ラット顎下腺アンドロゲンレセプターの酸性条件において合成アンドロゲンである〔
3H〕mibore-lone (〔
3H〕MI) 結合活性を検討した。10 mM molybdate存在下, 非存在下とも〔
3H〕MI結合活性はpH 5.9で半減した。この結合活性の喪失は, 酸沈澱した細胞質タンパク質を中性の緩衝液に再溶解することにより回復した。Molybdate存在下では結合活性の回復は, 沈澱のタンパク量に一致したが, molybdate非存在下では沈澱より回復する結合活性はpH 4.9において最大値を示し, それ以降は急速に減少した。一方, molybdateを含まない細胞質をまず〔
3H〕MIにより標識しその後にpHを下げた場合には中性条件で形成された〔
3H〕MI-アンドロゲンレセプター複合体はより安定であり, pH 4.2にて半減した。Molybdate存在下では複合体はさらに低いpHまで安定であった。Molybdate存在下, 非存在下とも〔
3H〕MI-アンドロゲンレセプター複合体は〔
3H〕MI非存在下と同様に沈澱した。これらの結果はアンドロゲンレセプターがpH 4.1-5.9ではその〔
3H〕MI結合活性について特殊な状態にあることを示唆している。すなわち, この領域ではアンドロゲンレセプターはリガンド結合活性はないが, あらかじめ〔
3H〕MIが結合している場合は, 酸性化によりたとえレセプターが沈澱してもこのリガンドは保持される。さらにアンドロゲンレセプターはpH 5以下で真の変性がおこり, pH 4.1でその1/2が変性する。この変性過程は, 酸性条件でのアンドロゲンレセプターの活性化と, ひきつづき起こる活性型レセプターの変性よりなると考えられた。
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