歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
25 巻, 4 号
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  • 佐々木 哲
    1983 年 25 巻 4 号 p. 847-856
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Importance of non-collagenous proteins, especially osteocalcin and osteonectin in calcification was reviewed.
    Osteocalcin is a γ-carboxyglutamic acid-containing protein in bone and synthesized by osteoblasts vitamin K-dependently. Osteocalcin has characteristic properties of Ca-binding and also adsorption to hydroxyapatite crystal. These properties and the appearance in developing bone strongly suggest some regulatory roles in bone calcification process.
    Osteonectin is another bone-specific protein which has a property to bind selectively to both hydroxyapatite and type I collagen. This protein is found to be present in newly calcified bone tissue and in osteoblasts but not in soft tissues by immunofluorescent detection. These studies suggest that osteonectin may play a role in initiating calcification.
  • 骨欠損を伴う限局性病変について
    永田 睦, 仙波 伊知郎, 大家 清, 浦郷 篤史, 井上 直彦
    1983 年 25 巻 4 号 p. 857-866
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    縄文時代から江戸時代に至る日本人顎骨105例190顎を用い, 肉眼的に骨欠損を有する限局性骨病変の古病理学的検索を行った。
    病変は17例25部位に観察され, なかでも根尖部病変 (歯根嚢胞, 歯根肉芽腫, 根尖性歯周炎) が16例22部位で最も多く, 原始性嚢胞, 特発性骨空洞, 腐骨を伴う骨髄炎が各1例であった。根尖部病変では, 縄文時代2例において, 歯冠部の著明な咬耗によって生じたと思われる症例が存在し, 当時における古代人の苛酷な生活環境を反映しているものと思われた。
    原始性嚢胞, 特発性骨空洞, および腐骨を伴う下顎骨骨髄炎は, 本邦における最古の古病理学的報告例であろうと思われる。
  • 4. フェニルピペリジンによる中性エポキシアルカン開裂生成物の局所麻酔作用
    五十嵐 治義, 佐藤 陽子, 浜田 節男, 川崎 徹
    1983 年 25 巻 4 号 p. 867-874
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 4-phenyl piperidine誘導体でpiperidine環の4位に3級炭素を有する生物学的活性物質の開発である。
    先に4・phenyl-N-(3'-dialkylamino-2'-hydmxy propyl) piperidine誘導体 (I) は強い浸潤麻酔作用と強い抗炎症作用を示したことを報告した。
    今回は表面麻酔作用において活性物質の開発を目的として, 親油性のmethyl, phenylさらにphenoxy methyl基を3'-dialkylamino methyl基の代りに (I) に置換したaminoalkanol誘導体 (II) と (II) の酸化物であるamino alkanone誘導体 (III) を合成した。
    局所麻酔作用の実験結果はつぎのとおりである。
    (1) IIa, b IIIa, cは強い浸潤麻酔作用を示し, 浸潤麻酔作用の持続時間, 程度および麻酔発現と消失において塩酸リドカインよりすぐれていた。
    さらにIIb, IIIaには, 局所刺激作用とnecrosisおよびrednessは観察されないので, 浸潤麻酔薬として非常に興味深い化合物であると思われる。
