歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
21 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 長沢 亨, 岡根 秀明, 佐々木 元
    1979 年 21 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    咀嚼機能に対して咀嚼速度がどの程度影響しているかを明らかにするため, 健全歯列者を対象として, 咀嚼速度を種々の速度で規定して咀嚼させ, ピーナツ粉砕能およびチューインガム溶出糖量を測定した。咀嚼速度は各被験者の習慣性の速度を基準にして変更した。
    咀嚼速度を速くするとピーナツの粗い粒子の残留量が増加し, ガムの溶出糖量は減少した。一方, 咀嚼速度を遅くするとピーナツの中程度の粒子の残留量が増加し, ガムの溶出糖量も増加した。
    咀嚼値と咀嚼時間の間に関係はなく, 任意の速度で咀嚼させたときの咀嚼値が最も高く, 咀嚼速度を速くしても遅くしても咀嚼値は低下した。
    ガム溶出糖量は咀嚼時間と相関があり, ゆっくり咀嚼させればそれだけ溶出糖量が増加した。
  • 1.針通電の抑制効果
    中嶋 正人
    1979 年 21 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    針通電による開口反射の抑制に関与する上位中枢神経部位を明らかにする目的で次の実験を行った。ネンブタール麻酔 (45mg/kg) ラット (260-500g) を用い, 歯髄の電気刺激 (0.5Hz, 0.1msec, 2-8V) により誘発される顎二腹筋の誘発筋電図をアドスコープ (ATAC-250) により20回加算し, その振幅を指標とした。針を合谷と曲池に刺入し, 5Hz, 1msecの矩形波通電を行い, 上記の顎二腹筋筋電図に及ぼす影響を調べ, その振幅が針通電前の値に対して50%以下に減少した場合に抑制効果があったと判定した。続いて脳の一部を除去し, 針通電前後の効果について比較検討した。その結果, 視床及び前視床下部の前方で切除した場合には, 抑制効果がみられたが, それよりも後方で切除した場合には, 抑制効果はみられなかった。したがって針通電による開口反射の抑制に関与する最上位の中枢神経部位には, 前視床下部が含まれているものと思われる。
  • 伊藤 忠信, 村井 繁夫, 吉田 熈, 中本 義勝
    1979 年 21 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    enothiazine誘導体である2-cyano-10-[3'-(4'-hydroxypiperidino)-propyl]-phenothiazineを6ヵ月間投与したラットの慢性毒性試験において, 休薬による中毒状態からの回復を, 口腔領域を含めて検討した. 薬物は10%Acacia溶液に懸濁され, 5, 40及び120mg/kgを6ヵ月間, 胃内に投与された. 休薬後, 自発運動の抑制, カタレプシー様症状, 傾眠状態, 口腔粘膜の乾燥, 口唇の異常運動歯垢の蓄積, 歯芽の異常などは観察されなかった. 体重は初め減少, のち増加の二相性の変化を示した. 飲水量や摂餌量は休薬後増加した. 顎下腺の湿重量は休薬後4週目でもなお薬物による影響がみられ, 雄では減少し, 雌では増加した. また, その組織検査では漿液腺細胞の軽度の障害が認められた. なお, s-GOT値, LDH値, 血糖値は休薬により正常に回復した.
