歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
26 巻, 2 号
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  • 桂 暢彦
    1984 年 26 巻 2 号 p. 315-325
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Possible roles of calcifying matrix proteoglycans (PG) in a chain reactions of calcifying process were discussed from a view point of the unique physico-chemical properties of PG.
    PG, as a diffuse polyelectrolyte macromolecule, networks with collagen fibres and holds the positions of matrix vesicles (MV) and a space for hydroxyapatite crystals. This gelatinous networks supply microchannels of Ca and phosphoproteins (PP) from cell to calcifying front. This transportation may be promoted by exclusion volume effect and negative charges of the gel.
    MV at the calcifying front are punctured by growing apatite seeds and then release a protease associated with MV. This protease decomposes the PG interfering crystal growth.
    Decomposed PG, dephosphorylated PP, water etc. are excluded and back-flowed from the calcifying front.
  • 第1報 Bacterial chondroitinase ABCの歯周組織におよぼす影響
    于 世鳳, 堀 泰典, 金久 純也, 竹内 宏, 佐藤 勝, 並河 勇
    1984 年 26 巻 2 号 p. 326-331
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒト炎症歯肉の上皮下結合組織に存在するchondroitinase ABCの歯周組織に与える影響を知るために, bacterial chondroitinase ABCをラットの歯周組織に接種して, 経時的に組織変化を追求した。その結果, bacterial chondroitinase ABCは種々の炎症性細胞浸潤を伴った炎症反応をひき起こすとともに, 炎症巣周囲の結合組織部の硝子様物質の貯留および多核破骨細胞による骨吸収をも招来せしめることが判明した。現在, この様な骨吸収の発現機序は不明であるものの, 今回の実験的研究から生理的な骨改造現象の経過中にbacterial chondroitinase ABCが骨芽細胞によって産生されつつある有機性骨前質を酵素的に分解することによって骨形成を妨げ, その結果骨吸収が一方的に進行することが主因をなしていることが示唆された。
  • 目野 晃伸
    1984 年 26 巻 2 号 p. 332-340
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    現在までの口腔上皮組織細胞の動態に関する研究から共通していることは, 上皮細胞の供給は上皮幹細胞の周期的な増殖能により維持されており, 全体として増殖した基底細胞の一部の細胞が上層に移行し, 形態的および機能的な分化過程を経て, 細胞の交替が行われていることである。しかし, 基底細胞の増殖と分化の過程には, 動物の種・系統および組織のちがいによって特異性があるのではないかという点が問題となる。そこで, 著者は, C3H系マウス頬粘膜上皮および口蓋粘膜上皮について3H・チミジン標識法によって細胞動態解析を行うとともに, 従来報告されている口腔組織に関する結果と比較検討した。
