Phkenytoin (PHT) は, glucocorticoid (GC) と同様につよい口蓋裂誘発作用を有するが, その誘発経路にはGCリセプターのうち, PHTがGCと競合的に結合する部分 (PHTとの共通リセプター) が関与している可能性が指摘されている。このことをより明確にするための研究の一環として, PHTとGCに感受性を示すCF1系と抵抗性のC57BL/6系マウス肺組織cytosol中のPHTリセプターとGCとの関係について検索し, 次の結果を得た。
PHTとGCによる口蓋裂誘発頻度は, ともにCF1の方がC57BL/6より有意に高かった。しかし, いずれの系においてもPHTによる裂誘発頻度はGCによるものより有意に低かった。一方,
14C-PHTのcytosolタンパク質に対する特異的結合の総量の結合曲線は, CFlの方がC57BL/6よりはるかに高い位置で経過していた。これらの結合曲線をScatchard plotによって分析した結果, リセプター量はそれぞれ1,571, 994fmole/mgであり, CF1の方がC57BL/6よりかなり大きな値であった。一方, Kd値はそれぞれ18.1, 16.5nMで両系の間に大差はなかった。また, GCとの共通リセプターはそれぞれ236, 126fmole/mgで, いずれも総リセプター量に比べて多くはなかったが, やはりCF1の方がCF57BL/6より大きかった。しかし, Kdはそれぞれ5.4, 3.1nMで両系の間に大差はなかった。
以上の結果から, PHTによる口蓋裂の誘発にはPHTとGCとの共通リセプターが関与したGCと共通の誘発経路の存在とともに, PHT固有のリセプターなどGCによる誘発とは異なる因子の関与が示唆された。
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