日本臨床皮膚科医会雑誌
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37 巻, 5 号
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論文
  • 今福 信一, 是松 健太, 森 直子, 可児 毅, 松井 慶太
    2020 年 37 巻 5 号 p. 641-649
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/06
    ジャーナル フリー
    アメナメビル(アメナリーフ®錠 200 mg,以下,AMNV)は世界に先駆けて,本邦で発売されたヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害する抗ヘルペスウイルス薬であるが,日常診療下における情報はまだ十分ではない.そこで,AMNVの日常診療下における安全性および有効性について特定使用成績調査を実施しており,本報告ではAMNV投与1ヵ月後までの中間集計結果をもとに検討した. 安全性解析対象症例1,345例中11例(0.82%)に副作用を認め,主な副作用は,「上腹部痛」「下痢」「発熱」が各2例であった.承認時に医薬品リスク管理計画で重要な潜在的リスクとして設定されている血小板減少に関連する事象として血小板減少症を1例,歯肉出血を1例,心血管系事象に関連する事象として動悸を1例認めたが,いずれも非重篤であった.有効性解析対象症例1,338例において,皮膚症状(紅斑・丘疹,水疱・膿疱)の消失までの日数の50%点は,いずれも8日目であった.完全痂皮化までの日数の50%点は12日目,疼痛消失までの日数の50%点は22日目であった. 本調査に組み入れられた症例の患者背景,治療実態等を疫学的な観点およびAMNVの特徴を踏まえ考察したので報告する.本中間集計では,全調査症例数3,000例のうち,1,446例のみを対象としており,最終集計時に詳細な集計解析を実施する予定である.
  • 小林 祐香莉, 梅垣 知子, 石崎 純子, 田中 勝
    2020 年 37 巻 5 号 p. 650-654
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/06
    ジャーナル フリー
     78歳女性.約1年前に疼痛を伴う左腕の皮疹を自覚した.初診時,左前腕に直径4 mmの表面平滑,常色,弾性硬で可動性良好な皮内結節があった.病理組織は真皮深層の境界明瞭な結節性病変であり,異型性のない紡錘形の腫瘍細胞が束状に増殖していた.免疫組織化学染色では,S-100蛋白染色が腫瘍細胞の核と細胞質に陽性で,neurofilament染色は一部の腫瘍細胞の細胞質に陽性で,軸索に相当すると考えられた.またepithelial membrane antigen (EMA) 染色は結節の被膜に陽性であった.これらの病理組織学的所見からpalisaded encapsulated neuroma (PEN) と診断した. PENは中高年男女の顔面,とくに鼻周囲や頬,口唇などに好発する良性,単発性の神経系腫瘍である.本疾患の同義語にはsolitary circumscribed neuromaがある.自験例のように四肢に生じる例は比較的稀であり,S-100蛋白が陽性になるその他の神経系腫瘍と,病理組織学的な鑑別が必要となる.特にPENと神経鞘腫は豊富なSchwann細胞を有しS-100蛋白染色に陽性で,EMA染色陽性の被膜を有する点が共通するが,神経鞘腫は軸索を有さずneurofilament染色陰性となる点が異なる.また外傷性神経腫は軸索を有しneurofilament染色陽性であることがPENと共通するが,被膜を有さず結節周囲がEMA染色陰性となる点で鑑別される.また神経線維腫は軸索を僅かに混ずることがあり,時にneurofilament染色が弱陽性となるが,被膜を有さずEMA染色陰性となる点が異なる.他にもS-100蛋白陽性となる紡錘形細胞腫瘍は多数あるが,PENと同一の染色パターンを示す腫瘍はないことから,PENの診断に上記3つの免疫組織化学染色が有用である.
  • 佐藤 俊次, 渡邉 荘子, 田中 勝
    2020 年 37 巻 5 号 p. 655-661
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/06
    ジャーナル フリー
     扁平苔癬様角化症(LPLK)は,脂漏性角化症や日光黒子の一部または全部が経時的に自然消退する過程の病態である.  今回われわれは顔面の病変が完全に自然消退した2例のLPLKを報告し,そのダーモスコピー所見とLPLKの自然消退の3段階分類のダーモスコピー構造とを比較検討した.初診時に症例1では炎症症状を示す淡紅色領域(pinkish area)と環状顆粒状構造(annular granular structures)が,症例2では環状顆粒状構造が観察され,両病変ともにLPLKの自然消退のダーモスコピー分類の初期に相当した.その後,症例2では時間経過とともにダーモスコピー所見が変化し後期の所見である青灰色色素小点(blue-gray fine dots)の構造が観察された.症例1は2年6か月,症例2は4年4か月後に病変は完全に消失した.2症例ともに,同じ初期のステージの病変であるが,ダーモスコピー所見は異なっていた.LPLKの自然消退の初期は,炎症症状を示す淡紅色無構造領域からはじまり,やがて,環状顆粒状構造が観察される.LPLKのダーモスコピー所見は,経時的に変化するため,時期によっては,悪性腫瘍との鑑別が困難となり生検が必要となる.LPLKの自然消退のステージ分類の初期に相当する典型的な環状顆粒状構造や後期に相当する微細な青灰色色素小点などが病変全体に観察される病変では,悪性腫瘍を除外できれば,生検せずに定期的経過観察により,自然消退を確認できると思われた.
