民事訴訟の増大などに伴い,種々のインシデントが発生した際に,将来行われうる裁判で証拠として使用できるようにするための電磁的記録の収集や分析の技術およびその手順であるデジタル・フォレンジックが重要性を増している。本稿では,デジタル・フォレンジックの定義や手順の概略を最初に記述する。次に,内部からの情報の流出事案を例にとり事前準備段階,データの収集段階,データの復元段階,データの分析段階,報告書の作成段階ごとにその方法を解説する。そして,多様なデジタル・フォレンジックの分類軸を示し,全体像を示すとともに,データ復元技術等について少し詳しく説明する。最後に,ネットワーク・フォレンジック技術等,今後重要性が増すと予想される技術に言及する。
G8オープンデータ憲章以降,オープンデータという言葉が広く流通するようになり,主に行政や研究の分野においてすでに定着したようにもみえる。しかし,オープンデータという言葉自体には厳密な定義が存在しないため,それらがもたらす恩恵や,何によって恩恵がもたらされるのか,その可能性を担保するために必要なこと等,オープン化のソフト面について,興味はもちつつも具体的なイメージを描きにくい方が多いのではないだろうか。今後さらにさまざまなデータのオープン化を推進していくにあたり,具体事例の提示や現状の課題を広く共有することは重要である。本稿は,筆者がこれまで実施してきたオープンデータの再利用にかかわる研究の紹介を通し,オープンデータがもたらす恩恵の具体例を提示するとともに,その恩恵は何によってもたらされうるのかについて議論したい。
「エビデンスに基づく教育」(Evidence-based Education)とは,教育研究によって政策や実践を実証的に裏づけることを意味する言葉である。エビデンスを産出するとされる研究は,さまざまな形態を取る研究のうち,社会的活用を第一義として行われるものである。本稿では,「エビデンスに基づく教育」という言葉が登場した社会的背景として,知識経済下における知識生産,研究成果の効率的活用といった変化を取り上げる。次いで,エビデンスを巡って,供給側の研究者の動きとして医療や教育研究の有効性の問題,需要側の政策立案者の動きとして説明責任,教育予算の獲得と費用対効果の問題を概観し,最後に知識マネジメントの観点から研究と政策との関係について考える。
国際的な調査である「OECD生徒の学習到達度調査(PISA調査)」の実施方法とデータ公開,さらにデータの利用方法について,筆者の経験から,PISA2015年調査を基に紹介する。はじめにPISA調査の概要を説明する。PISA2015年調査の実施については,特に各国・地域間でどのように比較可能な調査を実現しているか,実施マニュアルの作成,調査実施者研修,第三者評価の観点から詳しく述べる。PISA調査の結果公開と利用については,生データだけでなくアンケート質問調査票や指標の算出方法のドキュメントなど,関連ドキュメントをも公開することが研究データの公開には必要なことを説明し,報告書や関連する書籍の紹介とともに,関連するWebページであるPISA Data Explorerの利用方法について紹介する。
日本分析化学会発行の国際分析化学論文誌である『Analytical Sciences』は,1985年に創刊された英文月刊誌であり,年200~300報の分析化学に関する科学技術論文を世界に発信してきた。2001年以来,本誌は完全なオープンアクセス誌として,誰もが自由に閲覧できるシステムを採用している。本稿では,本誌の情報発信強化戦略として取り組んでいるジャーナル内容の基盤強化,編集委員と学会事務局の協働的取り組み,そして国際分析化学誌との連携による強化策について概説する。
近年,OverleafやAuthoreaといったオンラインLaTeXエディターの登場が相次いでいる。これらは単なる論文執筆のためのツールではなく,研究者のライフサイクルにおいて現在大学図書館がカバーしきれていない論文執筆から投稿・出版のプロセスをサポートし,研究ワークフローのミッシングリンクを埋める可能性をもっている。従来のライティングツールの枠組みを超え,論文投稿プロセスを変革する可能性を秘めたこの「共同ライティングツール」は,学術情報流通にかかわる出版社・研究機関などにどのような影響を与えるのか。本稿では,共同ライティングツールにおける代表的なサービスOverleafに着目し,その概要,特徴的な機能そして導入事例の紹介を通じて,論文投稿プロセス変革の可能性や大学図書館における研究支援のあり方を展望する。
「電子編集」第1文
誤:編集術(これを「電子編集」と名づけて)をまとめ
正:編集術を(これを「電子編集」と名づけて)まとめ
「文字や言語への興味」後ろから2番目の文
誤:すばらしさを強調していた
正:すばらしさを強調しておられた