日本臨床皮膚科医会雑誌
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32 巻, 2 号
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論文
  • 福田 英嗣, 向井 秀樹
    2015 年 32 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
     ダーモスコピーは診療の様々な場面で使用され,特に悪性黒色腫や基底細胞癌,色素性母斑,脂漏性角化症などの色素性皮膚病変での有用性は確立している.今回,日常診療でしばしば遭遇する色素性皮膚病変以外の疾患(疥癬や伝染性軟属腫,尋常性疣贅)での所見や,尋常性疣贅の治療経過,皮脂欠乏症における乾燥症状の観察での活用法について報告した.疥癬は,痂皮などの直接鏡検にてヒゼンダニを確認した場合に確定診断出来るが,「疥癬診療ガイドライン」では,ダーモスコピーでヒゼンダニを確認した場合も疥癬と診断出来ると記載されている.疥癬のダーモスコピー所見は,ヒゼンダニの虫体を反映する灰褐色三角形構造(gray delta structures),疥癬トンネルを反映する飛行機雲様所見(jet with contrail),その他,水尾所見(wake)がある.伝染性軟属腫は視診で診断可能な場合が多いが,小型の病変やアトピー性皮膚炎に合併するwhite fibrous papulosis of the neckでは時に診断に苦慮する.伝染性軟属腫のダーモスコピー所見は,内部は白色調で,中央にリング状の鱗屑があり,その周囲に毛細血管拡張(crown vessels)を認める.尋常性疣贅では,小型の病変の確認や治療経過の観察時にダーモスコピーは有用であり,肉眼で判別困難な角化やdotted vesselsの有無を確認出来る.皮脂欠乏症患者では,肉眼的に皮膚の乾燥を確認できれば保湿外用薬の外用を行うが,確認できない場合には外用の中断がしばしばみられる.そのような患者の場合,ダーモスコピーは乾燥状態の程度を診察時に示すことができるため,保湿外用薬の外用アドヒアランスを高める一つのツールとしても有用である.
  • 佐々木 優, 吉田 哲也, 矢野 優美子, 山本 紗規子, 白石 淳一, 佐藤 友隆
    2015 年 32 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    症例1:70歳男.初診7年前に当科で左胸部,左背部の基底細胞癌に対して手術を施行した.左頭頂部黒色斑を主訴に当科を受診し,同部位には径8mm大の黒色斑をみとめた.ダーモスコピーでは多発青灰色小球や樹枝状血管拡張がみられ,皮膚生検では基底細胞癌の所見であった.多発する基底細胞癌から母斑基底細胞癌症候群を疑い両側の手掌と足底を観察したところ2~3mm大の小陥凹の多発をみとめ,ダーモスコピーでは不整形で境界明瞭な淡赤色の陥凹性病変がみられ, 病変内には皮溝に沿って平行に配列する紅色小球を認めた.病理組織は角層が菲薄化し,表皮突起は不規則に軽度延長し,表皮内と真皮上層の血管周囲に軽度のリンパ球浸潤がみられた.さらに患者背景の確認を行ったところ,歯科口腔外科での角化嚢胞性歯原性腫瘍の手術歴,顎骨嚢胞の家族歴があり,頭部単純CT検査で大脳鎌石灰化の所見をみとめ,母斑性基底細胞癌症候群(NBCCS)の診断に至った. 症例2:60歳男.30歳頃から両手掌と足底の小陥凹の多発と,繰り返す顎嚢胞を認め,前医でNBCCSの診断となった.初診10年前から左下腿と右下腹部に皮疹が出現し当科受診した.左下腿と右腹部から皮膚生検を施行したところ基底細胞癌の所見であった.手掌の小陥凹は1mm大であり,ダーモスコピーでは淡赤色の小陥凹内に紅色小球の配列がみられた.病理組織学的には真皮乳頭層毛細血管周囲に軽度の炎症細胞浸潤の所見がみられた. 多発する基底細胞癌を見た際にはNBCCSを鑑別に挙げ,ダーモスコピーを用いて手掌や足底の小陥凹の有無の観察を積極的に行うべきと考える.
  • 山本 紗規子, 吉田 哲也, 齊藤 優子, 佐々木 優, 矢野 優美子, 小林 正規, 佐藤 友隆
    2015 年 32 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
     スナノミ症はTunga penetransと呼ばれるスナノミが感染して生じる寄生虫性皮膚疾患である.スナノミはアフリカ,南米,西インド諸島を含む熱帯,亜熱帯の乾燥した砂地に生息する.雌の成虫が宿主の皮膚に侵入し“ネオゾーム”と呼ばれる腫大した構造を呈し,これがスナノミ症を引き起こす.スナノミ症の好発部位は足の爪周囲や趾間であり,症状は刺激感や瘙痒,疼痛を生じることが多い.治療はノミの除去である.スナノミ症は細菌による二次感染をおこすため,感染に対しては抗生剤の投与を行う.スナノミ症は通常,蔓延地域への渡航歴や,特徴的な臨床所見,病変から虫体や虫卵を確認することで診断できる.  KOH直接鏡検法を用いて虫体や虫卵を確認し診断に至ったスナノミ症の1例を報告する.患者は67歳男,タンザニア連合共和国に仕事で滞在中,左足第�趾爪囲の色調の変化に気がつき急遽日本に帰国し当科を初診した.初診時,左足第�趾の爪は一部爪床から浮いており爪周囲は暗紫色調を呈し浮腫状であった.趾先部の中心に黒点を伴う角化を伴った黄白色の結節を認め,スナノミ症を疑い変色部位を爪とともに一塊に切除した.自験例では皮膚の変性,壊死が強く臨床的には虫の存在は明らかではなかったが,KOH直接鏡検法を用いたところ虫体の一部と多数の虫卵を認めることができスナノミ症と診断した.病理組織でも虫体構造物を確認した.感染部位を摘出後,軟膏による潰瘍治療と抗生剤の内服で軽快,治癒した.  病変部位から虫がはっきりと見えない場合,KOH直接鏡検法はスナノミ症の診断に有用である.
