歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
33 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 梅本 利彦, 中村 義則, 中谷 至宏, 浅井 昭士郎, 並河 勇
    1991 年 33 巻 6 号 p. 501-512
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒトの口腔トリコモナスTrichomonas tenaxの抗原を検討することを目的として, 細胞の構成タンパク質を, ウサギ抗血清との凝集反応, ポリアクリルアミドゲル電気泳動法およびイムノブロッテイング法により検討した。T. tenax 2株と比較のために腟トリコモナスT. vaginalis 2株を使用した。SDS-PAGE法によれば, T. tenaxのN株とO株, T. uginalisのN株とS株はたがいに類似した細胞構成タンパク質パターンを示したが, T. tenax細胞のタンパク質パターンはT. vaginalisのそれとは異なっていた。また, 好気培養したT. vaginalis細胞の主要タンパク質パターンは嫌気培養のそれとは異なるものが認められた。T. tenaxの培養に混在していた桿菌で吸収した抗血清を用いたイムノブロットでは, T. tenaxの細胞構成タンパク質のうち32KDa, 36KDa, 45KDa, 51KDa, 66KDa, 86KDaタンパク質が主なタンパク質抗原として検出された。
  • ヒト歯肉細胞の株化による実験系の確立とヒドロキシアパタイト表面での細胞行動の解析
    石川 圭子
    1991 年 33 巻 6 号 p. 513-533
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒドロキシアパタイトは有効な生体材料のひとつとして, 歯科領域において広く臨床応用に供されている。しかし, 現在なお克服すべき様々な臨床上の問題点が残されている。これら未解決の問題は生体材料ヒドロキシアパタイトの組織適合性と関連が深いと考えられる。本研究では, 生きている細胞の生体材料ヒドロキシアパタイトに対する反応を細胞生物学的立場から解析し, その生体組織適合性を再評価することを目標とした。
    従来, 一般に類似の研究は, 新鮮組織から得られる初代細胞培養の系でなされてきた。しかし, 歯肉上皮細胞を安定に培養維持することは困難で, 精度の高い解析が許されなかった。そこで, クローン選択法及びSV40-T遺伝子の導入によって, ヒト歯肉結合組織線維芽細胞株, HGF-22, 及びヒト歯肉上皮細胞株, HGE-15・IとHGE-15・IIを樹立した。さらに, 細胞の動態を直接観察しうる生体実験系を考案し, 上記の株細胞とヒドロキシアパタイト試料の親和性を精密に検討した。また, 歯肉細胞のヒドロキシアパタイト試料への接着様式を透過型電子顕微鏡により観察した。
    これらの定量的な解析の結果, ヒドロキシアパタイト試料の組織親和性は従来いわれている程, 高くないことが示された。
    本研究で樹立されたヒト歯肉細胞株とこれらを活用する実験系は生体材料開発のための基礎的研究をおこなうのにきわめて有用である。
  • 椿井 孝芳
    1991 年 33 巻 6 号 p. 534-545
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マウスの顎関節において弾性線維を構成する各線維の発育・成長にともなう構造と分布の変化および生体内での機能との関係を検索した。発生時期に関してoxytalan fiberは胎生16日目, elaunin fiberは胎生18日目, elastic fiberは生後1日目にそれぞれ認められた。分布に関して各線維は円板内側辺縁部では咬合力を発揮する外側翼突筋と密に交流し, 円板外側辺縁部では血管が豊富で疎性な組織に広く分布していたことから3種の線維は共に圧力が加わったときに緩衝力を発揮するものと考える。
    elastic fiberの量的な変化は授乳期に増加し, 離乳後, 膠原線維の発育に反して減少した。さらに生後30日目以降では, 円板外側部の膠原線維が分布している領域は拡大するのに反して, elastic fiberの分布領域は狭くなり, 膠原線維が疎な部分に限局してelastic fiberが認められることから, elastic fiberの量および分布の変化は, 膠原線維の分布の動向に強く影響を受けているものと考えられる。
  • トレーサーとしてmicroperoxidaseとhorseradish peroxidaseを用いて
    綾坂 則夫, 後藤 哲哉, 飯島 忠彦, 近藤 照義, 長田 恵美, 城戸 瑞穂, 田中 輝男
    1991 年 33 巻 6 号 p. 546-559
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    セメント細胞と骨細胞の物質輸送経路の相違を観察するため, ラットにトレーサーとしてmicroperoxidase (MP) あるいはhorseradish peroxidase (HRP) を静注した。有細胞セメント質において, HRPはすべてのセメント小腔にみられたが, MPはすべてにはみられなかった。MPまたはHRPは, ほぼすべてのセメント細胞に取り込まれ, ライソゾーム系細胞内小器官に認められた。MPは成熟セメント細胞よりも幼若な細胞に多く取り込まれていたが, HRPは幼若な細胞と成熟細胞との間に差はなかった。歯槽骨においてMPまたはHRPは, すべての骨小腔にみられ, セメント細胞と同様な骨細胞の細胞内小器官にみられた。特にHRPは骨基質最内側縁に強く沈着し, さかんに骨細胞に取り込まれていた。これらの結果よリセメント質と骨内の主な物質輸送経路はpericellular spaceの外側部分 (石灰化基質最内側縁) にあると思われ, セメント細胞は骨細胞と同様な代謝活性をもっているものと思われた。
  • 野村 隆, 高橋 徳也, 原 耕二, 野原 廣美
    1991 年 33 巻 6 号 p. 560-566
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ウシ成獣歯肉を液体窒素中で破砕して得た約20gの歯肉パウダーより, λgt10ファージをベクターとして, 9×106個のクローンからなるcDNAライブラリーを構築した。
