歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
23 巻, 4 号
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  • 三輪 全三, 小野 博志, 角野 隆二
    1981 年 23 巻 4 号 p. 565-575
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒトの歯髄を電気刺激して得られる感覚と刺激条件との関係を調べ, 同時に誘発される頭皮上誘発電位 (誘発脳波) および開口反射 (咬筋抑制) とこれらの感覚との対応を検索し, こられの誘発反応が歯髄感覚を知る客観的な指標になり得るか否かを検討し, 次の結果を得た。(1) 歯髄を電気刺激して, 弱い刺激で誘発されるのはpre-pain感覚で, この約2倍の強度で痛みが生ずる.両者は時間的, 空間的加重の有無, 対応する誘発脳波成分の相違から, 末梢あるいは中枢機構が別であると推察される。(2) 誘発脳波と咬筋抑制は, まれに感覚閾値以下の刺激強度で出現するが, ほとんどの場合これらの誘発反応の閾値がpre-painの閾値にほぼ一致すること, 誘発脳波の初期成分の振幅がpre-pain感覚を生ずる低い刺激強度と, 後期成分は痛みを生ずる高い刺激強度と相関を示すことより, これらの誘発反応が, 歯髄感覚を知る一つの指標となり得る可能性が示唆される。
  • 三代 幸彦, 石見 隆夫
    1981 年 23 巻 4 号 p. 576-580
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    いくつかのアミノ酸が唾液内乳酸産生を抑制した。ヒト汚染全唾液にグルコースとアミノ酸を加えて好気静置下にインキュベートすると (グルコース100mg/100ml, アミノ酸10mM), アミノ酸無添加時にくらべ乳酸量が低下する場合がある。その低下率は次のようであった。(1) システイン, イソロイシン, ロイシンは, いずれもすべての被検者 (9名) において30~70%,(2) スレオニン, セリン, アルギニンはそれぞれ7名, 4名, 3名の被検者において20~60%,(3) トリプトファン, リジンは各2名, ヒスチジン, アラニン, グリシン, バリンは各1名において20~30%であった。なお, フェニルアラニン, アスパラギン, グルタミン酸, グルタミン, プロリンは, すべての被検者において低下を全く示さなかった。
  • 加賀山 学, 金田一 孝二, 秋田 博敏, 高橋 則男
    1981 年 23 巻 4 号 p. 581-588
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    分泌期エナメル芽細胞を含むラット切歯根端部の器官培養を行い, エナメル芽細胞の形態維持について検討した。
    TrowellのT-8培地を用いた静置培養法では, 培養7日までエナメル芽細胞, エナメル質および中間層細胞を認めた。Tomes突起はin vivoのそれに比べて短く, 突起の起始部のみが残存した。
    灌流培養法はRoseのcircumfusion systemにほぼ準じたが, 組織片と灌流培地 (子牛血清を加えたMedium199) との隔膜にNuclepore filterを用いて良い結果が得られた。培養期間14日および21日でTomes突起を有するエナメル芽細胞, エナメル質および中間層細胞の維持が可能であった。この事は灌流培養法が分泌期エナメル芽細胞の長期間in vifro実験系として有効な手段である事を示唆している。
  • 上原 清子
    1981 年 23 巻 4 号 p. 589-600
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    重層扁平上皮の自由表面には, マイクロリッジと呼ばれる細胞質隆起がある。マイクロリッジの形成過程および機質について検討するため, ヤツメウナギの口腔粘膜上皮および角質歯の自由表面におけるマイクロリッジの形態を走査型および透過型電子顕微鏡を用いて観察し, 次の結果を得た。1) 咽頭近くの粘膜表面では単突起状マイクロリッジが多く, 所々で帯状のものがみられた。前方にゆくにつれて徐々に密になっていた。2) 角膜歯間の中央部の粘膜表面では単突起状マイクロリッジが網目状に集列していた。3) 角膜歯基底部近くの粘膜表面では帯状マイクロリッジが網目を形成していた。4) 角質歯表面ではマイクロリッジは網目状で, 先端ほど幅広く平坦になっていた。5) 側面および自由表面方向に二次突起をもつマイクロリッジがみられた。これらの結果から, 形成過程および機能について検討した。
