歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
15 巻, 4 号
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  • 柳田 勇夫
    1973 年 15 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    齲蝕の発生, 進行および歯質崩壊機構が未だ十分解明されておらず, そのため予防, 抑制にも系統立った研究がなされてきていない。それ故, 歯質硬組織の生化学的性状がすみやかに解明されることが要請される。この要請に沿ったこの研究では, 人歯牙象牙質粉末の1N塩酸で可溶化される部分をSephadex G-50でgel濾過し, 3つのpeakを得た (総アミノ基量でFraction I-12.5%; Frac. II-20.8%; Frac. III-66.7%)。全体の2/3を占めるFrac. IIIを更にSephadex G-25で分画したところ, 3つのpeakが得られた (同上; III-A 48.6%; III-B 37.2%; III-C 14.2%)。これらは, gel濾過, 電気泳動で異なった挙動をするのみならず, 構成アミノ酸ででも異なったものであることが分かった。その上III-Cでは, 人歯牙硬組織からはその存在が未だ報告されていないAmino Butyric AcidとみられるNinhydrin陽性物質の存在が確認され, 又その主たる部分が (Ala, Gly2, Asp) と (Ala, Gly2, Glu) とが6~7: 4~3の割合の混合物であることを示唆する興味ある結果を得た。
  • 山本 巌, 川越 昌宜, 成瀬 悟, 高橋 宏
    1973 年 15 巻 4 号 p. 300-309
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    前報 (阪大歯誌, 16: 24-28, 1971) において, 2種以上の薬物を同一局所に重複して用いる場合や潮処置薬が完全に除去されていない局所に酸処置薬が適用される場合等において, 薬物相互の化学変化に基づく配合変化が適用局所に出現し, 薬物本来の治療効果が期特出来なくなる事実について述べ旧常の臨床において, 繁用の歯科薬物櫨の配合変化に関する基礎織が必要であることを強調した。今回は, 第一報に続いて, 繁用の歯科薬物46種類について, 相互混合による配合変化について調査し, 表1, 2のような成績を得た。その結果, 極めて多数例に酷変化が出現することを認め, これらの諸成績を基礎に, 従来の薬物使用における矛盾する諸例を挙げながら, 薬物の正確な使用の問題を配合変化の立場から考察した。
  • 1. 連続培養法の適用について
    鈴木 武, 坂岡 博
    1973 年 15 巻 4 号 p. 310-314
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    う蝕が象牙質まで進行した場合その病巣部中にはレンサ球菌や乳酸桿菌が多く存在している。これらが病巣部に長く共存し得る理由を追及するためそのモデルとして連続培養法の適用を試みた。
    始めにう蝕患者材料より両菌属の定量を行なった。その結果Str. mutans type, Str. mitis typeと乳酸桿菌が象牙質う蝕部に共存することを認めた。
    この成績と連続培養法とを比較して見るため, 乳酸桿菌とcariogenic streptococcusとをブドウ糖ブイヨンを用いて混合培養を行なった。その時FRを変えることにより両者の菌数およびpHとの間一定の関係のあることが分った。特にFR=50%/hr以下にしたときpH4.8以下になったがcariogenic streptococcusはなお増殖を続けた。このことは軟化象牙質部の様に水および栄養が補給されている処では両菌が永く共存できる可能性のあることを示している。
  • 第3編 癒合前後期を中心として
    橋本 紀三, 松尾 芳樹
    1973 年 15 巻 4 号 p. 315-332
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    死産児から22歳までのヒト下顎結合部の癒合についてレ線学的, 組織学的に検索し, 次のような知見を得た。1) 下顎結合部のレ線像には, 加齢に従って一定の傾向を有する相違が認められた。2) 組織学的に, 死産児から生後34日までの乳児例は未癒合, 生後2~8カ月例は部分的癒合, 6, 7カ月例は全般的癒合, 8, 18, 22歳例は高度の骨吸収の状態を呈していた。3) 従って下顎結合部は生後2力月頃から部分的に癒合開始し, 生後1年以内に癒合は完了した。4) 癒合後は骨髄腔が形成され, 骨髄造血が認められた。5) 骨髄腔形成の高度な成人例でも, 下顎骨下縁の骨皮質から連続した鋸歯状の骨梁が残存し, 下顎結合部の痕跡として認められた。この所見は, 無歯顎の際の下顎正中部を組織学的に決定する手掛りになると考えた。
  • II. モグラ科
