生後4, 6, 8, 12週のラットを用い, 動物の成長発育に伴う歯根膜, 切歯および顎骨の形態的変化を, ラジオグラフィ法およびマイクロラジオグラフィ法により検索した。その結果, 体重, 顎骨重量, 切歯全長, 歯槽骨長などは, 動物の週齢の増加に伴って, それぞれ, ほぼ一定の割合で増大することが判明したが, 歯根膜の厚さは, 計測を行なった4つの部位すなわち唇側, 舌側, 正中側, 頬側のいずれにおいても殆んど増加せず, 舌側歯根膜においては有意の減少すら認められた。第1臼歯近心縁付近で切断した横断研磨切片上において, 唇側および舌側歯根膜の厚さはおよそ200~300μmの範囲にあり, 正中側および頬側歯根膜の厚さはおよそ100~200μmの範囲にあった。切歯の断面積もまた, 動物の週齢の増加に伴って, ほぼ一定の割合で増大したが, 歯根膜の断面積には著しい変化はなく, 歯根膜腔の著明な拡大は認められなかった。しかし横断切片における, 切歯の外周や歯槽骨内周の増加は明らかであり, 動物の成長発育に伴う, 歯槽窩内面における著しい骨吸収の進行ならびに, 切歯表面あるいは歯槽骨内面における歯根膜表面積の増加が推測された。
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