    実験動物は, 8週齢に達したC3Hf/He系雄マウスを各実験点につき3匹ずつ用いた。実験開始前2週間の環境馴化飼育を行ったマウスに1匹あたり3H-チミジンを50μCiずつ腹腔内注射してパルス・ラベル法を行い, その口腔組織細胞の標識をし, その後30分および, 2時間目から24時間目までは2時間おきに, それ以後10日目までは12時間おきに経時的にマウスを無作為抽出して屠殺し, 頬粘膜および口蓋粘膜を摘出した。摘出した試料は, 直ちに10%ホルマリン溶液で固定し, パラフィン包埋後前額断で厚さ3μの薄切標本を得た。これをディッピング法によりミクロ・オートラジオグラフを作製して, 顕微鏡観察した。そして, 基底細胞層に観察される分裂細胞の割合を算定し, 標識分裂細胞頻度曲線(PLM曲線)を求めた。また, 標識基底細胞数 (NB) とその範囲に含まれる上皮層全域の標識細胞数 (NT) の比 (NB/NT) を計算し, 得られたNB/NT曲線および上皮各層の標識率の経時的変化から得られた曲線をそれぞれ画いた。これらによって細胞周期時間および上皮細胞交替時間を求めて検討した。
    その結果, 次の結論を得た。
    1. C3H系マウス頬粘膜および口蓋粘膜上皮基底細胞の細胞周期時間は, 3H-チミジン標識に基づくPLM曲線からTakahashi & Meudelsohnの方法で求め, おのおの43.8時間および55.5時間と算定された。
    2. 頬粘膜上皮と口蓋粘膜上皮とも標識基底細胞の約80%が分化層へ移行したが, その移行の仕方に違いがあり, 前者は連続的であり, 後者は断続的であった。
    3. 頬粘膜上皮および口蓋粘膜上皮における細胞交替時間に関しては, 頬粘膜上皮の方が口蓋粘膜上皮よりも短いと算定された。
  • Succinate-1, 4-14C由来の有機酸代謝及び新生高分子について
    目黒 千代恵
    1984 年 26 巻 2 号 p. 341-357
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯周組織の炎症において, ケミカルメディエーターと考えられるPGE1による代謝レベルでの変化について, succinate-1, 4-14Cをtracerとし, ウシ歯根膜を用いて検索した。
    short term incubation系で用い, PGE1濃度を, コントロール (Ong PGE1/ml), 低濃度 (5ng PGE1/ml)から高濃度 (200ng PGE1/ml) まで5段階設定し, それぞれの濃度のメディウム中でインキュベートした試料について, 細胞外成分を分画した。各種TCA cycle系の有機酸の分析および, 高分子分画については, Sepharose CL-6Bカラムクロマトグラフィー, SDSポリアクリルアミド電気泳動, オートラジオグラフィーによって, その合成能ならびに分子分布について検索を行った。
    その結果, 有機酸生成については, ピルビン酸生成比, 及びクエン酸, α-ケトグルタル酸生成比は, PGE1濃度変動に伴って, それぞれ独自の変動が認められた。特にα-ケトグルタル酸生成比は, 低濃度のPGE1で著明に上昇し, 高濃度では低下した。
    高分子画分については, 低濃度のPGE1で合成が抑制され, 高濃度では促進されるという相反する変化を示した。しかしこのPGE1の作用は生成高分子に一率に作用するのではなく, 総放射活性を100%として, 分子量65K以上の分画は低濃度で生成し高濃度で上昇していが, 32K~65Kの分画は低濃度で上昇, 高濃度で低下している。分子量32K以下の分画については, 生成率の著明な変動は認められなかった。特に, SDSポリアクリルアミド電気泳動像では, 分子量59Kの放射活性を持つバンドが, 低濃度のPGE1で新しく合成されたことが示された。
    以上より, PGE1が歯根膜の細胞の有機酸代謝系および, 高分子合成系に対し, 各濃度によって異った変化を与えることが示唆された。
  • (1) 結晶成長速度
    青葉 孝昭, 八木 俊雄
    1984 年 26 巻 2 号 p. 358-366
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Hydroxyapatiteの結晶成長一溶解 (負の成長) 機構に関する研究の第1報として, HAの成長速度の求めかたについて検討を加えた。結晶成長実験は37±0.5℃でおこない, 合成したHAを種晶として用いた。初期 (t=0) 溶液の組成, ならびに種晶の添加に伴って生じたpH, 〔Ca〕, 〔P〕濃度の変化を測定した。時間tでの反応速度 (dP/dt, dCa/dt) は実側値による濃度-時間曲線を多項式 (polynomial) で近似する方法や, 反応速度式に放物線則 (parabolic rate law)を用いて求められた。また, 反応過程で毎分ごとに記録したpH値を利用して, pHの実測値から〔P〕濃度を換算し, 隣接する細かな時間での〔P〕濃度変化の平均速度を求める方法が考案された。この最後に示した方法は今後さらに改良を加えることにより, 反応過程と結晶成長理論との対応を考えるうえでの有効な方法となりうることが示唆された。
