歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
22 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 平地 慶行
    1980 年 22 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus aureus L型菌より分離した, それぞれストレプトマイシンおよびエリスロマイシンに耐性の亜株を用い, 細胞融合実験を試みた。すなわちこれら2種の亜株を混合し, 50%ポリエチレングリコール (PEG) で処理し, ついで両薬剤を含まない培地で増菌培養することによって, ストレプトマイシンおよびエリスロマイシンの両薬剤に二重耐性を示す安定な組換え型のL型菌を得た。種々の対照実験の結果から, この組換え体は, 細胞融合原性物質 (fusogenic agent) であるポリエチレングリコールの助けを借りて起った細胞融合によって生じたものであることが結論された。なお増菌培養の必要性についても考察を加えた。
  • 秋本 康博
    1980 年 22 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ウサギの下歯槽神経の分枝である切歯神経を切断し, その中枢端から電気生理学的に神経活動の導出を試みたところ, 自発放電を記録することができた。記録された放電は5~6個のユニットよりなり, 頻度は一定であった。この放電は, 導出電極より中枢側で切歯神経を切断した場合消失し, また上頸交感神経節切除により影響を受けなかった。ケタミン (10mg/kg, i. v.) 投与により, 約10分間, 放電頻度は半分に減少し, ペントバルビタール (30mg/kg, i. v.) 投与の場合は頻度は約1時間, 1/4に低下した。クロルプロマジン (1mg/kg, i. v.) の場合は, 初回投与時のみ頻度は, 最大2倍以上に-過性に増加し, 以後最初のレベルに回復した。以上のことは, この放電が, 切歯神経内に存在する遠心性線維によりもたらされるものであることを示唆している。
  • 佐藤 節子
    1980 年 22 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans strain FILのsucrose代謝の機構を明らかにするため, これをglucoseおよびsucroseを炭素源として連続培養しそれぞれの菌の乳酸産生速度を調べた。Sucrose培養菌はglucoseおよびsucroseから同程度の速さで乳酸を産生したがglucose培養菌のsucroseからの乳酸産生速度はglucoseからのものより小さかった。Cell-free extractのinvertaseの比活性はどの培養条件のものでもほぼ等しかった。しかしsucrose培養菌をトルエン処理したものはphosphoenolpyruvate (PEP) とsucroseとを共に反応させるとphosphorylsucrose, glucose 6-phosphate (G6P), fructose 6-phosphate (F6P) およびfructoseを生成したがglucose培養菌のものはphosphorylsucroseをほとんど生成せず, またほかの生成物の量も少なかった。これらの結果はsucroseがPEP-dependent phosphotransferase system (PEPPTS) によってphosphorylsucroseとしてとり込まれた後にG6Pとfructoseに分解されること, この系がsucroseを炭素源として培養した菌で誘導されることを示していた。
  • 顎下腺唾液の毒性について
    平松 正彦, 畠山 桂子, 南 直臣
    1980 年 22 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    雄マウスのphenylephrine刺激唾液の毒性について検討した。その結果, 唾液はモルモット, ラット, ハムスターに対して強い毒性を示すことを認めた。マウスに対する毒性は比較的軽度であった。雄マウスの顎下腺抽出液にも強い毒性が認められた。唾液中の毒性物質はkallikrein様のタンパク分解酵素であることが示唆された。以上の結果から, マウス顎下腺の生理学的機能について考察した。
  • 小田島 美紀代
    1980 年 22 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    齧歯類の顎下腺の機能比較上の手がかりの一つとして, ヒメネズミApodemus argenteus Temminckの顎下腺の微細構造, 顆粒の性質について組織化学的および電顕細胞化学的に観察し, 更に顆粒管直径の性差について計数的検索を行った。ヒメネズミの顎下腺は, 終末部, 介在部, 顆粒管部およびいわゆる線条部により構成され, 終末部は, 雌で細胞に2型を持ち, 漿粘液性の細胞は腺房の大部分を占め, まれに漿液性の細胞を観る程度であった。
    漿粘液性の顆粒は, 酸性および中性多糖類を持ち, 電顕的にはこの顆粒はglycoprotein陽性であった。介在部にはOsO4親和性の強い顆粒がみられた。顆粒管顆粒は, 蛋白質, 中性多糖類を持ち, amylase活性陽性, protease活性陰性で, glycoprotein陰性であった。更に顆粒管直径の計測では, 雌雄間に有意差は認められなかった。
  • 筋師 洋, 佐藤 精一
    1980 年 22 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯科用薬物の象牙質透過性をしらべる簡単な実験法を考案し, p-chlorophenol-camphorおよびphenol-camphor中のp-chlorophenolおよびphenolの象牙質透過能を, それぞれ前者はブタ象牙質薄片 (5×5×0.5mm), 後者はヒト象牙質薄片 (5×5×0.2mm) を用いてしらべた。装置は象牙質薄片の歯髄側に接触させた薬液が反対側象牙質面においた濾紙中に吸収されるように工夫し, 濾紙中に吸収されたpchlorophenolおよびphenol量を測定した。
    p-chlorophenolおよびphenolはどちらも時間とともに象牙質透過量 (総量) が増加し, p-chlorophenolまたはphenolとcamphorの比率が35: 65と50: 50との間では大差なく, 65: 35で透過量が大であった。象牙質薄片をより薄くしたヒトでのphenolの透過量が, ブタ象牙質でのp-chlorophenolの透過量よりもはるかに大きかった.
