歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
19 巻, 4 号
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  • 鎌田 勉, 中村 治雄
    1977 年 19 巻 4 号 p. 491-499
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    唾液腺摘出は生体のコレステロール代謝に対し, 次のような影響を与えた。1.舌下腺, 耳下腺, 顎下腺摘出1カ月後では, マウスの体重は対照より減少し, 肝重量も減少した。肝コレステロール値は増加し, 肝コレステロール生合成は酢酸からもメバロン酸からも減少した。肝コレステロールの組織からの消失には対照と有意差がなかった。2.舌下腺と顎下腺摘出5週後では, 体重, 肝重量は対照と変化がないが, 耳下腺は肥大した。コレステロール値は肝では変化なく, 耳下腺では減少した。酢酸からの生合成は, 肝, 耳下腺ともに増加した。3.耳下腺摘出1カ月後では, 体重, 肝重量は対照と変化がないが, 舌下腺, 顎下腺は肥大した。コレステロール値は, 肝, 舌下腺では対照と変化がないが, 顎下腺では減少した, コレステロール生合成は, 肝では酢酸からもメバロン酸からも増加したが, 舌下腺では変化なかった。4.舌下腺摘出1カ月後では, 酢酸からの肝コレステロール生合成が減少した。このように, 1唾液腺の摘出によっても, 肝コレステロール生合成が影響をうけることが明らかとなった。
  • 根津 恵理子, 中村 治雄
    1977 年 19 巻 4 号 p. 500-506
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    交感神経薬のIsoproterenolとDibenamine, 副交感神経薬のPilocarpineとAtropineを用いて, マウス唾液腺 (顎下腺, 耳下腺, 舌下腺) における総コレステロール値, コレステロール生合成 (invivoとin vitro) およびコレステロール-4-14Cのuptakeについて調べた。薬物7日間連続投与後, 3唾液腺ともIsoproterenolで重量の増加, 総コレステロール値の減少かつコレステロール生合成の増加をきたし, またコレステロールのuptakeは増加 (耳下腺, 舌下腺) また変化のない (顎下腺) ことなどから, 肥大と細胞増殖によって成長に必要なコレステロールが唾液腺に移送されるため, コレステロールのuptakeが増加すると思われる。また総コレステロール値が減少しているので, これを補うために, feedback機構が作用してコレステロール生合成を増加させるものと考えられる。これに対して, Pilocarpine, Atropine, Dibenamineはコレステロール生合成について, わずかに変動があるだけで, コレステロール代謝には強く作用しないようである。また交感神経刺激薬Isoproterenolと抑制薬Dibenamineまたは副交感神経刺激薬Pilocarpineと抑制薬Atropineを比較するとコレステロール代謝に変化のあるものがみられた。
  • とくに印象圧について
    森寺 邦徳
    1977 年 19 巻 4 号 p. 507-523
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    印象採得動作における術者の印象採得操作の巧拙あるいは習慣性や癖を印象圧によって定量的に解明し, またその印象から得た模型をもとに作成したレジン口蓋床の口蓋粘膜に対する吸着力を測定して, 印象採得動作を人間工学的な立場から検討した。
    印象採得操作は既製トレーおよび個人トレーを用いて人力 (manual impression) および機械力 (automaticimpression) によって, 種々の条件下でアルジネート印象したときについて観察した。なお, 印象圧は上顎各部位ならびに上顎全体に加わる圧を受圧装置で, また口蓋床の吸着力は口蓋床が口蓋粘膜から人力によって離脱する力で測定した。
    そして, 次のような成績を得た。
    manual impressionによる印象圧曲線のパターンおよび印象圧の大きさには個人差が認められ, 上顎各部位の印象圧および上顎全印象圧の大きさは, それぞれ20~70gおよび1.5~3.0kgである。
    これに対して, automatic impressionにおいては, 印象圧曲線のパターンは常に定型的である。しかし, その波形や印象圧の大きさはトレーの種類やその圧接速度によって影響を受ける。
    なお, 口蓋床の吸着力は印象採得経験の豊かな術者ほど大きい。そのうえ, このような術者においては口蓋床の吸着力の個人差の変動範囲も小さい。
