歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
37 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • Sadayoshi Ogata, Akitoshi Suzuki, Tomoyuki Kawase
    1995 年 37 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を利用した簡便かつ迅速な細胞内ヌクレオチドの一括定量分析法を開発した。C8カラムを用い, 0.2M第一リン酸アンモニウム (pH5) を移動相とすることにより, 9種類のヌクレオチド (GTP, GDP, GMP, cGMP, ATP, ADP, AMP, cAMP, NADP) を40分以内に分離・分析できた。この方法では, 5pmole以上のcAMPを再現性よく定量することに成功した。さらに良好な分析を目指して, アセトニトリルなどの有機溶媒を加えたグラジエント溶出を試みたが特筆すべき改善は見られなかった。次に, この方法を骨芽細胞様細胞株 (MOB3-4-F2) の細胞内ヌクレオチド分析に応用し, 再現性のあるデータを得た。すなわち, フツ化ナトリウムはcAMPとcGMPレベルを上昇させたが, ATP/ADP比を低下させた。一方, ノルアドレナリンおよびプロスタグランジンE1は一過性にcAMPレベルとATP/ADP比を上昇させた。以上の結果より, ここで紹介したHPLCによるヌクレオチド分析法は, 生物試料に応用できることが明らかになった。また, この方法は細胞内ヌクレオチド代謝およびエネルギー状態の研究において有力な手段になりうるものと思われる。
  • Iwao Sato, Kazuyuki Shimada, Hiromitsu Ezure, Tooru Sato
    1995 年 37 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    線マイクロアナライザーを用いて偶蹄目13種 (検索総数16) から得られた機能切歯 (永久歯, 乳歯) の元素分析を行った。永久歯, 乳歯ともにエナメル質のCaの量はいずれの部位においても均一であった。それに対して, 象牙質では, 永久歯のCaの量は表層から内層に向かい減少した。永久歯と比較して乳歯のMgの量 (約1-2%) は表層から内層に向かい増加した。Feがエナメル質に見られたが, その量は種間で異なっていた。さらに, Fの分布は永久歯と乳歯で異なっていた。
    Ca, Pなどの元素やMg, F, Feなどの微量元素の分析結果は偶蹄目の永久歯と乳歯の相違を示す重要な要素の一つとして微量元素の分布量を考えることができることを示唆した。また, これら微量元素の分布量は偶蹄目の永久歯と乳歯における石灰化の機構と関係しているのかもしれない。
  • 富永 和也
    1995 年 37 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    抜歯創治癒過程におけるbFGFの影響を解明するために, 抜歯窩でのbFGFおよびFGF-Rの局在ならびに骨形成と関連するALP活性の局在を観察した。ラットの下顎第一臼歯をエーテル麻酔下で抜歯し, 経日的に下顎骨を摘出した。bFGF, FGF-RおよびALPを免疫組織化学的および酵素組織化学的にそれぞれ検出した。さらに, 数匹のラットを安楽死させる前の10日間, カルセインの皮下注射を行い, 抜歯窩をLSMにて観察した。bFGFの局在は抜歯3日後に強く, 血管新生も同じく3日後に始まった。LSMにより骨形成は7日後に顕著になった。ALP活性およびFGF-Rの局在は, 抜歯窩底部から表層へと経時的に増強した。これらの結果から, 抜歯3日後に検出されたbFGFは線維芽細胞, 内皮細胞および骨芽細胞によって, 順に消費された。すなわち, 血管新生に伴って局所で増加した血清は, そのうちのなんらかの因子の作用により細胞のFGF-R量を増加させ, 当該部での経時的なbFGF濃度の低下を招いた。このため, bFGF至適濃度に勾配をもつ線維芽細胞, 内皮細胞および骨芽細胞は, 順に活性化される。その後, 骨芽細胞のALP活性が上昇するとともに骨形成が促進されると考えられる。
  • 野内 昭宏, 島田 久八郎, 市川 竜司
    1995 年 37 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究では, 歯に加わる側方力の方向の違いが顎筋反射に与える影響を調べた。ハロタン浅麻酔下の除脳ネコの上顎犬歯, 第2, 第3前臼歯をそれぞれ4方向から刺激し, 咬筋motor unit活動を筋電図を用いて記録した。誘発された反射効果は, 刺激方向, 刺激前の筋の活動状態 (background activity; BGA), 被刺激歯の歯列内における位置に応じて変化した。BGAが低い場合, 犬歯では遠心および頬側, 第2前臼歯では遠心および舌側, 第3前臼歯では遠心, 舌側および頬側からの圧刺激で咬筋に興奮反射が生じたが, BGAが高いとすべての例で抑制反射が生じた。その他の方向からはBGAの大きさに関わらず, 抑制反射が生じた。これらの結果から, 各歯の咬合様式を考慮すると, 咀嚼中の閉口筋の反射性制御には, 咬合力の加わる方向と咬筋興奮反射が誘発される刺激方向とが一致するという点で, 歯列として一貫性が存在することが明らかとなった。
  • 古澤 満
    1995 年 37 巻 1 号 p. 37-49
