歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
20 巻, 1 号
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  • 根津 恵理子, 申村 治雄
    1978 年 20 巻 1 号 p. 1-23
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • とくに酵素抗体法の齲蝕象牙質への応用
    岡村 敬次, 魚部 健市, 芦田 欣一, 田中 享, 西田 健, 筒井 正弘
    1978 年 20 巻 1 号 p. 24-33
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯牙齲蝕症における生体反応を組織の場で把握することは, その病態像を究明する上で重要である。組織中の特定物質を特異的に検出する方法として従来から螢光抗体法が使用されている。しかし, 象牙質には強い自家螢光が存在し, そのため観察上不都合な点が多かった。そこで, 近年改良された酵素抗体法を象牙質に応用したところ良好な染色性を認めた。すなわち, この染色法はグラム染色と重染することができ, また三重染色が可能であるなど硬組織の形態学的研究上有効な手段であると考える。
  • とくにIgGの局在について
    岡村 敬次, 魚部 健市, 山田 浩, 崗本 淳澤, 善 睦彦, 宮崎 正忠, 西田 健, 筒井 正弘
    1978 年 20 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯牙齲蝕症において, 組織の反応を検索することは重要であるが, 特に免疫防禦機構の有無の確認はその研究上不可欠である。今回, 私たちは齲蝕象牙質中におけるIgGの局在と抗体活性を酵素抗体法により検索した。齲蝕病巣を囲む様に出現したIgG局在層中に存在する象牙細管中の象牙芽細胞の突起にIgGを認めた。また, 切片中の抗体活性の検出を試みたところ, Streptococcus mutansではほとんど検出されなかった。齲蝕象牙質においてStr. mutansが強い免疫原性を示すのであれば, 特異的反応としての免疫防禦機構はあまり期待できないのではないかと考える。
  • 会田 泰久
    1978 年 20 巻 1 号 p. 39-66
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    根尖部炎症病巣による歯槽骨変化の研究にあたって, 従来, 観察範囲は, 主に根尖病巣周囲に限局されていた。しかし, 根尖病巣の存在による歯槽骨の変化を, その周囲に留まらず, 極めて広範囲にわたって観察しようとするのが本研究の目的である。犬の下顎第4小臼歯に, 実験的に根尖病巣をおこさせた。なお, 実験期間 (45日から206日間) をいくつかの期間帯に分けて, 2色の硬組織ラベリング剤 (テトラサイクリンとカルセイン) の連続投与によるラベリングを行った。屠殺後, 犬歯から第1大臼歯遠心側におよぶ大研磨片を作製し, 螢光顕微鏡法とマイクロラジオグラフィーにより対照側と比較観察した。
    その結果, 根尖病巣附近における骨吸収の他に, その部分を中心とした極めて広い範囲 (第1小臼歯近心側から第1大臼歯遠心側にまでおよぶほど) に, 骨の内部改造の著明な変調が起こるのが観察された。
  • 須賀 昭一, 和田 浩爾, 小川 正昭
    1978 年 20 巻 1 号 p. 67-81
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    アオザメ (Isurus glaucus) の形成期ならびに, 完成したenameloidの石灰化像をmicroradiographyで, その中での弗素 (F) の分布をelectron microprobeによって観察した。石灰化の初期においては, 石灰化進行の速度は層によって異なる。しかし, 最終的には, 石灰化度は表層で最も高く, 深層に向うに従って低下する。Fの濃度は石灰化の初期ですでにかなり高い (2%以上)。次で, 特に, 表層側1/2の範囲で急な上昇をとげ, 形成の中頃 (その時点でenameloidの内側にはosteodentinは未だ形成されていない) でほとんど最終的な分布パタンを示すようになる。完成したenameloidで, 表層での濃度は切端で最も高く (約3.7%), 歯頸側に向って徐々に低下する傾向を示す。それに対して, 最深層でのFは, 切端部直下で表層とほぼ同じ値を示すのを除くと, 全レベルでほとんど同じ値 (約1.5%) を示している。
