歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
23 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • Phenolならびにl-dopa併用による振戦に対する影響について
    鈴木 崇彦, 木皿 憲佐, 小野寺 憲治, 高野 桂悦, 小倉 保己
    1981 年 23 巻 3 号 p. 409-413
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯科で多用されるphenolの中枢神経系にかかわる中毒機序について, マウスにみられるphenol振戦をそのモデルとして取り上げ, 1-dihydroxyphcnylalanine (1-dopa) 投与による影響を検討し, 以下の知見を得た。1%濃度のphenolでは, 皮下投与数分後で振戦があらわれ, その後5~15分の間ではスコアは1であったが投与35分後にはこの振戦は消失した。1-dopa前処置においては用量依存的にphenol振戦のスコアが増加した。末梢性の脱炭酸酵素阻害剤であるRo 4-4602と1-dopaを併用した場合, 1-dopa 200mg/kg単独処置とほぼ同等の作用がRo 4-4602+1-dopa 50mg/kgで得られた。また, マウス脳室内へ直接dopa-mineを注入すると, phenol振戦の増強が観察された。以上の結果より, phenol振戦の発生機序に中枢性のDAが何らかの形で関与することが示唆された。
  • phenol振戦に対する中枢dopamine作働性神経の関与について
    鈴木 崇彦, 木皿 憲佐, 小野寺 憲治, 高野 桂悦, 小倉 保己
    1981 年 23 巻 3 号 p. 414-418
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Phenolの吸収時にみられる中枢神経系の中毒作用のうち, マウスにみられるphenol振戦の発現機序に対するdopamine作働性神経の影響について詳細に検討を加え, 以下の知見を得た。1) dopaminc作働性神経系のagonistによって, phenol振戦は増強を受ける。2) dopamineのantagonistによって, phenol振戦は影響を受けない。3) apomorphineによって増強されたphenol振戦はhaloperidolによって拮抗された。以上の結果からphenol振戦に対し中枢のdopamine作働性神経は振戦の増強に関与し, modulatorとして働いている。
  • (3) Phenylalanine水酸化反応system酵素活性とpteridine cofactorの存在について
    加藤 節子, 末岡 照美, 増田 郁子, 山田 正三, 多和 敏一
    1981 年 23 巻 3 号 p. 419-426
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    多和肉腫のpteridine代謝に関して, pteridine代謝酵素活性が腫瘍細胞の増殖に伴って上昇するという先の報告に続き, pteridineがその生理作用を果す揚の一つとしてのphenylalanine水酸化反応systemが多和肉腫においてはどのように作動しているかを検討した。
    多和肉腫を腹腔に移植後, pteridine代謝が最も活発化すると思われる純粋培養期 (移植後4日目) の腹水腫瘍細胞を採取し, その粗抽出液に関して測定を行った。
    多和肉腫抽出液中にはphenylalanine水酸化酵素 (L-phenylalanine, tetrahydroptemidine: oxygen oxidoreductase (4-hydroxylating)) は検出されなかった。しかしこの永酸化酵素と共役してpteridine cofactorの再還元を行うdihydropteridine reductase (NADH, quinonoid dihydropteridine oxidoreductase) およびpteridine cofactor (tetrahydroptemidine) の活性は存在していることが判明した。しかしこれらの活性はpteridine代謝酵素が正常肝の約1~4倍の高活性を示したのに対し, いずれも約1/6以下の低レベルであった。以上の結果は, 多和肉腫においてはpheaylalanine水酸化反応systemは作動していないことを示す。この現象は, 多和肉腫が肝臓由来ではないということか, あるいは肝臓由来でも癌化に伴う反応systemの退化によるものであろうと考えられる。