    酒井 琢朗, 花村 肇
    1973 年 15 巻 4 号 p. 333-346
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    食虫目モグラ科4種の上・下顎各歯の形態について観察した。1) 上顎大臼歯の歯冠形態は基本的には双波歯型を呈し, 6~7種の咬頭が存在する。一般にparaconeとmetaconeの発達は良好である。2) parastyleは発達不良の場合にはprotoconecingulumと結合していることが多いが, 発達良好の場合には両者の関係は不明となる。3) protocone, protoconuleおよびmetaconuleは, 舌側cingulumの一部が膨隆することにより作られたものである。4) 上顎第4小臼歯はprotoconeを持つが, 第3, 第2, 第1小臼歯はこれを欠き単錐歯である。5) 下顎大臼歯はtrigonidおよびtalonidの2つの部分から作られている。trigonidの3つの咬頭の発達は良好で, 種間差は少ない。6) talonidにはhypoconidとentoconidおよびhypoconulidが見られる。ただし, 第3大臼歯にはhypoconulidは存在しない。7) 下顎小臼歯には主咬頭のほか, 舌側cingulumの膨隆によって作られたparastylidと遠心結節が見られる。
  • 蛍光抗原法 (直接法) による細菌特異抗体の歯肉組織中での局在について
    竹内 宏, 筒井 正弘
    1973 年 15 巻 4 号 p. 347-354
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎患者の歯周組織に局在する抗体グロブリンが口腔内常在菌によって産生されたものかどうか, 言い換えれば口腔内常在菌と免疫反応を起こすのかどうかを確認するために, 口腔内から培養した細菌の可溶性抗原にFITCを標識して, 切除歯肉にこれを滴下反応させたところ, 形質細胞のほか大型の単核細胞や小リンパ球様細胞に螢光を認めた。このことから, 歯周組織に存在する抗体グロブリンまたは抗体様物質の中には, 対応抗原が口腔内常在菌と判定できるものがあり, しかも同一組織内に体液性抗体と細胞性抗体が混在することが分った。
  • 辺縁性歯周疾患患者の歯肉組織におけるIgG, IgA, IgM, IgD, およびIgE, の局在性について
    薄木 滋堂
    1973 年 15 巻 4 号 p. 355-367
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎患者の切除歯肉における各種immunoglobulinの局在性を螢光抗体法で検索したところ, IgGの検出率が最も高く, 続いてIgAが多症例に検出でき, lgMやIgDは少なかった。また, IgEに関してはその局在率が比較的高く, 全50症例のうち半数近くにみい出すことができた。
    これらのimmunoblobulinsはそれぞれ比較的特徴のある局在状態を示し織中, lgGは歯苔中の細菌や上皮組, 粘膜固有層とそこに分布する血管周囲および形質細胞等歯肉組織のほぼ全域に分布しと同様, IgAもlgGに広範囲にわたって存在するものが多かったが, とくに唾液由来と考えられるような局在状態が目立った。つぎにlgMは今回の実験では上皮組織にしかみい出すことができなく, IgEは少数の形質細胞と好塩基性の細胞や組織肥満細胞様の細胞にその局在を示した。
  • 第2報歯苔接種による感染局所の細菌性collagenaseの動態について
    岡下 守正, 竹内 宏, 高木 幹正, 高垣 健太郎, 筒井 正弘
    1973 年 15 巻 4 号 p. 368-375
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    感染局所における細菌性collagenaseの動態および局在状態を実験的に検討すべくヒト歯苔材料をラットの歯肉に注射し, 経時的に組織連続切片を作製した後, 螢光抗体法を用いて追究した。注射直後には, Bacteroidesの特異螢光は注射部位の歯苔および周囲に浸潤している貧食細胞に認められたが, collagenaseのそれは10分後になってから食食細胞内に, そして30分後には歯苔部分にも認められるようになった。なお食食細胞における特異螢光はBactereidesが60日後以上, collagenaseが30日以上60日まで認められた。また歯苔中の菌体を示す顆粒状の特異螢光は, 注射後6時間迄はBacteroidesとcollagenaseとの局在が一致していたが, 約2日後から形成した膿瘍に認められる両者の特異螢光は必ずしも一致しておらなかった。さらに, 注射後6時間後において注射部位とは少し離れた上皮直下および付近の結合組織の一部にcollagenaseの存在を示す螢光を認めたがこの螢光は, 食食細胞や菌体のそれとは異なる類のcollagenaseと思われた。
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