  • 竹下 信義
    1981 年 23 巻 4 号 p. 601-625
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Proline analogue L-azetidineのマウス歯胚分化, 特に象牙芽細胞の細胞分化に対する影響を電顕的に検討した。L-azetidine添加培養4日後, 歯胚の分化は著明に抑制され, 前象牙質形成は認められなかった。電顕的に, 低濃度添加例では, 象牙芽細胞において粗面小胞体の減少と小胞化がみられ, 特異な線維および線維様物質を含むライソソーム様顆粒が多数出現した。ライソソーム様顆粒内の線維の長径はSLSの約1/4を示していた。高濃度添加例では, 象牙芽細胞は大小のcytosegresomeが増加し, ついで細胞内小器官に乏しい歯乳頭細胞様となった。またエナメル芽細胞へ分化途上の内エナメル上皮細胞も未分化な上皮細胞へ脱分化する傾向がみられた。その後2日間対照培養すると, 歯乳頭細胞様となった象牙芽細胞は再び分化し, 内エナメル上皮も分化を開始した。L-azetidineは象牙芽細胞の分化および機能を著しく抑制するが, その効果は可逆的であることが示唆された。
  • 三叉神経と迷走神経の干渉部位について
    田村 憲正
    1981 年 23 巻 4 号 p. 626-634
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    口腔内への侵襲が自律系に影響を及ぼす際に三叉神経一自律神組反射が重要であることが判明している。三叉神経への入力が自律神経系のいかなる部位で影響を及ぼしているかを検討する目的で頸部迷走神経刺激に対応する迷走神経核の単位放電に対する三叉神経刺激の影響を検討した。頸部迷走神経刺激により迷走神経背側核および孤束核から刺激に対応する単位放電がみられた。迷走神経核の細胞の中には三叉神経の単独刺激でも発火する細胞がみられた。いずれも閾値以下の頸部迷走神経と三叉神経の刺激を適当な間隔で同時に与えることにより発火する細胞もみられた。これらのことから迷走神経核の細胞には三叉神経から促通性の入力が入っていることが推察出来る。口腔領域におけるReilly現象発現時に三叉神経への侵襲は迷走神経核の細胞に対し促通効果を発揮することにより迷走神経の興奮が過剰となり全身諸臓器に影響を及ぼしているものと考えられる。
  • 前川 泰人
    1981 年 23 巻 4 号 p. 635-646
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    コモン・ツパイの顔面神経, および顔面筋にっいて, 深層面からの剖出による系統解剖学的観察を行い, 次の結果を得た。
    1. 顔面神経の本幹から深枝, および後耳介神経を派出したのち, ヒトでみられる上枝, 下枝に分岐する事なく, 頸枝, 側頭前頭枝, 下顎縁枝, そして終末の上顎枝となる。
    2. 末梢主要枝は, 相互間の判別が容易で, 分岐様式はヒトより遙かに単純で整然としている。
    3. 顔面筋に関しては, 諸家の見解と異なる筋を認め鼻筋の横部として取り扱った。
    4. 深頸括約筋の一部としての下眼瞼下制筋の存在を確認した。
  • 日浦 透, 桂 茂
    1981 年 23 巻 4 号 p. 647-655
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラットの三叉神経終止核から脳幹唾液核に投射する経路を明らかにするために, 三叉神経終止核の各亜核を破壊し, 生じる変性線維をFink-Heimer法を用いて検索した。三叉神経終止核のいずれの亜核からも唾液核へ終止する線維があることを認めたが, 特に三叉神経脊髄路核吻側部 (n.oralis) から同側の唾液核に投射する線維が最も多い事が, 明らかになった。中間亜核 (n. interpolaris) や上知覚核尾側部からのものがこれに次ぎ, 上知覚核の最吻側部および尾側亜核 (n.caudalis) からの投射は極めて少量であった。また, 対側の唾液核への投射がn. oralisからは見られたが, 他の亜核からのものは認められなかった。このことから, 三叉神経終止核の内でも, 脊髄路核吻側部 (n. oralis) が, 唾液分泌に重要な役割を果しているものと推測される。
  • 福井 一博, 守山 隆章, 三宅 洋一郎, 野上 龍造, 小林 浩明
    1981 年 23 巻 4 号 p. 656-661
