日本臨床生理学会雑誌
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最新号
日本臨床生理学会雑誌
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 眞部 紀明
    2025 年55 巻5 号 p. 109-115
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2026/04/11
    ジャーナル オープンアクセス

     腸脳相関異常症(disorders of gut-brain interaction: DGBI)は消化管運動異常を伴う重要疾患である.DGBI の病態評価に関する最新の知見と,我々の新規アプローチを概説した.食道領域の疾患には経鼻内視鏡下超音波検査を用いた運動評価法を開発し,食道壁の伸展性障害の評価を可能にした.小腸DGBI にはイレウスチューブを用いた運動評価法を開発し,慢性特発性偽性腸閉塞と癒着性腸閉塞の鑑別に臨床応用している.慢性便秘症では体外式超音波法による病態評価と治療戦略,直腸感覚低下への新たな治療の試みについて解説した.これらの革新的な診断・評価法は,DGBI の病態解明と個別化医療を推進し,患者の生活の質向上に貢献することが期待される.

  • 伊東 由圭, 葛西 隆敏
    2025 年55 巻5 号 p. 117-122
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2026/04/11
    ジャーナル オープンアクセス

     睡眠時無呼吸症候群とは,睡眠中に呼吸停止を繰り返すことで,体内において低酸素状態を引き起こす病態である.症状としては,日中の眠気,疲労感,夜間頻尿などに加え,高血圧,心不全,不整脈などの循環器疾患のリスクにもつながる.原因としては,大きく上気道閉塞を主とする閉塞性睡眠時無呼吸症候群と,呼吸中枢の異常である中枢性睡眠時無呼吸症候群に大別される.検査は測定項目の種類によって,簡易検査と精密検査に分けられ,必要に応じて使い分ける必要がある.治療は無呼吸の重症度や患者背景によって決められる.禁煙,減酒,肥満があれば減量,ベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量・中止などの生活習慣の改善の他,口腔内装置,体位療法,外科的治療も有効である.AHI 20 回/h 以上の無呼吸はCPAP が第一選択であるが,CPAP 脱落症例も多い.CPAP 使用継続困難者に向けて,近年舌下神経刺激療法が保険適用となり注目されている.

  • 舘野 周
    2025 年55 巻5 号 p. 123-128
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2026/04/11
    ジャーナル オープンアクセス

     アルツハイマー型認知症(AD)は1906 年以来,その病態,診断,治療について数多く研究されてきた.2004 年にわが国においてスティグマを減らす目的と治療しうる疾患となることを期待されて痴呆症の日本語名が認知症に変更された.その時期以降20 年間でAD 診療を取り巻く環境は大きく変化した.AD の病態であるアミロイドβを可視化・定量化する陽電子断層撮像の登場により病態に作用する治療法の開発が進み,2023 年以降抗体療法薬がわが国においても保険適用となった.また生活習慣など認知症の発症進行に関与する要因に対する介入で認知症患者数減少が報告され,予防的介入の効果も評価されている.

     今後は発症遅延を目指して①リスク因子への介入②軽度認知障害の早期発見・診断と抗体療法による早期治療③発症後の症状改善薬による治療,を組み合わせた認知症治療戦略が広まっていくことが期待される.

  • 荒木 厚
    2025 年55 巻5 号 p. 129-137
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2026/04/11
    ジャーナル オープンアクセス

     高齢者糖尿病はフレイルになりやすい疾患である.糖尿病におけるフレイル発症の危険因子はHbA1c 高値,低血糖,心血管危険因子,大血管症,腹部肥満などがある.フレイルの発症機序としてインスリン抵抗性,動脈硬化,炎症,酸化ストレス,ミトコンドリア機能異常などがある.フレイル外来患者の縦断研究で脳局所の白質統合性異常,血液GDF15高値,RDW高値,床反力のスピード低下などが新規のフレイル発症の危険因子であることを明らかにした.

     フレイルを考慮した食事療法は適正なエネルギー量と十分なたんぱく質とビタミンを摂取し,低栄養を防ぐ.運動療法はレジスタンス運動またはマルチコンポーネント運動を行う.薬物療法は,低血糖予防,腎機能評価による用量調節,治療の単純化,SGLT2 阻害薬やGLP-1 受容体作動薬を用いた心血管疾患・CKD の予防を行う.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標はDASC-8 などを用いた認知・ADL の評価に基づいてカテゴリー分類し,低血糖が危惧される薬剤の使用の有無を考慮して決定する.認知機能,ADL,フレイル・サルコペニア,心理,栄養,薬剤,社会面を含む高齢者総合機能評価(CGA)を行い,カテゴリーⅡの段階からのフレイル対策,治療の単純化,社会的対策などを行うことが高齢者糖尿病の個別化医療となる.

原著
  • 古田 万奈, 野田 明子, 奥田 将人, 山崎 球人, 安間 文彦
    2025 年55 巻5 号 p. 139-144
    発行日: 2025/12/01
    公開日: 2026/04/11
    ジャーナル オープンアクセス

     目的:高齢化社会では,軽度認知障害が増加し,その初期症状に嗅覚障害がしばしば認められる.本研究では,認知機能低下の早期発見のためのスクリーニングを目的とし,地域在住高齢者における認知機能,嗅覚機能および血圧との関係を検討した.

     方法:対象は,地域在住高齢者44 例(年齢71.0 ± 5.6 歳)であった.においスティック(Odor Stick Identification Test for Japanese; OSIT-J)を用い,嗅覚機能を評価した.改訂版長谷川式簡易知能評価スケール,Trail Making Test(TMT-B)およびN-back task(1-back task)により,認知機能を評価した.収縮期・拡張期血圧および上腕-足首間脈波速度(brachial-ankle pulse wave velocity; baPWV)を測定した.

     結果:TMT-B の所要時間はOSIT-J スコアと有意な相関関係を示し,1-back task の正解率は収縮期血圧およびbaPWV と有意な相関関係を示した.重回帰分析では,OSIT-J スコアはTMT-B の所要時間,また,収縮期血圧は1-back task の正解率,の各々有意な因子であった.

     結論:地域在住高齢者の認知機能低下の早期発見に嗅覚機能評価と血圧測定は有用と考えられた.

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