日本臨床皮膚科医会雑誌
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33 巻, 4 号
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論文
  • 常深 祐一郎, 穀澤 恭一, 川島 眞
    2016 年 33 巻 4 号 p. 471-476
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    爪白癬診断のための真菌学的検査実施の実態を把握するため,インターネットによるアンケート調査を実施した.爪白癬を診療する医師(皮膚科医,一般内科医,整形外科医)に対し,最近1ヵ月間に爪白癬の診断をつけた患者数,診断のために検査を実施した患者数と実施した検査,検査を実施した場合は検体採取者および検査実施者を問い,検査未実施の場合は実施しない理由について質問した.20床未満の施設(以下,GP)に所属する医師224名(皮膚科医117名,一般内科医56名,整形外科医51名),20床以上の施設(以下,HP)に所属する医師235名(皮膚科医112名,一般内科医55名,整形外科医68名)から回答を得た.爪白癬の診断における検査の実施率は,皮膚科医ではGP94%,HP97%と高かったが,一般内科医ではGP56%,HP71%,整形外科医ではGP51%,HP67%と検査未実施が一定割合あった.行われた検査は,いずれの診療科でも顕微鏡検査が最も多かった.検査実施の際の検体採取は,皮膚科では医師自身による検体採取がほとんどであるが,一般内科医と整形外科医共に40%程度の症例で看護師や臨床検査技師が検体採取を行っていた.顕微鏡検査は,皮膚科医ではGP,HPいずれも全例を医師が実施しているが,一般内科医・整形外科医共にGPでは検査センターなどの外部委託が約半数で,HPでは院内検査室が約7割を占めていた.検査を行わなかった患者がいる理由は,皮膚科では「視診で診断できる」「検査の陽性率が低い」「検査は時間がかかる」といった理由が上位を占め,その他の診療科では「視診で判断できる」「検査設備がない」,「検査は時間がかかる」「検査経験がない/検査方法を知らない」といった理由が上位を占めた.このように皮膚科では検査の実施率は高く,検体採取及び検査は医師自身が行っているが,一般内科や整形外科では検査は十分に実施されておらず,検体採取や検査が医師以外の医療従事者によって行われていることが明らかになった.
  • 一ノ宮 愛, 西本 勝太郎
    2016 年 33 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    80歳女.初診の1~2年前より逆流性食道炎による胸焼け症状のため摂食不良が続き,約10kgの体重が減少した.鶏肉以外の肉類や乳製品を摂取しない偏食もあった.数か月前から全身倦怠感とふらつき,下痢が出現.1ヶ月前より両手背紅斑を認め,近医でステロイド外用を行うも軽快しなかった.当科初診時,両手背に境界明瞭な赤褐色斑があり,鱗屑,痂皮,びらんを伴っていた.血中ニコチン酸は正常下限値であったが,病歴・症状よりペラグラと診断した.ニコチン酸アミド内服を開始したところ,約10日で皮疹は略治し,その他の症状も数日で軽快した.ペラグラの3主徴のうち,精神・神経症状,消化器症状は特異性に乏しく,ペラグラの診断には皮膚所見が極めて重要であった.栄養を十分に摂取できる現在,ペラグラは非常に稀な疾患であるが,アルコール多飲や摂食不良,消化管切除術の既往などがある患者が,露光部や摩擦部に左右対称性の赤褐色斑を呈した場合には鑑別疾患の一つにペラグラを挙げる必要がある.また,ペラグラの患者では他のビタミンや亜鉛等の欠乏を合併した低栄養状態であることが多く,原因検索を行った上で全体的な栄養状態を把握し,食生活の改善とニコチン酸に加え,総合的に蛋白,亜鉛,ビタミンなどを補充することも重要である.
総説
  • 濱﨑 洋一郎
    2016 年 33 巻 4 号 p. 483-491
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/22
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群(以下SS)は涙腺や唾液腺などの外分泌腺障害を特徴とし,多彩な腺外病変を伴う自己免疫疾患として広く一般に認識されている. また,SSでは多彩な皮膚病変がみられる.我々の教室における,一次性SSの皮膚病変の集計では凍瘡,光線過敏症,Raynaud症状,薬疹,環状紅斑などが高頻度にみられた.SSを強く疑わせる皮膚病変は,環状紅斑,高γ-グロブリン血症性紫斑,虫刺様紅斑である.稀ではあるがSSと関連の深い疾患として萎縮性結節性皮膚アミロイドーシス ,無汗症が挙げられる.難治性の凍瘡,光線過敏症,薬疹,下腿潰瘍や壊疽の診療時にもSSを念頭においた診療が必要である.発熱をともなうSSの皮膚病変には結節性紅斑,蕁麻疹様血管炎がある.血管炎による皮膚潰瘍と壊疽,結節性紅斑,蕁麻疹様血管炎,高γ-グロブリン血症性紫斑,環状紅斑の治療は,副腎皮質ステロイド薬の全身投与が症例によって適応となる.外来での定期診察では,皮膚病変以外の腺外病変の合併についても留意して診療する.
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