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutans HS-6株の粗酵素, 精製dextransucrase及び部分精製mutansucraseを用い, オレイン酸添加がグルカン合成にどのような影響を与えるかを検討した。粗酵素系においては, オレイン酸は不溶性グルカン合成を抑制すると共に水溶性グルカン合成を促進した。精製dextransucrase系においては, オレイン酸0.2mMまでは水溶性グルカンの合成を促進したが, さらに高濃度になると合成を抑制した(1mMで65%阻害)。部分精製mutansucrase系においては, オレイン酸は不溶性グルカン合成を阻害した(1mMで65%阻害)。これらのことから, 両酵素を含む粗酵素を用いた場合のオレイン酸存在下におけるグルカン生成機序を考察した。
  • 松尾 龍二
    1981 年 23 巻 4 号 p. 662-676
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ウサギを用い, 口腔領域の電気刺激による反射性顎下腺分泌量と顎下腺支配副交感神経性節前線維の反射性放電を記録し, 両者の関係を分析した。同側口腔領域前部の反復電気刺激(10-20Hz)により著明な顎下腺分泌が誘発された。節前線維の90%は同側口腔領域前部の特定部位の刺激にのみ応答した(上唇, 20%;口蓋, 25%;舌, 27%;下唇, 18%)。口腔領域反復電気刺激時の反射性放電パターンにより節前線維は3つのタイプに分類された(E-type, 41%;N-type, 36%;I-type, 23%)。すなわち, 20Hzの刺激に対し, E-type線維では放電頻度が著明に増加し, N-type線維ではほとんど放電頻度に変化がなく, I-type線維では放電頻度は自発放電レベル以下に減少した。刺激間隔を変化させつつ口腔領域を二連刺激し節前線維の興奮性の時間経過を調べると, E-typeは興奮-抑制, N-typeは短期間抑制, I-typeは長期間抑制の経過を示した。E-type線維の放電量は分泌量との問に有意の相関関係があり, これが分泌神経線維であること
  • 桂 茂, 石塚 寛, 松本 林, 中江 良子
    1981 年 23 巻 4 号 p. 677-684
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラットの咬筋の発生に伴なう筋線維の分化と筋組織の細胞構築状態の推移をSDH染色法によって検討した。生後16日までの筋管細胞や筋線維では比較的太いフォルマザン結晶が筋形質内にびまん性に存在する型(SL)と微細なフォルマザン結晶が存在するもの(SS)の2種類に大別された。その後, 16日以降からは成体型に移行する線維が漸増し, 23日以降では殆んどすべての筋線維が成体型の3種の筋線維に分化してきた。SL index=〔SL/(whole fibers)×100〕は生後4-16日の間で著しく増加した。又, 胎生19日から, すでにSL indexの高い場所と低い場所とが識別され, 生後1日でも成体筋でみられたと同様に, 最深層筋の原基に一致して高いSL indexを示す場所が見出された。又, 生後4日からは最深層筋で最も高く, 浅層筋がこれにつぎ, 深層筋で最低値を示す成体型の細胞構築パターンが認められた。さらに23日以降になると, OIやSIの横断面上での分布パターンは成体と略々類似してきた。
  • 桂 茂, 石塚 寛, 松本 林, 中江 良子
    1981 年 23 巻 4 号 p. 685-690
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラットの内側翼突筋 (成熟雄個体) の細胞構築状態をSDH染色法によって検討した。内側翼突筋においてもSDHに強い活性を示す筋線維と淡染性のもの, 及びその中間のものの3種類の筋線維が識別できた。内側翼突筋の横断面上におけるoxidative index (OI) 及びS index (SI) の平均値はかなり著明な区域差を示した。これらの値の横断面上での分布パターンは筋の部位 (起始から停止部) によっては著差を示さなかった。しかしながら, その数値にはかなり著明な差異が見出された。又, さらに同一区域内に存在している1次筋束の間においても著明な差異が存在していた。老化個体では, 3種の筋線維の識別が容易になるとともに高いOIやSI値を有する1次筋束や, 低いOIやSI値を有する1次筋束が増数してきた。
  • 石山 巳喜夫, 小川 辰之
    1981 年 23 巻 4 号 p. 691-697