    (2) IIa, IIIb, cは表面麻酔作用において塩酸コカインおよび (I) よりすぐれた活性を示した。しかし, わずかな局所刺激作用とnecrosisを示した。
  • 第1報 培養細胞の超微形態
    立川 哲彦, 秋田 智雄, 吉木 周作
    1983 年 25 巻 4 号 p. 875-893
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    新生児ラット舌粘膜上皮の分離培養を行ない, 上皮の増殖形態・分化形態・ケラトビアリンの形成などを検索した。また, freeze fracture法を用い, gap jaunctionとdesmosomeの密度や面積を経時的に検索し以下の結果を得た。
    細胞のdoubling timeは約30時間であつた。継代培養は第8代の継代まで行ない, それらの形態は初代培養と何ら変化を認めなかった。細胞増殖と共に細胞は重層化し, 微細構造は発達し, tonofilamentの集束, ケラトヒアリン顆粒の出現などを認めた。また, 基底部の細胞とプラスチック・シャーレとの間にはamorphousな物質を認め, 同部の細胞側にはhemi-desmosomeを認めた。Replicaでは細胞の発育・分化と共にgap junctionとdesmosomeの密度・面積の増加を認めた。
  • 高田 登
    1983 年 25 巻 4 号 p. 894-909
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    生後成長に伴うラット顎下腺の機能的完成過程を腺に存在するα-レセプターとそのサブユニットについて, 2週から8週齢群ラットから調製した膜標品に対する放射性リガンドの特異的な結合性から観察した。α-, α1-, α2-各レセプターに対する放射性リガンドはそれぞれ [3H]-ジヒドロエルゴクリプチン ([3H]-DHE),[3H]-WB-1401 ([3H]-WB), 及び [3H]-クロニジン ([3H]-Clonid) を用いた。離乳期以後のラットはすべて固型飼料 (CE-2) と水を自由に与えて飼育した。
    成熟ラットについて行ったScatchardプロットによる観察結果では解離定数 (KD) 及びレセプター密度 (Bmax) はそれぞれ [3H]-DHEでは0.81nM及び7.4pM,[3H]-WBでは0.29nM及び68.3pM, また [3H]-Clonidでは0.52nM及び7.4pM/mg膜蛋白であった。発育期ラットでは [3H]-DHEと [3H]-ClonidのBmax値が2週齢ラットで高い出現を示したが, 3週齢になると急速に減少した。その後, この値は4週齢で再び高い上昇を示し, その後次第に減少して8週前後になって成熟ラットの示す値となった。[3H]-WBの結合量は加齢と共に徐々に増加を続けて成熟ラットの示す値に致った。各放射性リガンドに対するレセプターの親和性は2週齢ラットではいずれも低い値であつた。しかし成長に伴う動態はBmax値の示す経過とは一致しなかつつた。以上の結果から, 成長に伴うラット顎下腺のアドレナリン性α-レセプター, 特にそのサブユニットはそれぞれ独自の発育過程を有し, 更に腺細胞の数的増加, 分化。あるいは転化に関連した固有の応答性を示したから完成するようで, 特にこれは3~4週齢における離乳期で著しいものと考えられた。
  • 第4報: 自動血球計数装置を用いて, 細胞数算定のための基礎的検討
    兼松 宣武, 永原 国央, 藤本 和久, 柴田 寛一
    1983 年 25 巻 4 号 p. 910-914
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    細胞浮遊液中の細胞数を, 自動血球計数装置を用いて, 正確に算定するために, a) 細胞分散処理にともなう細胞障害の有無, b) 自動血球計数装置を用いての細胞算定数と視算値との比較検討の2項目について検索した。結果は, i) 酵素処理による細胞分散法が, Rubber Policemanを用いておこなった機械的分散法よりも, 細胞への障害は少なく, 細胞生存率が高かった。なお, 各酵素間では, その生存率に顕著な差はみられず, ほぼ90~100%の生存率が得られた。ii) 従来の自動血球計数装置 (東亜医用電子製, CC-110型) を用いての細胞算定数は, 視算値と比較して, その算定数が多い傾向にあった。しかしながら, 細胞浮遊液中の細胞の粒度分布の解析および細胞数算定の際の閾値の検討をおこない, これらにもとづいて, 自動血球計数装置の電気回路を一部変更した結果, 自動血球計数装置による算定細胞数と視算値とは, 近似値を示し, 本装置を用いて, 血球以外の細胞浮遊液中の細胞の算定が可能であることが判明した。
  • 日野 晃伸, 陣内 研一, 横田 昌彦, 森脇 一成, 大西 正明, 西連寺 永康, 大原 弘
