
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/12/03
    ジャーナル フリー

    水稲有機栽培の雑草防除として,遮光効果が期待できる浮遊植物のアオウキクサとウキクサに注目し,これらによるリビングマルチの有効性を検討した.ウキクサはアオウキクサに比べ遮光率が高く.雑草の発芽を促進する特定の波長域を遮光して,雑草の発生を抑えることが明らかになった.ポット試験によりウキクサマルチの雑草防除効果を検証したところ,難防除とされるコナギを含めた雑草の発芽と生育を抑制することが確認できた.水稲の圃場試験のウキクサマルチでは,日最高水温の上昇が抑えられ,また水稲の幼穂形成期までの平均水温は低くなったが,日最低水温には影響はなかった.湛水層の溶存酸素量,pH,電気伝導度,酸化還元電位には影響を与えないことが明らかとなった.ウキクサマルチでは,コナギを含めた雑草の発生本数,乾物重共に少なかった.ウキクサの分解に伴って生じた窒素は,表層土壌の無機態窒素濃度を高め,これらの窒素が水稲の生育と収量の向上に寄与している可能性が示された.以上の結果より,ウキクサによるリビングマルチは,雑草防除が課題とされる水稲の有機栽培で用いることが出来る有効な技術になり得る.

【書評】
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