  • 杉山 勝三, 山本 健二, 鎌田 理, 勝田 信夫
    1979 年 21 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯肉炎の歯肉結合組織に及ぼす影響を組織コラーゲンの性状変化とそれに関連する酸性加水分解酵素および中性プロテイナーゼ活性の動向から検討した。
    ヒト歯肉炎の切除歯肉組織中には対照歯肉に比べ可溶性の蛋白質および透析性ハイドロキシプロリン量が著しく増加し, 塩可溶性および酸可溶性コラーゲンも約2-3倍の増加を示した。これに対し不溶性コラーゲンは疾患群において減少を示した。酸性加水分解酵素活性は疾患群と対照群に変動が認められなかったが, 中性pH域で活性を示すコラーゲン分解活性およびカテプシンB1活性は疾患群において著明な増大を示した。しかしカテプシンG活性には差が認められなかった。以上の結果から歯肉炎における歯肉結合組織のコラーゲンの質的転換にはカテプシンB1およびコラゲナーゼが重要な役割を果していることが示唆された。
  • 大谷 恵一
    1979 年 21 巻 1 号 p. 28-54
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ストロンチウム経口投与, 上皮小体焼灼, 並びに, 無蛋白食飼育によるラット切歯象牙質の形成障害を, 石灰化像はmicroradiographyにより, 歯質の形成量 (速度) はtetracyclineによるラベリング法により, 層別に比較観察した。
    各条件により象牙質の形成量は全般的に低下した。最も著しいのは無蛋白食飼育である。ただし, それが著明に現われる範囲 (層) は, 各条件によって明らかに異なることがわかった。また石灰化像変化の様相も, その出現範囲 (層) も条件によって異なっている。両変化の関連について検討し, さらにまた, 成長量変化についても観察した。
  • ヒト炎症歯肉とモルモット感染歯肉における脱水素酵素
    田中 昭男
    1979 年 21 巻 1 号 p. 55-77
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎罹患患者から, 初診時ならびにbrushingやscalingといった前処置後に歯肉を, また2群のモルモットの歯肉に口腔内細菌を注射し, 経時的にその部の歯肉を採取した。これらの歯肉についてBarkaとAndersonの方法に基づき, LDH, NAD-MDH, NAD-ICDH, GDH, β-HBDH, α-GDH, ADH, NADPMDH, NADP-ICDH, G6PDH, 6PGDH, NADHDH, NADPHDH, SDHの各酵素活性を検出した。さらにOgawaらの方法により, ヒト炎症歯肉のSDHの活性を電顕的細胞化学的に検索した。電顕的観察では, 下部上皮層の細胞のmitochondriaに電子密度の高い沈着物がみられた。光顕的観察から, 炎症の程度や時間の経過によって酵素活性に変動が認められ, とくに貧食や増殖に関与するmacrophageやfibroblastなどの細胞の酵素活性の増強が観察された。
  • 辺縁性歯周炎と免疫グロブリン (IgG, IgAとIgM) の関係について
    西田 健, 田中 昭男, 宮川 保夫, 竹内 正幸, 三浦 康宏, 筒井 正弘, 上田 雅俊, 飯田 正人, 稲田 芳樹
    1979 年 21 巻 1 号 p. 78-88
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Many factors are known to effect the onset and/or development of periodontal disease. Not only the direct effect of oral bacteria is related to the inflammatory destruction of tissue, but also the antigenicity of bacteria is a factor, i.e., the immune response between bacteria and their specific antibodies bound up with the indirect destruction of the tissne. Therefore, in order to determine the specific relationship between the humoral antibodies, -which is responsible for the immediate hypersensitivity, and periodontitis, patients without any systemic disease and with periodontal disease, -which had been considered to be caused by only localenvironmental factors, were selected for the experiment. In this study we investigated farther the correlation: between clinical features and each localization of IgG, IgA, and IgM in the inflamed gingivae, and then each contents of serum immunoglobulins in patients and between each localization of these immunoglobulins in the inflamed gingivae and each contents of these serumimmunoglobulins in patients with marginal periodontitis.
    The results obtained were as follows.
    1) No correration between clinical features and each localization of IgG, IgA, andIgM in the inflamed gingivae was found.
    2) Each content of serum-IgG, IgA, and IgM increased in patients with marginal periodontitis but not in human with healthy gingivae and no correlation between the content clinical featur es was found.
    3) Also there were no apparent correlation between each localization of IgG, IgA, and IgM in the gingivae and each content of serum immunoglobulins in patients with marginal periodontitis.