  • 武田 泰典, 鈴木 鍾美, 小守 昭, 石川 梧朗
    1981 年 23 巻 3 号 p. 427-438
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    自然発症性に種々の免疫異常を呈するSL/Ni miceについて, ヒトのSjögren症候群に類する病変のoverlapの有無を検索した。本研究において唾液腺炎とした所見は2ヵ月齢よりみられ, 加齢とともにその程度と頻度は高くなる傾向にあった。また唾液腺炎は腎炎や血管炎より早期に発症し, より高頻度にみられた。唾液腺にリンパ性細胞浸潤のみられたもののうち, 同時に唾液腺内小血管に病変のみられたものはわずか1例のみであり, 唾液腺の変化は血管病変とは直接関連がないと考えられた。抗唾液腺導管抗体ならびに唾液腺内のimmune depositは今回の検索からは明らかでなかった。以上の如く唾液腺病変は他病変より早期に出現し, その発症頻度も高度だったこと, かつリンパ性細胞浸潤は主として導管周囲性に認められヒトのSjogren症候群の初期の組織像に類似していたことなどより, SL/NimiceはSjögren症候群に類する病変をoverlapしているとも考えられた。
  • 佐々木 崇寿, 石田 五十雄, 東 昇平
    1981 年 23 巻 3 号 p. 439-450
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    エナメル質の成熟期におけるエナメル器の乳頭層細胞と, これに隣接する毛細血管の微細構造を明らかにする目的で, 生後14~27日のSD系ラットをKarnovsky固定液, Tanic acid (TA) 固定染色液, Ruthenium red (RR) 固定染色液で灌流固定し, 上下顎切歯歯胚を超薄切片法ならびにFreeze-Fracture replica法により検索した。
    乳頭層細胞は多数のmitochondriaとcoated vesicleを有し, microvilli状の小突起を細胞間隙に突出していた。乳頭層細胞は互いにgap結合とdesmosomeによって接合し, また成熟期エナメル芽細胞とはgap結合とdesmosomeそして陥入の形成によって緊密に接合していた。TAでこれらの細胞間隙をtraceするとTA粒子は毛細血管と乳頭層そしてエナメル芽細胞層の細胞間隙に認められた。これらの乳頭層細胞には有窓性毛細血管が隣接し, replica像ではその有窓領域は乳頭層細胞に面して多く観察された。この窓にはRR陽性の隔膜を有するものと, これを欠如するものとが認められた。またこれらの内皮細胞や乳頭層細胞にはともにpinocytotic vesicleが観察された。この報告では, これらの所見をもとにエナメル質の成熟過程における乳頭層細胞と毛細血管の微細構造上の特徴と機能的役割との関連について考察した。
  • 第1報, 臓器非特異性抗原 (DNA) に対するラット唾液腺の反応
    竹内 宏, 金久 純也, 堀 泰典
    1981 年 23 巻 3 号 p. 451-463
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    臓器非特異性抗原による自己免疫疾患には, DNA抗原の関連性に注目すべきものがある。今回, 同抗原による一連の免疫反応が耳下腺を中心とする頭頚部の外分泌腺に如何なる組織変化を与えるのかを知るべく, 遷延感作を行ったところ, 1) 体液性抗体によると考えられる腺房の傷害, 2) immunoproliferationとみなし得るT-cellの浸潤と増殖を認めた。尚, T-cellの増殖は腺房傷害部と, intraparotid lymph nodeの両部に顕著であった。
  • 第4報: その (1) 螢光抗体法によるヒト炎症歯肉のendotoxinの局在性について
    金久 純也, 堀 泰典, 竹内 宏, 谷 明, 佐川 寛典
    1981 年 23 巻 3 号 p. 464-472
