ラット, マウス, ハムスター, サルおよびヒト胎児のエブネル腺を電子顕微鏡で観察, 比較検討した。これらの動物の腺房細胞は漿液細胞に共通した細胞構造をもつ。ラット, マウスおよびハムスターの腺房細胞分泌顆粒は均質で, 概して電子密度が高く, 少量のムコ物質を含む (PA-TCH反応弱陽性)。導管細胞も分泌顆粒を含むが, これはPA-TCH反応に強陽性を示す。サルの腺房細胞分泌顆粒の大部分は, 電子密度の低い顆粒状の中心部と, 電子密度の高い均質な周縁部とから成る二相性の構造をとる。この周縁部はPA-TCH反応に陽性を示すが, 中心部はほとんど陰性である。導管にも腺房細胞の分泌顆粒と同様の構造を示す顆粒が認められるが, これはトルイジン・ブルーにより異調染色を示し, PA-TCH反応強陽性である。ヒト胎児では, 6カ月期の腺房細胞は腺腔側胞体に限局して異調染色を示し, 分泌顆粒は概して電子密度が低く, PA-TCH反応で顆粒周縁部が強陽性を示し, 酸性ムコ物質に富む。しかし, 7カ月期末になると電子密度の高い顆粒が増加し, 異調染色を示さなくなる。
抄録全体を表示