歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
18 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 千葉 博茂
    1976 年 18 巻 1 号 p. 1-52
    発行日: 1976/03/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯牙の抜去に続いて, 抜歯窩ではこれを充填しようとする積極的な修復機転 (仮骨の形成) が働らいている。一方, 歯牙の抜去に伴なう咀嚼圧の欠除によって抜歯窩だけでなく, 周囲歯槽骨の構造に変化が起ることが予想される。後者の変化を出来るだけ広い範囲にわたって観察するため犬を用い, 実験期間中 (最長199日間), 3色の硬組織ラベリング剤 (テトラサイクリン, カルセイン, アリザリンレッドS) による時刻描記を行ない, 下顎の大研磨片 (犬歯より第1大臼歯にまで及ぶ) についてマイクロラジオグラフィと螢光顕微鏡法とによる比較観察を行なった。
    抜歯窩内の仮骨形成の開始と相前後して, 周囲歯槽骨にも一時的に骨の添加の活発化が見られるが, 抜歯による機能の変化 (咀嚼圧の欠除) に対応する変化として, 歯槽骨の多孔化や, 裏打ち現象などが広範囲に起ることが観察された。
  • 森本 俊文, 河村 洋二郎, 松代 浩明
    1976 年 18 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 1976/03/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    補綴処置に際して咬合を挙上することが必要な場合, 挙上し得る許容範囲を決定する方法としてscrew jack法が適用できるか否かを検討した。47歳の女性1名を対象としてscrewをとりつけた下顎のレジン床を作製し, これを口腔内に装着して患者自身にscrewを操作させ, 気持良く感じる下顎の位置を決定させた。その結果, このような下顎位は歯牙接触位より僅か0.3mmだけ高い位置にあった。この位置よりさらに約1mmだけscrewを高めると患者は常に高いと感じた。しかし, この高さに垂直咬合径を設定した義歯を患者に装着すると患者は咬合が高いとは感じなくて, むしろ気持が良いと答えた。この結果からscrew jack法で気持良く感じる下顎位と義歯を装着した場合に気持良く感じる下顎位とは相違していると云える。したがって, 咬合挙上の許容範囲を決定する方法としてscrew jack法をそのまま適用するのは不適当であって, 適用にあたっては前記の点を考慮する必要がある。
  • 武田 正子
    1976 年 18 巻 1 号 p. 60-74
    発行日: 1976/03/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット, マウス, ハムスター, サルおよびヒト胎児のエブネル腺を電子顕微鏡で観察, 比較検討した。これらの動物の腺房細胞は漿液細胞に共通した細胞構造をもつ。ラット, マウスおよびハムスターの腺房細胞分泌顆粒は均質で, 概して電子密度が高く, 少量のムコ物質を含む (PA-TCH反応弱陽性)。導管細胞も分泌顆粒を含むが, これはPA-TCH反応に強陽性を示す。サルの腺房細胞分泌顆粒の大部分は, 電子密度の低い顆粒状の中心部と, 電子密度の高い均質な周縁部とから成る二相性の構造をとる。この周縁部はPA-TCH反応に陽性を示すが, 中心部はほとんど陰性である。導管にも腺房細胞の分泌顆粒と同様の構造を示す顆粒が認められるが, これはトルイジン・ブルーにより異調染色を示し, PA-TCH反応強陽性である。ヒト胎児では, 6カ月期の腺房細胞は腺腔側胞体に限局して異調染色を示し, 分泌顆粒は概して電子密度が低く, PA-TCH反応で顆粒周縁部が強陽性を示し, 酸性ムコ物質に富む。しかし, 7カ月期末になると電子密度の高い顆粒が増加し, 異調染色を示さなくなる。
  • 赤井 三千男, 栗栖 浩二郎, 清水 浩
    1976 年 18 巻 1 号 p. 75-83
