日本臨床生理学会雑誌
Online ISSN : 2435-1695
Print ISSN : 0286-7052
50 巻, 5 号
日本臨床生理学会雑誌
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 會田 啓介, 上遠野 賢之助, 白神 梨沙, 田中 健, 萩谷 政明, 本間 敏明
    2020 年 50 巻 5 号 p. 141-146
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/03/14
    ジャーナル オープンアクセス

     睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠時におこる上部気道の狭窄や閉塞状態により肺胞換気量の減少を伴うため,低酸素血症ばかりではなく高炭酸ガス血症状態であることが考えられている.

     このような病態において,動脈血炭酸ガス分圧は病状の把握や治療による経過を知る上で大切な指標であり,SAS 患者は覚醒時にも肺胞低換気状態の可能性が疑われる.そのためにSASの診断時や治療開始時に覚醒時の精密評価として非侵襲的に動脈血炭酸ガス分圧を測定し,その有用性を検討した.

     経皮的炭酸ガス分圧(PtcCO2)測定装置(TOSCA 500TM)を用いPtcCO2 を測定し初診覚醒時におけるSAS の重症度と関連を検討した.

     SAS の重症度やBMI とは有意な相関関係は認められなかったが,睡眠関連低換気障害(SRHD)や肥満肺胞低換気症候群(OHS)などの評価のためにPtcCO2 の測定は有用と考えられる.

総説
原著
  • Daisuke SUZUKI, Yu IWASAKI, Yasutaka SHIGEMURA, Yoshio SUZUKI
    2020 年 50 巻 5 号 p. 163-171
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/03/14
    ジャーナル オープンアクセス

     Taurine (2-aminoethanesulfonic acid) is a sulfur-containing amino acid widely distributed in mammalian tissues. Although taurine is structurally analogous to the neurotransmitter gammaaminobutyric acid, suggesting that it may promote neuroendocrine activity, its role in promoting psychological stress in human subjects remains unelucidated. To this end, we aimed to determine the impact of a single oral dose of taurine on psychological stress induced by a calculation task. Healthy adult male university students (n = 20) participated in a double-blinded placebocontrolled crossover trial. On day 1 of the experiment, participants ingested 3 g of taurine or 1g of dextrin (placebo). After a 15-min rest period, each participant was challenged with two calculation tasks, each lasting for a period of 15 min and separated by a 5-min rest period. In the second part of the experiment, participants ingested 1 g of the dextrin placebo and were asked to remain seated, with no specific tasks provided (control). We collected saliva samples from each participant before and after the experimental trials. The levels of salivary amylase activity increased significantly in response to the dextrin ingestion in both the placebo (p<0.01) and control (p<0.05) settings but not in response to taurine ingestion. The concentration of salivary chromogranin A (CgA) decreased significantly in response to taurine ingestion (p < 0.01) but not in response to the dextrin ingestion in both the placebo and the control experiments. The changes in amylase activity (placebo>control>taurine) suggested that the increase in amylase activity that was amplified by the calculation task was suppressed by taurine ingestion. Similarly, CgA concentration in saliva from participants in the control trial exhibited a decrease, but this was increased in response to the calculation tasks (placebo). Taurine ingestion not only suppressed this increase but also amplified its decrease. Collectively, our results indicated that taurine ingestion suppressed the increase in the amylase activity and the decrease in CgA concentration in saliva in response to a calculation task. This finding is consistent with previous reports indicating that taurine can activate inhibitory signals to suppress adrenergic stimuli.

  • 武内 孝太郎, 岩坂 壽二, 松村 光一郎, 岩坂 潤二, 菅 俊光, 清水 祐司, 岡本 博美, 能口 司, 早波 光, 澤田 清, 水野 ...
    2020 年 50 巻 5 号 p. 173-178
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/03/14
    ジャーナル オープンアクセス

     目的:運動トレーニングが体温に及ぼす影響を評価する.

     方法:88 人の高齢者が2 年間,週2 回の運動トレーニングを実施した.非接触赤外線体温計および生体電気インピーダンス分析は開始時および2 年後に評価した.参加者は,36.2℃のベースライン体温によって低い体温群(n = 60)と正常の体温群(n = 28)に分類した.

     結果:低い体温群では,2 年間の運動トレーニング後に体温が上昇した(36.05 ± 0.12℃から36.29 ± 0.12℃,p < 0.0001)が,正常の体温群では不変であった.体温の変化量と開始時の体温の間に有意な負の関係を認めた(r =- 0.69, p < 0.001),すなわち低い体温の人ほど2 年後の増加分は大であった.多変量解析により感冒罹患の頻度が減少した要因は体温上昇であった.

     結論:運動トレーニングは高齢者,特にベースライン体温が低い人の体温を上昇させ,感冒罹患の頻度を減少させた.

  • 高畠 孝児, 砂川 昌範
    2020 年 50 巻 5 号 p. 179-185
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/03/14
    ジャーナル オープンアクセス

     本研究では,腹部手術を受けた患者において,周術期の術後せん妄が血清BDNF およびproBDNF レベルと関連しているか否かを検討した.臨床で応用可能なバイオマーカーは特定されておらず,術後せん妄発症の予測は患者の回復のための看護計画の策定に貢献することができる.腹部手術後の翌朝に対象者31 名から血液サンプルを採取し,ELISA 法によりBDNFおよびproBDNF の血清濃度を測定した.対象者のうち4 名が術後せん妄を発症した. ELISA で血清濃度を測定した結果,BDNF およびproBDNF の濃度には,術後せん妄の有無による統計学的有意差はみられなかった.ただし,術後せん妄を発症した4 症例中2 例のproBDNF 濃度は顕著な高値を示した.さらに,低活動型せん妄の場合,proBDNF 濃度の著しい増加とカリウム値の減少がみられた.

     腹部手術を受けた日本人31 名の患者を対象に,手術翌日における血清BDNF およびproBDNF レベルとせん妄の有無との関連を検討した結果,以下の3 点が明らかになった.第一に,せん妄が観察された場合,BDNF 濃度に変化はなかったが,proBDNF 濃度が増加傾向にあった.第二に,術後の血清proBDNF 濃度にはカリウム濃度と負の相関がみられた.第三に,低活動性せん妄は低カリウム血症に関連する傾向がみられた.

  • 諏訪 惠信, 宮坂 陽子, 原田 翔子, 仲井 えり, 谷口 直樹, 塩島 一朗
    2020 年 50 巻 5 号 p. 187-192
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/03/14
    ジャーナル オープンアクセス

     近年,心房細動患者の塞栓症予防に直接経口抗凝固薬が使用可能となったが,添付文書に従っていない不適切な減量(“off-label”under-dose)投与が及ぼす影響についての報告は少ない.そこで本研究は,2012 年から2015 年に当院で新規にリバーロキサバンが投与された非弁膜症性心房細動患者で,腎機能が保たれた連続患者を対象とし,塞栓症と心血管死の複合イベントと出血イベントを調査した.リバーロキサバン10 mg 投与患者を“off-label”under-dose 群(N =65)とし,15 mg の適正使用群(N = 235)と比較検討した.対象患者300 例の平均観察期間13 カ月中に,複合心血管イベント13 例,出血イベント22 例を認めた.Cox 比例ハザード解析で,“off-label”under-dose 群は複合心血管イベントの有意な危険因子であったが(ハザード比=3.86, P=0.03),出血イベントでは有意ではなかった.つまり,リバーロキサバンの“off-label”under-dose 投与患者は塞栓症と心血管死のイベントが有意に増加したが,出血の抑制は認められなかった.

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