    任意のクローンのインサートcDNAの鎖長をpolymerase chain reaction (PCR) 法によって分析した結果, 鎖長300-1100bpのインサートcDNAを持つクローンの存在が確認された。
    このライブラリーは, 歯肉で発現されている種々の遺伝子を分離し, その遺伝子の発現が歯肉の生理的あるいは病理的状態に応じてどの様に調節されているかを知るための基礎となることが期待され得る。
  • 田畑 正志, 和田 薫, 仙波 輝彦
    1991 年 33 巻 6 号 p. 567-576
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラット切歯歯髄中に存在する血管を塩酸コラゲナーゼ法を用いて走査型電子顕微鏡により観察した。幹動脈は2層あるいはそれ以上の平滑筋細胞層により密に取り囲まれていた。この幹動脈の表面形態には2種類の型がみられた。第1番目は平滑な表面をした幹動脈であり, 第2番目は凹凸の著しいネジのような表面をしたものである。10~15μm径の細動脈は1層ないし2層の平滑筋細胞により密に取り巻かれていた。毛細血管には散在性に周細胞がみられ, それらは10μmに満たない長さの突起を有していた。細静脈には散在性に周細胞がみられるが, それらは20μmを越すほどの一次突起を血管の長軸方向に伸ばし, そこから輪状方向に多数の二次突起を派出していた。幹静脈はクモ型の周細胞が作る疎な網目により包まれていた。この周細胞は内皮細胞が作る浅い溝の中に埋め込まれたような形態で存在していた。
  • Crystal formation in high Ca X Pi ion-product medium containing β-glycerophosphate
    Yoshihiko Hayashi
    1991 年 33 巻 6 号 p. 577-584
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ラットの切歯歯髄より分離した基質小胞 (MV) を, 有機リン酸であるベータグリセロリン酸 (BGP) が添加されたBGJb培地中で培養し, MVと関連した結晶形成を微細構造的に検討した。MVは歯髄の基底部からコラゲネース消化と超遠心法を使い分離した。分離したMVの膜構造はよく保存されていた。BGPを添加したBGJb培地でMVを培養すると, 6時間後にMVと関連した顆粒状構造物が形成され, 18時間後には針状結晶が形成された。BGPを添加していないBGJb培地でMVを培養すると, 18時間後にMVと関連した顆粒状構造物が形成された。MVの反応液にレバミゾールを添加した場合は, BGPの添加に関係なく, 24時間後でも分離直後のMVと同様であった。新たに形成された針状結晶を電子線回折したところ, ハイドロキシアパタイト (HAP) と確認できた。今回の研究から, カルシウムと無機リンの高いイオン積の培養液に有機リン酸を添加すると, MVと関連した早期の結晶形成が生じ, また今回の培養条件下では, 無定形なリン酸カルシウムがHAP形成に先だって生じることが明かとなった。
  • Toshihiro Nishiura, Kazunari Ishibashi, Kimio Abe
    1991 年 33 巻 6 号 p. 585-591
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    イソプロテレノール (IPR) の長期投与によってラット顎下腺唾液中に誘導されるシスタチンを未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法とイモビラインーキャナル等電点電気泳動法の2段階のみによって単離した。アミノ末端領域のアミノ酸配列の結果から精製したシスタチンはラット唾液シスタチン-3 (RSC-3) であることが判明した。イモビライン-キャナル等電点電気泳動法は分子量は違わず, 電荷の異なるタンパク成分の分離精製に有効な手法であった。
  • Yoshiyuki Tsuboi, Koichi Iwata, Hiroyuki Muramatsu, Junichi Yagi, Yuji ...
    1991 年 33 巻 6 号 p. 592-599
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    皮質内微小刺激法 (ICMS) を用い, 軽度麻酔ネコの大脳皮質眼窩回における顎, 顔面口腔領域の運動野の配列を検索した。眼窩回後方部のICMSは, 顔面筋の収縮を引き起こし, 眼窩回中央部のICMSは, 顔面および顎筋両者の収縮を引き起こした。眼窩回前方部のICMSでは, 顔面, 顎および舌の動きが生じた。顎運動を生じる皮質領域は, 舌および顔面の動きを生じる領域より狭い範囲であった。眼窩回前方部の頻回刺激では, リズミカルな顎運動または, 持続的開口運動が誘発された。細胞構築学的には, 眼窩回後方部は43野で, 前方部は, 43野と6aβ野にまたがっていた。
  • Masanobu Satoh, Setsuko Hatakeyama, Mieko Sashima, Noriko Yoshimura, H ...
    1991 年 33 巻 6 号 p. 600-604
    発行日: 1991/12/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮腫の13例 (濾胞型5例, 叢状型8例) を10%ホルマリンにて固定し, 通常の方法で作製したパラフィン切片を用いて, 免疫組織化学的にras p21の発現とその組織学的局在を検索した。
    検索したエナメル上皮腫のうち10例でras p21が検出された。濾胞型では腫瘍実質の周縁細胞と中央細胞の核には検出できなかったが, これらの細胞の細胞質では各々2例 (40.0%) でこれが検出された。叢状型では腫瘍実質の周縁細胞の核に3例 (37.5%) で, 細胞質には6例 (75.0%) でこれが検出され, 中央細胞の核には2例 (25.0%) で, 細胞質には5例 (62.5%) でこれが検出できた。また, 濾胞型の2例と叢状型の5例で認められた角化細胞の細胞質にもras p21が検出された。
    エナメル上皮腫の増殖とその進展にras p21が関与しているであろうことが示唆された。
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