    1983 年 25 巻 4 号 p. 915-923
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    CaHf/Heマウスの舌上皮基底細胞の増殖に関する日周変化を明らかにするために, 3H-チミジン標識によるオートラジオグラフを用いて, 夜間標識実験を行ない, 先に報告した昼間標識実験の結果と比較して次のような結論を得た。
    1) 標識率および分裂細胞頻度の日周変化
    標識率および分裂細胞頻度の日周変化は, 夜間 (17:00および3:00) で高く, 昼間 (7:00および13:00~17:00) で低い値であった。また, 舌乳頭の部位別に標識率の差があり, 先端部で低く基部付近で高く, それぞれ日周変化が観察された。
    2) 細胞周期時間
    PLM曲線よりMendelsohn&Takahashiの方法により求めた夜間標識実験の細胞周期の各パラメータは, Tc=33.6時間, TG2+0.7TM=3.6時間, Ts=6.1時間, TG1+0.3TM=23.9時間であった。この値を先回の昼間標識実験で得た値と比較すると, 細胞周期時間で5.0時間, また, S期およびG1期で2.5時間ほど短くなった。
    3) 標識細胞の分化層への移行からみた細胞周期時間の算定はC3Hマウス舌上皮基底細胞ではBrown&Oliverの方法に適合せず, 実験結果は細胞周期時間より細胞交替時間を示しているといえる。舌上皮細胞交替時間は約60時間であった。
    4) 基底細胞が分化層へ移行開始する時間は夜間で8.0時間, 昼間で14.5時間であり, G1期の間であった。ただし, 舌上皮においても皮膚におけるようなEPU (Epidermal Proliferative Unit) の存在が想定されるので, 基底細胞の日周変化にしたがう細胞増殖によってもたらされた増殖細胞のすべてが分化層に移行するのではないものと推察される。
  • 日野 晃伸, 陣内 研一, 森脇 一成, 石曾根 肇, 小澤 俊文, 西連寺 永康, 大原 弘
    1983 年 25 巻 4 号 p. 924-931
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    C3Hf/Heマウスの舌粘膜基底細胞の細胞周期, 細胞更新に関する解析を舌の前部, 中部, 後部につて3H-チミジン標識によるオートラジオグラファーを用いて行い, 次の結論を得た。
    1) 細胞周期時間 PLM法で求めた舌部位別の細胞周期時間は, 中部で長く (33.6時間), 前後部でやや短かった (28.1時間, 25.6時間)。この差は各部位別でDNA合成期, 及びG2期に差はなく, 主としてG1期の長さの差に起因している。また, Brown & Oliverの方法は, C3Hf/Heマウスの舌上皮組織の場合, 細胞周期時間の算定には利用できないと考えられ, この方法では細胞交替時間 (turnover time) が算定される。
    2) 細胞交替時間 これは標識細胞の分化層への移行を追跡する方法と基底細胞層から標識細胞が離脱する率を調べる方法によって求められた結果, 前部では72時間, 中, 後部では60時間と判定され, 前部が中・後部より12時間長いと認められた。
    3) 基底細胞層における標識率3H-チミジン投与後30分の基底細胞の標識率は, 前部で22.1%, 中部で31.4%, 後部で39.5%であり, 前部で低く, 後部で高くなる。
    4) これらの結果を総合すると細胞増殖活性は, 舌前部に比べて中, 後部の方が高いとみられる。このことは, 前部の分化層での滞在時間が, 中・後部の滞在時間に比べて長いという観察結果と関連するものと思われる。
  • I Streptococcus sanguis溶解菌株の分離とその諸性状
    馬場 久衛, 五十嵐 清治
    1983 年 25 巻 4 号 p. 932-946
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    う蝕の発病に伴って歯垢中のレンサ球菌種に変動がみられる。この変動に関与する因子の一つを検索する目的で, 幼児の歯垢材料よりStr.sanguisを溶解する菌株の分離を試みた。Str.sanguisの加熱菌体を混入した平板培地上で集落の周囲に透明帯を形成するものをStr.sanguis溶解菌株とした。その結果, レンサ球菌種に変動がみられたEの小窩裂溝の歯垢材料より, Str.sanguis溶解菌株が多数分離された。菌の形態・配列, 集落の形態, 生化学的性状検査, ガラス壁固着性および不溶性多糖類の産生性などの諸性状検査の結果, これらのStr.sanguis溶解菌株はいづれも同一菌種で, Str.mutansと同定された。本Str.sanguis溶解菌株はまた, 同一口腔中の歯垢材料より分離された各種のレンサ球菌種のうち, Str.sanguisに対してのみ強い溶解性を示した。このことから, う蝕の発病に伴う歯垢中のStr.sanguisとStr.mutansの対照的な増減に本Str.sanguis溶解菌株が少なからず関与していることがうかがわれた。また, 本Str.sanguis溶解菌株は, serotypeに関係なく用いたすべてのう蝕原性Str.mutans株に対しても強い溶解性を示した。しかし, 同じStr.mutansであるStr.sanguis溶解菌株自らに対しては弱い溶解性を示すにとどまった。さらに, う蝕原性Str.mutms株の中にもStr.sanguisに対して溶解性を示すものが存在した。
