歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
44 巻, 1 号
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  • Yoshinobu Asada, Yukie Sato, Takehiko Shimizu, Toshiro Sakae, Hirotsug ...
    2002 年 44 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    大理石骨病交雑系モデルマウスを用い, マイクロサテライトマーカーによる遺伝子型を検出することでop遺伝子の3つの遺伝子型 (op/op, op/+, +/+) を判定できるか否かを目的とし本実験を行った. B6C3Fe-op/+マウスとA/WySnJマウスとの交配より得られたすべてのF2マウスの遺伝子型をマイクロサテライトマーカーにて判定したところ, すべてのマウスで表現型 (切歯の萌出の有無) と一致していた. さらに, 肉眼的には+/+と判別困難なヘテロ型 (op/+) マウスをマイクロサテライトマーカーより判定し, 選抜したF2ヘテロ型マウス雌雄を交配したところ, F3マウスにおいてop/opマウスを作成することができた. また, 組織学的所見より従来のopマウスとF3-op/opマウスでは大腿骨における形態学的特徴が類似していた. 以上の結果より, 大理石骨病交雑系モデルマウスはマイクロサテライトマーカーを用いることで簡便に遺伝子型を判定できることが明らかとなり, 破骨細胞の分化に対するメカニズム解明ならびに大理石骨病の遺伝学的研究に有用であることが示唆された.
  • 伊藤 関門, 平場 勝成, 根来 武史, 水谷 誠, 森田 匠, 藤原 琢也, 後藤 滋巳, 大野 紀和
    2002 年 44 巻 1 号 p. 7-18
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ウサギにおいて粉末飼料飼育 (離乳直後5週齢から成獣時18週齢まで) が咬筋筋線維に及ぼす影響をタイプI, IIA, IIBの3種類についてミオシンATPaseならびにSDH染色法にて検討した. その結果, 実験群の筋線維の直径は対照群 (固形飼料飼育) と比べて, タイプI線維は43.9 (対照群, n=1, 809) から35.3μm (実験群, n=1, 462) に, IIA線維は55.0 (対照群, n=722) から50.1μm (実験群n=1, 410) に有意に減少したが, IIB線維では有意な変化はみられなかった. 計測した全筋線維数に占める各タイプの筋線維数の割合 (構成比率) は, タイプI線維は対照群と比較して統計的に有意に減少した (対照群: 40.7%, 実験群: 29.3%). 一方, IIA線維は有意な増加を示した (対照群: 17.6%, 実験群: 30.5%). 過去の筋に対する負荷を低下させた四肢筋での研究では, 負荷の低下はSとFRタイプの運動単位に属するタイプIとIIA線維の萎縮を引き起こすだけでなく, ミオシン重鎖の出現型をI→IIa→IId/x→IIbと変化させることが明らかにされている. したがって, 粉末飼料飼育による負荷の低下は, SならびにFRタイプの運動単位の活動量を低下させ, その結果, タイプIとIIA線維に萎縮が生じたと思われる. また, タイプI線維の構成比率の減少と, タイプIIA線維の構成比率の増加の背景には, おそらくミオシン重鎖のI型からIIa型への変換が存在すると思われた.
  • 小畑 俊剛, 横山 敦郎, 山本 悟, 川崎 貴生, 尾田 充孝, 飯塚 正, 向後 隆男
    2002 年 44 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 糖尿病がosseointegration獲得後のチタンインプラント周囲の骨組織に与える影響について, streptozotocin誘発糖尿病ラットを用いて組織学的, 組織計量学的に検討を加えた. ラット大腿骨にチタンンプラントを埋入し, 8週後にstreptozotocinを腹腔内に投与することにより糖尿病を誘発させ, 4週後に安楽死させた. 対照はチタンインプラント埋入後8週および12週のラットとした. 骨-インプラント体の接触率は, 糖尿病ラットと対照群のラットの間に有意差は認められず, 糖尿病ラットではインプラント体周囲の新生骨量が有意に低い値を示した. 以上の結果から, 4週間の高血糖状態は, 獲得されたosseointegrationを破壊することはなく, インプラント周囲の骨形成を抑制することが示された.
  • 北野 良英, 原 俊浩, 井出 吉信
    2002 年 44 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    有歯顎と無歯顎における下歯槽動脈の走行形態および歯枝の分岐形態を把握することを目的として, Micro-CTを用いた三次元的観察および解析を行った. 試料として顎動脈より造影剤の注入を行った日本人成人遺体18体26側を用いた. 下顎管を基準とした下歯槽動脈の垂直的位置, 水平的な位置, 血管内径および下歯槽動脈を基準とした歯枝の分岐する角度の計測を行ったところ, 以下の結果を得た. 下顎管内部における下歯槽動脈は, 無歯顎になると垂直的には有歯顎と比較して相対的に上方に位置したが, 水平的には差が認められなかった. 血管内径は無歯顎になると細くなる傾向が認められた. 歯枝は歯牙の喪失により分岐する数の減少がみられたが, 臼後領域に向かう臼後枝は変化が認められなかった. また, その臼後枝は頬側方向に分岐していた. これらは, 歯牙喪失による歯槽骨の吸収, それに伴う内部構造, 特に下顎管の構造の変化が大きく関与していた.