  • 佐藤 俊次, 大原 國章
    2015 年 32 巻 2 号 p. 198-201
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
     症例は77歳,男性の右こめかみの,以前から存在していた黒色結節.境界鮮明な淡褐色局面の内部にある結節の一部が最近になって崩れてきたため,癌を心配して来院した.ダーモスコピーにて,黒色結節部は一部では偽ネットワークを形成するも大部分は毛孔が覆い尽くされた均一無構造領域を示した.さらに,結節の下方部の淡紅色無構造領域では黒色小点や青灰色小球構造が散在しているのが観察された.これらは病変の自然消退の所見であり,進行した悪性黒色腫によく観察される所見である.しかしながら,病理組織学的検査の結果は脂漏性角化症であった.4年後の再診時には,無治療にもかかわらず病変の完全な消失が確認された.脂漏性角化症における自然消退現象の報告は数例あるものの稀な病態である.本症例のように自然消退構造を伴う脂漏性角化症では,臨床およびダーモスコピー診断において悪性黒色腫との鑑別が困難なことがあり病組織学的診断が必要であると思われた.
  • 日野 治子, 馬場 直子, 宇野澤 宣司, 徳田 祥一, 河原田 裕二, 中村 圭吾, 可児 毅
    2015 年 32 巻 2 号 p. 202-218
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    目的:リドカイン18 mgを含有したテープ製剤であるペンレスⓇテープ18 mg(以下,本剤)の「伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和」に関する有効性および安全性について,小児特定使用成績調査を実施し,検討した. 結果:2013年1月から2014年1月までに86施設から593例が登録され,500例で安全性について評価を行った.発症年齢は3~5歳が最も多く,4歳未満の症例は40.2%であった.痛みの程度の評価である「摘除に対する身体的反応がない」は全体の53.9%であり,「摘除に対する身体的反応がわずかにある」は37.1%,「摘除に対する身体的反応がある」は8.5%であった.今回の調査で認められた副作用は,貼付部位での紅斑4例,接触皮膚炎2例の局所的かつ可逆性の非重篤例であり,発現率は1.20%であった.また,本剤の麻酔作用に起因すると考えられる副作用は500例中1例も認められなかった.本剤の効果に関して,医師の満足度は「高い(極めて有用)」が68.2%,「まあまあ高い(有用)」が25.8%であり,本剤の効果に関して,非常に有用性が高いと判断できた. 結論:今回の調査により,ぺンレスⓇテープ18 mgの「伝染性軟属腫摘除時の疼痛緩和」に関する4歳未満を含めた小児における有効性と安全性が確認された.
  • 江藤 隆史
    2015 年 32 巻 2 号 p. 219-225
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    目的:日本人尋常性乾癬患者における活性型ビタミンD3/ステロイド配合外用薬(配合外用薬)の有効性を検討する. 方法:尋常性乾癬患者を配合外用薬(1日1回塗布)群,カルシポトリオール外用薬(1日2回塗布)群,ベタメタゾンジプロピオン酸エステル外用薬(1日1回塗布)群に無作為に分け,4週間塗布した3群並行二重盲検比較試験のサブ解析を行い,配合外用薬の有効性をさらに探索した.配合外用薬の改善効果発揮時期を医師および患者の評価から検討するとともに,治療効果に影響を及ぼす可能性がある要因について検討した. 結果:医師による評価(m-PASI変化率,標的病変における複合重症度スコア,疾患重症度の全般評価)および患者評価(疾患重症度の全般評価)のいずれの評価においても,配合外用薬は1週後からカルシポトリオール外用薬またはベタメタゾンジプロピオン酸エステル外用薬よりも改善を示し,さらに4週後においても着実に同様な高い改善効果を示した.改善効果に及ぼす影響の検討では,肥満者(BMI≧30)において配合外用薬の効果に若干の低下が認められたが,ベタメタゾンジプロピオン酸エステル外用薬の効果減弱に比べると改善効果への影響は小さいと考えられた.その他要因の検討では配合外用薬の効果発現への影響は認められなかった. 結論:配合外用薬は1日1回塗布で尋常性乾癬患者の皮膚症状を塗布1週後から速やかに改善し,その優れた治療効果は患者要因に左右されることなく発揮されると考えられた.
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