歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
30 巻, 3 号
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  • 小川 正明, 須賀 昭一
    1988 年 30 巻 3 号 p. 247-276
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    正常, ならびに様々な齲蝕病巣を含むエナメル質の非脱灰研磨片を作製し, マイクロラジオグラムを撮影した後, エレクトロンマイクロプルーブによる線分析と点分析によってフッ素, マグネシウム, カルシウムの分布の観察と定量分析を行った。
    若い正常なエナメル質では, フッ素は幅10μmぐらいの表層でわずかに高い濃度を示すが, 齢をとった歯牙では, その濃度と幅を増す傾向がある. 齲蝕病巣の表層エナメル質では著しいフッ素濃度の上昇が見られた。脱灰病巣内部での再石灰化による高石灰化部でもフッ素濃度の上昇が見られるが, その程度は表層程高くない。脱灰前線直下に見られる石灰化亢進層ではフッ素濃度の上昇は見られなかった。歯冠全表面に沿って行った最表層での点分析によると, フッ素濃度は平滑面の歯頸部側や病巣の表層で加齢的に上昇しており, 病巣の出現と関連していた。それに対して咬耗面ではフッ素濃度の低下が見られた。
  • 齋藤 誠一
    1988 年 30 巻 3 号 p. 277-292
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ネコの後深側頭動脈について成ネコ60頭を用いアクリル樹脂注入法によって, その起始, 分枝, 分布状況を詳細に観察し, 比較解剖学的に考察を行なった。
    後深側頭動脈は, 通常, 顎動脈が下顎枝内側面, 外側翼突筋停止部の前下方で直角に内側方へ曲るとき, 下歯槽動脈の遠位で単独, ときに共通幹で, 顎動脈の上壁あるいは前上壁から上方へ起始していた。きわめてまれに上記の位置よりさらに遠位, 中硬膜動脈の起始の遠位で顎動脈怪網後角から後上外側方へ起始していた。
    後深側頭動脈の分枝には, 顎関節枝, 怪網の構成動脈枝である外側怪網枝, 外側翼突筋枝, 側頭筋停止部に分布する前枝と, 下顎切痕の直下で外側方へ派出する咬筋動脈が認められた。咬筋動脈は咬筋神経とともに下顎切痕を越えて前下方へ向かい咬筋の中間層筋や表層筋に分布する太い主枝と, 下方へ深層筋枝, 後方へ頬骨下顎筋枝と上方へ上顎下顎筋枝の数枝に分れて咬筋に分布していた。そののち後深側頭動脈の主幹は頬骨弓の高さで, 上枝, 上後枝, 後枝の3終枝に分れて側頭筋深層の停止部に分布し, 前深側頭動脈や後耳介動脈からの枝と吻合していた。
    ネコの本動脈の分枝様相は, 外側怪網枝が存在していなければカニクイザルよりもイヌのそれときわめて類似するが, 相違するところは分布域で, 側頭筋よりも咬筋が主体となっていた。
  • 吉野 賢一, 安東 俊介, 河岸 重則, 山本 英次, 橋本 元伸, 松岡 弘毅, 岸本 一雄, 天野 仁一朗
    1988 年 30 巻 3 号 p. 293-305
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ネコ下顎歯の歯髄にHRPを投与した後, 急性歯髄炎を防止する目的で, ステロイド系抗炎症剤のPrednisoloneを投与し続けた結果, HRP投与側の三叉神経節および三叉神経中脳路核に多数のHRP陽性細胞を見いだした。三叉神経節に見られた陽性細胞は, 三叉神経節の後外側部に局在し, 36μm以上の細胞体直径をもつものが総数の46.3%であった。一方, 中脳路核に認められた陽性細胞は, 中脳路核の吻尾方向のA 3.5からP 3.5の広範囲に出現し, 下丘の後端レベルに偏在する傾向が見られた。また, 中脳路核ニューロンは全て偽単極性であり, 36μm以上の細胞体直径をもつものが総数の72.8%を占めた。三叉神経節および中脳路核における陽性細胞体の直径の分布を, 三叉神経主感覚核および尾側亜核の細胞体について報告されている分布と比較することによって, 歯髄支配の三叉神経節ニューロンは主として痛・温度覚に, 中脳路核ニューロンは主として触・圧覚に関与していることが推察される。
  • 吉羽 邦彦
    1988 年 30 巻 3 号 p. 306-333