  • (2) 溶液の過飽和度
    青葉 孝昭, 八木 俊雄
    1984 年 26 巻 2 号 p. 367-375
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本報では最初にCa(OH)2-H3PO4-H2O系でのリン酸カルシウム結晶に対する飽和度の計算方法を述べ, つぎにHA種晶を用いた結晶成長実験において, Hydroxyapatite (HA) の成長速度が反応溶液の過飽和度に依存していることを明らかにした。反応溶液の過飽和度はpHの実測値, 全〔Ca2+〕, 全〔PO43-〕濃度の分析値, 支持電解質濃度を用いて求められた。その計算過程では, リン酸イオンの解離平衡定数, CaPO4のイオン会合定数, 溶液内でのelectroneutralityとmass balanceの関係式を利用し, さらにDebye-Hückelの式に基づく活量係数の計算を含んでいる。HAに対する過飽和度を所定の値に調整した結晶成長実験から, 反応の初速度R0とt=0でのHAに対する過飽和度 (DS) のあいだには, R0=K (DS-1)n, 1≦n≦2の関係が認められた。さらに, 適切な注意を払ってt=0でのHAに対する過飽和度を同じ条件に調整すると, HAの成長過程を再現しうることが確かめられた。これらの結果はHAの結晶成長実験において溶液の過飽和度を規定することが重要であることを示している。
  • 藤本 平蔵, 森川 裕, 福田 訓子, 高山 泰幸, 塚本 芳雄, 森 政和
    1984 年 26 巻 2 号 p. 376-383
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ビタミンCおよびビタミンKは, 免疫および炎症反応に影響をおよぼし, 好中球の代謝および機能を調節することが報告されている。本実験はマクロファージの遊走機能に対するビタミンCおよびKの直接作用を知る目的で, in vitroにおけるmembrane filter法を用いて, モルモット・マクロファージの遊走試験を行い検討した。
    Chamberのlower wellにbuffer controlあるいは遊走因子として用いた10-8M・FMLP溶液を満た, 5μm pore sizeのpolycarbonate filterで隔てられたupper wellに, グリコーゲンでinduceした腹腔マクロファージ浮遊液を満たした。ビタミンをlower wellとupper wellで同濃度となるように添加し, 37℃, 90分間のincubationを行い, filter下面に遊走したマクロファージ数を測定した。
    ビタミンCとしては, レアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウムを用い, 5×10-3MのL-アスコルビン酸を添加した場合にのみFMLPに対する遊走能に抑制効果が認められたが, 5×10-5Mから10-3M濃度のL-アスコルビン酸, および5×10-3M濃度のアスコルビン酸ナトリウムを添加した場合には, 遊走能にほとんど変化はみられなかった。
    5×10-7Mから10-5M濃度のビタミンK3およびK5を添加した場合には, buffer controlに対する遊走に変化は認められず, 5×10-5M濃度の時に抑制効果が認められた。10-8MのFMLPに対する遊走は, 5×10-7Mから5×10-5M濃度のビタミンK3を添加した場合には濃度依存的に抑制され, ビタミンK5を添加した場合には, 5×10-7Mから10-5M濃度の範囲では変化は認められず, 5×10-5M濃度で完全に抑制されたことから, ビタミンCおよびビタミンK類は, マクロファージに対する直接作用を持ち, 遊走能を調節することが明らかとなった。
  • 林 弘之, 佐々 昭三, 小園 知, 宮本 秀幸
    1984 年 26 巻 2 号 p. 384-394
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マウス顎下腺介在部細胞の分化発達過程と雌性ホルモンによる影響をzinc-iodide osmium (ZIO) 染色を用いて組織学的に検索した。
    出生初期の顎下腺はZIO染色でterminal tubule cellのみが陽性を呈し, 他の細胞型は陰性であった。ZIO陽性細胞は顎下腺の分化発達に伴い増加を認めた。生後18~21日齢でterminal tubule cellの細胞内に空胞形成を生じ, さらにその放出の結果, ZIO陽性細胞は急速に減少した。ZIO陰性となった細胞は成熟期の無顆粒性介在部細胞と形態的に一致を認めた。生後28日齢にいたり, 雄ではすべて無顆粒性介部細胞へと移行し, ZIO陽性の細胞はまったく観察されなくなるが, 雌では介在部に位置して少数ながらZIO陽性細胞の残存を認め, 顆粒性介存部細胞への移行を示した。