  • 走査電子顕微鏡による微細構造について
    小萱 康徳
    1978 年 20 巻 1 号 p. 82-102
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒト乳犬歯歯髄表層を走査電顕的に観察し, 殊に, コルフ線維の組織構造に関して若干の知見を得た。
    歯髄繊細線維の数本-数10本が集束して一本のコルフ線維束を形成, 象牙芽細胞間を螺旋走向しつつ, 象牙前質表層で馬尾状に分岐し, 象牙前質基質線維に移行吻合している。
    螺旋走向するコルフ線維の表面観は, 整然とした索状の溝が連続して, いわゆる樋状形態を呈してきている。この樋状溝は, 線維束の歯髄側から象牙前質表層に至るまでみられ, 線維束の捩れに一致した走向をとる。従って, コルフ線維の横断割面は, 単なる類円形でなく円弧の一部が凹陥した状態を呈する。コルフ線維の表面には, 膜様形象物を認め, 従って走向途中で個々の構成線維が露出することはないが, 象牙前質表層に至ると膜様形象物は消失し, 同時に線維束のほぐれを観察する。象牙芽細胞間を螺旋走向する線維束に加え, 直線的走向するコルフ線維をも観察しうる。
  • 川喜田 健司, 丸井 隆之, 船越 正也
    1978 年 20 巻 1 号 p. 103-113
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    鯉味蕾の発生的変化を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。孵化後24時間までは口唇部の発達は不十分で味蕾は認められないが, 孵化後48時間の稚魚では, 上顎の口唇部の正中付近にmicrovilliが直径約4μの円盤状にあつまって周囲の上皮細胞から隆起し, その上に粘液層がある味蕾像を認めた。孵化後14日では, 味蕾は口唇部, 口腔内の上皮細胞が円錐状に盛り上がったepithelial papillaeの上に円盤状隆起として認められ, その中にはmicrovilliと感覚細胞のapical processが観察された。孵化14日以後は発生がすすむにつれて円盤が大きくなり, apical processの数が増加したが, 構造的変化は認められなかった。鯉では, 口唇部・口腔内以外に, 顔面, ヒゲにも味蕾があるが, それらの間に形態的相異は認められなかった。ただし, 味蕾の分布様式に差があり, 口腔内, palatal organでは大きく島状に隆起した部位に密集していたが, 顔面, 口唇, ヒゲでは一様に散在していた。
  • 阿部 公生, 藤田 良治, 横田 豊, Colin DAWES
    1978 年 20 巻 1 号 p. 114-125
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    電気刺激あるいはメサコリン, ピロカルピン, メソキサミンおよびイソプレナリンなどの分泌刺激薬の種類により, ラット耳下腺と顎下腺唾液の蛋白質成分が質・量的に変動するのかしないのかを決定するために, 酸性および塩基性のゲルを用いるディスク電泳法によって観察した。その結果: 耳下腺唾液の蛋白質成分はいずれも, 刺激の種類では質・量的に変わらなかった。
    鼓索神経の電気刺激とα-受容器刺激類似薬であるメソキサミン刺激の顎下腺唾液の蛋白質成分はともに, 全く類似の特徴ある電泳像を示したが, 三者が全く類似の電泳像を示すメサコリン, ピロカルピンおよびイソプレナリン刺激唾液のそれらとは全く異なる結果を示した。したがって, ラット顎下腺にはβ-受容器依存性とは別に, 耳下腺には存在しないα-受容器依存性の蛋白分泌系が存在する。なお, 鼓索神経の電気刺激唾液の蛋白質成分の雌雄差は, 質・量的にも認められなかった。
  • 高橋 宏, 柴田 学, 武田 英子, 国崎 久美子, 原田 つや子
    1978 年 20 巻 1 号 p. 126-133
