正常 (対照群) および咬合挙上 (3日, 1週) を行ったモルモット咀嚼筋 (咬筋, 顎二腹筋) のグリセリン処理標本を作製し, その力学的特性およびATP消費量を測定した。咬合挙上に伴い, Ca
2+濃度-等尺性収縮張力関係は, 咬筋の1週間挙上, 顎二腹筋の3日, 1週間挙上でCa
2+感受性が対照群に比べ有意に減少した。最大発生張力は, 咬筋の場合, 1週間挙上によって有意に増大したが, 顎二腹筋の場合は有意な変化を示さなかった。最大短縮速度は顎二腹筋の場合, 1週間挙上によって有意に速くなったが, 咬筋の場合, 有意な差は認められなかった。発生張力に対するATP消費量 (tension cost=ATPase活性/発生張力) は, 咬筋の場合, 1週間挙上より有意に減少した。顎二腹筋では3日, 1週間挙上で有意な変化は認められなかった。以上の結果より, 咬合挙上により筋の力学特性およびATPase活性は咬筋と顎二腹筋では異なる変化を示すことが判明した。すなわち, 咬筋では咬合挙上によりATPを経済的に消費し, より大きい張力を発生する。反面, 顎二腹筋では咬合挙上によるATP消費量の変化はなく, 張力のCa
2+感受性が低下し, 短縮速度が増加することがわかった
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