    成熟マウスへの雌性ホルモン投与で雄の介在部にZIO陽性細胞が出現し, 雌ではZIO陽性細胞の著しい増加と, 無顆粒性介在部細胞に分泌顆粒の合成, 貯蔵が観察された。
    以上の結果から, 幼若期のマウス顎下腺terminal tubule cellは分化発達に伴って無顆粒性介在部細胞へと移行するが, 雌では少数の細胞が成熟期に至っても残存することが確認され, その消長は雌性ホルモンによって維持, 調節されている可能性が観察された。
  • 林 毅, 町谷 卓男, 松本 憲, 作田 正義, 前田 定秋, 中前 順次, 猪木 令三
    1984 年 26 巻 2 号 p. 395-401
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    口腔領域に痛みを有する患者の血漿中β-endorphin濃度およびcortisol濃度を測定し臨床的な痛みとの関連について検討した。
    疼痛群のβ-endorphin濃度は対照群に比べて増加しており, cortisol濃度は有意な増加が認められた。特に疼痛群の中でも術後症例群では, β-endorphin濃度の有意の増加があったが, cortisol濃度は対照群に比べて増加しているものの有意でなかった。三叉神経痛群では, β-endorphin濃度は対照群より低値を示したがcortisol濃度は増加しており各疼痛群の中で最高値を示した。
    急性疼痛群と慢性疼痛群に分けて検討すると, 前者ではβ-endorphin濃度の有意の増加, cortisol濃度の増加傾向があり, 後者では, β-endorphin濃度は対照群と同等でcortisol濃度は増加傾向がうかがわれた。臨床的な痛みを示すpainscoreとβ-endorphin濃度, cortisol濃度についての相関は, 急性疼痛群ではみられるものの慢性疼痛群ではみられなかった。一過性の疼痛の場合は, 血漿中β-endorphinが増加して疼痛抑制の役割をはたすと考えられるがストレスとの関連性は得られなかった。
  • 高橋 浩二郎, 谷口 茂彦, 上田 茂樹
    1984 年 26 巻 2 号 p. 402-410
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    コウシ長管骨アルカリホスファターゼのin vitroにおけるアロステリックな活性調節機構を, pHと温度 (19-45℃) を変化させることによって調べた。
    pH 10.2では, 正の協同性を示すアロステリック現象が観測され, その協同性は温度の上昇に伴って強くなっていた。一方, pH 7.4では, 負の協同性が各温度で観測されたが, 特に37℃で半減的反応性という負の協同性が最も強い現象が観測された。
    骨アルカリホスファターゼの負の協同性というアロステリックな性質を考慮することによって, その酵素の硬組織の石灰化における生理的な機能について次のような仮説を提唱した。
    1. リン酸要求の代謝系や石灰化部位に無機リン酸を供給するために, この酵素は基質としての有機リン酸エステルがどんなに低濃度であっても機能する。
    2. しかし, 基質濃度がある一定量に達するとただちにVmに到達して, 一定量の無機リン酸を供給することによって, この酵素自体がリン酸代謝の全体的なhomeostasisをコントロールする。
    3. さらに, 膜透過異常などで細胞内の基質濃度が増加したときにも, 過剰となった有機リン酸エステルの無定形Ca沈殿物などが生じないようにするために, この酵素は休止状態に近い活性部位を十分に機能させるようになる。
  • 高橋 浩二郎, 谷口 茂彦, 上田 茂樹, 西嶋 克巳
    1984 年 26 巻 2 号 p. 411-416
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    コウシ長管骨アルカリホスファターゼに対するTetramisole, Levamisole, R-8231の阻害効果をpH 7.4で調べた。
    これら三種の阻害剤の阻害効果は, pH 10付近での効果とは異なっていて, 三種ともほぼ50%であった。この酵素の二つの活性部位のうちのhigh affinity部位のKmとVmの値は阻害剤の有無にかかわらず一定であったが, low affinity部位では阻害剤の存在によってKmが45-50%, Vmが24-30%だけ減少していた。
    pH 10付近でのLevamisole, R-8231によるほぼ完全な阻害とpH7.4での約50%阻害の違いの原因は, この酵素のpHの違いによって生じるアロステリックな性質の差にもとつくものと結論された。