  • II溶菌酵素の特性と酵素産生に及ぼす諸因
    馬場 久衛, 鎌口 有秀, 金森 啓子
    1983 年 25 巻 4 号 p. 947-955
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    幼児の歯垢より分離したStr.mutans AL 7-1株の培養上澄より粗酵素を抽出し, その特性と酵素産生に及ぼす諸因子について検討した。本粗酵素はStr.sanguis ATCC 10558株ならびにStr.mutans E-49株の加熱菌体を溶解し溶菌酵素作用を有することが明らかとなった。本溶菌酵素の至適pHは6.5, 至適温度は42℃, pH安定域は弱酸性から中性で, 熱安定性は45℃ まで比較的安定であった。本溶菌酵素標品中のlysozyme活性とcaseinase活性はともに微弱であった。また, Ca2+, Mn2+, Mg2+およびPb2+の添加により賦活されるが, Cu2+やHg2+の添加によりほぼ完全に活性は阻害された。溶菌酵素産生に用いたTM培地のinitial pHを7.5-8.0に調製し, 糖としてsucroseを0.2%に加え, さらにStr.mutans E-49株の菌体を湿重量で0.1%に添加した培地を用いて, 24時間嫌気培養を行なったときに最大の酵素産生量が得られることが判明した。
  • 柴田 健一郎, 戸塚 昌攻, 渡邊 継男
    1983 年 25 巻 4 号 p. 956-960
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    M. salivariumのaminopeptidase活性 (基質: L-leucine p-nitroanilide) は, MnCl2によって顕著に, またMgCl2によってもわずかに増強されたが, CaCl2によって影響をうけることはなかった。さらに, 粗酵素 (M. salivariumの破砕菌体) とMnCl2とを, あらかじめ一定時間incubateすることが, 定量的な活性測定には必須であることがわかった。粗酵素はL-leucine p-nitroanilide (LeuNA), ArgNA, LysNAおよびAlaNAに作用し, ProNAおよびGlyNAには作用しなかった。とくに, LeuNAに対する活性が強く, M. salivariumのaminopeptidase活性の測定には, LeuNAが基質として適していることがわかった。
    M. orale ATCC 15539, M. buccale IID 802, M. faucium IID 996, M. hominis IID 801, M. fermentans IID 812, M. pneumoniae IID 815およびIID 817もまたaminopeptidase活性をもつことがわかった。
  • 山田 俊二
    1983 年 25 巻 4 号 p. 961-989
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    雑種成犬10頭を用い, 下顎片側の第1大臼歯に高い鋳造冠を装着した場合, 上顎の対合歯の歯槽骨ならびに隣在骨質にどのような構造変化が起こるかを観察した。動物は鋳造冠装着後29日から141日まで飼育した。
    各実験期間の前半にはテトラサイクリンを, 後半にはカルセインをそれぞれ連続注射した。屠殺後, 上顎第4小臼歯部, 第1大臼歯部において前頭断大研磨片を作製し, マイクロラジオグラフィーと螢光顕微鏡法とを用いて比較観察した。
    咬合圧の強く加わった固有歯槽骨の歯根膜側では, 実験開始後まもなくから吸収の活発な改造が進行するようになり, その結果, 骨梁分布は疎になり, 歯根膜腔は拡大する。一方, 海綿骨部においては, 実験開始直後から骨形成の活発な改造が進行し, その結果, 骨梁は次第に太くなり, その分布密度を増す。このような変化は, 実験開始後7~8週以降になると次第に低下する。上顎骨の外側を占める緻密骨のうち, 特に眼窩に面する部分では, 実験開始後まもなく, その眼窩側に層状の骨形成が始まりその幅を増すが, 7~8週以降になるとそれは次第に低下する。一部の個体で, 実験側の上顎骨と縫合を介して接する頬骨, 口蓋骨鉛直板にも, 術後まもなくから, 骨質の形成を主とする内部改造の活発化が見られた。しかし, 口蓋骨水平板には変化は現われなかった。