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究はラット脛骨を観察の対象とし, 関節軟骨 (膝関節) の形成過程に於けるI型およびII型コラーゲンとグリコサミノグリカン (GAG) の局在に注目し, 成長板軟骨と比較して免疫組織学的に検討した。2, 5, 8週齢のWistar系ラットを固定後, パラフィンに包埋し連続切片を作製し, H-E染色およびアルシアンブルー (AB) 染色 (pH2.5) を行った。さらに隣接切片を抗I型コラーゲン抗体と抗II型コラーゲン抗体, およびGAGに対するモノクローナル抗体 (2-B-6, 3-B-3, 5-D-4) を用いて免疫染色を施した。I型コラーゲンの反応は関節面直下の軟骨基質に観察され, その分布領域は増齢に伴い広がる傾向が見られた。さらに増齢に伴いABの染色性の低下と2-B-6抗体による免疫染色性の低下が認められた。これに対して成長板では, 上記のような変化は認められなかった。これらの所見から関節軟骨は, 成長板軟骨とは異なる基質の特性を持つことが示唆された。
  • 成熟期後期エナメル芽細胞の剥離と嚢胞形成
    田谷 雄二, 佐藤 睦, 佐藤 かおり, 青葉 孝昭
    1995 年 37 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ビンクリスチン (0.2mg/100gb.w.) をWistar系ラット (100-120g) の皮下に1回注射し, 切歯エナメル質の成熟期エナメル芽細胞と乳頭層細胞に現われた変化について光顕的に観察した。その結果, 成熟期中期と後期のエナメル器上皮細胞に著しい形態変化を生じることが確かめられた。特に, 成熟期後期に限局してエナメル芽細胞がエナメル質表面から剥離し, 嚢胞様変化を生じたことが注目された。今回の観察結果とこれまでの報告を比較検討することにより, ビンクリスチンなどの微小管重合阻害剤に対するエナメル芽細胞の感受性は成熟期の中・後期で高まることが示唆された。エナメル芽細胞に対する薬物の作用は, 細胞の構造と機能に密接に関連しており, 嚢胞様変化やその他の形態変化を引き起こすものと推測される。微小管重合阻害剤に高い感受性を示す成熟期後期のエナメル芽細胞の機能と役割について, 今後さらに明らかにする必要がある。
  • 特にマラッセの上皮遺残の影響
    井上 孝, 榎谷 保信, 橋本 貞充, 福増 一浩, 下野 正基
    1995 年 37 巻 1 号 p. 58-69
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ビーグル成犬に歯槽骨-歯根窩洞を形成した後に再生する歯根膜組織の細胞密度, 血管分布, 増殖細胞核抗原陽性率およびマラッセの上皮遺残の分布と密度を検索した。術後1カ月例で切断部には, 周囲歯槽骨より伸びる細い骨組織が侵入しており, 切断された歯牙との間に歯根膜様組織が再生し, 歯牙の象牙質切断面には上下壁ともにセメント質が沈着していた。細胞成分はセメント質領域で最も多く, 血管は中央部領域で最も高い値を示していた。PCNAに陽性を示す細胞は中央領域に最も多く, これらの結果は対照群とほぼ同様であった。しかし再生歯根膜内には, マラッセの上皮遺残は観察できなかった。2カ月例では部分的に再生し侵入した骨組織と歯牙とが強直を示す例が観察された。以上再生歯根膜内にはマラッセの上皮遺残が観察されずに強直が観察されたことより, マラッセの上皮遺残が歯根膜空隙の恒常性維持に大きく寄与している可能性があると思われた。
  • 佐伯 修一
    1995 年 37 巻 1 号 p. 70-79
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    骨の代謝の機構には日内変動があることが知られている。顎顔面頭蓋部における日内変動の時間構造や変動の大きさを正確に把握することは歯科矯正臨床にとっても重要であるため, 本研究では, 規則的な明暗サイクル (明期: 7: 00-19: 00) に適応させた成長期のラットを用い, とくに下顎頭における基質合成・分泌活性の日内変動について, 一定時間内における3H-prolineの取り込み量を指標としたオートラジオグラフィーによる解析を行った。
    その結果, 軟骨の各細胞層および軟骨下の骨梁骨骨芽細胞におけるプロリン取込活性には, 13時に最高, 1時に最低となる明瞭な日内変動が認められた。また, プロリン取込活性の高かった肥大軟骨細胞や骨梁骨骨芽細胞のコラーゲン性基質分泌活性にも同様に大きな日内変動の存在が確認され, 最高値 (13時) の最低値 (1時) に対する比は, それぞれ約240, 190%に達した。
    以上の結果より, ラット下顎頭の軟骨細胞と骨芽細胞のプロリン取込活性および基質分泌活性には明期 (ラット休息期) 中期 (13: 00) を最高, 暗期 (ラット活動期) 中期 (1: 00) を最低とする明瞭な日内変動が存在することが確認された。
  • Tetsuo Kodaka, Shohei Higashi
    1995 年 37 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ヒトの象牙質を銀染色した脱灰切片で観察される同心円状の堆積物と, 層状からなる線条構造物, いわゆる石灰化条や象牙質紋理は, 脱灰によって出現するにもかかわらず, 周期的な石灰化沈着によって形成されると考えられてきた。
    今回の走査電子顕微鏡観察では, 次亜塩素酸ナトリウム (NaOCKl) 処理後, EDTAで腐食した象牙質の割断表面に, 約1μm間隔で膠原線維の疎密による規則的な繰り返しが明らかにされた。この球状と線条の層板構造物は, 今回明らかにした膠原線維の周期的な堆積に一致して, 銀染色で銀粒子が沈着するのと同じように, 石灰化物の沈着によって形成されると考えられたが, 反射電子像では, これらの周期的な組成変化を明らかにすることはできなかった。したがって, それらの変化は僅かであると推定された。
  • Masaru Sasaki, Ken Onodera, Yoshinaka Shimizu, Kiyoshi Ooya
    1995 年 37 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 1995/02/20
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
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