寒天ゲルとゼラチンゲルを試験食品に使用して, 柔らかい食品の咀嚼様式を, X線映画による視覚的解析と被験者による自己申告により検討した。モデル試料の硬さが増加するに伴い, 咀嚼様式は舌と硬口蓋による圧縮から, 歯列による咬断へと変化した。咀嚼様式を圧縮から咬断べと変化させるのに必要な硬さの閾値は, 寒天ゲルでは0.08 kg, ゼラチンゲルでは0.03 kgであり, その閾値は剪断歪の大きいゼラチンゲルのほうが小さい値となった。破断応力も咀嚼様式を変化させるための重要な因子であることが見いだされ, 150-250 g/cm2の値がその閾値として得られた。食品のテクスチャーは, 切歯乳頭部近傍における舌と硬口蓋によるわずかな圧縮 (変形率, 約12%) によって認知され, 非常に柔らかい食品の場合には, 流動性がなくても液状食品と同様の方法で処理されることが, X線映画による視覚的解析により明らかとなった。食品はそのテクスチャーに応じてその咀嚼様式が選択され, 舌と硬口蓋により圧縮されるか, または, 歯列による咬断により処理された。舌と切歯乳頭部による食品のわずかな圧縮過程が, テクスチャー認知の最初のステップであると推察された。
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