舌有郭乳頭の溝と, エブネル腺の導管管腔の形成機構を解明するために, 胎生18日から生後2日までのマウスを用いて, アポトーシス, ケラチンおよびオクルディンについて調べた. 胎生15日に, 乳頭の上皮索が舌背面上皮から結合組織へ侵入し, 胎生18日にはさらにそこからエブネル腺上皮索が伸びていき, これら乳頭と腺の上皮索のなかに小さな空隙が出現し, しだいに数を増し, 癒合, 拡大し, 生後2日までに溝と腺導管管腔を形成するにいたった. アポトーシス細胞は, 調べた胎生18日から生後2日までにおいて, 乳頭と腺の上皮索の空隙の周囲や内部に散在しており, 不要になった細胞を除去し, 形を整える役割を果たすと考えられた. サイトケラチン8/18は, 胎生18日以降, 乳頭と腺の空隙周囲の一層の細胞を含む上皮索中央部の細胞に存在し, この細胞には, ケラチンフィラメントが網状に散在していた. 密着帯に局在するオクルディンは胎生18日以降, 乳頭と腺上皮索の空隙を囲む細胞の内腔側に発現した. サイトケラチン8/18とオクルディンをもつ空隙周囲の細胞層は, 乳頭では生後1日または2日で溝が形成されると消失してしまったが, 腺の導管では管腔完成後も管腔周囲にそのまま存在した. この細胞層は発達過程において空隙を維持し, その壁に弾力性を与え, 空隙の癒合, 拡大を助ける役割を果たすものと推測される.
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