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    水酸化カルシウムの結合組織に対する直接作用, 特に初期石灰化との関係を明らかにする目的で, ラット皮下結合組織内に水酸化カルシウム懸濁液を投与し, その経時的変化を微細構造学的に検索した。
    5分後, 投与部位の細胞は変性壊死に陥り, 周囲の細胞外基質中には特異な形態を示す球状構造物が観察され, 経時的に増大, 融合する傾向を示していた。15時間後, 変性壊死細胞および球状構造物中に微細な針状結晶様構造物の出現が観察された。同時に球状構造物に接するコラゲン細線維への針状結晶の移行像も認められた。24時間後, 石灰化はさらに進行していたが, コラゲン細線維は結晶沈着に一致して膨化変形像を呈していた。
    以上の結果から, 結合組織内に投与された水酸化カルシウムは細胞壊死と特異な球状構造物の出現を惹起し, これらの構造物から石灰化が開始することが示唆された。
  • Mihoko Onishi, Shingo Nakamura, Takeshi Odajima
    1988 年 30 巻 3 号 p. 334-339
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    イオン分析法を用いてペルオキシダーゼ (ミエロペルオキシダーゼ, ラクトペルオキシダーゼ, 唾液ペルオキシダーゼ, 西洋ワサビペルオキシダーゼ) が触媒する過酸化水素によるハロゲンイオンの酸化反応について調べた。その結果, 塩素イオンはミエロペルオキシダーゼ系によってのみ特異的に酸化され, 臭素イオンはミエロペルオキシダーゼ系, ラクトペルオキシダーゼ系および唾液ペルオキシダーゼ系によって酸化され, 沃素イオンはミエロペルオキシダーゼ系, ラクトペルオキシダーゼ系, 唾液ペルオキシダーゼ系, 西洋ワサビペルオキシダーゼ系のいずれの系によっても酸化された。しかし, 弗素イオンはいずれの系によっても酸化されなかった。これらの結果は弗素イオン, 塩素イオン, 臭素イオン, 沃素イオンとペルオキシダーゼ-過酸化水素系との反応性がこれらのハロゲンの原子番号の数値の大きさの順に増大することを示した。
    また, 擬似ハロゲンと呼ばれているチオシアン酸イオンもミエロペルオキシダーゼ-過酸化水素系, ラクトペルオキシダーゼ-過酸化水素系および唾液ペルオキシダーゼ-過酸化水素系によって酸化されることが明らかとなった。
  • Mihoko Onishi, Shingo Nakamura, Takeshi Odajima
    1988 年 30 巻 3 号 p. 340-346
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ミエロペルオキシダーゼ, ラクトペルオキシダーゼ, 唾液ペルオキシダーゼ, 西洋ワサビペルオキシダーゼの各々を触媒活性に基づいて, 化学的に識別する方法として, これらのペルオキシダーゼによる塩基性フクシン, 食用赤色106号 (これらはいずれもペルオキシダーゼと過酸化水素のみでは酸化されない基質である) のハロゲンイオンに依存する酸化反応を調べた。ミエロペルオキシダーゼ系は塩素イオンあるいは臭素イオンに依存して塩基性フクシンおよび食用赤色106号を酸化した。フッ素イオンには効果がみられなかった。ラクトペルオキシダーゼ, 唾液ペルオキシダーゼ系は臭素イオンの存在する条件下において塩基性フクシン, 食用赤色106号を酸化したが, この反応は塩素イオン, フッ素イオンには依存しなかった。逆にフッ素イオンには臭素イオンが促進する反応を阻害する作用がみられた。西洋ワサビペルオキシダーゼ系はフッ素イオン, 塩素イオン, 臭素イオンのいずれによっても影響されなかった。
    これらの結果から, ミエロペルオキシダーゼ, ラクトペルオキシダーゼ, 唾液ペルオキシダーゼ西洋ワサビペルオキシダーゼを (1) ミエロペルオキシダーゼ, (2) ラクトペルオキシダーゼ, 唾液ペルオキシダーゼおよび (3) 西洋ワサビペルオキシダーゼの3種類に識別することができた。
  • Takao Nanba, Yoshihiro Ohmori
    1988 年 30 巻 3 号 p. 347-357