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Endotoxinのヒトの歯周疾患の病巣への侵襲状況を検討するために, Fusobacterium nucleatumから抽出したendotoxinを抗原としたFITC標識抗endotoxin家兎血清を用いて免疫組織学的に検索した。その結果, 被検材料中の特異螢光は主として上皮と上皮下結合組織の両部にdiffuse patternとgranular or fibrillar patternの2つに大別できる状態で局在し, 少数例において貪喰細胞にも認められた。上皮組織に局在している例では上皮は種々な程度の退行性変化を示す傾向にあった。一方, 上皮下結合組織中では細胞に貧喰された4例を除いて他は基質中に認められた。この際には, 同部に密な細胞浸潤が伴っている場合と, 壊死組織が取り囲んでいる場合があった。これらの事実から, endotoxinが歯周組織に与える組織傷害性の一端を伺うことができた。
  • 日高 三郎, 大田 康男
    1981 年 23 巻 3 号 p. 473-481
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    各種薬剤の細菌細胞溶解に対する阻害能を43℃, Streptococus mutans HS6-Ly変異菌株を用いて研究した。調べた薬剤のうちで, 4種類の飽和脂肪酸, カルジオリピン, Lシステイン, β-メルカプトエタノール, ジチオスレイトール, 2-DG, セルレニン及び亜セレン酸が最も有効な阻害剤であった。
    43℃ での溶解と37℃の溶ー解とを比較したところ, 43℃での溶解は37℃でのマイトマイシンCによる誘発溶解とよく似ているものであった。
    亜セレン酸添加はグルタチオンペルオキシダーゼ (GSH-Px) 活性を高めた。この結果からHS6-Lyの溶解は膜に於ける過酸化脂質の生成に基因していることが示唆された。
  • 陣内 研一, 西連寺 永康, 大原 弘, 安藤 興一, 日野 晃伸, 森脇 一成
    1981 年 23 巻 3 号 p. 482-488
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    C3Hf/Heマウスの口唇粘膜基底細胞の細胞周期, 細胞更新に関する解析を3H-チミジン標識によるオートラジオグラフィーを用いて行った。
    その結果,(1) 口唇粘膜基底層における細胞の細胞周期内の各期の時間は, G1+M/2期: 20.4時間, S期: 9.0時間, G2+M/2期: 4.6時間と算定された。したがって, 細胞の世代時間は34.0時間となる。この世代時間は著者らが先に報告した舌背のそれよりも6時間, 舌下面よりも8時間長い。
    (2) 口唇粘膜組織における細胞交替時間を, 基底層で標識された細胞が分化層を上皮表面まで移行するのを追跡して推定すると7日間となった。これは, 舌上皮組織と同じであった。また, 標識細胞が基底層から分化層へ移行するのは, G1期中であると推定された。
  • 小田島 武志, 尾西 みほ子, 佐藤 尚子
    1981 年 23 巻 3 号 p. 489-497
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ミエロペルオキシダーゼ-H2O2-ハロゲンイオン系によって, 3位に水酸基を持つステロイドホルモン (エストロン, エストラジオール及びエストリオール) が酸化された。これらのステロイドは, 反応系にハロゲンイオンの存在しない条件においても, 即ち, ミエロペルオキシダーゼ-H2O2-系でも酸化されたが, その酸化反応後 (酸化生成物) の分光スペクトルは, ハロゲンイオンの存在する反応系のものとは異っていた。エストリオールがミエロペルオキシダーゼ-H2O2-塩素イオン系によって酸化されたとき, 少くとも2種類以上の酸化生成物が存在することが高速液体クロマトグラフィーによって検出され, 結果として, エストリオールがミエロペルオキシダーゼ-H2O2-塩素イオン系によって酸化分解されることが明らかにされた。
  • V. ベンジルペニシリンの酸化反応
    小田島 武志, 佐藤 尚子, 尾西 みほ子
    1981 年 23 巻 3 号 p. 498-502