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    イイジマウミヘビの口蓋骨歯, 毒牙後方の上顎骨小歯, および下顎の歯骨歯は欠如する。しかし, 比較解剖学的考察によれば, これらの歯牙は過去において存在していたことが推測され, さらに現生種においても, 退化過程にある歯牙原基の残存が示唆される。本種の成体と胎仔の頭部を組織学的に検索した結果, 成体では前述の各骨に隣接して, 歯堤の形成が認められ, 胎仔においては, 歯堤の形成に加え, 歯骨の舌側および咽頭底に歯胚列が観察された。なお, これら歯胚列はいずれも, 上皮直下の固有層浅層中に形成されており, 植立および萌出には至らない痕跡的な形象である。以上のように, 歯牙の欠如部位に相当して, 歯牙原基の形成が行なわれるところから, 本種の部分無歯は過去における存在歯牙の, 二次的退化によるものと推察した。
  • 骨組織を対象として
    一山 茂樹
    1981 年 23 巻 4 号 p. 698-717
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯槽骨の圧迫モデルとしてラット脛骨を用い, 骨膜を剥離し, ホールを形成し, 装置を挿入し, これにより圧迫を加えた群 (Group A), 装置挿入群 (Group B), ホール形成群 (Group C) につき, 同組織を対象に過酸化脂質 (LPO) を, またAlkaline Phosphatase (AL-Pase), Acid Phosphatase (AG-Pase) 並びにβ-Glucuronidase (β-GLase) 活性を測定し, 以下の結果を得た。
    実験側の脛骨では各酵素活性の上昇はGroup A, B, Cの順であり, AL-Pase/AC-PaseはGroup A, B特にGroup Aにおいて低下した。骨圧迫並びに装置挿入 (異物の存在) により骨組織の代謝活性は上昇し, 骨吸収が生ずると考えられる。LPOと各酵素活性の変動を対比してみた場合, 各酵素活性はLPOが低値の場合上昇し, LPOが上昇すると低下するか, 上昇を示さない結果を得た。各群のAL-PaseyAC-Paseが一定レベルを保つ時期にLPOが著しい上昇を示すか, 高値を示した。LPOは骨組織においても骨細胞の機能を抑制し, 酵素活性を低下させ, 骨吸収・骨形成を抑制すると考えられる。反対側の脛骨にはGroup A, Bで実験側の脛骨でみられた反応と質的に同様の反応が, Group Cで質的に逆の反応がみられた。
  • VI. ベンゾ 〔α〕 ピレン及び3-メチルコラントレンの酸化反応
    小田島 武志, 尾西 みほ子, 佐藤 尚子
    1981 年 23 巻 4 号 p. 718-724
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    発癌性化学物質として知られているベンゾ [α] ピレン及び3-メチルコラントレンがミエロペルオキシダーゼ, 過酸化水素及び塩素イオンによって酸化された。この反応系で酸化されたベンゾ [α] ピレン及び3-メチルコラントレンの酸化生成物を高速液体クロマトグラフィーで検出した。ベンゾ [α] ピレンの酸化物中には未反応のベンゾ [α] ピレンより低極性物質が含まれ, また3-メチルコラントレンの酸化物中には未反応の3-メチルコラントレンより高極性物質が含まれていた。
  • 桂 茂, 石塚 寛, 松本 林, 中江 良子
    1981 年 23 巻 4 号 p. 725-731
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラットの側頭筋 (成熟雄個体) の細胞構築状態をコハク酸脱水素酵素染色法 (SDH) によって検討した。側頭筋においても, SDHに強染性の筋線維と淡染性及びその中間の3種類の筋線維の存在を識別することができた。断面上におけるoxidative index (OI) やSindex (SI) の平均値は前側頭筋が後側頭筋より高値を示し, 特に, 前側頭筋束の内でも側頭骨近くに存在する深部では, 著しく高値を示す1次筋束が集合している筋束が存在することを見出した。筆者らはこの筋束に深側頭筋と命名した。断面上でのOIやSIの分布パターンは筋の部位 (超始から停止) によっては著差を見出し難かったが, それらの値自体にはかなりの差異が見出された。又, 同一筋束内に存在する1次筋束間でも, OIやSI値にはかなりの差異が認められた。又, 老化に伴って3種の筋線維の識別は容易になり, 各筋束間のOIやSIの平均値の差は著明になった。又, 高いOIやSI値を有する1次筋束や, 低いOIやSI値を有する1次筋束が増数してきた。
  • 金田一 孝二, 加賀山 学, 秋田 博敏, 高橋 則男
