歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
40 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 古谷 忠典, 石川 博之, 中村 進治, 脇田 稔
    1998 年 40 巻 6 号 p. 583-593
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    組織切片上の構造抽出を行う場合, 従来は, 手作業によるトレースを行うため, 作業が煩雑であり主観の関与による再現性の低下という問題があった。また, 画像処理によりグレースケールで構造抽出を行う場合には, 特殊な染色方法が必要となり, 一般的な組織観察には不利であった。
    今回, ヘマトキシリン-エオジン染色が施されたネコ歯周組織切片の画像を入力し, 最尤法により歯と骨の構造抽出を試みた。
    最尤法とはカラー画像を構成する色情報に基づき, 判別方程式を応用して画像から任意の構造を抽出する方法である。
    今回開発した方法により, 画像の入力から抽出画像の出力まで20分程度の処理時間で, 歯と骨の自動認識が可能になった。
  • 平田 政嗣, 岩松 洋子, 金田一 孝二, 奥田 禮一, 加賀山 學
    1998 年 40 巻 6 号 p. 594-610
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    マラッセの上皮遺残 (PE) と無細胞セメント質 (AC) 形成との関係を明らかにするため, 生後2-8週齢ラットの臼歯を用い, PEとセメント芽細胞 (CB) の特性と分布およびACの形成量について検討した。サイトケラチン, ラミニン, IV型コラーゲン抗体に対する免疫組織化学染色により検索した結果, PEは加齢に伴う形態変化と基底膜の欠如を示し, AC形成が盛んな4-8週齢では根幹凹部と分岐歯根内側部で多く, 根幹凸部と分岐歯根外側部で少なかった。抗オステオカルシン抗体による免疫染色およびアルカリ性ホスファターゼ活性の酵素組織化学により検索した結果, ACを形成するCBの局在はPEのそれとほぼ一致した。またカルセインとアリザリン赤による二重生体染色による観察ではACの形成量は根幹凹部と分岐歯根内側部で多く, 根幹凸部と分岐歯根外側部で少なかった。以上の結果は, PEがCBの分化およびACの付加的成長に深く関与する事を示唆するものと考えられた。
  • 吉田 彰英
    1998 年 40 巻 6 号 p. 611-621
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    Transforming growth factor-β1 (TGF-β1) は骨改造に関与する重要な局所産生因子である。本研究では, 実験的歯の移動時の歯槽骨の改造における同因子の関与を調べた。生後10週齢のWistar系雄性ラットを用い, 上顎右側臼歯部に矯正用弾線を適用し, 歯を1, 3, 7日間口蓋側へ移動させた。反対側の上顎臼歯部を対照側とした。免疫組織学的染色でTGF-β1とTGF-β type II receptor (TβR-II) の局在を調べたところ, 3日群の牽引側骨芽細胞に, 圧迫側破骨細胞に強い陽性反応が認められた. また, 定量的PCR法にて3日群歯槽骨のTGF-β1とTβR-IIのmRNAを調べた。その結果, 歯槽骨のTGF-β1とTβR-IIのmRNAは歯の移動によって有意に増加した. 本研究では, TGF-β1とTβR-IIは歯の移動による歯槽骨形成と吸収を調節していることが示唆された。
  • 小池 清美, 相山 誉夫
    1998 年 40 巻 6 号 p. 622-631
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    生後早期のマウス耳下腺の終末性集落や腺房には粘液細胞が認められる。耳下腺の発育に伴い粘液細胞に含まれる分泌顆粒の性状にどのような変化が生ずるか光顕および電顕観察によって調べた。生後0日齢には認められなかったが, 生後1日齢になると粘液細胞が観察され, 徐々に増加していった。粘液細胞の顆粒はPAS反応およびアルシアン青染色に陽性を示し, 電顕観察において電子密度の低い明るい顆粒, および明るい基質中に電子密度の高い芯をもつ二相性顆粒を含んでいた。芯は経日的に大きさを増し, プロナーゼ処理によって消化された。生後7日齢以降, 粘液細胞は減少し, 生後10日齢には全く認められなかった。生後1日齢に出現するマウス耳下腺の粘液細胞は生後7日齢までの限られた期間観察されること, 蛋白質を含む電子密度の高い芯は徐々に大きさを増すことなどから, 粘液細胞の大部分の顆粒は漿液顆粒へ変化してゆくものと思われる。
  • Kaori Sato, Toshihiro Takahashi, Yoshihito Shimazu, Takaaki Aoba
    1998 年 40 巻 6 号 p. 632-640
