歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
32 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 栗原 琴二
    1990 年 32 巻 5 号 p. 471-483
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    Na+, K+-ATPase αサブユニットアイソフォームに対する特異抗体 (抗αIおよび抗αII抗体) を用いたウエスタンブロット法によって, 腎臓や脳に認められるαIに加えてラット顎下腺に新しいαサブユニットアイソフォームを見出した (今回の報告ではα (S) と呼称する) 。α (S) は抗αI抗体に強く反応し, 腎臓や脳のαIよりわずかに小さな分子量 (約90,000) であった。α (S) は2mMウアバイン存在下で安定な〔E2-P〕complexを形成したことからNa+, K+-ATPase αサブユニットの機能をもつことが確認された。顎下腺のNa+, K+-ATPase αサブユニットのmRNAは1種類のみ検出されたこと, 顎下腺Na+, K+-ATPaseのウアバインに対する感受性がαIに類似したこと, α (S) のN-末端アミノ酸配列がαIと一致したことなどから, α (S) はαIのmRNAからαIが生合成された後, αIのC末端がin vivoでプロセシングを受けて生じたと考えられた。
  • 新井 敏昭, 西村 享, 梁 瑞峰, 佐藤 精一
    1990 年 32 巻 5 号 p. 484-494
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    発育中ラットの頭頂骨に形成した創傷孔の治癒と大腿骨の発育におよぼすdexamethasoneとindomethacinの影響を調べた。薬物は0.5, 1, 2mg/kgを日曜日を除く1日1回, 1, 2または4週間皮下投与し, 頭頂骨はalizarin red S染色を行って創傷孔部分の非染色部を未石灰化部としてその面積を測定した。また, 大動脈にIndia inkを注入して創傷孔の血管の再生状態を観察した。また, 軟X線写真を撮影してフィルム上の大腿骨の長径と幅径を測定し, 大腿骨のフィルム上の黒化度をmicrodensitometerで判定した。その結果, 1. Dexamethasone, indomethacinはともに創傷孔未石灰化面積の縮小を遅延するが, その作用は前者の方が強かった。2. Dexamethasone 1週間投与では創傷孔中の血管の新生をあまり抑制しなかったが, その後の骨の再生にともなう血管量の正常な減退がdexamethasone2週間投与で強く抑制されたことから, daxamethasoneは血管の再構築を抑制して骨の再生・創傷治癒遅延を起こしていることが考えられる。Indomethacinではその作用が弱かった。3. 大腿骨の長径と幅径の発育は, dexamethasone投与によって著しく抑制され, indomethacinの作用は弱かった。大腿骨の発育にともなう軟X線写真フィルムの黒化度の低下は, 両薬物によって明瞭に抑制された。さらにdexamethasone2週間投与では黒化度の高進がみられたが, indomethacinではみられなかった。これらの結果は, 骨創傷治癒と骨発育におけるdexamethasoneの遅延作用はindomethacinのそれより強く両薬物の作用動態度もやや異なることを示していると考えられる。
  • 藤原 秀樹
    1990 年 32 巻 5 号 p. 495-508
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    離乳後の幼若動物にとって咀嚼は口腔からの求心性刺激を豊富にもたらし脳発育を促進することが知られている。しかし, 咀嚼により脳発育が促進されるという組織学的証明はなされていない。さらに脳の生後発育に及ぼす咀嚼の影響に関する研究報告も少ない。本研究では, これらの点を明らかにするために, 一側の歯牙を2週齢目に摘出した片側咀嚼ラットを用いて, 咀嚼による脳発育の左右差を組織学的に検索し, さらに固形食群と粉末食群飼育ラットの迷路学習の成績を比較検討したものである。組織学的研究において, 4週齢片側咀嚼ラットの大脳の細胞分布密度に明らかな左右差が認められた。迷路学習においては, 4週齢ラットでは, 有意な差は認められなかったが, 8週齢ラットでは, 固形食群の方が優れていることがわかった。以上の結果から, 咀嚼に随伴する刺激が減少すると, 脳発育が遅延することが明らかとなり, 咀嚼の重要性が確認された。
  • 吉田 満
    1990 年 32 巻 5 号 p. 509-533
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ゲル法を簡便に臨床応用するためトレーを用い, 新たに開発された凍結乾燥ゼラチンゲル法 (I群) およびゼラチンゲル法 (II群) を抜去歯エナメル質表面に適用し, フルオルアパタイト結晶生成およびFの取り込みによる歯質強化を行った後, 未処置歯 (III群) とともにエナメル質表面および切断面を対象として, 走査型電子顕微鏡による形態観察, 薄膜X線回折法による定性分析, 電子線プローブマイクロアナライザによる形態観察および元素分析, コンタクトマイクロラジオグラムおよび偏光顕微鏡による観察および微小領域X線回折法による定性分析をおこなった。その結果, 凍結乾燥ゼラチンゲル法はゼラチンゲル法と同様に, フルオルアパタイト生成法および歯質強化法として, トレーを用いたin vivo応用に際して有効な方法であることが示唆された。
