分野や国境を超えた研究データ共有は世界規模で拡大しつつある。本稿は,まず先進事例として生物データの共有に関する総合的な取り組みについて概説したうえで,最近の注目すべき動向として,イノベーション創出に向けた異分野データの統合,および研究データ共有のインセンティブを確立するためのデータの業績化や引用に関する活動を紹介する。また,日本の研究機関によるデータの公開状況やリポジトリのプレゼンスについて,トムソン・ロイター社のData Citation Index(DCI)と世界のリポジトリのディレクトリであるre3data.orgを用いて調査した。日本の研究機関がかかわるデータは約6万2,000件で全体の4.3%を占めており,分野は生化学・分子生物学,遺伝学,分光学が多かった。re3data.orgに収録されているリポジトリは43件,うち認証リポジトリは10件であった。公開したデータの発見可能性を高め,さらなる活用を目指すためには,リポジトリの認証基準を満たすことや相互運用性の向上が重要だろう。
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