  • 駒田 格知
    1979 年 21 巻 1 号 p. 89-106
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    サケ科魚類の口腔および咽頭には多数の歯がみられ, これらの歯の分布状況は, 鋤骨・口蓋骨・舌骨等の口部骨の形態と共に一つの分類形質として認められている。しかし, これらの口腔にある分類形質が成長に伴ってどのように変化するかに関しては不明な点が多い。そこで, サケ科魚類の一種ニジマスの仔・稚魚の口部形態および歯系について調査し, 成長に伴ってこれらがどのように変化するかについて検討した。ニジマスの標準体長および体重は孵化後2ケ月間はほとんど変化しないが, その後かなり急激に増大する, そして卵黄の吸収は2ケ月齢から3ケ月齢にかけてほぼ完了する。一方, 口部骨格系や歯系は1ケ月齢の頃に形成され始め2ケ月齢頃までゆっくりと進行する。しかし, その後は急激に進行し3ケ月半を経過した頃 (標準体長25.0mm) にはほぼ完成し, 5ケ月齢 (標準体長36.Omm) の稚魚においては, 口部骨格, 特に鋤骨や咽舌骨の形態および歯の分布状況は基本的に成魚のものと差異がみられなくなる。すなわち, 口部骨格や歯系の形成が進行し, 完成される時期は, 卵黄の吸収が完了する時期とほぼ一致することが判った。
  • 古賀 敏比古, 井上 昌一
    1979 年 21 巻 1 号 p. 107-116
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans AHT株の菌体外酵素によってスクロースより合成されるグルカンは, 遠沈 (20, 000×g, 15分) により沈澱する画分 (ISG) と残った上清より70%エタノールにより回収される画分 (SG) に分別された。SGはBio-Gel P-100を用いたゲル濾過により, Voに溶出される高分子 (SG-A) とVt付近に溶出される画分 (SG-B) に明確に分離され, このうち前者は更にそれぞれ20および50%エタノールにより沈澱するSG-A-IとSG-A-IIとに分けられた。SG-Bは50-80%エタノールにより沈澱した。ISG, SG-A-I, SG-A-IIおよびSG-B画分の量比は66.3: 9.4: 4.4: 19.9であった。また, これらの画分のα-1, 3グリコシド結合したグルコース残基の含有量はそれぞれ35, 35, 16および4%であり, ゲル濾過による推定分子量は≧1.5×107, ≧1.5×107, ≦5×106 (>1×105) および≦1×104であった。ISGおよびSG-A (SG-A-I: 68とSG-A-II: 32より成る) は, デキストラナーゼ非感受性, 高いConAによる凝集性とS. mutans生菌体に対する凝集能とを有し, 一方SG-Bはデキストラナーゼ感受性を有していたが両凝集性を欠落していた。また同菌のスクロース培養菌体が合成した菌体外。水溶性グルカン中にはSG-A-Iに相当する画分は殆んど含まれていなかった。これらの成績から, ISGとSG-A-Iとはほぼ類似の高度の分岐構造を有する高分子グルカン, SG-A-IIは中等度の分子量を有する水溶性分岐型グルカン, SG-Bはα-1, 6グリコシド結合を主とする直鎖型低分子グルカンであることが推定された。これらの成績は他のいくつかの代表的なS. mutans株のグルカンにも適用しうる可能性が示唆された。
  • 須賀 昭一, 大野 重雄, 三須 美喜雄, 近藤 勝淑
    1979 年 21 巻 1 号 p. 117-139
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    牛の永久歯々胚の形成期エナメル質の石灰化進行像を非脱灰研磨片のmicroradiographyによって観察し, 更に, 同じ研磨片の透過光線像, 組織化学的染色像と比較した。Microradiogramの観察にあたってtelevision display systemにより等濃度線図を作成し, 又, コンピューターによる2種の画像処理を行った。
    基質形成期において軽度に石灰化したエナメル基質は, 成熟期に入ると急速に石灰化度の二次的上昇をとげる。ただし, 石灰化度とその上昇の勾配, 石灰化完了の時期, 最終的石灰化度, 等は層によって異なる。
    基質形成期において透明であったエナメル基質は, 成熟期に入ると幅せまい表層を除いて不透明となり, その上もろくなる。この様な状態にある間に, 石灰化度の二次的上昇が進行し, 再び透明化すると間もなく石灰化は終る。
  • 長谷川 一夫, 石田 雅男
    1979 年 21 巻 1 号 p. 140-159