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    合成アパタイトを種晶とした結晶成長実験系において, 酸性アミノ酸による成長抑制効果を比較検討した。今回の実験に使用したアミノ酸分子内で, リン酸化セリン (PSer) はハイドロキシアパタイトに対して最も強い吸着親和性をもち, mM濃度域で結晶成長を停止させる効果を発揮した。他方, アスパラギン酸 (Asp) やグルタミン酸 (Glu) は10mMまでの高濃度においても弱い成長抑制効果を示すに止まったが, 同じ溶液濃度での比較において, Aspによる抑制効果が勝っていた。このAspの結晶抑制機構についても, PSerや蛋白性抑制因子の場合と同様に, 種晶表面での成長部位への特異的吸着によることが確かめられた。今回の検索において, mM濃度域での吸着剤の反応機構を解析する際には, 溶液内でのイオン対の形成と, これに伴うCa2+濃度 (厳密には, 結晶成長のための過飽和度) の変動を考慮する必要性を指摘した。
  • 鈴木 安里, 葛城 啓彰, 斎藤 和子
    1998 年 40 巻 6 号 p. 641-647
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    歯周疾患関連菌であるActinobacillus actinomycetemcomitansPorphyromonas gingivalisが, in vitroにおいて培養ヒト歯肉線維芽細胞 (Gin-1) 上に付着あるいはGin-1内に侵入しているとき, 3種抗菌薬ミノサイクリン (MINO), テトラサイクリン (TC), トスフロキサシン (TFLX) の殺菌効果を測定した。MBCは微量液体希釈法を用いて測定した。Gin-1上あるいはGin-1内の菌に対するMINO, TC, TFLXのMBCはA. actinomycetemcomitansに対してそれぞれ6.25μg/ml, 12.5μg/ml, 3.13μg/mlであり, P. gingivalisに対して12.5μg/ml, 25μg/ml, 12.5μg/mlとなった。このMBCはGin-1非存在下の系と比較して, A. actinomycetemcomitansにおいては8-16倍, P. gingivalisにおいては32-64倍の値となった。これらの結果より, 両菌はGin-1への付着性や侵入性などを介して抗菌薬に抵抗性を示すことが示唆された。
  • 中村 康則, 桑島 治博, 木村 智彦
    1998 年 40 巻 6 号 p. 648-655
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    臭化ドミフェン (DB) および塩化デカリニウム (DC) のGTaseに対する阻害効果を塩化セチルピリジニウム (CPC) の効果と比較検討し, さらにそれらの薬物の非水溶性グルカン (WIG) の形態に及ぼす影響を電子顕微鏡で観察した。S. sobrinus 6715株GTaseによる総WIG量 (付着+非付着) は, 3薬物の濃度上昇に従って減少した。付着性WIG量は非付着性WIG量に比べ, 減少の程度が著しかった。3薬物のWIG合成抑制作用は, CPC≧DC>DBの順であった。一方, S. mutans MT6R株GTaseによる総WIG量は3薬物の濃度に依存して減少した。付着性WIG量は3薬物の低濃度でもほぼ完全に抑制された。3薬物のWIG合成抑制作用は, DC>CPC≧DBの順であった。この結果はDB, DCがCPCと同様, 血清型c株のGTaseに対し阻害効果を有することを示している。WIGの形態観察では3薬物の各々の添加によって網目状線維, 凝集塊の減少が認められた。以上の結果から, DB, DCはう蝕予防の洗口剤としての応用が期待される。
  • Masato Matsuo, Takatsuna Nakamura, Chen-Yao Su, Tokuyuki Shimomura, Ke ...
    1998 年 40 巻 6 号 p. 656-661
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    吸収性膜を用いたGBR手術後, 実験的骨窩洞の骨再生と血管構築の関係を血管鋳型標本を用いて走査型電子顕微鏡 (SEM) 下で観察した。
    実験動物には健康な歯周組織を有する体重12-15kgのビーグル犬2頭を用い, 前準備として下顎両側第3, 第4前臼歯を抜歯し, 抜歯窩が治癒するまで12週間飼育した。下顎骨片側に, 実験的骨窩洞を形成し吸収性GBR膜で覆った。対照群として反対側に同様の骨窩洞を形成しGBR膜は使用しなかった。
    GBR手術後12週, 骨窩洞上面の新生骨は周囲既存骨と比較して凹面を示したが, 骨の高さはGBR群が対照群より高かった。吸収が進行中のGBR膜は表層の口腔粘膜下の血管網と再生歯槽骨上面の間に存在していた。骨窩洞上では径を増した数本の骨膜の血管がGBR膜中に侵入し置換していた。
    本研究の結果から, 吸収性GBR膜は口腔粘膜の血管が下方に侵入するのを防止するバリアーとして働き, それによって骨窩洞内の歯槽骨の血管増殖を促進させる環境を作り上げることが示された。微小循環の立場からはGBR膜上の骨膜血管が最終的な歯槽骨の高さを決定する重要な役目をもっていると考えられた。
  • Yasunori Sakakura, Eichi Tsuruga, Noriyuki Shide, Toshihiko Yajima
    1998 年 40 巻 6 号 p. 662-666
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
feedback
Top