  • 高澤 摩耶, 梅本 尚可, 山田 朋子, 出光 俊郎, 大河原 晋, 川瀬 正昭
    2020 年 37 巻 5 号 p. 662-667
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/06
    ジャーナル フリー
     当科ではこれまで透析療法中に水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid以下BP)を発症した症例を8例経験している.8例全例が糖尿病性腎症のため血液透析を施行中で,全例dipeptidyl peptidase-4(以下DPP-4)阻害薬を内服していた.DPP-4阻害薬は1例のみ内服を継続した.8例中7例でステロイドを全身投与し,うち1例はさらに血漿交換も行った難治例であった.自験例8例は臨床経過や検査所見などから,通常のBP,DPP-4阻害薬によるBPと透析によるBPの3つが混在している可能性があり,過去の文献との比較から透析中に発症したBPに重症例が多い傾向があると考えた.DPP-4阻害薬によるBPは一般的に内服中止により改善し,ステロイド内服を必要としない例が多いが,透析でDPP-4阻害薬内服中の患者がBPを発症した場合には,上記3つが混在している可能性を考え,まずDPP-4阻害薬を中止し,改善がない場合は続いてステロイド内服を考慮する必要がある.
  • 小松 広彦, 梅垣 知子, 田中 勝, 三浦 圭子, 布袋 祐子
    2020 年 37 巻 5 号 p. 668-673
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/06
    ジャーナル フリー
    脂腺癌は脂腺への分化をもつ上皮性悪性腫瘍で,高齢者の頭頚部に好発することから,紫外線暴露との関係が示唆されている.今回我々は鼡径部に生じた脂腺癌を2例経験したので病理学的特徴の考察を踏まえて報告する. 症例1:50歳,男性.初診の1年前から右鼡径部に皮疹が出現し,増大した.約60×40 mm大の紅色腫瘤を摘出した.症例2:77歳,女性.20年前より左鼡径部に皮疹が徐々に増大した.27×15 mm大の潰瘍を伴う紅褐色結節を切除し,病理組織学的検討を行った.自験例2例とも,脂腺への分化を伴う異型性を有する腫瘍細胞が胞巣を形成しつつ増生しており,腫瘍胞巣の辺縁部は扁平な核を有する細胞で縁取りされていた.また免疫染色で,腫瘍細胞はEMA(epithelial membrane antigen)陽性かつBer-EP4陰性であったこと,腫瘍胞巣の中央部に存在する比較的淡明な細胞質を持つ細胞がアディポフィリン陽性であったことから,脂腺癌と診断した.症例1は脂腺癌として高分化型であり,比較的典型的な病理学的所見を呈したが,症例2は脂腺分化に乏しい有棘細胞様細胞で占められた低分化の脂腺癌であり,鑑別に苦慮した.低分化の脂腺癌は基底細胞癌や有棘細胞癌との鑑別が必要となるため診断に苦慮することがあるが, 脂腺において特徴的にみられる形態を見つけ,EMA,Ber-EP4,アディポフィリンを用いた免疫染色を行うことが有用であると考えられた.脂腺癌が鼡径部に発生するのは稀であり,紫外線曝露が少ないためと考えられる.今後,発生原因の検索も含めて症例の蓄積が必要であると考えられた.
  • 山下 直子
    2020 年 37 巻 5 号 p. 674-679
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/06
    ジャーナル フリー
    75歳以上の爪白癬患者49例(男性13例,女性36例)に対してホスラブコナゾール内服療法を行い,投与後6ヶ月〜1年3ヶ月の観察において治療効果と安全性の検討を行った.49例中42例において12週間の内服を完遂できた.内服終了時に全42例で爪混濁比の減少を認めた.1年以上観察した23例において完治が16例に見られた(69%).7例では治療を完遂できなかったが,その理由として4例は食欲低下で中止,1例は胸部不快感で中止,1例は肝機能値異常のため中止,1例は内服薬への不信のための自己中止であった.4例で肝機能値異常が出現したが,うち1例の胆石胆嚢炎による中止例以外は治療を継続できた. 今回の治療効果並びに副作用の結果は75歳以上の高齢者においても、主に70歳以下を検討された国内第Ⅲ相臨床試験とほぼ変わらず,高齢者でも安心して治療できる薬剤であることが確認され,爪白癬の治癒も期待できる有効な治療であると考えられた.
  • 影治 里穂, 飛田 泰斗史, 桑山 泰治
    2020 年 37 巻 5 号 p. 680-683
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/06
    ジャーナル フリー
    23歳,男性.来院1年前より肛門周囲の腫瘤を自覚し,2か月前から増大傾向であった.前医より,尖圭コンジローマを疑われ当科に紹介された.肛門周囲に長径2.5cmと2cmの腫瘤があった.病理組織検査では真皮全層に炎症細胞が浸潤し類上皮肉芽腫が形成されていた.術後3週間後より発熱,腹痛,下血が出現した.下部消化管内視鏡検査の生検病理組織は肉芽腫であり,クローン病と診断した.消化器症状出現前に出現したクローン病の肛囲皮垂と診断した.クローン病は高率に肛門部病変を合併し,腹部症状に先行して皮膚病変が出現する症例も少なくない.肛門周囲の腫瘤を見た時には,クローン病の皮垂も鑑別に入れる必要がある.
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