多くの骨吸収因子は, 内因性プロスタグランジン (PG) の産生を介し, 破骨細胞形成することが知られている. 最近, PG合成酵素 (PGHS, シクロオキシゲナーゼ; COX) には, PGHS-1とPGHS-2の2つのアイソザイムが存在することが明らかとなった. そこで, 破骨細胞形成, 分化過程におけるPGHSアイソザイムの発現の変動をマウス骨髄細胞培養系を用いて検討した. 培養系に副甲状腺ホルモン (PTH), PGE2を添加すると7~8日間で破骨細胞が形成される. そこで培養開始後3~8日目におけるPGHS-1, PGHS-2蛋白の発現を経日的に免疫染色し, その発現量を定量化するとともに, 生細胞におけるPG合成活性を生細胞活性測定法を用いて検討した. その結果, 破骨細胞形成刺激因子を添加しない細胞では, PG合成活性, PGHS-1, PGHS-2蛋白の発現はともに全く認められなかったが, 添加した細胞では経日的にPG合成活性の上昇が認められた。しかもPGHS活性は, 骨芽細胞に比較し, 単核細胞で高値を示すとともに, 酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ陽性単核細胞にのみ認められた。さらにまた, その活性は培養前期ではPGHS-2の選択的阻害剤であるNS-398の添加によって抑制されなかったが, 培養後期ではNS-398で有意な抑制が認められた。また, PGHS-1蛋白の発現は, 3~8日に培養期間中ほぼ一定であったが, PGHS-2蛋白の発現は培養中期, 後期で上昇していた。
以上の結果は, 破骨細胞形成過程におけるPGHS-2の重要性を示すとともに, 単核細胞側におけるPG合成が破骨細胞の形成, 分化に関与する可能性を示唆している。
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