    この実験法は歯内療法薬の象牙質透過能を調べるのに簡単かつ有用な方法であると考えられる.
  • 松本 章, 小林 恵子, 寺沢 波香, 保坂 照美, 姥山 良雄, 山田 庄司
    1980 年 22 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    SrCO3投与ラットの大腿骨に発生した異常骨の組織構造の変化と組織化学的変化を調べるために, ラットをSr含有飼料で3週間飼育した。左右大腿骨を摘出後, 右側大腿骨の軟X線写真を作製し, その発育状況を調べ, 左側大腿骨の横断凍結切片を作製し, H・E染色, A・B染色, T・B染色, PAS反応による多糖類染色, Van Gieson染色を施し検鏡した。その結果, 大腿骨の発育が阻害され, ヘマトキシリンに好染する “既成の骨” とエオジンに好染する異常骨, A・B, T・B, PAS染色で “既成の骨” の内奥のところどころにまだら状ないし格子縞状に好染する部分が認められた。またPAS反応では異常骨においても反応が認められた。Van Gieson染色では “既成の骨”, 異常骨で一様に染色された。これらの事実からSr投与により発生した異常骨は, PAS陽性物質, 膠原線維が多い骨であることが示唆された。また “既成の骨” では多糖類代謝の障害を示唆する所見が得られた。
  • I. ミエロペルオキシダーゼとハロゲンとの反応
    小田島 武志
    1980 年 22 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ペルオキシダーゼ-過酸化水素-ハロゲン系による殺菌 (解毒) 作用発現機構を解明するため, ミエロペルオキシダーゼと塩素, ヨウ素, フッ素, 臭素などのハロゲンとの反応を分光学的に検討した。
    ミエロペルオキシダーゼは塩素, ヨウ素, フッ素, 臭素のいずれとも反応し化合物を与えることがわかった。分光滴定で得たミエロペルオキシダーゼとこれらのハロゲンとの解離定数は塩素が0.52mM, ヨウ素が5mM, フッ素と臭素がそれぞれ7mMとなり, 塩素が他に比べて約10倍ミエロペルオキシダーゼに対して親和性が強いことがわかった。この結果はミエロペルオキシダーゼー過酸化水素-ハロゲン系にとって塩素が最も有効であることを示唆している。
  • I. 電子顕微鏡的所見
    杉本 朋貞
    1980 年 22 巻 1 号 p. 58-71
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    出生直後から成熟個体に至る各種日数のS. D. 系ラットの閂レベルでの三叉神経脊髄路を電顕的に観察し, 髄鞘の発生様式とその形成過程を検索した。脊髄路の構成軸索の直径の上限は成長に伴う変化をほとんど示さず約4.5μ で, 直径の小さなもの程多数みられた。有髄線維は出生直後ほとんどみられなかったが, 成長とともにまず中程度の直径 (1.0~2.0μ) のものが最初に出現し, 次いでより太いもの及びより細いものも出現し, その数が増加した。無髄線維は生後7日目までは有髄軸索の直径の上限を上まわる太いものがみられたが, 成長と共に直径の大きなものほど急激に減少した。幼若個体に多くみられた神経細糸の凝集像は成長につれ減少し, 9日目以後は軸索形質の電子密度もほぼ一定となった。promyelin fiber, loose myelinは生後日数の浅い個体でもほとんどみられなかったが, 活発な髄鞘形成を暗示するparanodeの横断面がかなり観察された。
  • 雨宮 璋, 阿部 智
    1980 年 22 巻 1 号 p. 72-83
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯根膜の構造と代謝に及ぼす咬合機能の意義を明らかにする目的で, Wistar系ラットを用い, 上顎左側臼歯を抜去し, 抜歯後6時間目より14日目までの間隔で下顎臼歯の歯根膜を電顕的に観察した。
    対合歯の抜去により咬合機能を喪失した歯牙の歯根膜は速やかに著しい萎縮性の変化を示した。膠原小線維の均質化, 崩壊及び消失が速やかに進展し, 歯根膜は疎髭化し, 短時日のうちにその機能的構造は全く失われる。このような一連の変化に際して線維芽細胞による膠原小線維のとり込みを示唆する所見が認められた。