  • 宮下 幸久, 久野 吉雄, 須賀 昭一
    1983 年 25 巻 4 号 p. 990-1023
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    雑種犬の下顎一側の小臼歯と大臼歯全部を同時に抜去し, 抜歯窩内, 周囲の歯槽骨, 並びに下顎骨の外側を占める緻密骨にどのような変化が現われるかを観察した。反対側は対照とした。
    実験期間(57日から181日)を2つの時期に分け, 前半にはテトラサイクリンを, 後半にはカルセインを, それぞれ連続注射した。左・右の下顎骨の第3, 第4小臼歯と第1, 第2大臼歯の近心根の部分で頬・舌断研磨片を作製し, microradiographyと螢光顕微鏡法で比較観察した。
    抜歯窩の治癒に伴って下顎骨では, 緻密骨の外形と内部構造の変化を起すことがわかった。
    歯槽頂の高さは吸収により低くなり, 外側に向かった斜面を作る。この変化は舌側よりも頬側ではるかに著明で若い個体ほど著しい。
    緻密骨外側では, P4あたりを境目として, それより近心と遠心とで傾向の異なる変化が現われる。すなわち, M1の舌側では骨形成の活発化が, 頬側では骨吸収の活発化が見られ, P3の頬側では骨形成の活発化が, 舌側では骨形成の抑制が見られた。骨形成の活発化は抜歯後まもなくから約2カ月の間に起り, 抑制は抜歯後2~3カ月以降に始まる。これら2つの変化の出現は個体の年齢とは関係しない。それに対して, 吸収は90日目頃から5カ月目頃までの間に進行し, 若い個体ほどの著明である。
    緻密骨内側では2種類の変化が見られた。第1は下歯槽管上縁のレベルの上方への移動で, 第2は緻密骨内側全体にわたる骨形成の充進である。第1の変化は特にM1で著明であり, 抜歯後2~3カ月の間で進行する。第2の変化はP3とM1の部分で最もよく見られ, 抜歯直後から3カ月の間に活発に進行する。これらの変化の出現は個体の年齢と関係しない。
    抜歯後60日目頃から約1カ月の間にP3~M2の緻密骨内部(特に上方1/2)でreplacement osteonの形の内部改造が活発化する。この変化は年とった個体ほど著明に見られる。
    緻密骨の外側と内側, それに内部に現われた変動は, P4あたりを支点として顎骨に生じた歪と関連すると思われる。
  • 60期と70期の比較
    佐藤 巌, 小林 眞一, 佐藤 亨, 南雲 祐司, 村木 毅
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1024-1043
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    大唾液腺を欠く両生類では舌腺の発達が良好である。特に変態前後において両生類有尾目舌の腺房細胞にやや変化が認められた。
    鰓を有する60期では分泌果粒がやや均一なA型と芯をもつB型に分類されたが,鯉の消失する70期ではA型のみで電子密度の低いものI型と,やや高いものII型に分類された。
    基底細胞は60期では多く認められるが, 70期では殆ど認められない。筋上皮細胞は70期が60期よりもmyobundleの発達が良好であった。
  • 橋本 勝一, 木村 明美, 奥村 晴一, 宮澤 忠蔵, 清水 秋雄
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1044-1049
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    マウス腹腔マクロファージによるラット歯槽骨の溶解性に関して, Actinomyces viscosus ATCC15987の超音波破壊上清の影響を検討することを目的とした。マウス腹腔細胞 (PEC) は, 10%proteose peptoneで誘発した。PEC中のマクロファージは, 1時間後および24時間後に, マルチウェル中の培養液を洗浄する方法によって分離した。次に, Ham's培地 (5%に牛胎児血清およびHEPES添加) に加えたA.viscosusの超音波破壊上清および歯槽骨粉末をマクロファージが培養してあるwellに加えた。対照として, A.viscosusの超音波破壊上清のみおよび骨粉末のみをwellに加えた。well中の付着細胞数は, 位相差顕微鏡中のマイクロメーターによって算定した。歯槽骨からのCa溶出は, 誘導結合プラズマ発光分光分析によって測定した。A.viscosusの菌体破壊上清は, マクロファージの歯槽骨粉末に対する溶解性を増強すると共に, 培養系のglucose消費も促進した。このことは, 本実験系においてA.viscosus菌体成分のマクロファージ細胞数におよぼす影響にもとずくものと思われる。
