歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
14 巻, 4 号
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  • 小田島 梧郎
    1972 年 14 巻 4 号 p. 465-481
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺管の形態変化を, 力学的関連状態を条件として立体的視野から観察した。
    1.耳下糖が咬筋前縁で内方屈曲を行なってから, 耳下腺乳頭をもって口腔前庭に開口するまで, 合計7回の屈曲を行なう。
    2.頬筋を貫ぬく耳下腺管はS状強屈をなし, のち粘膜固有層内をラセン走して耳下腺乳頭を斜めに上行する。
    3. 導管粘膜上皮の環走褶はS状強屈部分で著明に現われ, 導管長軸に沿う断面観では円錘鋸歯状を呈し, 次いで頬筋を貫ぬいたのちの管壁の粘膜ヒダはラセン走に変わり, 扁平にして少しく捻転し狭き扁平洞状をなす。
    4.耳下腺管を纏絡する静脈叢は, 導管に対して同心円性に4層配列する。
    5.唾液分泌が俄かに旺盛に起るとき, 導管内を駆動する流れの制御機構を屈曲や褶の模型管を利用して力学的実験で考察を加えた。
  • ヒト唾液β-glucuronidaseとその阻害体
    坂本 亘, 西風 脩, 杉村 俊之
    1972 年 14 巻 4 号 p. 482-486
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    著者らはう蝕や歯周疾患の発生機序並びにその要因を解析する一つの手段として, lySOSomal enzymeとその阻害体について研究した。今回はヒト唾液よりβ-glucuronidaseとglycoproteinよりなるその阻害体の抽出, 純化を試み, 生化的解析をおこなった、本酵素の至適pHはDEAE-cellulose, Sephadex G-200 column chromatographyによる純化により, 出発材料の5.7から4.1にshiftした。このshiftは唾液中に存在する本酵素の阻害物質によることが明らかになった。この阻害物質は蛋白質, ヘキソース, ヘキソサミン, シアル酸等よりなるglycoproteinで, pI2.1, 分子量20万前後で, 阻害様式はnon-competitiveでNaCl, KCl, Na2SO4等の無機イオン, ヒストン, リゾチーム等の塩基性蛋白質添加により可逆的に回復できた。この阻害物質はsialidase処理により失活することから, 又, Perlitshらの上記疾患唾液中の遊離シアル酸が健康人に比して数倍という報告からこの阻害物質の量とこれら疾患において相関関係の可能性を示唆した。
  • 1. サケ科: 2. ベニマスの舌歯
    滝口 励司, 清水 教之, 後藤 清
    1972 年 14 巻 4 号 p. 487-494
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    硬骨魚類の舌歯の形態学を知る目的で本研究に着手し, 本篇ではべニマスOncorhynchus nerka (WALBAUM) の舌歯を肉眼的ならびに顕微鏡的に観察検索した。
    舌歯は6対存在し, 各舌歯は歯冠部が, 凸側を前内方に向けて彎曲した円錐形を呈し, 後外方に傾斜している。
    萠出した舌歯の凹彎側には, 発育途上の次代の舌歯が認められる。
    舌歯の歯冠部には, 外象牙質と内象牙質とが見られる。外象牙質は, 歯冠尖部では厚く, 歯頸部に近づくに連れて, しだいに薄くなり, 歯根には存在しない、内象牙質には歯根底の下層の結合組織層から, かなり多数の毛細血管が進入し, これらは縦走して, 歯冠尖部まで達している。その他, 歯髄からも横走する毛細血管を受け入れ, これらが分岐吻合して, vasodentinの形成に参加する。
    舌歯の歯根底は, やや厚い結合組織層によって, 舌骨鯉骨格の舌部に植立している。
  • 小田島 梧郎
    1972 年 14 巻 4 号 p. 495-508
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    江戸時代人の男女2個体の完全なる上顎第三大臼歯の歯冠および歯根について, 個体の相互間で比較対照と検討をおこなった。智歯における歯冠と歯根との外形と, その両者の内景とは不離不即の関係にあって, それらの相互関係を歴史時代の一時期で推考することも有意義であると思う。
    調査資料のうちで, 歯冠が4咬頭を示しながら, 歯根の短縮や癒合現象をあらわそうとする傾向の強い女性個体歯例と, これとは正反対の現象, すなわち歯冠に比較的退化傾向を示しながら歯根は完全な4根を具えた男性個体歯例を観察したことは, 退化傾向ということが必ずしも同一個体の歯冠と歯根とに同時に現われるとは限らない好例であった。また歯根の水平断研磨標本によって, 根型の変異が歯根の頬側に癒合態度を強くあらわし, 舌側根は最後まで独立した態度を示していた。
  • 星野 洸, 武田 正子, 後藤 嗣雄
    1972 年 14 巻 4 号 p. 509-517
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    従来の走査電子顕微鏡によるエナメル質の研究では, 通常, 金属等を真空蒸着した試料が用いられてきたが, この装置によるエナメル質の観察を基礎的に検討した結果, 低加速電圧を使用すれば, 非蒸着試料を直接に観察しても, 著しい表面帯電とエッジ効果のみられない比較的良質な二次電子像の得られることがわかった。この方法による有効な観察倍率は試料の形状によって制限されるが, エナメル質の自然表面または破折面については約1万倍, 酸腐蝕面については約3千倍であった。この方法にはエナメル質に関する実験的研究において一定部位の形態変化を経時的に追究出来る利点がある。この応用の1例として酸処理によるエナメル質の形態変化を酸処理の前後の像によって示した。
