日本臨床皮膚科医会雑誌
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35 巻, 1 号
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総説
  • 佐藤 友隆
    2018 年 35 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー
     爪白癬の診断および治療経過観察にはKOH直接鏡検による真菌要素の確認が不可欠でありダーモスコピーによる観察も有用である.治療は経口抗真菌薬または爪白癬治療外用薬である.本邦における爪白癬原因菌のほとんどはTrichophyton rubrumTrichophyton mentagrophytesである.急速に高齢化社会が進んでいる本邦では年齢と伴に罹患率が上昇する爪白癬において,世界に先立ち10%エフィナコナゾールおよび5%ルリコナゾールの2剤の爪白癬治療外用剤が処方可能となり,新たな治療戦略を立てることができるが,外用剤による副作用としても爪甲の白濁が生じうる外用治療においては皮膚科医による正確な診断と経過観察でのKOH直接鏡検が必須である.
論文
  • 中川 秀己, 磯前 和男, 江藤 隆史
    2018 年 35 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
     日本人尋常性乾癬患者を対象として,カルシポトリオールとベタメタゾンジプロピオン酸エステルの配合ゲル剤(以下Cal/BDPゲル)とCal/BDPの配合軟膏剤(以下Cal/BDP軟膏)の有効性および安全性を比較検討した.尋常性乾癬患者(206例)を無作為にCal/BDPゲル群(101例)およびCal/BDP軟膏群(105例)に割り付け,各治験薬を頭部および体部の2つの標的病変に1日1回4週間連続塗布し,ベースライン時からの乾癬症状の改善度を評価した.頭部の標的病変に対する4週時の全般改善度(臨床症状が「略治」または症状の変化が「中等度改善」以上と判断された被験者の割合)を主要評価項目とした.また,被験者による使用感(「塗りやすさ」および「べたつき感」)についても評価した.Cal/BDPゲル群およびCal/BDP軟膏群の4週時における全般改善度は,頭部の標的病変に対してそれぞれ97.9%および96.0%,体部の標的病変に対してそれぞれ80.9%および95.0%であった.Cal/BDPゲル群の使用感は,「塗りやすさ」および「べたつき感」ともに,頭部および体部いずれの標的病変に対してもCal/BDP軟膏群と比較し有意に優れていた.両群で認められた副作用はすべて軽度であった.以上より,尋常性乾癬患者に対してCal/BDPゲルは高い有効性を示し,特に頭部などの有毛部位への使用感に優れることから,アドヒアランスの向上そして実臨床での高い治療効果が期待される外用薬と考えられる.
  • 林 伸和, 川端 康浩
    2018 年 35 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
     イボにヨクイニンを奨める広告を見て,脂漏性角化症(老人性疣贅)にヨクイニンの処方を希望して皮膚科を受診する患者が少なくない.そこで,ヨクイニンの脂漏例角化症に対する有効性を文献的に検討した. 【方法】医薬品医療機器総合機構のホームページで一般用を含むヨクイニンに関係する医薬品の添付文書の適応症を確認し,医学中央雑誌とPubMedを用いて,脂漏性角化症に関連するヨクイニンの論文を検索し,該当した論文を精査した. 【結果】ヨクイニンを配合する医療用医薬品は36品目あり,そのうちヨクイニンエキスの2品目は尋常性疣贅と青年性扁平疣贅に適応があり,麻杏よく甘湯エキスはイボを適応症としていた.一般用医薬品・要指導医薬品には,ヨクイニンを主成分とする製剤(狭義のヨクイニン)が7品目,せんじ薬である薏苡仁煎が1品目あり,狭義のヨクイニンの適応症は「いぼ,皮膚のあれ」,薏苡仁煎では,「いぼ,皮膚のあれ,利尿,関節痛」となっていた.医学中央雑誌を用いた検索では,「ヨクイニン」で453,「ヨクイニン」と「いぼ」の組合せで113の論文が抽出され,「ヨクイニン」と,「老人性疣贅」もしくは「脂漏性角化症」で3つの論文が該当したが,いずれもヨクイニンの脂漏性角化症への有効性を述べたものではなかった.また,PubMedではヨクイニンで6論文があるが,脂漏性角化症に関係するものはなかった. 【結論】ヨクイニンに脂漏性角化症の適応はなく,有効性を述べた論文はなかった.一般用医薬品などでは平易な病名にするため「いぼ」と表現しているが,ヨクイニンの適応疾患として老人性疣贅は含まれず,ウイルス性疣贅のみを指すと考えられる.患者の誤解をなくすため,適切な啓発活動が必要である.
  • 林部 一人
    2018 年 35 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
     爪白癬診断を目的とした体外診断用医薬品「白癬菌抗原キット」の実臨床における有用性を検討する医師主導臨床研究を実施した.爪白癬が疑われる,もしくは爪白癬との鑑別を要する126例を対象として,鏡検および本キットによる検査を実施し,結果を比較検討した.主要評価項目である両検査の一致率は88.9%であり,臨床的に十分な有用性が確認された.検査に要する時間を含め,本キットの利便性についても良好な評価が得られ,試験参加医師の半数が臨床の現場での使用を望んでいた.爪白癬の治療に抗真菌外用薬が汎用されるようになり,爪白癬の診断はより正確に行われる必要があるが,本キットは鏡検を補完し,爪白癬の診断精度の向上に役立ち,患者負担の軽減,医療経済上のメリットにつながると考える.
  • 戸張 華緒, 澤田 美月, 出来尾 格, 石崎 純子, 田中 勝, 藤林 真理子, 久保 亮治, 椎山 理恵, 佐々木 貴史
    2018 年 35 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    ジャーナル フリー
     55歳女.初診の2年前から前頭部にときに自発痛のある結節を自覚.緩徐に増大し,次第に痛みが強くなってきたため受診した.当科初診時,前頭部正中に大きさ10×8 mm大の表面平滑な淡紅色のドーム状結節あり,ダーモスコピーでは淡紅色の背景に,樹枝状血管が著明であった.またこれとは別に,顔面とくに前額部,鼻唇溝,下顎などに常色米粒大の小結節が密に多発する.毛包に一致せずダーモスコピーでは中央が白色に透見してみえた.前頭部の結節と,下顎の小結節1つをそれぞれ全摘し,病理組織学的にそれぞれ円柱腫と毛包上皮腫と診断した.患者の母,妹,2人の息子と娘に同症状があり,29歳長男の顔面の小結節についても毛包上皮腫と診断した.遺伝子解析を施行し,発端者と長男ともにCYLD遺伝子に変異をみとめ,遺伝形式は常染色体性優性遺伝であった.Brooke-Spiegler症候群は円柱種と多発性毛包上皮腫の合併,家族内発症を特徴とし,女性に浸透性が高い疾患である.悪性腫瘍も生じる可能性があり積極的な精査が必要である.
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