  • 橋本 勝一, 木村 明美, 奥村 晴一, 宮澤 忠蔵, 清水 秋雄
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1050-1056
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/11/30
    ジャーナル フリー
    骨組織が培養マクロファージによって溶解することは近年報告されているが, 骨組織溶解の機作に関しては明確でない。そこで本研究においては, 骨組織中のアパタイトからのCa溶出を培養培地中のCa濃度の増加を測定する方法を用い, マクロファージによる骨組織中のアパタイトの溶解性におよぼすグルコース濃度の影響を検討した。培養培地中のグルコース濃度をより高くすると, 同一細胞数の実験条件下でもCa遊離の増加をもたらした。故に, マクロフアージのアパタイト溶解性はグルコース濃度によって影響されると考えられる。またマクロフィージから産生された乳酸の増加は, アパタイトからのCa遊離の原因になると思われる
  • 山崎 博史
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1057-1072
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    カエルは上顎に非常に多くの小さな歯を持っており, それらは上顎の歯列を形成している。しかしカエルの歯には歯根膜は存在しない。口蓋粘膜は上顎歯列の内側において, 口蓋堤と呼ばれる隆起を形作っている。本実験において, 著者は口蓋堤より生ずる新しい顎反射を見い出した。口蓋堤に存在する閾値の低い, 速順応性の動き受容器に機械的刺激を加えると, 一過性の閉口反射が誘発される。しかし高閾値の遅順応性の動き受容器を機械的に刺激した場合には, 逆に閉口筋活動が抑制された。また口蓋堤に分布する求心性神経の電気刺激によっても, 機械的刺激の場合と同様の反射が誘発された。すなわち神経を刺激電圧0.4Vで弱刺激すると, 刺激の持続する間, 閉口反射が観察される。しかし刺激電圧を0.9Vに高めて強刺激した場合には, あらかじめ誘発させておいた閉口筋活動が抑制をうけることが明らかになった。
    口蓋堤は触刺激に対する感度が非常に良く, 顎運動の反射的調整に関与している。また口蓋堤の役割と歯根膜のそれとは, 機能的に類似している。カエルにおいて観察された閉口反射は, 温血動物における歯根膜-咬筋反射に似た反射であることが考察された。
  • 土屋 博
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1073-1089
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    常生歯歯根膜の線維構築を明らかにするとともに, Sicherによって報告された “中間叢” の存否を確認することを目的として, ラット切歯歯根膜を光線および走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
    ラット切歯の歯根膜は歯軸に平行に走る線維 (平行線維) と, 歯根膜隙をセメント質から歯槽骨へ横断する線維 (横断線維) の2つの走行を異にする線維要素から構成されている。
    形成端の歯根膜隙に散在する微細な平行線維は歯肉側に向うに従って太さと数を増しながら, 次第に歯根膜隙中央部に集まり, 第2臼歯近心部近くで扁平な板状線維束を形成する。
    セメント質および歯槽骨から別個に起こる横断線維は, 次第に歯根膜隙中央部に伸び出し, 第2臼歯近くでそれぞれ扁平な板状線維束を形成する。その後第1臼歯の近心部で両者は連結し, 横断線維が完成する。
    形成端に近い領域では平行線維が主体をなしているが, 歯槽頂に近づくにつれて横断線維がこれに替って主体をなすようになり, この線維群が歯の固定・維持の主役を演ずると思われる。
    Sicherが特に常生歯で述べているいわゆる “中間叢” は, 板状の線維形態が薄切される方向によって現われる虚像であると考えられる。
  • 第1報: 細胞の変異誘発機序としての“SOS修復機構”のin vitroにおける実験系の検討
    兼松 宣武
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1090-1096