  • 本多 丘人
    1984 年 26 巻 2 号 p. 417-434
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1) の株の異同の判定基準を得る目的で, 制限酵素を用いてHSV-1クローン間およびサブクローン間のゲノム構造の差異を解析した。
    クローンを得るためには標準株MacIntyreおよび分離株nHSを用い, サブクローンを得るためには標準株HFを用いた。各クローン, サブクローンをVero細胞に感染させ, そこから感染細胞DNAを抽出後, 制限酵素 (Bam HI, Kpn IおよびSal I) で切断し, 電気泳動を行って切断パターンを得た。各切断パターンの比較解析から以下の結果が得られた。
    1) HSV-1ゲノムの反復配列部に含まれる断片および反復配列部とユニーク部とにまたがる断片について, その多くに大きさの差異が認められた。
    2) ユニーク部に含まれるいくつかの断片(Bam HI, Kpn I-B, JおよびSal I-B) にも, その大きさに差異が認められた。
    3) しかし他のユニーク部断片の大きさは安定しており, また, 切断点の欠如や新たな切断点の出現も認められなかった。
    以上の結果から, HSV DNAは, その複製の際に一部が変異し得ることが示唆された。本研究の結果はHSV-1の株の異同の鑑別に際し, 有力な判定基準を提供したものと考える。
  • 祐川 励起
    1984 年 26 巻 2 号 p. 435-453
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    縫合の組織学的性質を明らかにする目的で, マウス頭蓋矢状縫合の形成過程と外的作用に対する形態変化を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察した。
    矢状縫合形成初期に左右頭頂骨間の細胞が上下に押し上げられて凝集 (condensation) し, その後縫合形成が行われるので, 骨間の細胞の凝集は縫合形成の原基 (blastema) と思われる。完成した矢状縫合の骨間距離は50-80μmで, 縫合面には直径が5~10μmの線維束が埋入し, 縫合中央では左右からの線維束が交錯している。また, 縫合の上縁は前方から後方に行くに従い嵌入 (interdigitation) が強くなるが, 下縁は全体に嵌入程度が弱い。縫合面の大部分は改造が盛んであるが, 下縁付近はほとんどが休止面である。そこで矢状縫合は外的作用に対する緩衝帯として, また下方を軸として上方が可動性を有する関節構造であることが判明した。
    矢状縫合の修復過程では, 主として脳硬膜で新生骨が形成されるが縫合は再生しない。これに対し, 矢状縫合の拡張と縮小では脳硬膜と縫合面で盛んな新生骨形成が起こり縫合が再生する。この縫合は正常に比して連結は弱いが, 骨間距離は50~80μmである。すなわち, 矢状縫合は50~80μmの骨間距離を必要とし, 脳硬膜は強い骨形成能を有することが明らかとなった。
  • 藤原 努, 根岸 秀幸, 山崎 升, 宮城 敦, 檜垣 旺夫, 斎藤 滋
    1984 年 26 巻 2 号 p. 454-460
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    現在撃う蝕予防法としてフッ化物を用いる種々の処理法が歯質に対し行われているが, 我々はさらに歯質の耐酸性の向上を目的とする基礎研究として, 希土類元素のフッ素化合物の難溶性に着目し, 合成アパタイト粉末の表面を酸性フッ素リン酸溶液および塩化ランタン溶液で処理する方法について検討を行った。
    その結果, 以下のことがわかった。
    (1) アパタイト粉末を酸性フッ素リン酸溶液で処理したのち, さらに塩化ランタン溶液で処理することにより, 酢酸緩衝溶液 (0.2mol/l, pH4.0) に対するカルシウムの溶出量は酸性フッ素リン酸溶液処理のみのアパタイトと比べ1/4, 未処理のものと比べ1/8となった。すなわち, アパタイトは酸性フッ素リン酸溶液一塩化ランタン溶液の二段処理により, 優れた耐酸性が考えられる。
    (2) 粉末X線回折および熱分析の結果から上記二段処理によりアパタイト表面にフッ化カルシウムと非晶質のフッ化ランタンが生成していることが認められた。これらの生成物は無色あるいは白色であり, 歯牙を着色することがない。
    (3) 本二段処理は各々5分以内で充分な効果が認められ, う蝕予防法として臨床応用の可能性がある。
  • II. 永久歯への適用
    根岸 秀幸, 藤原 努, 山崎 升, 宮城 敦, 檜垣 旺夫, 斎藤 滋
    1984 年 26 巻 2 号 p. 461-467
