生後10カ月女児の頭部に発症した
Trichophyton tonsurans によるblack dot ringworm難治例を経験した。女児の感染源は、結婚3年前まで柔道をしていた母親であった。今回の症例から、生後10カ月乳児への抗真菌剤内服投与が制限されたこと、副作用による訴訟リスクの懸念から内服治療に躊躇したこと、感染源の母親が3年間の無症候性キャリアーであったこと、父親にも感染し家族3名全員発症したこと、臨床検査所の真菌同定能力の信頼度が低いこと、などが問題になった。格闘技者による
Trichophyton tonsurans 感染症は、格闘技者間だけでなく、家族などへの垂直感染の広がりを見せている。
Trichophyton tonsurans 感染症や
Microsporum canis 感染症の重要性は、感染源を追求して新たな集団発症を予防できることである。皮膚科専門医の真菌同定能力を向上する教育プログラムが早急に必要であり、予防医学的な対外活動を通して皮膚科専門医の存在を社会に示すことが重要である。頭部の脱毛症ではblack dot ringwormを常に考え、格闘技者は男性のみならず女性もいることを念頭においた診察が必要である。(オンラインのみ掲載)
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