    このような観察所見は, 正常の咀嚼機能は歯根膜の構造を維持する上で重要な役割を演じており, 機能の喪失は線維芽細胞によるコラーゲンの新生を減少させる一方, 膠原小線維の減成を亢進させ, その結果歯根膜の速やかな崩壊, 萎縮をもたらすことを示唆するものと思われる。
  • I. ネズミ亜科
    山田 博之, 鈴木 成司, 廖 健源, 酒井 琢朗
    1980 年 22 巻 1 号 p. 84-96
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    哺乳動物の咀嚼機構を明らかにするために, 日本に棲息するネズミ類の上・下顎大臼歯をもちいて, 歯の全体的大きさに対する各大臼歯の相対的変異について比較検討した。計測項目は上・下顎大臼歯の歯冠近遠心径, 頬舌径である。各歯冠の相対変異度は, 基準変量を上・下顎大臼歯の歯冠近遠心径または頬舌径の幾何平均値とするアロメトリー式から算出された。その結果, 次のような結論を得た。
    1. 歯の全体的大きさの変異に対する各大臼歯の大きさの変異を相対変異度であらわした。
    2. 相対変異度はアカネズミの下顎大臼歯を除いてant.-post. gradientをあらわすか, no gradientである。後者の場合にはα=1.0に近い (等成長)。一般的に第1大臼歯がもっとも相対変異度は小さく, 第3大臼歯がもっとも大きい。
    3. 相対変異度と計測絶対値の変動係数との間には強い相関々係があらわれた。
    4. 相対変異度がant.-post. gradientを示す大臼歯では歯の大きさが小さくなる程, その歯の相対変異度は大きくなり, この傾向は退化指数と強い関係が認められた。
    5. アカネズミの下顎大臼歯ではpost.-ant. gradientをあらわし特異的な傾向を示した。
  • 結晶性と溶解性
    岡崎 正之, 土井 豊, 高橋 純造, 森脇 豊, 青葉 孝昭
    1980 年 22 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    CO3含有量の異なるヒドロキシアパタイトを80℃で合成し, その物理化学的性状, 特に結晶性と溶解性について検討した。X線回折及び赤外吸収スペクトル分析による同定では, アパタイト中のCO3含有量が高いほどPO43-の位置に置換するCO32-量は増加することが示唆された。またX線回折によるバリアンス解析では, CO3含有量が増すにつれ結晶性は悪くなった。一方, 溶解度を0.5M酢酸緩衝溶液 (pH4.0, 25℃) 中で測定したところ, CO3含有量が増加するにつれ溶解度も増加したが, CO3含有量の低濃度域で, 溶解度曲線に急激な増加がみられた。このことは, アパタイト中のCO32-の存在がわずかであって, 結晶性が比較的よくても, 酸に対する抵抗は著しく低下することを示唆するものである。
  • 第1報歯周組織の免疫応答に関する実験的研究
    竹内 宏, 松田 信介, 金久 純也, 太田 一男
    1980 年 22 巻 1 号 p. 102-114
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎の炎症ならびに歯槽骨の吸収機転を, 口腔内細菌を抗原とする免疫応答の面から追求すべく, ラットを用いて検討した。実験方法として感作リンパ球移入群と非移入群とに分け, ヒト口腔細菌の可溶性抗原を注射し, その経時的変化を病理組織学的に検討した。感作リンパ球移入群および非移入群とも遷延感作によってANUG様の炎症を招来し, 同時に骨吸収をも認めたが, 感作リンパ球移入群で遷延感作を行なわなかった群はツベルクリン様反応をみたのみで歯槽骨吸収はなかった。遷延感作群の炎症は抗原過剰域におけるArthus反応とみなし得るものであり, 骨吸収はosteoclastic resorptionとnon-cellular resorptionの両方であった。なお, 炎症症状が重篤になるに従ってnon-cellular resorptionへ移行する傾向があった。