  • 小田島 梧郎
    1972 年 14 巻 4 号 p. 518-529
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    東京都文京区白山2丁目, もと「法伝寺」跡から発掘された江戸時代人の推定40代の男性下顎骨に著明な水平智歯を具える資料を調査し, 下顎骨に植立したままの観察から順次各大臼歯個々の歯冠および歯根とを対照比較によって, 下顎第3大臼歯が遠心から舌側へ90°の内旋をおこした回転歯であることが鑑別できた。よって, その観察過程を記載し, 回転歯をおこした誘因に言及した。
    右水平智歯例の槽間中隔は広大で, すでに軽度の舌側方に内旋をおこした第2大臼歯に下顎第3大臼歯の歯冠が激しく衝突するので, その歯冠の近心側が下顎の左方回転臼磨運動によって舌側方に圧し出され, 遠心から舌側へと90°の内旋する回転歯となった。左智歯例は槽間中隔の狭小で鉛直植立はみたものの, すでに軽度の舌側方回転した第2大臼歯に対する隣接面が突出するため, 智歯の近心隣接面が左方臼磨運動につれて頬側に向きを変え, 遠心側が舌側に内旋する回転歯となった。
  • 第2報体性感覚領SIIIの機能構築
    横田 敏勝
    1972 年 14 巻 4 号 p. 530-538
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ネコの大脳のGyrus suprasylvius anteriorに見出した三次体性感覚領SIIIの単一ニューロンの末梢刺激に対する反応を調べ, この皮質の機能的構築を明らかにしようと試みた。ネコはα-chloraloseまたはpentobarbital sodiumで麻酔した。
    1) SIIIの触覚ニューロンの大多数は, SI-SIIのそれと似た静的特性を示した。すなわち, 様相特異的で, 特定の機械的刺激にのみ反応し, 末梢受容野は限局していた。末梢受容野は, 通常, 反対側にあったが, 中には正中線を越えて同側に及ぶものもあった。
    2) Smにもニューロンの円柱構成 (columnar organization) があるとみられ, 表面に垂直な一本のtrackからえられるニューロンは, 相互によく似た末梢受容野を持っていた。
    3) SIIIにはsomatotopic organizationがみられた。反対側の顔の上半は腹側, 下半は背側, 反対側の首は吻背側にそれぞれ再現されていた。SIIIの後腹側部の多くのニューロンの末梢受容野は, 正中線を越えて同側にも及んでいた。
  • とくに数種の口腔内常在微生物の局在性について
    岡下 守正
    1972 年 14 巻 4 号 p. 539-559
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯根尖病巣の成立やその過程に口腔内常在細菌や細菌性代謝産物が重要な役割を果していると考えられる。そこで抜歯時歯根尖に附着していた74症例の歯根尖病巣における6種類 (Staphylococcus, Streptocoms, Bactericema, Bacterondes, Fusobacterium, Corynebacterium) の細菌および細菌抗原の局在を螢光抗体法を用いて検索すると同時に, 一般的な組織染色法により病巣を病理組織学的に診断歯根膿瘍歯根肉芽腫, 歯根嚢胞の3型に分類を行なって種々検討を加えた。その結果, 74症例中61症例 (82.4%) に各種細菌の菌体もしくは菌体成分と考えられる特異螢光を見い出した。歯根膿瘍では41症例中36症例 (87.8%), 歯根肉芽腫は13症例中17症例 (73.9%), 歯根嚢胞は10症例中8症例 (80.0%) の検出頻度であり, 螢光陽性部位は病巣中心部よりも少し外側に多く認められる傾向にあり, これらの特異螢光は主に菌塊として, また多型核白血球や大食細胞に貪食された形として見い出された。
  • 第1報エナメル基質形成期における45Caのとり込みについて
    岡 伸光, 清水 徹
    1972 年 14 巻 4 号 p. 560-570
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    我々は, エナメル芽細胞の基質形成期における同細胞の無機質 (Caを主体として) に対する役割を知る目的で, 45Caをtracerとして電子顕微鏡的autoradiographyを作成し観察を行った。使用動物は, rat 4匹を用い, 10μc/gを腹腔内に投与し, 15分, 30分, 1時間, 2時間後に各々解体し, 切歯及び臼歯歯胚を摘出し試料とした。電子顕微鏡的autoradiographyは水平の方法に従った。
    観察結果は, 細胞内の局在性は, mitochondoria内に多数のS.G. が見られ, その他粗面小胞体, Golgi野, 核内, 小vesicleに認めた。経時的変化としては, 投与後15分より2時間までには, 一旦とり込まれた45Caは主としてmitochondoria内に入り, 漸時Tomes突起部に移動する状態が観られ, その通路は, 細胞内通過経路をとり, 細胞間隙は通過しないものと考えられた。以上の所見から, 同細胞には, 無機質に対しても重要な役割を持つと考えられる。
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