    1981 年 23 巻 4 号 p. 732-738
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    エナメル質の形態形成解明の一方法として, 成形期のエナメル質表面の走査電顕観察を試みた。機械的に歯胚上皮を剥離して, Tomes突起を観察する方法は, 損傷が多い。歯胚上皮を取り去った工ナメル質表面には, ほぼ規則正しく配列する陥凹構造が見られたが, 陥凹の内部に一部で, 細胞の破片が残存し, また陥凹の深部では, その形態は下明瞭であった。この陥凹を示すエナメル質表面のレジンによるレプリカの走査電顕像は前述の観察法の不備をおぎなうすぐれた方法であり, Tomes突起に相当する突起構造を明瞭に観察できた。レプリカ法で観察された, サル, および, ネコの突起は, レプリカ底面より斜めに立上る円柱状の曲面と, その曲面とほぼ直交する平面とからなり, 平面の外形は, サルでは, シャモジの頭部をなし, ネコでは扇形を示した。突起の配列は, ネコ, および, サル, ともに, ほぼ, 規則正しい配列, 方向を示し, このような部位では, BoydeのIII型を見ることが出来た。一部で配列および方向に乱れが生じ, その乱れの中にBoydeのII型の配列が見られると同時に, その周囲では, どの型にも相当しない不規則な配列を生じていた。さらに, 突起の配列が乱れている領域では, 不規則な形の突起が高頻度に観察された。
  • 竹内 宏, 金久 純也, 堀 泰典, 谷 明, 佐川 寛典
    1981 年 23 巻 4 号 p. 739-744
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    辺縁性歯周炎患者63名の切除歯肉におけるActinonmces naeslundiiの侵襲状況を螢光抗体法によって検討した。その結果, 菌体成分および菌体そのものとして54例という高い頻度で侵襲を認めたが, とくに, 菌体成分の侵襲は他の口腔内細菌のそれと比べて特徴的であり, 大部分の症例においては, 内縁上皮中に幅広く認められ, あたかも抗原の皮内接種の如き感を与えるものであった。
    かかる所見は, Actinonmcesが単に, その毒性によって直接的に歯周組織を傷害するのみならず, 高い抗原性を有し, 免疫反応を生じせしめ, 辺縁性歯周炎の経過を修飾するものと考えられる。
  • 竹内 宏, 金久 純也, 堀 泰典, 谷 明, 佐川 寛典
    1981 年 23 巻 4 号 p. 745-749
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Actinomyces naeslundiiを抗原とする螢光抗体間接法によって, ヒトの炎症歯肉に, これと免疫反応を起すimmunocytesを頻度高くみい出すことができた。immunocytesは形態的に, 明らかにblastoidtrns formationを起しつつあるものが多く, Actionmycesを認識し, 局所における同免疫系が成立することが示唆された。blastoid transformationを起したimmunocytesの同定は不確定であったが, 螢光陽性の形質細胞がみられたところから, B-cell系のものがあることはほぼ明らかである。しかし, T-cell系の存在を否定し得るものではなく, これら不明なる点に関しては, 今後さらに検索して行く所存である。
  • 酒井 英一
    1981 年 23 巻 4 号 p. 750-789
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    食虫目ヒミズの上・下顎各歯の大きさおよび形態の変異について, 山口県見島産と対岸本土の山口県阿武郡川上村産のヒミズを用いて, 検討した。
    歯冠近遠心径, 頬舌径, Rectangleとも, 見島産ヒミズにおいて全般的に大きい。大きさの差異は, 大臼歯群で小さく, 前歯群, 小臼歯群で著しかった。これら歯の大きさの変異の大小は, 機能的咬合の相対的複雑さと関係をもっているようである。
    また, 見島産ヒミズの歯は, 歯帯および隆線が著しく発達している。そして, それらの発達分化の程度には広範な連続的変異が認められ, 歯帯および隆線が咬頭新生の母体であるとする学説を裏付ける資料となり得る。
    見島産ヒミズの歯の大型化, あるいは複雑化は, 天敵および対坑種の不在といった, 見島のもつ特異な生息環境に対する適応的変異であると考えられる。
  • 杉本 めぐみ
    1981 年 23 巻 4 号 p. 790-808
