1. 自家考案無食鹽食餌ニヨリ家兎ヲ飼養スレバ,概シテ數日,少數ニハ10數日ニテ無食鹽尿 (Achlorurie) ヲ見ル.但此場合血液「クロール」量ニハ終始變化ヲ見ズ.
2. 無食鹽食餌飼養,無食鹽尿排出家兎ニ於ケル諸種利尿劑(「コツフエイン」,「テオチン」,「オイフイリン」,「ヂウレチン」,「ノヴアヅロール」,「ザリールガン」,高張葡萄糖液)卜「クロール」血像竝ニ「クロール」排泄トノ關係ヲ見シニ,「コツフエイン」,「テオチン」,「ヂウレチン」,「オイフイリン」等ニヨリテハ僅微ニ,「ノヴアヅロール」ニヨリテハ輕度ニ,「ザリールガン」ニヨリテハ稍著明ナル尿中「クロール」ノ排泄ヲ觀ラレ,高張葡萄糖液ニヨリテハ無影響ナルヲ觀察セラル.此際何レノ場合モ「クロール」血像ニハー定シタル著變ヲ認メラレズ又尿中「クロール」ノ排泄モ證セラレザリキ.
3. 無食鹽食餌飼養家兎ニ實驗的ニ各種ノ肝臟機能障碍ヲ惹起セシメタルニ,共ノ「クロール」排出竝ニ「クロール」血像ニハ影響ヲ及ボサザリシ事ヲ觀察セラレタリ.
4. 無食鹽食餌飼養家兎ヲ「テルミン」若クハ「チフスワクチン」ヲ以テ發熱セシムルニ,其ノ「クロール」血像ハ輕度上昇ニ傾クモ尿「クロール」排出ハ證スルヲ得ズ.
5. 無食鹽食餌飼養「テルミン」若クハ「チフスワクチン」發熱家兎ニ「ザリールガン」ヲ注射スル時ニハ,大量ノ尿「クロール」排出ヲ證セラレ,單獨「ザリールガン」注射時ノ數倍ニ達ス.此場合「テルミン」發熱「ザリールガン」家兎ニテハ,其ノ血液「クロール」量モ亦増騰シ,其ノ増昇ノ時間的關係ニ於テハ,「クロール」血像ガ「クロール」排出ニ先驅スル傾向アリ.「チフスワクチン」發熱「ザリールガン」家兎ニテハ,日ヲ經ルニ從ヒ減降「クロール」血像ヲ認メラレタリ.
6.無食鹽食餌飼養家兎ニ各種利尿劑ヲ連投シテ後其ノ臟器,組織「クロール」量ヲ檢測シタルニ,「ザリールガン」家兎以外ニテハ其ノ變化僅微ニテ,「ザリールガン」家兎ニテハ其ノ臟器ニ於テハ腎臟竝ニ脾臟,其ノ組織ニ於テハ皮膚及ビ筋肉ニ稍著シキ「クロール」量ノ低減ヲ證セラレタリ.
各種肝臟機能障碍家兎ニ於テハ,肝臟ニテ著明ナル「クロール」増量ヲ,筋肉ニテ輕微ナル減量ヲ證セラレタリ.發熱「ザリールガン」家兎ニテハ其ノ臟器(腦,脾臟,腎臟).組織(筋肉,皮膚)ニ於テ尤モ顯著ナル「クロール」ノ激減ヲ認メラル.即チ此後者ノ場合ニ於テ臟器,組織固有「クロール」ノ移動ハ最モ著明ナリ.
7.發熱「ザリールガン」家兎ニテ尤モ著明ニ認メラレシ「クロール」代謝調節失調ハ,恐ラク一方中樞ヨリノ代謝調節機能ガ發熱ニヨリ鈍麻セラレテ臟器,組織「クロール」ノ移動シ易キ状態トナレル際,他方「クロール」中間代謝ニ影響ヲ與フル事至大ナル「ザリールガン」ノ作用スル事ニヨル二重ノ結果卜推セラル.
擱筆ニ臨ミ終始御懇篤ナル御指導ヲ賜ハリタル竹田博士ニ深甚ノ謝意ヲ表シ,本論文御校閲ヲ辱フシタル岡山醫大清水教授竝ニ柿沼教授ニ滿腔ノ謝意ヲ表ス.
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