  • 白 哲鎬
    1990 年 32 巻 5 号 p. 534-546
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    正常 (対照群) および咬合挙上 (3日, 1週) を行ったモルモット咀嚼筋 (咬筋, 顎二腹筋) のグリセリン処理標本を作製し, その力学的特性およびATP消費量を測定した。咬合挙上に伴い, Ca2+濃度-等尺性収縮張力関係は, 咬筋の1週間挙上, 顎二腹筋の3日, 1週間挙上でCa2+感受性が対照群に比べ有意に減少した。最大発生張力は, 咬筋の場合, 1週間挙上によって有意に増大したが, 顎二腹筋の場合は有意な変化を示さなかった。最大短縮速度は顎二腹筋の場合, 1週間挙上によって有意に速くなったが, 咬筋の場合, 有意な差は認められなかった。発生張力に対するATP消費量 (tension cost=ATPase活性/発生張力) は, 咬筋の場合, 1週間挙上より有意に減少した。顎二腹筋では3日, 1週間挙上で有意な変化は認められなかった。以上の結果より, 咬合挙上により筋の力学特性およびATPase活性は咬筋と顎二腹筋では異なる変化を示すことが判明した。すなわち, 咬筋では咬合挙上によりATPを経済的に消費し, より大きい張力を発生する。反面, 顎二腹筋では咬合挙上によるATP消費量の変化はなく, 張力のCa2+感受性が低下し, 短縮速度が増加することがわかった
  • 倉田 茂昭, 藤原 努, 根岸 秀幸
    1990 年 32 巻 5 号 p. 547-554
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    化学量論的組成をもち, しかも結晶性の良いストロンチウムおよびバリウムハイドロキシアパタイト (SrHAおよびBaHA) を合成し, 種々の有機酸水溶液における溶解量を測定し, 有機酸とそれら金属イオンの錯体の安定度定数と溶解量の関係をカルシウムハイドロキシアパタイト (CaHA) の場合と比較検討した。
    SrHAは, 有機酸水溶液のpHの増加と共に溶解量が指数関数的に減少し, CaHAにおける溶解曲線と同様なパターンを示したが, その溶解量はCaHAの約2倍であった。また, アパタイトの溶解平衡式と溶出金属イオンと有機酸との錯体の生成とを考慮し導いた式に, SrHAは比較的良く一致した。しかし, 式より計算したSr/Pの比が, 純粋なアパタイトの比より小さいことから, 溶解液中のSrHA結晶表面は, ストロンチウムーリン比の小さい錯化合物などで覆われていると考えられる。
    一方, BaHAの溶解性は, SrHAおよびCaHAの場合と異なり, pHの増加に対し指数関数的に減少せず, りん酸イオンに比ベバリウムイオンの溶出量が多い。その理由は, 本実験のpH4~7の範囲では, BaHAは安定に存在できず, りん酸水素バリウムに変化するためと考えられる。
  • Kouichi Shiozawa, Niichiro Tanaka, Yasutake Saeki, Keiji Yanagisawa
    1990 年 32 巻 5 号 p. 555-562
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    舌からの感覚情報によるカエルの舌骨下筋活動の反射性制御を調べる為に, 舌の化学的, 機械的及び舌咽神経の電気刺激を行って, 食用ガエルの胸骨舌骨筋 (SH) と肩甲舌骨筋 (OH) に誘発される興奮性及び抑制性反射応答を筋電図を用いて調べた。舌に化学的刺激 (1mM塩酸キニーネ, 0.5~1.5M食塩水) を与えてもSH, OHには筋活動が誘発されなかったことから, カエルの舌骨下筋の筋活動は舌からの味覚情報では反射的に制御されていないと思われる。舌の機械的及び舌咽神経の電気刺激で, SHでは両側性に, またOHでは対側性に筋活動が誘発された。一方, 舌咽神経の電気刺激で, OHでは同側の筋に筋活動の抑制が誘発されたがSHでは筋活動の抑制は認められなかった。両筋で認められたこれらの反射応答の差は, カエルの舌運動時の両筋の機能的役割の差に起因していることが考えられる。
  • Masako Mizuno, Yasunaga Kameyama, Koji Yashiro, Yutaka Yokota
    1990 年 32 巻 5 号 p. 563-573
    発行日: 1990/10/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ラット耳下腺より単離した分泌顆粒画分 (SG) の膜リン脂質を分析し, ミクロソーム (Ms) 及びホモジネートの値と比較した。SGのリン脂質組成は, リゾリン脂質, ホスファチジルエタノールアミン (PE) の含有率がMsより高く, ホスファチジルコリン, ホスファチジルセリンは逆に低値を示すことで特徴的であった。これらのリン脂質は各々特徴的な側鎖組成を有しているがSGとMs間では類似しており, PEのアルケニル鎖及び飽和アシル鎖組成に2, 3の差異を認めるのみであった。総リン脂質の側鎖組成比較ではSG, Ms及びホモジネートの間でほとんど差異がなかった。各画分由来リン脂質リポソームの流動性をESR法を用いて観察したところ, 脂質二重層の親水性部位付近では, SG>ホモジネート>Msの順に流動性が高いが疎水性部位では差異を認めなかった。分泌顆粒膜構成リン脂質のこれらの特性は本顆粒の生化学的機能との相関を示唆するものであり, 今後, なお詳細の検討が必要である。
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