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒトの永久歯象牙質内でのフッ素とマグネシウムの分布の観察をX線マイクロアナライザによる線分析により行い, 洞一試料のマイクロラジオグラム上の石灰化像との比較検討を行った。象牙質の石灰化像は層によって異なる。象牙質内のフッ素濃度はエナメル質 (最表層を除く) でのそれより高い。それはエナメル質側, あるいはセメント質側から歯髄側に向かう間, 全層の約3/4の間では殆んど変化しないが, 髄腔壁に沿っ幅狭い範囲に入ると次第に上昇を示し, 髄腔壁で最高の値を示す。この髄腔壁に沿う層での値は増齢的に上昇する傾向がある。仮性象牙質粒, 石灰変性部, セメント質におけるF濃度は象牙質の髄腔壁での値に近い高濃度を示した。象牙質内のマグネシウム濃度はエナメル質よりはるかに高く, 外側から歯髄側に向かってゆるやかな上昇を示す。しかし, 髄腔壁に沿う幅狭い層に入ると急に低下する。又, 仮性象牙質粒や石灰変性部, セメント質内では極めて低濃度である。
  • 竹原 直道, 井上 京子, 佐伯 榮一
    1981 年 23 巻 4 号 p. 809-816
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mtans OMZ176株の菌体外glucosyltransferase (GTF) によるグルカン合成に及ぼすsodium lauryl sulfate (SLS) の影響を調べた。SLSはガラス壁上に形成されるグルカン・フィルムを抑制したが, 一旦ガラス壁上に形成されたグルカン・フィルムは除去されなかった。また高濃度のSLS添加はグルカン合成を抑制したが, 低濃度のSLS添加は合成グルカン量を増加させた。SLS存在下に合成されたグルカンはα-1, 3グルコシド結合残基の相対比が低下し, 粘度も低下していた。またBio. Gel A.5mカラムクロマトグラフィーによると, SLS存在下のGTFはSLS非存在下のGTFより低分子化していると思われた。
  • 伊藤 正
    1981 年 23 巻 4 号 p. 817-838
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Invitroで形成されたエナメル質初期表層下脱灰巣と, 再石灰化過程との経時的関連性について検索した。材料はヒト新鮮抜去永久歯および乳歯で, これをSilverstoneの乳酸加ゼラチン法により, 3日, 1週, 2週, 3週, 4週間それぞれ脱灰し, 種々の段階の白斑 (初期表層下脱灰巣) を形成し, その半側を被覆して対照とした。その後10日間, Koulourides処方の石灰化液に浸潰し, 脱灰巣の変化をcontact microradiography, 偏光顕微鏡, その他の方法で観察した。その結果, 永久歯では2週までの脱灰で深さ60~70μの, また3・4週の脱灰では, 深さ120~130μを越える脱灰巣が形成された。これらを石灰化液に浸漬すると, 深さ100μ程度までの脱灰巣では, その範囲の縮小を伴う再石灰化像を呈したが, 100μを越えるとこの可逆性の変化はきわめて弱くなる傾向が認められた。この様相は乳歯でもほぼ同様で, また試料の色調変化測定, エナメル質溶解試験の結果ともよく一致していた。
  • 超微形態学的研究
    伊集院 直邦, 二階 宏昌, 高田 隆, 山崎 章
    1981 年 23 巻 4 号 p. 839-858
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット臼歯部歯肉付着上皮 (JE) を構成する細胞には, 超微形態学的に貪食空胞を思わせる多数の大小空胞が特異的に出現し, 外来ないし内生物質の通過の著しい同部の防御機構に重要な役割を担うことが推定されてきた。一方, ラット臼歯部歯肉由来の初代培養上皮細胞にも類似の形状と分布を示す空胞が多数認められるところから, 本研究においては, イカの墨及びhorseradish peroxidase (HRPO) をmarkerとして同培養細胞への取り込み実験を行ない, 超微レベルで検討した。その結果, 両marker物質の空胞内への取り込みが明らかに認められると共に, marker物質を含有した空胞の一部にはACP-ase活性が証明され, 少なくともラット歯肉由来の初代培養上皮細胞内にみられる空胞はphagosome及びphagolysosomeを表すことが確認された。これらの所見より, in vivoラット臼歯部JE細胞内に出現する類似の空胞も貪食空胞であることが間接的に示唆されよう。
  • 石田 武, 小川 裕三, 八木 俊雄, 西村 英明