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    pontamine blue色素皮内漏出法, carrageenin足蹠浮腫法, carrageenin肉芽嚢法, それぞれタイプの異なった3種の炎症実験モデルを用いてprostaglandinの炎症に対する役割を主としてchemicalmediatorの立場から検討した。prostaglandinはE1, E2, F の3種を用いた。prostaglandinの微量発炎作用はbradykininに比較すれば弱く, またbradykinin, histamineなどのchemical mediatorの発炎作用をprostaglandinが著しく増強するという, 既報の諸成績も充分に確認することは出来なかった。しかしprostaglandinはcarrageenin足浮腫及びcarrageenin肉芽嚢において炎症促進と炎症抑制の両作用が観察された。特にcarrageenin足浮腫におけるE1, E2またcarrageenin肉芽嚢におけるF の炎症抑制作用は顕著であり注目された。またprostaglandin中でもE1, E2, F それぞれに炎症に対する作用態度が微妙に異なっていることが観察されたことから, prostaglandinは炎症促進と炎症抑制の相反する作用をもちながら, 炎症過程を適宜調節しているRegulatorまたはModulatorではないかと推測された。
  • 濱口 五也
    1978 年 20 巻 1 号 p. 134-143
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    緊張性歯根膜咬筋反射は咬合異常による咀嚼筋緊張高進の基礎をなす重要な反射であるとされながら, 反射学的諸性質については不明の点が多い。本研究はラットを用い, 筋電図法により上記反射の性質を明らかにせんとして行われたものである。
    麻酔ラットの頭部を固定し, 上顎切歯を種々の条件で機械的に刺激した場分に誘発される閉口筋の筋電図活動を分析した結果, 本反射は三叉神経知覚核から三叉神経運動核を経由する多シナプス性の反射であり, α-運動ニューロンのみならず, γ-運動ニューロンをも賦活して, 持続的に緊張性反射を誘発すること, および歯牙圧迫刺激の閾値が極めて低く, かつ刺激除去後も後放電を起し易いことなどが分った。これらの諸性質はいずれも咬合異常による歯根膜への異常刺激が容易に咀嚼筋の緊張を持続的に高進せしめ, 疼痛性咀嚼筋緊張症候群の原因となり得ることを考察した。
  • 久保 吉廣
    1978 年 20 巻 1 号 p. 144-153
    発行日: 1978年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    1) 咀嚼運動に似たリズミカルな顎運動を誘発する大脳皮質眼窩回並びに外側扁桃核の高頻度刺激は, 三叉神経運動ニューロンにリズミカルな細胞内電位変化を誘発した。
    2) 閉口筋運動ニューロンには, 眼窩回刺激により過分極電位と脱分極電位が交互に出現するリズミカルな細胞内電位変化が誘発された。この場合, 通常過分極電位が優位であった。
    3) 開口筋運動ニューロンには, 眼窩回刺激により周期的な脱分極電位が誘発され, 脱分極電位と脱分極電位との間には, 過分極電位はほとんどあるいは全く見られなかった。脱分極電位には, 通常スパイク群発が重畳した。
    4) 大脳皮質眼窩回並びに外側扁桃核それぞれの刺激により誘発される非動化前の顎運動パタンと, 非動化後の三叉神経運動ニューロンの細胞内電位変化との間には, 密接な相関が見られた。即ち, 開口運動相は閉口筋運動ニューロンの過分極相および開口筋運動ニューロンの脱分極相に一致し, 閉口運動相は閉口筋運動ニューロンの脱分極相および開口筋運動ニューロンの静止相に一致した。
    5) 上三叉神経核ニューロンは, リズミカルな顎運動を誘発した大脳皮質眼窩回の高頻度刺激にたいして, スパイク応答を示さなかった。
    以上の所見を円滑な咀嚼運動の遂行に関する機能的意義と, 咀嚼運動のリズム形成のニューロン機構に関連して考察した。
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