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    歯周疾患におけるマクロファージの機能的役割解明の一端として, 成人性歯周炎の有力な病原性細菌として注目されているBacteroides gingiualisのマウス腹腔マクロファージ機能に及ぼす作用を検討した。
    B. gingiualis 381株の凍結乾燥菌体 (1mg) をマウス腹腔内に投与し, 経日的に得られた腹腔マクロファージのインターロイキン1 (IL-1) 産生能, 酸性フォスファターゼ活性, Fcレセプター媒介性貪食能, 及びL929線維芽細胞に対する細胞増殖抑制作用の動態について検討した結果, それらの活性は, 投与後1日目から3日目にかけて著明な上昇が認められた。この投与後3日目のマウス腹腔マクロファージのIL-1産生は, 経時的に変化し, それは培養6時間以内が最高であった。また, 投与群マクロファージによるIL-1産生は, マクロファージの細胞数に比例して増大し, またその活性は培養上清の128倍希釈でも有意に検出できた。この投与群マクロファージの培養上清をSephadex G-100カラムで分画した結果, IL-1活性画分は, 分子量17,000をピークとするフラクションに分画された。
    以上の結果から, 歯周疾患局所でのマクロファージの機能的活性化が, B. gingiualis感染に伴ない誘導されることの可能性が示唆された。
  • Kumiko Ikeno, Sachiko Saikatsu, Tsuyoshi Uno, Takeyuki Ikeno
    1988 年 30 巻 3 号 p. 358-362
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ストレプトゾトシンにより誘発された糖尿病ラットの顎下腺, 舌下腺, 耳下腺および血清中のアミラーゼとトリプシン様プロテアーゼ活性を測定し, インスリンの効果を検討した。糖尿病ラットの三唾液腺および血清中のアミラーゼ活性は, 対照に比べ約半分に減少し, 膵臓および肝臓中のアミラーゼ活性は著しい減少を示した。糖尿病ラットのトリプシン様プロテアーゼ活性は顎下腺でわずかに減少したのみであった。インスリンの投与によって, 唾液腺および血清中のアミラーゼ活性と, 顎下腺中のトリプシン様プロテアーゼ活性はそれぞれ対照ラットのレベルまで回復した。
    以上のことから, ストレプトゾトシン誘発性糖尿病ラットの唾液腺では, 腺房中の酵素の方がより影響を受けると考えられる。
  • Shintaro Kondo, Hiroshi Nagai, Takuro Sakai, Miya Kobayashi, Takeshi H ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 363-371
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    マウス舌背粘膜のランゲルハンス細胞 (LC) の微細構造と分布を光顕・電顕, ATPaseの組織化学的検出により観察した。粘膜上皮は乳頭部および乳頭間部に分けることができる。これらはともに正角化を呈し, 両者は主に有棘層, 顆粒層, 角化層の細胞形態の違いによって区別される。乳頭間部有棘層の細胞質内のトノフィラメントは束を形成せず散在し, デスモゾームが明瞭に観察された。また乳頭間部では顆粒層の発達が悪く, 角化層の細胞質は乳頭部に比べて明るく見えた。光顕的には, 細胞質の明るいclear cellが乳頭間部基底層直上の有棘層に見られ, これらは顆粒層から基底層に及ぶ長い細胞質突起を伸ばしていた。ATPase陽性細胞は長い細胞質突起を有し, 乳頭間部に分布していた。電顕的にはBirbeck顆粒をもったLCが乳頭間部に見られた。光顕観察によるclear cellとATPase陽性細胞は電顕で観察されたLCとその形態と分布が一致しているので, これらはLCと考えることができる。ATPase陽性細胞は2週齢の舌には見られず, 3・4週齢で観察された。
  • Yoshiki Iwabuchi, Chihiro Aoki, Taizo Masuhara
    1988 年 30 巻 3 号 p. 372-376
    発行日: 1988/06/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
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