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    “SOS機能” 発現にともなってDNA合成のfidelityの低下がみられるか否かをin vitroのDNA合成の実験系を用いて検討した。(i) 鋳型DNAとして30分間UV照射 (1.7erg/mm2/sec) をおこなったpoly (dT) oligo (dA) ならびにUV照射をおこなっていないpoly (dT) oligo (dA) の2種類を16nmol/reaction tuble,(ii) DNAポリメラーゼの代りに “SOS機能” の発現したE. coli tif菌の抽出液ならびに “SOS機能” の発現していないE. coli. tif菌の抽出液を各々21.5μg/reaction-tuble,(iii) 330pmol3H-dGTP (S.A. 7.5×103cpm/pmol) 485pmol3H-dCTP (S.A.5.2×103cpm) 5.6nmol14C-dATP (S.A.±60cpm/pmol),(iv) 補酵素として0.2mM MnCl2, 300mM KCl, 以上の反応液を使用し, pH8.6, 37℃30分間incubateすることによりDNA合成をおこなわしめた。結果として, SOS機能が発現したE. coli tif菌の抽出液をDNAポリメラーゼの代りに用いた場合においてもDNA合成のfidelityの低下はみられなかった。この理由の一つにE. coli tif菌の抽出液中に含有されているtriphosphataseの作用により, reactiontubule中のdNTPが加水分解されるためであろうことが示唆された。
  • Shinichi Yokomizo
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1097-1110
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯周疾患の進行においては従来, 宿主細胞と細菌細胞壁成分であるLPSとの直接作用および免疫機構を介する間接作用の関与が示唆されている。しかしLPSが宿主細胞のオルガネラの物質代謝に対しどのような効果をもつかは明確ではない。そこで本研究ではLPSのオルガネラレベルでの作用部位と考えられるミトコンドリアに注目し, その基礎的代謝であるTCA cycleへのLPSの効果と, その結果生ずるアミノ酸生合成への影響について, succinate-1, 4-14Cを添加基質としたshort term incubation系を用いて検討を加えた。その結果, ウシ歯根膜および歯髄ミトコンドリア画分のLPS添加群ではα-ketoglutarate, malate, fumarateの生成量の上昇と生成比 (M/F比) の変動が認められた。一方, 歯根膜ミトコンドリア画分において生成された主要アミノ酸はGlu, Asp, Gly, Alaであり, LPS添加群ではcontrol群と比較して, Glu, Gly+Alaの生成量に上昇が認められた。特にα-ketoglutarateとGluの生成量はLPS添加により共に増加しており, LPSが特定の反応系に作用している所見を得た。従って歯周疾患の進行に伴い, LPSが結合組織細胞のミトコンドリアに直接侵襲を与えた場合, 有機酸およびアミノ酸等低分子の代謝性を変化させ, その結果, 細胞質における高分子合成に影響を与える可能性が示唆された。
  • Morphological heterogeneity of matrix vesicles in rat molar tooth germs with relation to predentin maturation
    Hiroshi Tominaga, Takahisa Sasaki, Shohei Higashi
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1111-1115
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Matrix vesicles (MVs) in thin sections, were classified into four types: electronopaque MVs, lucid MVs, MVs of medium opacity, and MVs containing needle-shaped inclusions. In freeze-fracture replicas, they were classified into three types by the number of membrane-associated particles (MAPs) on the convex P-faces: MAP-rich MVs, MAPpoor MVs, and MVs with a moderate amount of MAPs. In the course of predentin maturation, electron-opaque MVs and MAP-rich MVs increased in number. It is believed that the increase of these MVs is necessary for the onset of mineralization.