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    生殖腺が発生の段階で血管を伴って最終の位置に移動することは良く知られた事実である。歯に分布する血管の形態, 即ち歯胚, 着床歯及び脱落歯について之等の血管の変動も又著者等の興味を覚える点である。この問題の追求の為に下等脊椎動物17種について10%ゼラチン加墨汁を血管内に注入し, 頭部の連続透明切片を作製し解剖顕微鏡下に観察した。下等脊椎動物は多生歯を有し, 歯胚, 着床歯の各ステージが観察出来る。勿論, 歯の形態と着床の様式も観察し, 血管分布との関係には特に注意を払った。各発生段階での血管分布が一枚の切片の中で観察され, 血管の起始, 分枝及び走向が発生の経過に応じて変化し之等の変化をそれぞれの種について比較検討した結果, 下等脊椎動物に於ける血管分布は9型に分けられた。各型とその発生段階での変化は歯の発生と関係深く, かつ都合よく説明することができた。
  • 山崎 和
    1979 年 21 巻 1 号 p. 160-168
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    硬組織の石灰化に関する研究は, 基質小胞の発見により大きく発展し, 石灰化機構における細胞の役割が重要視される様になった。著者はラット胎児及び新生児頭蓋冠の酵素処理により得た骨細胞が, 大量のカルシウムを含み且その約30%が交換可能であること, 又その出入は一部エネルギー依存性のものであること等を明らかにした。又カドミウム及びマンガンが骨細胞に於けるカルシウムの出入を特異的に抑制することを証明した。これらの成績は骨細胞の石灰化機構における役割及び重金属塩の硬組織に対する為害性の解明に有力な手がかりを得たものと考える。
  • 村上 守良, 六反田 篤, 伊東 励
    1979 年 21 巻 1 号 p. 169-176
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    彎曲徴について, 臨床上ならびに歯の解剖学上有効な指針を得るために, 下顎右側の中切歯, 側切歯および犬歯の歯冠長を12等分し, Contracerを用いて歯軸に直交する各断面の輪郭と切縁観輪郭における彎曲徴を角度的に観察した。次のような結果が得られた。
    1.切縁観輪郭では, 下顎中切歯および下顎側切歯には彎曲徴は認められない。下顎犬歯は明らかに彎曲徴が認められる。
    2.歯冠各部の輪郭では, 下顎中切歯で切縁側1/4の領域に, 下顎側切歯で切縁側2/3の領域に, 下顎犬歯で尖頭より3/4の領域にそれぞれ明らかに彎曲徴が認められる。
    3.下顎中切歯において切縁側1/4の領域で明らかに彎曲徴が存在することは他の要素と合わせて左右側鑑別の一助となし得る。
  • 平田 博則, 岡本 莫, 土肥 敏博, 西川 殷維, 辻本 明
    1979 年 21 巻 1 号 p. 177-181
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    著者らは歯周病発症におけるプロスタグランディン (PGs) に関する研究の一環として顎骨からのCa遊離に対するPGsの作用について実験を重ねている。今回PGE2による骨吸収に対するウナギ, サケ, ブタのカルチトニン (夫々 [Asu1.7] ECT, SCT, PCT) の作用についてとくにその生物学的活性を調べるため予め45CaCl2で標識したラット胎児培養下顎骨からの45Ca遊離を示標として比較検討した。併せて副甲状腺ホルモン (PTH) 作用に対するこれらCTの拮抗強度も調べた。
    [Asu1.7] ECTは0.01-1MRCU/mlの濃度でPGE2による45Ca遊離を29-98%抑制した。またPTHによる45Ca遊離を0.01-1MRCU/mlの [Asu1.7] ECTは25-86%抑制した。PGE2, PTHに対する3種のCTの拮抗強度はMRCUの比較で [Asu1.7] ECTとSCTはほぼ同程度でPCTは僅かに弱かった。
  • 酒井 琢朗, 花村 肇, 戸田 喜之
    1979 年 21 巻 1 号 p. 182-192
    発行日: 1979年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Tupaiaglisの各歯について観察した。1) 上顎大臼歯の歯冠形態は基本的に双波歯型を呈し, 9種類の咬頭が存在する。一般にparaconeの発達は良好であるが, metaconeは第3大臼歯でかなり退化する。2) 3個のstylar cuspsと2個のbuccal cuspsは第1, 第2大臼歯で良く発達しているが, 第3大臼歯では遠心にある咬頭が退化ないし消失している。第3, 第4小臼歯にもparastyleとmetastyleが出現する。3) protoconeは上顎大臼歯, 第4小臼歯で良く発達し, 第3小臼歯では分化不充分である。4) hypoconeはprotocone cingulumの舌側を取り巻いているcingulumから作られ第1大臼歯で良く発達している。5) 下顎大臼歯はtrigonidとtalonidから構成され, それぞれ3個の咬頭を持つ。6) 下顎第4, 第3小臼歯もtrigonidとtalonidから構成されるが, talonidには1個の咬頭が出現するのみである。第3小臼歯のtrigonidは分化不充分である。7) 上・下顎第2小臼歯および前歯は単錐歯である。第1・第2切歯は歯櫛を作る。
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