  • 中村 玄, 中村 治郎, 千葉 元承
    1980 年 22 巻 1 号 p. 115-122
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    生後4, 6, 8, 12週のラットを用い, 動物の成長発育に伴う歯根膜, 切歯および顎骨の形態的変化を, ラジオグラフィ法およびマイクロラジオグラフィ法により検索した。その結果, 体重, 顎骨重量, 切歯全長, 歯槽骨長などは, 動物の週齢の増加に伴って, それぞれ, ほぼ一定の割合で増大することが判明したが, 歯根膜の厚さは, 計測を行なった4つの部位すなわち唇側, 舌側, 正中側, 頬側のいずれにおいても殆んど増加せず, 舌側歯根膜においては有意の減少すら認められた。第1臼歯近心縁付近で切断した横断研磨切片上において, 唇側および舌側歯根膜の厚さはおよそ200~300μmの範囲にあり, 正中側および頬側歯根膜の厚さはおよそ100~200μmの範囲にあった。切歯の断面積もまた, 動物の週齢の増加に伴って, ほぼ一定の割合で増大したが, 歯根膜の断面積には著しい変化はなく, 歯根膜腔の著明な拡大は認められなかった。しかし横断切片における, 切歯の外周や歯槽骨内周の増加は明らかであり, 動物の成長発育に伴う, 歯槽窩内面における著しい骨吸収の進行ならびに, 切歯表面あるいは歯槽骨内面における歯根膜表面積の増加が推測された。
  • 清水 文昭
    1980 年 22 巻 1 号 p. 123-143
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    古来末梢神経障害に関して, 形態学・生理学的見地から, 数々のアプローチが試みられているが, 障害部を視覚的に捕える方法は, 神経造影をおいてほかにはない。
    末梢神経造影法が, 整形外科領域で臨床に用いられるようになったのは, ごく最近のことであり, 顎顔面領域における研究は, ほとんどなされていない現状である。
    著者は, 成犬の三叉神経および顔面神経を用いて, その中枢ならびに末梢方向造影法を行い, いずれの方向にも造影可能なことを確認した。ついで正常神経造影を基礎として, 成犬の下歯槽神経に, 実験的損傷ないしは変性を生じしめた後に神経造影を行い, その治癒過程と造影像との関係を経日的に追求した結果, ほぼ損傷治癒過程に平行する造影所見を得た。
  • 1. phenolとcamphorの配合およびformalinとcresolの配合について
    黒木 賀代子, 竹中 栄子, 吉岡 伴子, 村上 雄次, 吉村 泰治
    1980 年 22 巻 1 号 p. 144-155
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    phenolとcamphorまたはformalinとcresolの急性毒性における配合効果を検討した。薬剤はオリーブ油 (必要に応じ0.25% CMC添加) に稀釈してマウス体重10gあたり0.1mlを経口投与した。マウスはddY系雄性, 体重18.0~22.0gのものを1群10匹使用した。投与直後より7日間にわたって全身症状, 体重変化, 死亡数を観察し, 7日間の総死亡数よりLitchfield-Wilcoxon法でLD50を算出した。最初に各薬剤単独投与時のLD50を求め, 次にこの値にもとづいて調製したphenol-camphor配合剤およびformalincresol配合剤のLD50を求めた。2薬配合時の急性毒性における相互作用の判定はGaddumの方法に準じた高木らの方法に従った。その結果, 単独投与時の急性毒性の強さは, phenol≒formalin>cresol>camphorの順であり, 2薬配合時の急性毒性では, phenolとcamphorは相加的作用傾向を示し, formalinとcresolは拮抗的作用傾向を示すことが明らかとなった。
  • 1980 年 22 巻 1 号 p. 157
    発行日: 1980年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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