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    抗生物質の一種であるベンジルペニシリンが弱酸性溶液 (pH4.5~pH5.0) 中において, ミエロペルオキシダーゼ-過酸化水素-塩素イオン系で酸化された。この反応の速度は塩素イオンの濃度がほぼ20mMまで比例的に増大し, それ以上塩素イオン濃度が高くなると, 反応速度の急激な減少がみられた。この系で酸化されたベンジルペニシリンの酸化生成物は未反応のベンジルペニシリンより低極性物質であることが明らかにされた。
  • 田村 豊幸, 藤井 彰, 小林 寿美
    1981 年 23 巻 3 号 p. 503-511
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    フェノールカンフルを含有するゲル剤 (TG-079) の歯痛に対する鎮痛効果および歯牙組織障害性に関して, ウサギ・ラット切歯を用いて検討した。鎮痛効果は, 歯髄腔にTG-079を適用後, 歯髄に対する電気刺激による開口反射にて測定し, 組織障害性は, ウサギ切歯の象牙質と歯髄腔にTG-079を適用し, 24時間後に観察を行い, 以下の結果を得た。
    (1) TG-079を適用したウサギ・ラットの歯髄で明らかな鎮痛効果が認められ, その鎮痛効果はフェノールカンフルより長時間持続した。(2) ウサギ・ラットの象牙質部分の窩洞にTG-079を適用した場合, 弱い鎮痛効果が認められた。(3) ウサギ歯髄腔に, TG-079, フェノールカンフル, 生理食塩液を適用し, 24時間後に組織障害性を検討したところ, 3者ともに, ほぼ中等度の障害性が観察された。しかしながら, ウサギ象牙質に対する障害性は認められなかった。
    以上より, TG-079は歯髄に対する強い鎮痛効果と, 歯髄に達しない歯面塗布での弱い鎮痛効果があることが示唆された。
  • 内田 明比佐, 堀川 高大, 渡辺 継男, 松浦 正朗
    1981 年 23 巻 3 号 p. 512-517
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ガラスおよびプラスチック・シャーレを用いて, M. salivarium ATCC23064ならびにM. orale ATCC15539の平滑面に対する付着性を検討した。
    これらの両菌株をガラス・シャーレに分注した液体培地に接種・培養後, 培養液を捨て, 良く洗浄したガラス表面を染色することにより, M. salivariumのみにガラス表面に対する付着性が認められ, その付着性は生菌数の測定によっても確認された。
    さらに, 洗浄菌体の高濃度浮游液をプラスチック・シャーレに入れ, 37℃ で一定時間放置した後に, 浮游液を捨て, プラスチック表面を良く洗浄した後に, プラスチックの白濁した度合を分光光度計を用いて測定することによって, M. salivariumのみならず, 非常に微弱ではあるが, M. oraleの付着性も証明された。
  • 岩本 英厚
    1981 年 23 巻 3 号 p. 518-526
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    矯正力による歯の移動時, 化骨形成に重要な役割を演ずると考えられている歯根膜のアルカリ性フォスファターゼ (APase) の諸性質を明らかにするため, ウサギを用いて歯根膜の採取, 調製, 部分精製を行い, そのいくつかの酵素学的性質について検討した。APase活性は, P-Nitrophenylphosphateを基質としpH9.5で測定した。
    1.ウサギ歯根膜のmicrosome分画上清をButhanol処理, EthanoI処理後, Ion exchange cohmn chmmatographyを行った。その結果, カラムクロマト的に異なる3種の精製APase標品が得られた。これらのうち2つの標品はmicrosome分画上清に対し蛋白当りの活性は10倍以上に高められた。これらのAPase標品はすべてピロリン酸を分解し, さらにATPを分解するものとしないものに区別された。
    2.粗試料 (microsome分画上清) 及び精製試料は共にEDTA処理により可逆的な失活と, Zn2+添加によりその賦活がみられた。又Zn2+やピロリン酸により強く阻害され, その阻害様相は二相性を示した。