    発行日: 1976/03/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    舌は粘膜, 筋, 腺および脂肪組織からなる器官で, そこに分布する血管とその付近の銀好性線維は各組織の機能的特性を反映した形や配列を示すものと考え, イヌの血管墨汁注入標本について, 両者の関係をしらべた。その結果, つぎのことがわかった。粘膜固有層では毛細血管の口経が大で, 線維が太く, 粘膜下に動静脈吻合が多い。舌筋では毛細血管は細く, 筋鞘をつくる細網線維によって筋線維に固定され, 筋の収縮時に蛇行するが, その連絡枝は拡張する。舌腺では毛細血管は腺房間を直線的に走る細線維によって保持されている。脂肪組織では毛細血管は細胞間のやや太い線維によって保持され, 細胞表面は蛇行する細線維網によっておおわれている。
    以上のことから, 銀好性線維は毛細血管を組織に保持するとともに, 血管の形や分布様式にも影響を及ぼすと考えた。
  • 伊藤 一三, 野坂 洋一郎
    1976 年 18 巻 1 号 p. 84-90
    発行日: 1976/03/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯科医学では基準平面としてしばしば咬合平面がその基準として用いられ, 歯牙及びその周囲組織の計測を行なうには基準面が近位に存在するため簡便である。しかし咬合平面の定義がまちまちであり一定性がない, そこで咬合平面について検討した。顎態模型に各種平面を印記し計測を行なった。
    眼耳平面に対するCamper氏平面及び咬合平面 (下顎中切歯切端と両側下顎第二大臼歯近心頬側咬頭) 咬合平面 (下顎中切歯切端と両側下顎第二大臼歯遠心頬側咬頭) の上下的, 左右的傾斜角度を測定した結果平均値において上下的にはそれぞれ5.43度, 6.96度, 7.73度となった。咬合平面間は有意差がなく相関性も極めて高く, 基準点として咬頭の位置を近心頬側咬頭にとっても遠心頬側咬頭にとっても差がないことがわかる。また左右的傾斜度はCamper氏平面が左側に0.26度傾斜しているが, 咬合平面は眼耳平面に対して左右的傾斜は0とみなしてよい。
  • 野坂 洋一郎, 伊藤 一三
    1976 年 18 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 1976/03/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    微細血管の分布構造を血管の内皮細胞のATPase活性及びAlkaline phosphatase活性により検索を行なった。材料はヒト胎児皮膚, 心筋, 口唇, 成人歯齦を用いた。ATPase活性の証明にはWachstein-Meisel法とPadykula-Heman法を用い, Al-phase活性証明にはGomoriの金属鉛法とAzo色素法を用いた。分布構造は色素注入法と同様に細部まで観察が可能である。浸漬時間は器官, 組織, 切片の厚さにより適切な時間が異なる。器官, 組織によってAl-phase染色とATPase染色を使い分けた方がよく, 皮膚, 腺細胞ではAl-phase染色が, 結合組織線維の増殖部位, 腸上皮等はATPase染色の方が血管の識別が容易であった。細動静脈の分布構造まで観察するにはATPase染色によらなければならない。注入法に較べ酵素組織化学的方法は簡便であり, 毛細管顕微鏡による観察像と実像の比較には応用が容易である。
  • 高野 一雄
    1976 年 18 巻 1 号 p. 99-112
    発行日: 1976/03/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット顎下腺終末部における腺細胞は大部分の哺乳動物の顎下腺と同様に2種類であるとする報告と, げっ歯類に属する動物の場合には1種類であるとする報告とがみられる。著者は, 主としてこの相違を碓かめる目的で電子顕微鏡を用いて観察を行った。結果から, 終末部には2種類の腺細胞が同定でき, それらを粘液細胞と漿液細胞であるとした。
    Kimらは, ラットで腺終末部に2種類の細胞を観察し, 腺房型細胞と導管型細胞であると述べている。彼らのいう腺房型細胞は本報告の粘液細胞に, 本報告のいう漿液細胞は, 彼らのいう導管型細胞に, それぞれ形態的特徴が極めて類似している。導管型細胞は, 腺房型細胞または介在部細胞の補充細胞であるとする考えもみられる。しかし, 著者は, これら2種類の腺細胞が, それぞれ別種の細胞であること, 導管型細胞は漿液細胞であり, 他種細胞の補充細胞ではないことを導いた。
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