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    先に, 歯質の耐酸性を向上させる処理法として報告したフッ素-ランタン二段処理法 (F-La処理) の実際のう蝕予防法への適用の可能性を検討するために, 個体差の少ないアパタイト焼結体につき, 処理条件の再検討並びに処理表面の状態を調べた。さらに, 抜去ヒト永久歯に適用した。その結果, 以下のことがわかった。
    (1) アパタイト焼結体を用いて, F処理後の塩化ランタン溶液の処理時間を再検討し, 3分間の処理で十分な耐酸性が得られる。
    (2) 走査電子顕微鏡により, F-La処理されたアパタイト焼結体の表面は, 球状の化合物 (フッ化カルシウムおよび非晶質フッ化ランタン) で均一に覆われ, 酸溶解試験1時間後においても, これらの化合物はほとんど変化せずに残存することが観察された。
    (3) 抜去ヒト永久歯に適用するときは, 表面を覆っているペリクルなどの有機物を洗浄, 除去するために, 濃度1mol/l以上のリン酸溶液によるエッチングが適当である。このことは, 酸性フッ素リン酸溶液処理 (F処理) 単独の場合でも同様である。F-La処理により, 耐酸性はF処理単独の場合より約2倍向上する。
    X線マイクロアナライザーによりF-La処理した歯質表面の状態分析した結果, ランタンおよびフッ素は, 表面から約15μmの深さまで取り込まれ, 酸溶解試験1時間後においても十分に残存し, 歯質が保護されていることが認められた。
  • Nobuaki Tanaka
    1984 年 26 巻 2 号 p. 468-476
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    結合組織細胞の代謝変動を理解する目的で, L-929線維芽細胞におけるコハク酸の代謝変化を各増殖時期で検索したものである。
    細胞の増殖時期での1, 4-14C-コハク酸からの各有機酸の生成割合は, ほぼ一定で, すなわち, リンゴ酸: 22%, フマール酸: 11%, 乳酸: 7%, クエン酸:5%, ピルビン酸: 4%およびA物質: 23%であった。ところが培養2日目と比較して, 培養8日目で総有機酸生成量は約2倍に増加した。さらに, 細胞当たりの1, 4-14C-コハク酸の取り込み量に対する高分子生成量は培養4日目の単層培養期を経過しても増加した。一方, 培養4日目の非放射性成分としてのタンパク質, ウロン酸およびハイドロキシプロリン量は無細胞系と比較して各々26%, 14%および47%と増加し, 特にハイドロキシプロリンが大きな変動を示した。
    以上の結果から, L-929線維芽細胞におけるコハク酸代謝が盛んである事, またコハク酸が高分子合成の前駆物質として有効な事から, この様な実験系は結合組織の細胞代謝変動の指標になることが明らかになつた。
  • Ichiro Sasagawa
    1984 年 26 巻 2 号 p. 477-495
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    シロザケの成魚と稚魚の各萌出歯と歯胚を, 光顕, 走査電顕, 透過電顕によって観察した結果, 次の結論が得られた。1)キャップエナメロイドは稚魚の歯にのみ存在する。2)内エナメル上皮細胞は, 歯の基質の形成よりむしろ, 膠原線維をふくむキャップエナメロイドの基質の大部分の吸収に大きな役割をはたす。
    稚魚の歯では, 歯の先端は光顕, マイクロラジオグラム, 走査電顕, 透過電顕の観察により, 高石灰化で, 膠原線維のない部分として認められる。しかし, 成魚の歯の先端ではこのような特徴は見られない。成魚ではキャップエナメロイドは存在しないと思われる。
    歯の基質形成期では, 内エナメル上皮細胞は分泌型の細胞になる。しかし, 形態的な特徴は, この能力が低く, また上皮由来の分泌物が歯の基質中に広く拡散することはないことを示している。一方, 内エナメル上皮細胞の遠心端では活発な吸収機構の存在が予想され, キャップエナメロイド領域からの基質の吸収は基質形成期の後期からすでに初まっている。歯の成熟期では, 顕著な刷子縁を遠心端に有する, 背の高い, 明調な内エナメル上皮細胞が, キャップエナメロイドの周囲に出現する。この細胞は, 膠原線維をふくむキャップエナメロイド領域の有機基質を脱却し, 高石灰化部を形成することに大きく関与していると思われる。一方, 同時期のカラーエナメロイドに対応する内エナメル上皮細胞は, 背は高くなるが, 顕著な刷子縁を有さない。カラーエナメロイドの約0.5μmの厚さの最外層では, 結晶が表面に垂直に配列し, 密に集合しているように見える。キャップエナメロイドとカラーエナメロイドとでは, 異なった形成機構を考えねばならないだろう。