  • 北條 祥子, 樋口 允子
    1981 年 23 巻 3 号 p. 527-533
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Streptococcus mutansの不溶性グルカンのう蝕誘発性における役割を明らかにするため, S.mutans PK1株とその不溶性グルカン生成能の低下した変異株を人工口腔を模した連続培養装置で培養し, ガラス電極, 抜去歯表面に菌塊 (モデル歯垢) を形成し, 両者の菌塊の性状, pH低下, 菌塊形成下のエナメル脱灰の程度を比較した。親株の菌塊は不溶性グルカンを主体とし, 固着性で歯垢内部と外液pHの間には約2.0のpH勾配が生じた。また, 歯垢内部の酸は中性の緩衝液による洗浄では容易に除去されずpHの回復に長時間を要した。他方, 変異株の菌塊は可溶性グルカンを主体とし, 付着力は弱く菌塊内外にpH勾配がみられなかった。親株の菌塊付着下のエナメル表面の脱灰は変異株に比して著しく進行していた。以上の結果から, S. mutansの不溶性グルカンは歯垢内で生成された酸の拡散バリアーとなり歯垢内pHを長時間低く保持し, これがエナメル脱灰へ導くことに一役を担っていると帰結された。
  • 宗形 芳英
    1981 年 23 巻 3 号 p. 534-547
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    α-クロラロースで麻酔したネコの歯根膜刺激により, 潜時の異なる二種類の開口反射応答が導出できる。潜時16~20msecの応答 (Late response: LR) は潜時4~6msecの応答 (Early response: ER) に比べ, 閾値が小さく下歯槽神経麻酔による影響もうけにくいことから歯根膜中の触・圧覚受容器により誘発される応答であると考えられる。一方, ERは歯髄刺激により誘発される潜時4~6msecの唯一の応答 (Nociceptive response: ER') と生理学的性質が似ており, 下歯槽神経麻酔による効果がER'と同一であることから歯根膜中の痛覚受容器により誘発される応答であると考えられる。
    次に, この二種の応答 (ER, LR) は下顎骨の振動刺激や咬筋神経電気刺激により異なった影響をうける。LRは40~350Hzで振幅が50μ 以上の振動刺激により抑制される。一方, ERは50~250Hzで振幅が250μ以上の振動刺激で抑制効果がみられる、これらの抑制効果は, 顎関節嚢の麻酔によりなんらの影響もうけない。さらにERは咬筋神経中のGroup II線維が興奮する刺激強度以上で刺激を行なったときにのみ抑制効果がみられるのに対し, LRはそれ以下の刺激強度によっても抑制される。
    以上のことから, 歯根膜中の痛覚受容器により誘発されるERに観察される抑制効果は閉口筋中の筋紡錘二次終末の興奮によるものであり, 触・圧覚受容器により誘発されるLRの抑制効果は筋紡錘一次終末の興奮によるものと考えられる。
  • 目 岩男
    1981 年 23 巻 3 号 p. 548-562
    発行日: 1981/09/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ネコの口蓋前方部に圧刺激を与えると緩徐で持続的な開口が誘発される。本研究はこの反射性開口の神経筋機構を分析したものである。咀嚼筋筋電図, 咬筋単シナプス性反射, 咬筋神経の単一神経線維活動, 閉口筋筋紡錘求心性神経活動に対する口蓋圧刺激の影響をそれぞれ検索し, 次の結果を得た。1) 口蓋圧刺激による反射性開口時には閉口筋活動が著明に抑制された。しかし, 開口筋には殆んど反応を認めなかった。2) 口蓋への圧刺激により咬筋アルファ運動ニューロンが抑制されたが, この抑制はシナプス後抑制である。3) 咬筋ガンマ運動ニューロンも口蓋圧刺激により抑制された。4) 閉口筋筋紡錘活動は口蓋圧刺激により抑制され, その抑制はガンマ運動ニューロンの抑制と強い相関を示した。
    以上の結果より, この開口反射は閉口筋アルファ運動ニューロンのシナプス後抑制と, ガンマ運動ニューロンの抑制によるガンマ・ループを介する興奮性入力の減少により閉口筋活動が減弱して生ずることが判明した。
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