歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
17 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 和田 薫, 赤井 三千男
    1975 年 17 巻 3 号 p. 201-208
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    肝コリンエステラーゼについて, イソ酵素の相互変換性をしらべた。マウス肝の均質化したものからもっとも活性が強い硫安分画をとり, Sephadex G-200のクロマトグラフィーをおこない, 酵素活性のピークに相当する分画を集め, ポリアクリルアミドゲル電気泳動すると, アセチルチオコリンヨードを基質としたときは5つ, ブチリルチオコリンヨードを基質としたときは6つの活性バンドがあらわれた。両基質とも1-5のバンドの位置は一致するが, もっとも易動度が大きい6のバンドは後者に特有のものである。
    さらに泳動後のゲルを各バンドに相当する位置で切りとり, 均質化し, 各酵素を抽出して, 再泳動すると各バンドの位置に相当して酵素活性があらわれるが, 1, 2, 4のバンドでは3の位置に, 5のバンドでは3と4の位置にそれぞれ弱い活性のバンドを派生し, 3と6のバンドからは他のバンドを派生しない。このことからマウス肝コリンエステラーゼのイソ酵素間には交換性があるものと推論した。
  • 赤井 三千男, 和田 薫
    1975 年 17 巻 3 号 p. 209-218
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒト, ウサギ, ウシの歯髄についてポリアクリルアミドゲル電気泳動法によリコリンエステラーゼの多様性 (イソ酵素) を検討した。泳動条件は2.5mA/gelで, 4℃, 90分間の泳動, 酵素活性検出法はチオコリン法 (Karnovsky-Roots法) が最適で, 泳動後ゲルをCa-ホルマリン水で固定することが必要であることがわかった。
    各試料をつうじて最高3つのバンドがあらわれ, 原点から順にE1, E2, E3とすると, E1はヒト以外ではアセチルチオコリンとブチリルチオコリンの両基質により活性を示し, E2はウサギ以外のものでは両基質で活性を示す。E3は各動物ともにアセチルチオコリンのみを分解する。これらのバンドはいずれもエゼリン, DFPによって活性が阻害されることから, いずれもコリンエステラーゼのイソ酵素と思われる。
  • 石川 堯雄, 川崎 堅三, 田中 秀
    1975 年 17 巻 3 号 p. 219-235
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Tetracycline系薬物は, 投与量が限度を越えると骨や歯に形成障害を起すことが知られている。そこで, 毒性の少ないdentine markerとしてtetracyclineを使用したいことから, 適切なmarkingに見合う投与量の範囲を確認する目的で, ブタとヤギにtetracyclineを3-150mg/kgの範囲で投与し, それらの歯を螢光顕微鏡, 偏光顕微鏡microradiographyなどを使用して, ヒトの歯と比較観察した。その結果, 3-31mg/kgの範囲では, 象牙質の基質形成や石灰化に異常を認めないが, 62-150mg/kgでは, 62mg/kgで基質形成異常を認め, さらに, 150mg/kgでは, 基質形成異常と共に石灰化異常をも認めるようになる。ヒトの歯では, 時にラベリング線に一致する基質形成異常や石灰化異常を認めたが, 推測されるヒトの投与量と動物実験の結果から, これらはtetracyclineによるよりも, むしろ投与当時の全身的影響によるものと考えられる。
  • 久田 洋, 挽地 幹夫, 清水 信一郎
    1975 年 17 巻 3 号 p. 236-241
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    カドミウムの硬組織石灰化阻害作用機序解明の一環とし, CdCl2のクル病ラット脛骨軟骨部位のin vitro石灰化・CaおよびPiの骨への取込みに対する影響を検索した。近遠心的に等分した脛骨を実 験 (1) CdCl2溶液にて1時間処理後石灰化液中で培養。実験 (2) CdCl2を加えた石灰化液中で培養。条件は37℃・pH 7.4, 培養時間20時間とした。その結果は両実験ともに,
    1) Caと共存するCdが比較的濃度が低くても石灰化抑制は顕著に認められた。
    2) 骨へのCaの取込みは減少または完全抑制が認められ, その量はCdの取込量と逆比例的傾向を示した。一方Piのそれは特異的変化を示さなかった。
    3) Ca・P取込量への影響はそれらの骨含有量からも確認された。
  • 金子 久幸
    1975 年 17 巻 3 号 p. 242-267
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒト汚染全唾液を予めプレインキュベートして加熱滅菌し, 新鮮唾液の沈渣を加えてグルコース由来の乳酸生成をみると, プレインキュベート約10時間の唾液中で乳酸生成が最大になる。この唾液沈渣微生物と同じ現象をしめす細菌はstreptococciである。これらの現象にはプレインキュベート中に生じた唾液タンパク由来のペプチドが関与し, 唾液タンパク, カゼイン, 牛血清アルブミンなどの酵素による部分水解物もstreptococci (S. mutans, S. salivarius) の乳酸生成を促進する。
    なおプレインキュベート唾液や牛血清アルブミン部分水解物を限外濾過やゲル濾過で調べると, 分子量1, 000-5, 000および500以下のペプチドがstreptococciに対して乳酸生成促進, 増殖促進をしめした。本報告はとくにオリゴペプチドについて調べたが, すべてのオリゴペプチドがこの作用をしめすのではなかった。特定の構造を持つペプチドが必要と思われる。
  • 小田島 美紀代
    1975 年 17 巻 3 号 p. 268-294
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラッテ口蓋腺の部位差に関する微細構造の詳細および顆粒の分泌様式と性状について明らかにするため, PAS反応および0.05% toluidine blue染色 (pH 2.5, 4.1および7.0) を行ない, 更に過沃素酸チオカルボヒドラジド銀反応 (PA-TCH) をも行なった。腺は, 終末部および導管部に分けられ, 導管部は更に, 発達の悪い峡部導管, 腺腔が拡大し粘液を一時貯溜するのではないかと思われる貯溜槽導管および排泄管導管に分けられ, 終末部から直接排泄管に連続しているものも認められた。粘液顆粒の分泌様式は, 形質膜と顆粒膜が一部外葉のみ融合し, 融合膜の裂け目から放出される場合, 形質膜が単に一部破れて放出される場合およびいわゆる開口分泌による場合とが認められた。峡部は, toluidine blue染色では, metacromasiaを示さず, 0.1-0.8μの電子密度の高い顆粒を持ち, PA-TCH染色では, 強染され, 独自の分泌機能を持ち, 終末部および貯溜槽と共に, 多量のムコ多糖類を含有すると思われる。
  • 林 毅
    1975 年 17 巻 3 号 p. 295-308
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究は, ラット後肢足趾皮下灌流法を用いて, 数種の侵害刺激を加えた時の足趾皮下でのkinin様物質, kinin forming enzymeの遊離の状態を観察し, 鎮痛薬のもつ鎮痛機序の末梢作用点を考察しようとしたものである。
    Heating, pinching等のnoxious stimulationによるkinin様物質やkinin foming enzymeの遊離を, aspirinは一様に抑制した。一方, morphineは, それらの遊離を抑制あるいは増強して一定の作用を示さなかったが, この侵害刺激による遊離が神経系を介して起ると考えられる場合は, 抑制が認められた。これらのことより, 炎症の発現あるいは局所の疼痛において, mediatorとして働くとされるbradykininおよびその合成酵素の局所における出現は, aspirinにより著しい抑制をうけること, また, これまで中枢神経系にのみ鎮痛薬としての作用点を有するといわれてきたmorphineが, 一部末梢のkallikrein-kinin系に影響あることが示唆された。
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