  • Etsuro Hoshino, Toshiyuki Horigome, Ryoko Kagawa, Akira Kaketa, Reiich ...
    1984 年 26 巻 2 号 p. 496-501
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    歯のう蝕象牙質から圧倒的多数を占める菌として分離された偏性嫌気性菌221株のうち, 乳酸を主たる最終産物とするグラム陽性桿菌としてLactobacillus, Bifidobacterium, Actinomycesと同定された58株について, 詳しい性状を調べ, その菌種を同定した。そのうち26株は, Lactobacillusで, それぞれ, L. minutus (6株), L. plantarum (8株), L. crispatus (3株), L. catenaforme (3株, 類似菌1株を含む), L. cellobiosus (類似菌1株), L. brevis (類似菌1株) および同定不能のもの (1株) であった。19株は, Bifidobacteriumで, それぞれB. bifidum (8株, 類似菌3株を含む), B. breve (類似菌11株) であった。13株は, Actinomycesで, A. israelii (7株), A. naeslandii (5株), A. odontolyticus (1株) と同定された。今回の実験に適用した嫌気箱を含む嫌気性菌取技い技術により, 偏性嫌気性のつよいLactobacillusの菌種 (species) が分離同定された。また, 同じspeciesでも偏性嫌気性から通性嫌気性のものまで幅広く含むActinomycesでは, 偏性嫌気性の株 (strain) が分離同定され, これらの偏性嫌気性の菌がう蝕象牙質中に多いことが示された。
  • Minoru Wakita, Takashi Shioi, Yoshinobu Nodasaka
    1984 年 26 巻 2 号 p. 502-517
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    走査電子顕微鏡下に試料を直接観察しつつ, ネジ式のマイクロマニピュレータに装着したφ0.1mmタングステン針を用いて, 微小解剖法の試みを行った。標本は1.25%グルタールアルデヒドー2%パラホルムァルデヒド混合固定液で浸漬固定を行ったラット胎児と, 2.5%グルタールアルデヒドー4%パラホルムアルデヒド混合液で灌流固定を行った成体ラットより摘出した数種の器官である。
    微小解剖法によって, 通常は偶然によることの多い糸球体の観察が, 任意に作られた割断面にあらわれた腎小体から, タングステン針を解剖器具として用いてボウマン嚢を除去することによって, 自由に糸球体を剖出することができた。また同様にラット胎児の心膜を除去して, これに包まれていた心原基を露出し, さらに, その心室の任意の位置の心室壁を除去することによって心室腔ならびに心室壁断面を直視することができた。さらに, 眼の原基を外側から層状に剥離して形成途上の水晶体の表面を露出, その表面の微細構造を観察することができた。
    以上のように走査電子顕微鏡下の微小解剖法は, 今まで, 偶然に頼らざるを得なかった目的構造の観察面への露出が任意に行なえることの可能性を示した。また, 今まで光学実体顕微鏡下で熟練した研究者によってのみ解剖が可能であった胎生組織への応用は, 微小解剖法が発生学において, その高い精度と解像力によって高い精細度を有する新しい研究方法として広い応用と発展が期待されることを示した。またより活発な微小解剖法のためのマニピュレータ, 先端解剖器具, ならびに試料においてそれぞれ改善されるべき諸条件について指摘と考察を行ない, それらの問題の一部の解決法を示した。また, マイクロマニピュレーションの将来性についても若干の考察を行った。
  • Effect of estradiol on prostaglandin synthesis in dog gingiva
    Hironori Hirata, Toshihiro Dohi, Hiroshi Okamoto, Akira Tsujimoto
    1984 年 26 巻 2 号 p. 518-521
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Hiroshi Yamazaki, Kyuhachiro Shimada
    1984 年 26 巻 2 号 p. 522-524
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Mitsuko Shinohara, Noriyasu Takai, Kiyoshi Ohura, Yo Yoshida, Masakazu ...