    1981 年 23 巻 4 号 p. 859-878
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    新しい抗う蝕塗布剤として開発されつつあるフッ化モリブデン酸アンモニウムに関する亜急性毒性実験を行った。実験群のラットには, 本薬剤の25, 50, 100, 125mg/kg b.w.の各用量を28日間連日経口投与した。実験飼育中は・肉眼的観察体重測定, 飼料摂取量測定などを行い, 投与終了後は, 血液検査, 尿検査, 臓器重量測定・病理組織学的検査などを行った。その結果, 本薬剤投与による病変として明瞭なものは, おもに125mg/kg投与群における肝, 胃, 腸などの消化器系臓器の変性壊死および萎縮性変化であった。その他の所見はおおむね軽微であったが, 100mgおよび125mg/kg投与群に認められた病的所見は, NaF, Ag(NH3)2F,(NH4)2MoO4などの大量投与による所見と共通するものが多く, 本薬剤の亜急性毒性度はAg(NH3)2F投与のそれと大差ないものであった。
  • 園部 洋二
    1981 年 23 巻 4 号 p. 879-892
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究は, sodium salicylate (Na-Sal) によるラット切歯象牙質の形成障害作用を解明する周的で行った。EDTA鉛塩による硬組織内時刻描記法を応用して, Na-Sal (100mg/kg~650mg/kg) 皮下注射後24時間と, 薬物投与前24時間の切歯横断面象牙質形成速度を比較したところ, Na-Sal 200mg/kgまでは有意の抑制を示さなかったが, 250mg/kgで有意の抑制を示し, 250mg/kgから650mg/kgの範囲では抑制率がほぼ直線的に増加した。組織化学的検索では, Na-Sal500mg/kg投与で, hematoxylin, toluidine blue, periodic acid-Schiff (PAS) 反応はほぼ同様な染色性を示し, 注射後24時間以内に狭い幅の濃染層に続いて不染層が出現した。この不染層はvan Giesonに陽性を示し, また, microradiogramにおけるX線透過層と一致していた。Na-Sal投与後の象牙芽細胞の形態的変化を光学顕微鏡で観察したところ, 500mg/kg投与後18時間で明らかに象牙芽細胞の形態的変化が認められ, その後は時間の経過につれて正常の形態に復する像が観察された。
    血中11-hydroxycorticosteroidsはNa-Sal 250mg/kg投与により有意に増加したが, その増加量は100mg/kg ACTHを投与した場合よりも少なかった。しかし, 象牙質形成はNa-Salでは有意に掬制されたのに反し, ACTHの場合には有意の象牙質形成抑制は認められなかった。この結果は, Na-Sal投与による象牙質形成障害が, Na-Salの視床下部一脳下垂体一副腎皮質系刺激作用を介するものでなく, 主として, 象牙芽細胞の機能に対するNa-Salの直接的な阻害作用にもとづくことを示唆するものと解される。
    一方, 象牙質形成とmonohydroxybenzoic acidの構造一活性相関について検索を行った結果, monohyd-foxybenzoic acidのNa塩の3種類の構造異性体のうち, orthoの位置にOH基を有するNa-Salのみが象牙質形成抑制作用を示すことが明らかにされた。
  • Tsuneo Nakajima, Mitsutaka Sugito, Masao Nakahara, Masahiro Ozaki
    1981 年 23 巻 4 号 p. 893-895
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Kazuko Kirimura, Yuichi Wadagaki, Yukihiko Mishiro
    1981 年 23 巻 4 号 p. 896-898
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Hiro-aki Kodama, Yuji Amagai, Hiroko Sudo, Shiro Kasai, Shigehisa Yama ...
    1981 年 23 巻 4 号 p. 899-901
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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