本研究は, 実験的に脱灰したエナメル質の再石灰化にキシリトールが及ぼす影響を形態学的に追求したもので, 材料はヒト第3大臼歯である。歯面に脱灰層を形成し, 10%のキシリトール添加あるいは無添加の再石灰化液 (Ca: 1mM, P: 2mM, F: 0.2PPm) に37℃で2, 4, 8週間浸漬した。その後, 100μmの研磨切片を作製してコンタクトマイクロラジオグラムを撮影し, その石灰化程度をMultipurpose Image Processorにより測定した。その結果, キシリトール無添加群では, 表層にのみ再石灰化が起こり, 中層から深層にかけてはそれが認められなかった。これに対し, キシリトール添加群は, 2週間浸漬例で表層および深層の再石灰化が無添加群より高度に起こっていた。また, 8週間浸漬例では, 表層の石灰化度は無添加群より低下していたが, かわって中層でそれが上昇していた。したがって, 表層付近の再石灰化は, フッ素の結晶形成作用により進行するが, キシリトールを添加すると, これがカルシウムイオンのキャリアーとして働き, 中層および深層での再石灰化をより促進させるのであろう。なお, 8週例でみられた表層の再石灰化度の低下は, キシリトールが結晶核形成作用を抑制するとともに, 最表層では脱灰を起こしている可能性を示唆している。
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