    1984 年 26 巻 2 号 p. 525-527
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • V. Requirement of three stimulatory signals for proliferation of human peripheral blood T lymphocytes
    Toshimasa Nitta, Masao Tsushi, Seiichi Okumura, Masayasu Nakano
    1984 年 26 巻 2 号 p. 528-530
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Hiroaki Furuta, Takako Yamane, Katsumi Sugiyama
    1984 年 26 巻 2 号 p. 531-533
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
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  • Kazuyuki Segawa, Sigenori Taniuchi, Reiji Takiguchi
    1984 年 26 巻 2 号 p. 534-537
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Most bones other than the membranous bone are formed by endochondral ossification in the embryonal stage. On the other hand, uncalcified bone matrix gradually apposes to the surface layer of the existing fetal bone formed by endochondral ossification, by osteoblasts of the formative layer of the periosteum and finally the basic form of the bone is completed. Therefore, in order to clarify the surface layer of the fetal bone, i. e., the three dimensional ultrastructure of the formative bone layer, we observed the surface layer of the mandibular body region of the fetus in the late embryonal stage by high resolution scanning electron microscope.
  • Etsuro Hoshino, Toshiyuki Horigome, Ryoko Kagawa, Akira Kaketa, Reiich ...
    1984 年 26 巻 2 号 p. 538-542
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Hiroshi Takahashi, Tsuyako Ohkubo, Manabu Shibata, Satoru Naruse
    1984 年 26 巻 2 号 p. 543-548
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    A simple method for assessing pain and analgesia in mice was developed by modification of the formalin test. Formalin was injected into the forepaw of a mouse and the durations (in sec) spent in licking and biting responses were measured. These behavioral responses being very distinct, pain assessment was easily performed without the experimenter's subjective assessment. The use of the duration of pain during each 5 min block of 2 peak points enables determination of the analgesic effect quantitatively and shortening of the experimental time. As a low concentration of formalin (0.5%) was used in this method, the analgesia of weak nonnarcotic analgesics was detectable as well as that of narcotic ones and tissue damage was not elicited. Furthermore, this method enables to distinguish roughly the action site of analgesics between the central and peripheral one.
  • Masaru Nagayama, Noriaki Saburi, Tohru Oka, Shoji Yamada, Akira Matsum ...
    1984 年 26 巻 2 号 p. 549-553
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Mitsuo Kakei, Hiroshi Nakahara
    1984 年 26 巻 2 号 p. 554-558
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Masahiko Hiramatsu, Masanori Kashimata, Yasuhito Ibaraki, Chiaki Arai, ...
    1984 年 26 巻 2 号 p. 559-562
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Masaru Nagayama, Noriaki Saburi, Tohru Oka, Shoji Yamada, Akira Matsum ...
    1984 年 26 巻 2 号 p. 563-569
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • Chihomi Kato, Kazuko Saito
    1984 年 26 巻 2 号 p. 570-574
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2010/10/28
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