齲蝕の発生, 進行および歯質崩壊機構が未だ十分解明されておらず, そのため予防, 抑制にも系統立った研究がなされてきていない。それ故, 歯質硬組織の生化学的性状がすみやかに解明されることが要請される。この要請に沿ったこの研究では, 人歯牙象牙質粉末の1N塩酸で可溶化される部分をSephadex G-50でgel濾過し, 3つのpeakを得た (総アミノ基量でFraction I-12.5%; Frac. II-20.8%; Frac. III-66.7%)。全体の2/3を占めるFrac. IIIを更にSephadex G-25で分画したところ, 3つのpeakが得られた (同上; III-A 48.6%; III-B 37.2%; III-C 14.2%)。これらは, gel濾過, 電気泳動で異なった挙動をするのみならず, 構成アミノ酸ででも異なったものであることが分かった。その上III-Cでは, 人歯牙硬組織からはその存在が未だ報告されていないAmino Butyric AcidとみられるNinhydrin陽性物質の存在が確認され, 又その主たる部分が (Ala, Gly2, Asp) と (Ala, Gly2, Glu) とが6~7: 4~3の割合の混合物であることを示唆する興味ある結果を得た。
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