    以上の事実は, 印象採得動作には, 手や腕の皮膚感覚や手, 腕の筋および関節の深部感覚に基因する各術者に固有の印象圧調節フィードバック機構が形成されており, それによって術者各個人の印象採得動作にその人固有の習慣性や癖が生じ, それが印象圧の大きさの変動や口蓋床の吸着力の良否に現われてくることを示すものである。
  • 岡 卓爾
    1977 年 19 巻 4 号 p. 524-533
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    咀嚼機能に対する口腔粘膜および歯根膜の感覚が食物粉砕能にどの程度の影響を及ぼしているかを具体的に明らかにするため, 健全歯列者について, 歯肉 (あるいは) 歯根膜を, またそれにさらに頬粘膜を麻酔したときに認められる感覚機能障害に伴う咀嚼機能 (ピーナッツの粉砕能) の低下度から, 食物粉砕能に及ぼす歯肉, 歯根膜および頬粘膜の感覚の影響を検討した。
    麻酔による感覚障害は, こまかいピーナッツ粒子よりもあらい粒子において現われる。これは, 歯肉, 歯根膜, 頬粘膜および舌の感覚と頬や舌の運動との協調によって行われる食物の運搬作用や食物選択作用などの働きが低下することによる。
    また, 咀嚼値および咀嚼能率は, 歯肉麻酔では非麻酔時のそれぞれ97.3~98.5%および92.3~94.8%に, また歯根膜の麻酔によってそれぞれ92.1~93.9%および76.6~81.5%に, さらにそれに頬粘膜をも併せ麻酔するとそれぞれ82.5%および58.1%に低下した。
  • 貴治 孝光
    1977 年 19 巻 4 号 p. 534-543
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    高分子物質が血液中から唾液腺を介して唾液中に移行するかどうかを解明する目的で, 標識物質として西洋わさびに由来するhorseradish peroxidase (分子量: 約40, 000, 以下HPOとする) を静脈内に注入したラットの顎下腺を光学顕微鏡による組織化学的手段により, また, 顎下腺唾液をポリアクリルアマイドゲル電気泳動によりHPOの唾液中への移行の様相に検討を加えた。
    HPO注入後に摘出した顎下腺において, HPO反応産物は導管部細胞内および導管部の腺腔内には認められたが, 腺房部細胞内には認められなかった。
    また, HPO注入ラットから採取した顎下腺唾液には, HPO固有の2つのisozymeと同じ移動度を示す2本のバンドが認められた。
    以上の実験結果から, ラットの静脈内に注入したHPOは, 顎下腺の導管部細胞によって取り込まれ腺腔に放出されたのち, 顎下腺唾液中へ移行してくるものであると結論した。
  • 村上 正義
    1977 年 19 巻 4 号 p. 544-553
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    著者の教室では, 高分子物質のための標識物質としてhorseradish peroxidase (分子量: 約40, 000, 以下HPOとする) をラットの静脈内に注入し, 組織化学および電気泳動の手段によって, この酵素が顎下腺唾液中へ移行することを明らかにした。しかし, 唾液中に移行したHPOがもとの分子量を保持しているのか, あるいは小分子に分解されてしまっているのではないかという疑問が残る。
    この点を解明する目的で, 唾液中へのHPOの移行を免疫化学の立場から検討した。すなわち, HPO注入ラットの顎下腺唾液と抗HPO血清とを二重拡散法および免疫電気泳動法によって検索した結果, 唾液中に抗原 (HPO) が認められた。また, Sephadex G-50によるゲル濾過を行って, 唾液から回収されたHPOの分子量を概算した結果, HPOは大きい分子を含む分画にだけ認められた。
    以上の実験結果から, ラットの静脈内に注入したHPOはもとの分子量を保持した状態で, 唾液中に移行しているものと結論した。
  • 第1報: 上顎第1大臼歯
    尾崎 公, 上明戸 芳光, 鈴木 隆延, 高木 一, 星野 浩一, 鈴木 盛勝
    1977 年 19 巻 4 号 p. 554-560
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    形態学で取り扱われる形あるいは, 大きさの研究に, 両者を組み合わせる方法も十分意味のあるところであると考え, 種々の解析方法を試みつつある。
    今回は, 上顎第1大臼歯の咬合面観輪郭について, 角座標を応用した計測値をフーリェ (Fourier) 解析して形を論じた。すなわち, その結果から, 上顎第1大臼歯では周波数1 (1Hz) から周波数4 (4Hz) までのパワースペクトルを採用して作図すると, 実測値のパターンと極めて近似した輪郭が得られたところから, 有意義な一解析方法であると考える。