  • Takashi Matsui, Yasushi Myokei, Yoko Hashimoto, Ken-ichi Iijima, Taro ...
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1116-1120
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Yasutoku Kogaya, Kazuhiko Nishida, Fuminori Kawakami, Takio Miyaji, Ma ...
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1121-1124
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Mitsuo Kakei, Hiroshi Nakahara
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1125-1128
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    The antigenic relationship between amelogenins from developing rat enamel and carbonic anhydrase (CA) from rat erythrocytes was investigated by using a double immunodiffusion technique. Amelogenins ranging in size from 23, 000 to 30, 000 daltons formed a single precipitin line with an antibody against CA isoenzyme C. The results suggest that most of the amelogenins are derived from CA isoenzyme C.
  • Mitsuo Kakei, Hiroshi Nakahara
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1129-1133
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Localization of carbonic anhydrase (CA) in the developing dentin and enamel of the rat lower incisor was investigated by means of a histochemical technique at the electron microscope level. The CA reaction products were always localized in the area where initial mineralization i.e., nucleation of crystals occur in the developing dentin as well as enamel. In the enamel, CA activity was observed only in the initial marginal zone (10-20 μm in thickness) of the enamel at the matrix formation stage. The precipitates produced by the CA reaction appear in close proximity to the newly formed ribbon-shaped crystallites. CA activity in the dentin occurs in the calcification front (dentin-predentin border) of a few μm in thickness. Furthermore, the precipitates which appear on the predentin side are enclosed in the mass of initial crystals.
    The present study confirms our previous observations at the light microscope level.
  • Nobuyoshi Takeshita, Shunji Kuwana, Hideki Shirasuga, Michiyasu Akiba, ...
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1134-1135
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • penetrating the mandibular nerve
    Akimichi Takemura, Fumihiko Suwa, Jun Nakajima, Takuzo Otsuka, Seiichi ...
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1136-1139
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Kimio Abe, Shin Kanbara, Masamichi Ohno, Ryoichi Funabiki, Tomoko Mura ...
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1140-1143
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Kenji Onodera, Yasumi Ogura
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1144-1147
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Kenji Onodera, Yasumi Ogura
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1148-1150
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Yasumasa Tanaka, Ryuichi Ohtsu, Hiroshi Yamada
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1151-1153
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Masayoshi Totsuka, Hiroyuki Hayashi, Kenichiro Shibata, Tsuguo Watanab ...
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1154-1157
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Yoshimitsu Abiko, Hideo Onose, Shigeno Saito, Hisashi Takiguchi
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1158-1161
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Hiromasa Inoue, Shinko Iwanaga, Choji Uchiyama, Shigenori Kawagishi
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1162-1163
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Hideo Shikata, Mayuri Tsunoi, Nobuo Utsumi, Masahiko Hiramatsu, Naomi ...
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1164-1167
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Kayoko M. Fukasawa, Katsuhiko Fukasawa, Minoru Harada
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1168-1173
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Yasumasa Tanaka, Ryuichi Ohtsu, Hiroshi Yamada
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1174-1176
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Taizo Masuhara, Yoshiki Iwabuchi
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1177-1180
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Mikiyo Odajima
    1983 年 25 巻 4 号 p. 1181-1187
    発行日: 1983/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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