  • 青柳 麻里子, 東野 史裕, 安田 元昭, 向後 隆男, 佐野 英彦, 進藤 正信
    2002 年 44 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    E4orf6はアデノウイルスの新しいウイルスがん遺伝子でE4orf6が発現しているがん細胞はヌードマウスに造腫瘍性があるため, E4orf6はがん細胞の悪性化にかかわっていると考えられている. この機構にはがん抑制遺伝子産物p53とその関連タンパクp73にE4orf6が結合し, それらの機能を抑制することが重要であることをわれわれは報告してきた.
    今回われわれは, アポトーシス関連タンパクに対するE4orf6の影響について検索し, Bcl-2ファミリーのBNIP 3のアポトーシス誘導能をE4orf6が抑制することを見いだした. E4orf6は, N末端側にNuclear ExportSignal (NES) をコードする領域をもっている. E4orf6とBNIP 3を293細胞に遺伝子導入し, レーザー共焦点顕微鏡により観察したところ, E4orf6は細胞質中でBNIP 3のミトコンドリアへの局在を変化させることが認められた. さらに, BNIP 3との結合にはNESを含むがんの悪性化に重要な役割を果たす領域が必要であった. これらの結果は, E4orf6はBNIP 3をターゲットにして細胞中で相互作用し細胞を悪性化することを示唆している.
  • Takeshi Hiratsuka, Kaori Sato, Takaaki Aoba
    2002 年 44 巻 1 号 p. 48-65
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    哺乳動物のエナメル結晶は特異な形状, 大きさ, 配向を示すことから, その結晶成長機構に強い関心が向けられてきた. 本報においては, これまでにも論議が続けられてきたエナメル質石灰化過程における前駆体の役割について, 実験的および理論的な解析結果について報告する. 生理的な溶液条件下 (中性, 37℃, 1.8%炭酸ガス分圧) での核生成実験においては, リン酸オクタカルシウム塩 (OCP) が沈殿反応に関与していることが実証できた. また, 今回の実験では, われわれは新たに種晶を充 したカラムを連結したタンデムモデルを考案したが, この実験系において, OCP自身がハイドロキシアパタイト (HA) との比較においても, 結晶沈殿の基板あるいはエナメル基質タンパクの吸着材として有効に働くことが確かめられた. エナメル溶液での結晶成長の速度論的な解析結果でも, エナメル芽細胞によるカルシウムイオンの供給が続く条件下では, OCP沈殿がHA沈殿より優位であることが示された. 以上の結果から, エナメル質形成期に炭酸含有アパタイトが大きく成長を遂げていく過程では, 前駆体としてのOCPの関与が不可避であると考えられる.
  • Yoichiro Seki, Noribumi Ishii, Kazuo Toda, Kunimichi Soma
    2002 年 44 巻 1 号 p. 66-74
    発行日: 2002/02/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    歯根膜機械受容器は, 顎運動を制御する重要な感覚器官であり, 咬合状態変化時の歯根膜機械受容器の応答特性を理解することは, 歯科臨床学的に意義あることである. そこでわれわれは, 対合歯の喪失に伴う咬合機能低下が, ラット臼歯歯根膜機械受容器の応答特性にどのように影響するかについて定量的な解析を行った. 対合歯を抜去したラットからin vitro下顎-神経標本を作製し, 標本の臼歯を抜歯後, 歯根膜機械受容器に直接von Frey毛による機械刺激を加え, 得られた単一発火活動を対合歯抜歯後経時的に3日, 1, 2, 4, 8, 12週目に下歯槽神経から導出した. 各実験群における歯根膜機械受容器の応答特性を比較検討し, 以下の結果を得た. (1) 対合歯抜歯後3日群と1週群の閾値はコントロール群と比較し有意に低く, 抜歯後12週群の値は有意に高いものとなった. (2) 対合歯抜歯後3日から8週後までの支配神経の伝導速度は, コントロール群に比べ有意に遅くなった. これらの結果から, 対合歯喪失による咬合機能低下にてラット臼歯歯根膜機械受容器は, 機能的変化を起こすことが明らかとなり, 顎反射や咀嚼運動へ多大な影響を与えることが示唆された.
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