  • 隅田 潤ノ助, 中村 治雄
    1977 年 19 巻 4 号 p. 561-564
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    無菌動物では唾液腺のコレステロール代謝に変化があらわれると報告したが, 抗生物質投与マウスの場合には, いかなる変化をきたすかを調べた。
    マウスを抗生物質飼料 (2%サルファチアゾール, および0.4%オキシテトラサイクリン加) で14日間飼育し, コレステロール生合成および糞への中性ステロールおよび胆汁酸の排泄を放射能を利用して測定した。
    抗生物質投与により, 舌下腺, 耳下腺, および顎下腺のコレステロール生合成は増加し, 肝コレステロール生合成は減少し, 総コレステロール値は舌下腺, 耳下腺, 顎下腺および肝で増加した。また糞への総コレステロール, および総胆汁酸の排泄は減少した。
    以上のことから唾液腺の総コレステロール値の増加は主としてコレステロール生合成の増加と, 一部コレステロールの体内蓄積も関与するとおもわれる。
  • 曽 雅宏
    1977 年 19 巻 4 号 p. 565-579
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Indomethacin (Idm) を妊娠動物に投与すると, 胎児の吸収, 死産, 早産, 分娩遅延などの現象が認められる。これについてはIdmが, prostaglandinの生合成を抑制するからであると考えられているが, 著者は細胞遣伝学的機序がこれに関与するかどうかを検討する為に, この実験を行った。FM3A細胞に100μg/ml, 150μg/ml, 200μg/mlのいずれの濃度のIdmを作用させても, 核数の異常や細胞質内への液胞の出現は見られなかった。8-Azaguanin含有寒天平板上に生じるコロニー数からmutation frequencyを算出したが, 低い値が得られただけであった。FM3A細胞, ヒト末梢白血球細胞の培養液中に, Idmを溶解し, 染色体の異常を観察したところ, 薬物濃度を高くし, 作用時間を長くすれば, 多少異常が多くなる程度であった。ラットに投与して, その骨髄細胞の染色体を調べたところ, 異常が見られなかった。
  • 梅本 利彦
    1977 年 19 巻 4 号 p. 580-586
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    口腔スピロヘータにおける球状体の形成条件の一つとして, 今回は浸透圧に注目し, 培養液の浸透圧が球状体形成とどのような関係にあるかを, 氷点降下法により検討を試みた。
    グルコース, スクロースまたはラフィノースを添加することによって培養液の浸透圧は高められたが, 一定の値, およそ11atmに達したときに球状体が形成されはじめた。培地浸透圧が18atmを越えると菌体は異常な形態を呈し, 球状体は観察されなかった。
    これらの結果から, スピロヘータの球状体形成を規定する条件として培養液の浸透圧が重要であり, 先に報告した糖類加培地中の多数の球状体は, 糖類によって培地の浸透圧が高められた結果として形成されることが知られた。
  • 和田垣 裕一
    1977 年 19 巻 4 号 p. 587-604
    発行日: 1977/12/31
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    唾液内でアミンを産生するといわれている5種のアミノ酸 (ヒスチジン, オルニチン, アルギニン, グルタミン酸およびリジン) を唾液に添加しインキュベートを行ない, 乳酸量, pHを調べた。ヒスチジン, オルニチンを添加した場合, 特に乳酸量の増加が認められ, しかもpHの低下は抑制された。
    ヒスチジンを添加した場合のpH低下抑制はそのイミダゾール基による酸緩衝作用と考えられる。一方オルニチン添加による同効果は脱炭酸生成物であるプトレッシンのアルカリとしての酸中和作用が考えられた。いずれの場合もpH低下が抑制され乳酸生成に適した中性から弱酸性の範囲に長く保持された結果乳酸量が増加したと思われる。しかし, さらにプトレッシンの唾液微生物乳酸生成に対する影響を調べたところ, 微量で乳酸生成を促進することがわかった。また, プトレッシン添加濃度と乳酸生成との関係は, streptococciとlactobacilliでは異なることもわかった。
  • 1977 年 19 巻 4 号 p. 605
    発行日: 1977年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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